17 / 32
妹を守れなかった男
しおりを挟む
【 兄マークの視点 】
何かおかしいと思っていた。
だけど多忙過ぎて目を瞑ってしまった。
跡継ぎで男の私は、妹とは離されて育てられた。親戚の集まりも後継者は父達と一緒で妹とは別だった。
可愛くなかったわけじゃない。余裕が無さ過ぎた。
つまり私の未熟さがアリサを守れなかった一番の原因だ。
16歳で突然閨係になれと屋敷を追い出され、どれほど辛かったことか。
もう初夜は済んだと聞いた。
手荒にされなかっただろうか。
使用人に聞き取り調査をした結果、父の愛人と隠し子が来てから、アリサは父や私の居ないところで虐めていたという。
母の悪口を言ったり、アリサを貶したり、食事を粗末にしたり。
毒を盛るようになってからは加速した。
時には食事さえ与えなかったと言われ、帳簿の確認をしたら、アリサの予算の8割が二人に使われていた。
アリサの部屋に行くと空き部屋になっていた。
メイドに聞くと、北の物置がアリサの部屋になっていた。
ドアを開けると、粗末なベッドに机と椅子。
物入れを開けると、両側のフックに紐を通してクローゼット代わりにして服を吊るしていた。
許容範囲のドレスは二着だけ。
後は粗末なワンピースだった。
靴も二足のみ。
香水もなければ美容品も無い。
引き出しの奥から日記らしきものが出てきた。
時々記していたようで、最後はメリッサの妊娠と婚約について触れている。
“ヴィンセント様に、父親同士の約束事は、お父様の死によって無効となったから解消すると言われた。
好きではなかったから承諾した。
だけど二ヶ月後の今日、メリッサがヴィンセント様の子を孕んでいて婚約したと言った。
つまり、円満解消ではなく、ヴィンセント様の不貞を隠した解消だった。
騙された。
よりにもよって、未成年の異母妹と関係を持って孕ますなんて。私はどこまで踏みつけられるのだろう。
だけどもう、涙は出尽くしたのか出てこない。
味方が誰もいない。誰も愛してくれない。
早くお母様のところへ行きたい”
「っ!……アリサ……ごめんっ」
その夜は北の物置で、アリサの食べていた固いパンと具なしの薄いスープを食べ、アリサの使っていた石鹸を使い風呂に入り、アリサのベッドで寝た。
死にたくなった。
愛人が来てから徐々にこの生活になって、父が伏せたらこの部屋に移された。
長い間、一人で耐えていたなんて。
何故、愛人の言葉を聞いただけで済ませてしまったのだろう。
“あの子は偏食で、無理矢理食べさせようとすると怒るのよ”
“あの子が婚約は嫌だって言ったのよ”
“あの子が王子様に憧れて、閨係から妾に昇進するんだって聞かないのよ”
あの時、アリサはどんな顔をしていた?
『妾になりたいって本当か?』
“…はい”
無だ。アリサの目は何も映していなかった。
諦めだ。私に対しての諦めだ。
こいつに言っても仕方ない。期待するだけ無駄だ。
アリサは誰も助けてくれないと悟って、覚えのないことに同意して身体を差し出したんだ。
屋敷内にある妹の部屋を何年も訪ねることがなかった。数分時間を割いて訪ねたら判明していたはずだ。
当主として、兄として……失格だ。
屋敷内の使用人をほぼ一掃した。
紹介状は書かなかった。
虐待の加担者として処罰されないだけマシだろうと言って追い出した。
そこに手紙を出していた母の実家の伯爵がやってきた。
彼は母の弟だ。
「久しぶりだね」
「叔父様。ご無沙汰しております」
「報告は読んだよ」
「愚かな私はアリサを守れませんでした。
苦しんでいるのにも気付きませんでした」
「確かにそうだな」
「はい」
「使用人はすぐに集まる。先ずは家の中を任せられる家令とメイド長、メイド3名を連れてきた。
他にもこのリストの者がやってくる。
それは家令のジョルジュに任せよう。
城から登城命令が出る前に、スローウィット家に行くぞ。明日面談を取り付けた」
「ご迷惑をお掛けします」
「子爵は気の毒だったな」
「愛人なと作らなければ毒殺などされなかったのです」
「まあな」
何かおかしいと思っていた。
だけど多忙過ぎて目を瞑ってしまった。
跡継ぎで男の私は、妹とは離されて育てられた。親戚の集まりも後継者は父達と一緒で妹とは別だった。
