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ローランドの後ろ盾
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【 ローランドの視点 】
第一王子として生まれ、王妃である母上に期待されていた。
母上は毎日毎日、国王になりなさいと言い続けていた。
王女を三人産んだ後に 私を産んだときは難産だったらしく、もう子は望めないと言われた。
だから直ぐに第二妃が選ばれた。
彼女は第二王子カインを産んだ。
『ユビス家がついているから大丈夫よ。貴方はいつか国王になるの。絶対に誰にも邪魔させないわ』
カインの母の実家ホルン家はユビス家と同じ侯爵家だったが、ユビス家の方が力があった。
だが、その位置が入れ替わったのは、私が14歳、カインが11歳の時だった。
ユビス侯爵夫人が、ユビス侯爵の愛人と胎の子を殺害したことが公になったことから始まった。
ユビス侯爵は王都の別宅に愛人を囲っていた。
愛人との出会いは、友人夫妻と訪れたティールームだった。ユビス侯爵の落とし物を拾ったのが縁だった。
50歳過ぎの侯爵が16歳の女性に一目惚れをした。彼女は店の給仕だったが、夫人とはタイプの違う可愛い笑顔と仕草に惚れた。
その後、侯爵は一人で訪れた。
素性が分かると母親の元へ行き求婚した。
貴族の愛人にしたくはなかったが、相手は侯爵である上に力も金もある。母親は逆らえなかった。
侯爵は王都内に小さな屋敷を購入し愛人を住まわせた。ニ年ほど侯爵は別宅に頻繁に通い続けて愛を育んだ。
侯爵夫人は、夫に愛人がいるのは勘付いていたが、詮索はしなかった。社交に連れてきたこともない。影の存在ならと放置した。当然避妊もさせているのは分かっていた。最初は本邸から避妊薬を持ち出していたからだ。
暫くして持ち出さなくなったが、避妊薬を直接別宅に商人が納めていると知って安心した。
自分も歳をとり、愛のない夫の相手は面倒だったので、性欲が衰えない夫の専属娼婦として放置した。
だが侯爵は二年経つと避妊を止めた。
そして妊娠が分かり腹が膨らむと、侯爵は夫人に“第二夫人を迎える”と伝えた。
夫人は元公爵令嬢。愛人はティールームの給仕係。
夫人は同じ侯爵夫人と呼ばせたくなかった。
それに、相談もなく避妊を止めたことも許せなかった。
愛人が、ユビス侯爵邸に迎え入れられた日の夜、夫と愛人が同じベッドで寝ているところに忍び込み、膨らんだ愛人の腹にナイフを突き刺した。
そのまま一直線に縦に腹を切り裂いた。
胎の子は侯爵家にとって待望の男児だった。
夫人は女児を三人産んだが男児を孕まなかったから。
侯爵は激怒し、夫人の顔の原型が分からなくなるくらい殴り地下に閉じ込めた。
だが、誰かが通報して公になり、翌日には腹を切り裂かれて死んだ愛人と胎児を抱きしめていた侯爵は捕まった。地下に閉じ込められた夫人は助からなかった。
そしてユビス家の調査が入り、領地の不正が発覚。
ユビス侯爵家は伯爵位に降格し罰金を課せられた。
伯爵位は長女と婚姻した婿が継いだ。
そして死んだ愛人は、実は貴族の庶子だったことが判明した。
さらに、愛人はまだ正式にユビス侯爵と婚姻関係になく、婚約もしていなかったため、他家の令嬢を孕ませて殺したとして、ユビス家は愛人の母と貴族の父親に慰謝料の支払いを命じた。
これらが財政を圧迫。
さらに王妃を輩出したにも関わらずユビス家は周囲から距離を置かれた。
つまり、後ろ盾があるのはカインだけとなった。
それにローランドは知っていた。カインは何の前触れもなく妙案を口にする。
“そりゃ、消毒やマスクをしなきゃ簡単に蔓延するよ”
カインが5歳のときに流感が流行り、対策に追われていたときに呟いたり、洪水の起こりやすい土地について話が出たときには、
“こんなに曲がりくねってたらそうなるよ。緩やかに作り変えれば? ダムで調整すれば?”
