【完結】執着系王子のご執心は回避できませんか?

ユユ

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第二王子先生

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学園が始まって最初の金曜日。昼食を終えてから競技場のような所へ行った。
弓術と剣術は隣り合わせらしい。
選択科目の道具は学園のものを使ってもいいし持参してもいい。条件はある。弓術の生徒の場合は弓は持ってきてもいいが矢は学園のもの、剣術の生徒の場合、刃の長さと幅が決まっている。
私はもちろん皮の手袋と特注の弓を持参した。


「注目!
弓術を教えるグリゾフです。
注意事項は人に向けない、人と的の間に侵入したり的の側に行かない、生徒間の私語は禁止、よそ見禁止。試験のときは静粛に。そしてとにかく先生の話を聞いて従いましょう。
さて。今年は特別に高貴な方がお手伝いに来てくださいました」

先生の背後にいた男が顔を上げた。

「ダリウスと申します。グリゾフ先生の助手として皆さんに弓術の指導をします。よろしくお願いします」

彼が第二王子だと分かった生徒たちがキャアキャア騒いでいた。

ダリウス第二王子の事もよく知らない。
ただ笑顔の向こうにヴラシスに対する差別感があるのは感じている。国王が政略結婚として2番目の妃を迎えたのならいざ知らず、惚れて隣国と交渉して娶った貴族の侍女で平民である女との間に生まれた男児を弟王子として認めていない。

私が10歳のときに国王に呼ばれて定期報告をした後に、ダリウス王子が声をかけてきたことがある。

“平民の息子と子爵家の娘か。平民の血は平民に戻してやるのが慈悲だと思わないか?”

“…10歳の女の子にする話かどうか判断がつかない王子を持った国王陛下にご愁傷様ですと言いに戻らねばならないので失礼します”

そう言ってさっきまで国王と話していた部屋に戻ろうとしたら狼狽えた。私の手を掴んで止めようとする王子の方が兵士に止められた。

“キュアノス子爵令嬢は国王陛下より王子御免状を交付された唯一のお方です”

私が部屋に戻って国王に“ご愁傷様です”と本当に言うと、すぐに兵士に連れてこられた王子は狼狽えていた。国王が私の言葉の意味を知るとダリウスに鋭い目を向けた。

“確かに愁傷だな。エリシアちゃんはダリウスの発言についてどう思う?”

“3つございます”

“教えてくれないか”

“一つ目は 国王陛下への糾弾と受け取れるということです。はっきり申しますと、仕事中の女性に惚れ込んだ国王陛下が諦めきれずに隣国と交渉して娶りヴラシス王子を産ませたのですから 全ての責任は国王陛下にございます。アリーシャ妃殿下を娶ったことやヴラシス王子殿下の存在にあれこれ言うことは国王陛下を批判していることになります。

二つ目は 私は国王陛下の命によりヴラシス王子殿下と友人をしております。その私にこのような話をすることは国王陛下のご命令を邪魔する行為になります。しかもダリウス王子殿下は3つも歳下の10歳の子爵家の娘に、廊下でそのようなことを言いました。陰湿で恥ずべき行為だと理解できていないことが問題です。

三つ目は ダリウス王子殿下を間違った方向へ導いた者が最低でも一人はいるということです。これはとても危険なことです”

“どう危険なのかな?”

“誰かの命が危うくなります”

“どんな風に?”

“嫌悪や差別が強くなれば 排除したいという気持ちになります。大怪我をさせるか毒殺でもするのか。
成功すればヴラシス王子殿下が命を落とし、失敗すれば実行犯とその家族が首を落とします。黒幕が判明したときには…国王陛下のお心次第です”

“エリシアちゃんなら黒幕をどう罰する?”

“相手にもよります”

“ダリウスなら?”

“髪を全部剃らせ囚人服を着せ足枷を付けて王宮内の廊下の掃除係をさせます。一生その姿を一目に晒させて本人を罰し周囲への警告にします”

“王妃なら?”

“実家の爵位財産を取り上げます。王妃様は権限の無い庶妃に落とします。実家と敵対していた家門の令嬢を娶って王妃様にします。ダリウス王子殿下は立場の危うい王子となりますね”

“ダリウス。今からおまえに愚かなことを吹き込んだ馬鹿を見つけ出すまで隔離させる。その間に教育を受けるがいい”

半年後の定期報告で国王陛下から顛末を教えてもらった。
ダリウス王子に吹き込んでいたのは王妃の連れてきていた侍女だったことが分かって、王子を洗脳した罪で王宮内で公開処刑をしたらしい。侍女の実家は伯爵から男爵に落とされた。王妃様の実家でも専属侍女だったことと、王妃様が不満を口にしなければ侍女が子供の王子に対してそのような話をしなかっただろうということで、第一王子と第二王子の再教育が終わるまで王妃の予算は3分の1減らすことになった。

…ダリウス王子が私に恨みを持ったかは嫌でも分かることになりそうだなと溜息をついた。



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