可愛くなかったわけじゃない。余裕が無さ過ぎた。
つまり私の未熟さがアリサを守れなかった一番の原因だ。
16歳で突然閨係になれと屋敷を追い出され、どれほど辛かったことか。
もう初夜は済んだと聞いた。
手荒にされなかっただろうか。
使用人に聞き取り調査をした結果、父の愛人と隠し子が来てから、アリサは父や私の居ないところで虐めていたという。
母の悪口を言ったり、アリサを貶したり、食事を粗末にしたり。
毒を盛るようになってからは加速した。
時には食事さえ与えなかったと言われ、帳簿の確認をしたら、アリサの予算の8割が二人に使われていた。
アリサの部屋に行くと空き部屋になっていた。
メイドに聞くと、北の物置がアリサの部屋になっていた。
ドアを開けると、粗末なベッドに机と椅子。
物入れを開けると、両側のフックに紐を通してクローゼット代わりにして服を吊るしていた。
許容範囲のドレスは二着だけ。
後は粗末なワンピースだった。
靴も二足のみ。
香水もなければ美容品も無い。
引き出しの奥から日記らしきものが出てきた。
時々記していたようで、最後はメリッサの妊娠と婚約について触れている。
“ヴィンセント様に、父親同士の約束事は、お父様の死によって無効となったから解消すると言われた。
好きではなかったから承諾した。
だけど二ヶ月後の今日、メリッサがヴィンセント様の子を孕んでいて婚約したと言った。
つまり、円満解消ではなく、ヴィンセント様の不貞を隠した解消だった。
騙された。
よりにもよって、未成年の異母妹と関係を持って孕ますなんて。私はどこまで踏みつけられるのだろう。
だけどもう、涙は出尽くしたのか出てこない。
味方が誰もいない。誰も愛してくれない。
早くお母様のところへ行きたい”
「っ!……アリサ……ごめんっ」
その夜は北の物置で、アリサの食べていた固いパンと具なしの薄いスープを食べ、アリサの使っていた石鹸を使い風呂に入り、アリサのベッドで寝た。
死にたくなった。
愛人が来てから徐々にこの生活になって、父が伏せたらこの部屋に移された。
長い間、一人で耐えていたなんて。
何故、愛人の言葉を聞いただけで済ませてしまったのだろう。
“あの子は偏食で、無理矢理食べさせようとすると怒るのよ”
“あの子が婚約は嫌だって言ったのよ”
“あの子が王子様に憧れて、閨係から妾に昇進するんだって聞かないのよ”
あの時、アリサはどんな顔をしていた?
『妾になりたいって本当か?』
“…はい”
無だ。アリサの目は何も映していなかった。
諦めだ。私に対しての諦めだ。
こいつに言っても仕方ない。期待するだけ無駄だ。
アリサは誰も助けてくれないと悟って、覚えのないことに同意して身体を差し出したんだ。
屋敷内にある妹の部屋を何年も訪ねることがなかった。数分時間を割いて訪ねたら判明していたはずだ。
当主として、兄として……失格だ。
屋敷内の使用人をほぼ一掃した。
紹介状は書かなかった。
虐待の加担者として処罰されないだけマシだろうと言って追い出した。
そこに手紙を出していた母の実家の伯爵がやってきた。
彼は母の弟だ。
「久しぶりだね」
「叔父様。ご無沙汰しております」
「報告は読んだよ」
「愚かな私はアリサを守れませんでした。
苦しんでいるのにも気付きませんでした」
「確かにそうだな」
「はい」
「使用人はすぐに集まる。先ずは家の中を任せられる家令とメイド長、メイド3名を連れてきた。
他にもこのリストの者がやってくる。
それは家令のジョルジュに任せよう。
城から登城命令が出る前に、スローウィット家に行くぞ。明日面談を取り付けた」
「ご迷惑をお掛けします」
「子爵は気の毒だったな」
「愛人なと作らなければ毒殺などされなかったのです」
「まあな」
427
あなたにおすすめの小説
結婚式に結婚相手の不貞が発覚した花嫁は、義父になるはずだった公爵当主と結ばれる
狭山雪菜
恋愛
アリス・マーフィーは、社交界デビューの時にベネット公爵家から結婚の打診を受けた。
しかし、結婚相手は女にだらしないと有名な次期当主で………
こちらの作品は、「小説家になろう」にも掲載してます。
側妃の条件は「子を産んだら離縁」でしたが、陛下は私を離してくれません!
花瀬ゆらぎ
恋愛
「おまえには、国王陛下の側妃になってもらう」
婚約者と親友に裏切られ、傷心の伯爵令嬢イリア。
追い打ちをかけるように父から命じられたのは、若き国王フェイランの側妃になることだった。
しかし、王宮で待っていたのは、「世継ぎを産んだら離縁」という非情な条件。
夫となったフェイランは冷たく、侍女からは蔑まれ、王妃からは「用が済んだら去れ」と突き放される。
けれど、イリアは知ってしまう。 彼が兄の死と誤解に苦しみ、誰よりも孤独の中にいることを──。
「私は、陛下の幸せを願っております。だから……離縁してください」
フェイランを想い、身を引こうとしたイリア。
しかし、無関心だったはずの陛下が、イリアを強く抱きしめて……!?
「離縁する気か? 許さない。私の心を乱しておいて、逃げられると思うな」
凍てついた王の心を溶かしたのは、売られた側妃の純真な愛。
孤独な陛下に執着され、正妃へと昇り詰める逆転ラブロマンス!
※ 以下のタイトルにて、ベリーズカフェでも公開中。
【側妃の条件は「子を産んだら離縁」でしたが、陛下は私を離してくれません】
私の意地悪な旦那様
柴咲もも
恋愛
わたくし、ヴィルジニア・ヴァレンティーノはこの冬結婚したばかり。旦那様はとても紳士で、初夜には優しく愛してくれました。けれど、プロポーズのときのあの言葉がどうにも気になって仕方がないのです。
――《嗜虐趣味》って、なんですの?
※お嬢様な新妻が性的嗜好に問題ありのイケメン夫に新年早々色々されちゃうお話
※ムーンライトノベルズからの転載です
【完結】私は義兄に嫌われている
春野オカリナ
恋愛
私が5才の時に彼はやって来た。
十歳の義兄、アーネストはクラウディア公爵家の跡継ぎになるべく引き取られた子供。
黒曜石の髪にルビーの瞳の強力な魔力持ちの麗しい男の子。
でも、両親の前では猫を被っていて私の事は「出来損ないの公爵令嬢」と馬鹿にする。
意地悪ばかりする義兄に私は嫌われている。
離縁希望の側室と王の寵愛
イセヤ レキ
恋愛
辺境伯の娘であるサマリナは、一度も会った事のない国王から求婚され、側室に召し上げられた。
国民は、正室のいない国王は側室を愛しているのだとシンデレラストーリーを噂するが、実際の扱われ方は酷いものである。
いつか離縁してくれるに違いない、と願いながらサマリナは暇な後宮生活を、唯一相手になってくれる守護騎士の幼なじみと過ごすのだが──?
※ストーリー構成上、ヒーロー以外との絡みあります。
シリアス/ ほのぼの /幼なじみ /ヒロインが男前/ 一途/ 騎士/ 王/ ハッピーエンド/ ヒーロー以外との絡み
「離婚しよう」と軽く言われ了承した。わたくしはいいけど、アナタ、どうなると思っていたの?
あとさん♪
恋愛
突然、王都からお戻りになったダンナ様が、午後のお茶を楽しんでいたわたくしの目の前に座って、こう申しましたのよ、『離婚しよう』と。
閣下。こういう理由でわたくしの結婚生活は終わりましたの。
そう、ぶちまけた。
もしかしたら別れた男のあれこれを話すなんて、サイテーな女の所業かもしれない。
でも、もう良妻になる気は無い。どうでもいいとばかりに投げやりになっていた。
そんなヤサぐれモードだったわたくしの話をじっと聞いて下さった侯爵閣下。
わたくし、あなたの後添いになってもいいのでしょうか?
※前・中・後編。番外編は緩やかなR18(4話)。(本編より長い番外編って……orz)
※なんちゃって異世界。
※「恋愛」と「ざまぁ」の相性が、実は悪いという話をきいて挑戦してみた。ざまぁは後編に。
※この話は小説家になろうにも掲載しております。
【4話完結】 君を愛することはないと、こっちから言ってみた
紬あおい
恋愛
皇女にべったりな護衛騎士の夫。
流行りの「君を愛することはない」と先に言ってやった。
ザマアミロ!はあ、スッキリした。
と思っていたら、夫が溺愛されたがってる…何で!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる