【完結】執着系王子のご執心は回避できませんか?

ユユ

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変わりゆく環境

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【 ヴラシスの視点 】

シュッ トン!

弓は 脇の下の的に刺さった。

「ダリウス殿下、こんな感じで攻めていきましょう」

「も、もう止めて」

ラバル嬢はやっと置かれた状況を理解したようだがエリシアが簡単に終わらせる気がないことは分かっていないらしい。

シュッ トン

「ギャアッ!!」

「攻めましたね…素敵です、ダリウス殿下」

矢はラバル嬢の右耳をかすめて的に刺さり、耳からは血が流れ、囚人服に赤い一筋のシミを付けた。

「は、ははっ…ヴラシスの方が上手いかもしれない。ヴラシス、交代だ」

「俺など兄上の足元にも及びませんよ」

「(いいから今すぐ及べ!)」

「では、お言葉に甘えて」

準備をしている間にエリシアが弓を引いた。

シュッ トン!

「ひっ!ううっ…」

エリシアが股間ギリギリの場所に当てるとラバル嬢は泣き出した。

「ではダリウス兄上に代わって俺が」

エリシアはダリウスの顔を見ると、ダリウスは王妃の元へ逃げ肩を揉み出した。王妃は苦笑いをしている。

俺はダリウスが射っていた場所に立ち矢を射った。

シュッ トン!

「ひいっ!!」

一つに編み込んだ髪の毛の束に刺さった。
次はエリシアの番だ。

「もう少し下がりますね」

そう言ってエリシアはどんどん的から離れて行く。

「止めて!離れないで!!こっちに来て!!見えなくなるじゃない!!」

「あら。ご要望ですね?」

そう言って俺より近い位置に立つとポケットから布を出し、目に巻き付けた。

「見えなくしましたよ?」

「そんなこと言ってない!!目隠しなんかしたら私が死んじゃうじゃないの!!」

「それはやってみないとなんとも」

「馬鹿!!」

シュッ トン!

本当に目隠ししたまま躊躇うことなく矢を放った。
矢は左の膝から少し離れた的に刺さった。

「おー!」

父上達が感嘆の声を漏らした。
エリシアは目隠しをずらして的を確認した。

「あれ?右の脇腹辺りの的を狙ったのに」

全員に聞こえるように大声で言うと また目隠しを戻して弓を構えた。

「わ、私がやりました!!申し訳ございません!!」

ラバル嬢の自白も虚しく矢は放たれる。

シュッ トン!

「ひぃっ!!」

今度はラバル嬢の靴先をかすめた。

「う~ん。もうワクワクドキドキしませんね。
…そうだ。走っている馬の上から射れば楽しそうですね」

エリシアが大きな声で独り言を言うと、的を見張っていた兵士が手旗をあげた。

近寄るとラバル嬢は失禁し気を失っていた。
エリシアの元に戻ってそのことを告げると、“水でもぶっかけて起こしてください。ついでに洗浄にもなりますから”とニッコリ笑みを作った。

水をかけて起こすと、状況が分からなかったのかボーッとしていたが、馬に乗ろうとしてなかなか乗れずに苦戦しているエリシアが視界に入ると蒼白になった。

「お、お願いっ!あの子を何とかして!」

「おはようございます、ラバル嬢。ちょっと待っていてくださいね。馬に乗るのは初めてで。弓の腕はいいので、馬に乗れさえすればなんとかなるかもしれません。走らせるのは厳しそうなので少し早めに歩かせて射ることにします。
馬さん、しゃがんで?このままだと日が暮れて明日もやらなくちゃいけなくなってしまうわ。私、体力は無いから、明日は疲れで腕が震えて本当にラバル嬢に当たるかも」

「な、何でもします!お願いです!助けてください!!」

「はぁ…頑張っても乗れなさそうなので、私からの罰は終わりにします」

「あ、ありがとう!ありがとうございます!」

手足のロープを解かせた。
だが、最後の仕上げだ。

兵士に手鏡を渡してラバル嬢の包帯とガーゼを取らせた。

「鼻も治ったし、ラバル邸に戻っていいぞ」

ラバル嬢の鼻を確認してエリシアの元へ戻った。ラバル嬢は解放され喜んでいる。

「やっと、やっと帰れるのね…」

「どうぞ」

兵士がラバル嬢に手鏡を渡した。

「は?……」

ラバル嬢は受け取った手鏡を見て驚愕した。

俺はエリシアの手を取った。

「エリシア、足が震えているじゃないか」

「股関節が死にそう」

馬に跨がれずに苦戦したエリシアを抱き上げた。

「私の鼻が!!私の美貌が!!」

ラバル嬢の高い鷲鼻を折って、ひん曲がったまま治させた。あれを治すにはもう一度同じ箇所をしっかり折るしかないのか?だが同じ箇所を折れるとは限らない。

「エリシア、お疲れ様」

「馬に乗れるように練習しようかな。ゼノン卿を貸してくれる?」

「駄目だ。馬は危ないから禁止だ」

「え~」



その日の夜、王妃から呼び出された。

「なんでしょう」

「お掛けなさい」

「失礼します」

「忠告しておくわ」

「はい」

まだ王位に興味がないと信じてもらえないのだろうかと思ったが、全く違うことを忠告された。

「浮気は絶対にしちゃ駄目よ」

「はい?」

「あの子は敵に回しては駄目。ラバル嬢のように外してはもらえないわよ」

「そ、そうですね」

「剣も習わせては駄目。馬も駄目よ。早く結婚して子を産ませなさい。大人しくなるから。
妊娠中も浮気は駄目。あの子を選ぶなら他の女に手を付けることは諦めなさい。分かったわね?」

「肝に銘じます」

「よろしい。
それと今のうちに指輪や結婚式に身に着ける物を作らせなさい。良い品は時間がかかるものなの」

「はい。ご指導いただきありがとうございます」

「今夜はあの子の笑顔にうなされそうだわ。
あなたも早く寝なさい」

「はい。失礼します」

パタン

廊下に出て自室へ向かった。
まさか王妃とこんな話をする日がくるとはな。
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