5 / 33
筋肉をまさぐる
しおりを挟む食堂で食事を受け取り席についた。
「なんかここだけ違くない?」
「王族の席だからな」
「うわ…あっち行こう」
「俺を独りにするつもりか」
「他の席でも食べれるんでしょ?」
「いいから座れ」
座って食べ始めると2人増えた。
「うわ、可愛い。ヴラシス、この子は?」
「知らなくていい」
「私はボルワード公爵家のオスカーだ。よろしくね」
「僕はリズモンド侯爵家のノア。よろしくね」
「…キュアノス子爵家のエリシアと申します」
なんだ。友達いるんじゃない。
「あっち行けよ」
「嫌だよ」
「お邪魔するね」
「クラスは?どこになったの?」
「Aです」
「私達3人もAだよ」
「うちのパーティにおいでよ」
「うちの招待状も送るよ」
「あ、遠慮します。跡を継ぐまで社交は控えるのが家訓でして」
「貴族なのに珍しい家訓だな」
「キュアノス子爵といえば国王陛下の執務補佐室の…」
「あ、そうだよな。そうか…陛下が気を利かせて君とヴラシスが友人になるよう手を回したんだね?」
「ご名答です」
ヴラシスが私のお皿からデザートを取り上げて、ポケットから包みを出した。
「ヴラシス、さすがにエリシアちゃんのデザートを奪うのは駄目だぞ」
「いいんだよ。エリシアは舌が肥えていて、ここで出るデザートじゃ甘すぎて口に合わない。代わりのデザートを作らせて持ってきたからいいんだ」
包みを開けるとドライフルーツとナッツ入りのブラウニーだった。
「ありがとう、ヴラシス」
「…ヴラシス、マメだったんだな」
「学園に通えって無理を言ったのは俺だからな」
「え?エリシアちゃん通いたくなかったの?」
「面倒で」
「…それは…思い切った考えだったんだね」
「俺、卒業せずに3年間通うから」
「「は!?」」
「俺が卒業したらエリシアが独りになるからな」
「「……」」
「同じクラスは止めてね」
「何でだよ」
「煩いもん」
「授業中は静かにしているぞ」
「存在が煩いの」
「おまえなぁ」
「「……」」
屋敷に帰ってしばらくすると、授業を終えた王子坊ちゃんが乱入してきた。
「エリシア」
「何でこっちに来たの?王宮に帰りなよ」
「あの男は誰だ。何だ友達って」
「オデニクス伯爵家のアレックスくん。おんぶしてもらっていい人だから友達になった」
「おんぶ!?」
「先生に学園内を案内されているうちに体力の限界で歩けなくなっておんぶしてもらった」
「……」
「学園に通ったら友達くらい何人もできるよ。私の性格なら友達になるのは男の子だって分かりきってるじゃない。ヴラシスと友達やってるくらいなんだから令嬢は無理だよ」
「……」
反論の余地がないほど納得しつつも、なぜか不満げだ。
「やっぱり留年を選ぶべきだったな」
「え?」
「何かあったらすぐに言えよ」
「何かって?」
「虐められたり」
「……」
「俺が守ってやる」
「要らない。令嬢が絡まれるのは異性絡みよ。特に王子とその友人の高位貴族と仲良くしたら標的になりそう。一番は関わらないでくれることよ」
「…それは嫌だ」
「はぁ」
「父上に言って1年のクラスに行くか」
でも20人しか…
「21人目のクラスメイト?」
「いや。1人Bクラスに落ちるな」
「こ、来なくていいから」
「ちゃんと通って 困ったり虐められたら俺に言うんだぞ」
「……」
「エリシア? 1人落とすぞ」
「分かった!」
「いい子だな」
「離れて!」
「抵抗するだけ無駄だから大人しくしていろ」
隣に座った王子坊ちゃんは私の肩に腕を回すと自分の方に引き寄せた。
「むうっ」
「悔しそうな顔をするな」
出会った頃とは違ってかなり力の差がついてしまった。
ん?