と絵を描いて説明した。
それが気に入らなかった母上がカインの母に意地悪をしたためにカインは口を噤んだ。
今や全てカインが優っていて、第一王子を蹴落としてカインが国王になる方が自然に見えた。
だけど、精神を病んでしまった母は療養という名の軟禁をされつつも、さらに強い念を私に寄越す。
“国王になれ” と。
そして、成人し、閨係を迎えたカインから会いたいと連絡があった。
人払いの要請もあったが、なぜか侍女長と侍従長を同席させたいとも書いてあった。
第一王子として生まれ、王妃である母上に期待されていた。
母上は毎日毎日、国王になりなさいと言い続けていた。
王女を三人産んだ後に 私を産んだときは難産だったらしく、もう子は望めないと言われた。
だから直ぐに第二妃が選ばれた。
彼女は第二王子カインを産んだ。
『ユビス家がついているから大丈夫よ。貴方はいつか国王になるの。絶対に誰にも邪魔させないわ』
カインの母の実家ホルン家はユビス家と同じ侯爵家だったが、ユビス家の方が力があった。
だが、その位置が入れ替わったのは、私が14歳、カインが11歳の時だった。
ユビス侯爵夫人が、ユビス侯爵の愛人と胎の子を殺害したことが公になったことから始まった。
ユビス侯爵は王都の別宅に愛人を囲っていた。
愛人との出会いは、友人夫妻と訪れたティールームだった。ユビス侯爵の落とし物を拾ったのが縁だった。
50歳過ぎの侯爵が16歳の女性に一目惚れをした。彼女は店の給仕だったが、夫人とはタイプの違う可愛い笑顔と仕草に惚れた。
その後、侯爵は一人で訪れた。
素性が分かると母親の元へ行き求婚した。
貴族の愛人にしたくはなかったが、相手は侯爵である上に力も金もある。母親は逆らえなかった。
侯爵は王都内に小さな屋敷を購入し愛人を住まわせた。ニ年ほど侯爵は別宅に頻繁に通い続けて愛を育んだ。
侯爵夫人は、夫に愛人がいるのは勘付いていたが、詮索はしなかった。社交に連れてきたこともない。影の存在ならと放置した。当然避妊もさせているのは分かっていた。最初は本邸から避妊薬を持ち出していたからだ。
暫くして持ち出さなくなったが、避妊薬を直接別宅に商人が納めていると知って安心した。
自分も歳をとり、愛のない夫の相手は面倒だったので、性欲が衰えない夫の専属娼婦として放置した。
だが侯爵は二年経つと避妊を止めた。
そして妊娠が分かり腹が膨らむと、侯爵は夫人に“第二夫人を迎える”と伝えた。
夫人は元公爵令嬢。愛人はティールームの給仕係。
夫人は同じ侯爵夫人と呼ばせたくなかった。
それに、相談もなく避妊を止めたことも許せなかった。
愛人が、ユビス侯爵邸に迎え入れられた日の夜、夫と愛人が同じベッドで寝ているところに忍び込み、膨らんだ愛人の腹にナイフを突き刺した。
そのまま一直線に縦に腹を切り裂いた。
胎の子は侯爵家にとって待望の男児だった。
夫人は女児を三人産んだが男児を孕まなかったから。
侯爵は激怒し、夫人の顔の原型が分からなくなるくらい殴り地下に閉じ込めた。
だが、誰かが通報して公になり、翌日には腹を切り裂かれて死んだ愛人と胎児を抱きしめていた侯爵は捕まった。地下に閉じ込められた夫人は助からなかった。
そしてユビス家の調査が入り、領地の不正が発覚。
ユビス侯爵家は伯爵位に降格し罰金を課せられた。
伯爵位は長女と婚姻した婿が継いだ。
そして死んだ愛人は、実は貴族の庶子だったことが判明した。
さらに、愛人はまだ正式にユビス侯爵と婚姻関係になく、婚約もしていなかったため、他家の令嬢を孕ませて殺したとして、ユビス家は愛人の母と貴族の父親に慰謝料の支払いを命じた。
これらが財政を圧迫。
さらに王妃を輩出したにも関わらずユビス家は周囲から距離を置かれた。
つまり、後ろ盾があるのはカインだけとなった。
それにローランドは知っていた。カインは何の前触れもなく妙案を口にする。
“そりゃ、消毒やマスクをしなきゃ簡単に蔓延するよ”
カインが5歳のときに流感が流行り、対策に追われていたときに呟いたり、洪水の起こりやすい土地について話が出たときには、
“こんなに曲がりくねってたらそうなるよ。緩やかに作り変えれば? ダムで調整すれば?”
と絵を描いて説明した。
それが気に入らなかった母上がカインの母に意地悪をしたためにカインは口を噤んだ。
今や全てカインが優っていて、第一王子を蹴落としてカインが国王になる方が自然に見えた。
だけど、精神を病んでしまった母は療養という名の軟禁をされつつも、さらに強い念を私に寄越す。
“国王になれ” と。
そして、成人し、閨係を迎えたカインから会いたいと連絡があった。
人払いの要請もあったが、なぜか侍女長と侍従長を同席させたいとも書いてあった。
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