「なっ!エリシア!?どこ触ってるんだよ」
王子坊ちゃんの体を揉み回した。腿、腰、脇腹、腕、肩…
「乳」
「おまっ!」
「なんかすごい…こんなに筋肉ついてるなんて」
「あのな。騎士団長の息子とかを押し除けて剣術で1位になるには、とんでもない努力をしなくちゃいけなかったんだぞ。体もこうなって当然だ。それでも剣術は努力だけではどうにもならない」
「うん」
「………まだ触るのか?」
「うん。ゼノン卿を返してくれたら止める」
「思う存分触れ」
ママが通りかかって悲鳴を上げるまでサワサワモミモミし続けた。
998
あなたにおすすめの小説
殿下に寵愛されてませんが別にかまいません!!!!!
さくら
恋愛
王太子アルベルト殿下の婚約者であった令嬢リリアナ。けれど、ある日突然「裏切り者」の汚名を着せられ、殿下の寵愛を失い、婚約を破棄されてしまう。
――でも、リリアナは泣き崩れなかった。
「殿下に愛されなくても、私には花と薬草がある。健気? 別に演じてないですけど?」
庶民の村で暮らし始めた彼女は、花畑を育て、子どもたちに薬草茶を振る舞い、村人から慕われていく。だが、そんな彼女を放っておけないのが、執着心に囚われた殿下。噂を流し、畑を焼き払い、ついには刺客を放ち……。
「どこまで私を追い詰めたいのですか、殿下」
絶望の淵に立たされたリリアナを守ろうとするのは、騎士団長セドリック。冷徹で寡黙な男は、彼女の誠実さに心を動かされ、やがて命を懸けて庇う。
「俺は、君を守るために剣を振るう」
寵愛などなくても構わない。けれど、守ってくれる人がいる――。
灰の大地に芽吹く新しい絆が、彼女を強く、美しく咲かせていく。
ワザとダサくしてたら婚約破棄されたので隣国に行きます!
satomi
恋愛
ワザと瓶底メガネで三つ編みで、生活をしていたら、「自分の隣に相応しくない」という理由でこのフッラクション王国の王太子であられます、ダミアン殿下であらせられます、ダミアン殿下に婚約破棄をされました。
私はホウショウ公爵家の次女でコリーナと申します。
私の容姿で婚約破棄をされたことに対して私付きの侍女のルナは大激怒。
お父様は「結婚前に王太子が人を見てくれだけで判断していることが分かって良かった」と。
眼鏡をやめただけで、学園内での手の平返しが酷かったので、私は父の妹、叔母様を頼りに隣国のリーク帝国に留学することとしました!
身代わり令嬢、恋した公爵に真実を伝えて去ろうとしたら、絡めとられる(ごめんなさぁぁぁぁい!あなたの本当の婚約者は、私の姉です)
柳葉うら
恋愛
(ごめんなさぁぁぁぁい!)
辺境伯令嬢のウィルマは心の中で土下座した。
結婚が嫌で家出した姉の身代わりをして、誰もが羨むような素敵な公爵様の婚約者として会ったのだが、公爵あまりにも良い人すぎて、申し訳なくて仕方がないのだ。
正直者で面食いな身代わり令嬢と、そんな令嬢のことが実は昔から好きだった策士なヒーローがドタバタとするお話です。
さくっと読んでいただけるかと思います。
氷の騎士と契約結婚したのですが、愛することはないと言われたので契約通り離縁します!
柚屋志宇
恋愛
「お前を愛することはない」
『氷の騎士』侯爵令息ライナスは、伯爵令嬢セルマに白い結婚を宣言した。
セルマは家同士の政略による契約結婚と割り切ってライナスの妻となり、二年後の離縁の日を待つ。
しかし結婚すると、最初は冷たかったライナスだが次第にセルマに好意的になる。
だがセルマは離縁の日が待ち遠しい。
※小説家になろう、カクヨムにも掲載しています。
つかぬことを伺いますが ~伯爵令嬢には当て馬されてる時間はない~
有沢楓花
恋愛
「フランシス、俺はお前との婚約を解消したい!」
魔法学院の大学・魔法医学部に通う伯爵家の令嬢フランシスは、幼馴染で侯爵家の婚約者・ヘクターの度重なるストーキング行為に悩まされていた。
「真実の愛」を実らせるためとかで、高等部時代から度々「恋のスパイス」として当て馬にされてきたのだ。
静かに学生生活を送りたいのに、待ち伏せに尾行、濡れ衣、目の前でのいちゃいちゃ。
忍耐の限界を迎えたフランシスは、ついに反撃に出る。
「本気で婚約解消してくださらないなら、次は法廷でお会いしましょう!」
そして法学部のモブ系男子・レイモンドに、つきまといの証拠を集めて婚約解消をしたいと相談したのだが。
「高貴な血筋なし、特殊設定なし、成績優秀、理想的ですね。……ということで、結婚していただけませんか?」
「……ちょっと意味が分からないんだけど」
しかし、フランシスが医学の道を選んだのは濡れ衣を晴らしたり証拠を集めるためでもあったように、法学部を選び検事を目指していたレイモンドにもまた、特殊設定でなくとも、人には言えない事情があって……。
※次作『つかぬことを伺いますが ~絵画の乙女は炎上しました~』(8/3公開予定)はミステリー+恋愛となっております。
心を病んでいるという嘘をつかれ追放された私、調香の才能で見返したら調香が社交界追放されました
er
恋愛
心を病んだと濡れ衣を着せられ、夫アンドレに離縁されたセリーヌ。愛人と結婚したかった夫の陰謀だったが、誰も信じてくれない。失意の中、亡き母から受け継いだ調香の才能に目覚めた彼女は、東の別邸で香水作りに没頭する。やがて「春風の工房」として王都で評判になり、冷酷な北方公爵マグナスの目に留まる。マグナスの支援で宮廷調香師に推薦された矢先、元夫が妨害工作を仕掛けてきたのだが?
【完結】元悪役令嬢は、最推しの旦那様と離縁したい
うり北 うりこ@ざまされ2巻発売中
恋愛
「アルフレッド様、離縁してください!!」
この言葉を婚約者の時から、優に100回は超えて伝えてきた。
けれど、今日も受け入れてもらえることはない。
私の夫であるアルフレッド様は、前世から大好きな私の最推しだ。 推しの幸せが私の幸せ。
本当なら私が幸せにしたかった。
けれど、残念ながら悪役令嬢だった私では、アルフレッド様を幸せにできない。
既に乙女ゲームのエンディングを迎えてしまったけれど、現実はその先も続いていて、ヒロインちゃんがまだ結婚をしていない今なら、十二分に割り込むチャンスがあるはずだ。
アルフレッド様がその気にさえなれば、逆転以外あり得ない。
その時のためにも、私と離縁する必要がある。
アルフレッド様の幸せのために、絶対に離縁してみせるんだから!!
推しである夫が大好きすぎる元悪役令嬢のカタリナと、妻を愛しているのにまったく伝わっていないアルフレッドのラブコメです。
全4話+番外編が1話となっております。
※苦手な方は、ブラウザバックを推奨しております。
【完結】「政略結婚ですのでお構いなく!」
仙桜可律
恋愛
文官の妹が王子に見初められたことで、派閥間の勢力図が変わった。
「で、政略結婚って言われましてもお父様……」
優秀な兄と妹に挟まれて、何事もほどほどにこなしてきたミランダ。代々優秀な文官を輩出してきたシューゼル伯爵家は良縁に恵まれるそうだ。
適齢期になったら適当に釣り合う方と適当にお付き合いをして適当な時期に結婚したいと思っていた。
それなのに代々武官の家柄で有名なリッキー家と結婚だなんて。
のんびりに見えて豪胆な令嬢と
体力系にしか自信がないワンコ令息
24.4.87 本編完結
以降不定期で番外編予定
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる