【完結】閨係の掟

ユユ

文字の大きさ
22 / 32

兄弟の絆 2

しおりを挟む
【 ローランドの視点 】


アリサ嬢の義母や異母妹の裁判を終えて、別室に集めたのは、陛下、カイン、ブルイヤール伯爵、クロネック子爵、侍女長、侍従長、そしてシルビア様だった。

そして調査官と、アリサ嬢だ。

先ず、先程の裁判の内容を伝えたら、“毒殺だったのですね” と言葉を漏らした後、礼を述べた。

その他の反応は無い。


官「虚偽申請による閨事の強要と分かったため、アリサ嬢は今すぐ退職することが可能です。
今回の件で、実家のクロネック家より慰謝料として財産分与をなさるそうです。
どうなさいますか」

「私は…許されるなら、閨係を契約期間中は全うすることを希望します」

「本当にいいのですね?」

「はい」

「もう一つ、ブルイヤール伯爵家が養女にと希望なさっています」

「母の?」

「はい。伯爵は亡くなられた母君とは姉弟なので叔父にあたります」

「そんな資格はありません」

「それは決めたブルイヤール伯爵に失礼ですよ」

「失礼しました。よく分かりません」

「この後ブルイヤール伯爵とクロネック子爵との交流の場を設けますのでよく考えるように」

「はい」



一先ずカインの手元に残ってくれて良かった。
カインも緊張が解けたようだ。

ブルイヤール伯爵とは裁判後に面会をした。

「養女にした後、カイン殿下が娶りたいと?」

「そうです」

「どうするかはアリサ次第ですね。それに嫁に出す条件はカイン殿下が国王にならないことです」

「何故でしょう」

「アリサはずっと苦しんで来ました。もう楽しく生きてもらいたい。本当は王子妃にさえしたくない。
それが叶わぬなら嫁には出しません」

ブルイヤール伯爵は必ずそうするだろうことが感じ取れた。

アリサ嬢が王妃となればブルイヤール家にも有益となるだろうに、姪の幸せを優勢させる男なのだな。

「アリサ嬢は伯爵がいてくだされば幸せに導かれるでしょうね」

「私は姉が大好きで、アリサはよく似ています」

「そうでしたか。

そろそろアリサ嬢の所へご案内しましょう」



伯爵と子爵をアリサ嬢と合わせている間に、カインにブルイヤール伯爵の意向を伝えるとホッとした顔を見せた。

「後はアリサ嬢にイエスと言わせるだけだ」

「それが手強いんですよ。愛を囁いても本気にしていないようで」

「体を愛してると思っているのかもな」

「抱かないという選択肢は無いんです。掟もありますから。抱かない日が続くと解雇なのかと言い出しますし。
座学でもしっかり教え込まれていて奉仕をしないと不安みたいですね」

「真面目で誠実な性格なのだろう。
普通なら王子が囁くまま受け止めて、楽をして優遇を受け入れてその先も望むだろうに」

「俺は最初からアリサを閨係などと思ったことはないのに」




一週間後

執行官が報告に来た。

「義母ミネルヴァは二日前に死にました。
鳥に目玉を抉られて、そこから傷が悪化したようです」

「早かったな。一週間以上痛めつけられると思ったのに」

「庭師や清掃人が使う野外の厠に繋いだ異母妹メリッサは、好評で、本人自体が厠となっております。
噂を聞きつけて、兵士が使いたがっております」

「兵士は駄目だ。病気がうつれば戦力を失う。

しかし、厠掃除のために厠に住む汚物だぞ!? よくその気になれるなぁ」

「まあ、15歳で美人の類で豊満ですから」

「腹も膨れてきているのだろう?」

「あれは擬似妊娠だそうです」

「擬似妊娠?」

「孕みたい願望の強い者や、孕む不安の強い者が引き起こす現象で、腹が膨らみ悪阻などの症状を引き起こします。胎に子はおりません。

そもそも、胎に子がいる段階で刑の執行はしません。産ませてから執行します」

「孕んでもいないのに悪阻に苦しむのか」

「情報を元に構築しますから、孕んだ後に何が起こるのか知らない者は腹が膨れるだけと聞いております。稀なケースですので検証はできません。偶然かもしれません」

「面白いな。出産時期まで生かしたくなった。

で、肝心の清掃はやっているのか?」

「ええ。自分の住まいですから。汚物にまみれて食事は嫌でしょう」

「しっかり食わせてやってくれ。廃棄するような残り物も与えて構わないぞ」

「かしこまりました」

「アリサ嬢には知らせるな。喜ぶかもしれないが、気に病むかもしれないからな」






しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

愛されないと吹っ切れたら騎士の旦那様が豹変しました

蜂蜜あやね
恋愛
隣国オデッセアから嫁いできたマリーは次期公爵レオンの妻となる。初夜は真っ暗闇の中で。 そしてその初夜以降レオンはマリーを1年半もの長い間抱くこともしなかった。 どんなに求めても無視され続ける日々についにマリーの糸はプツリと切れる。 離縁するならレオンの方から、私の方からは離縁は絶対にしない。負けたくない! 夫を諦めて吹っ切れた妻と妻のもう一つの姿に惹かれていく夫の遠回り恋愛(結婚)ストーリー ※本作には、性的行為やそれに準ずる描写、ならびに一部に性加害的・非合意的と受け取れる表現が含まれます。苦手な方はご注意ください。 ※ムーンライトノベルズでも投稿している同一作品です。

【R18】深層のご令嬢は、婚約破棄して愛しのお兄様に花弁を散らされる

奏音 美都
恋愛
バトワール財閥の令嬢であるクリスティーナは血の繋がらない兄、ウィンストンを密かに慕っていた。だが、貴族院議員であり、ノルウェールズ侯爵家の三男であるコンラッドとの婚姻話が持ち上がり、バトワール財閥、ひいては会社の経営に携わる兄のために、お見合いを受ける覚悟をする。 だが、今目の前では兄のウィンストンに迫られていた。 「ノルウェールズ侯爵の御曹司とのお見合いが決まったって聞いたんだが、本当なのか?」」  どう尋ねる兄の真意は……

真面目な王子様と私の話

谷絵 ちぐり
恋愛
 婚約者として王子と顔合わせをした時に自分が小説の世界に転生したと気づいたエレーナ。  小説の中での自分の役どころは、婚約解消されてしまう台詞がたった一言の令嬢だった。  真面目で堅物と評される王子に小説通り婚約解消されることを信じて可もなく不可もなくな関係をエレーナは築こうとするが…。 ※Rシーンはあっさりです。 ※別サイトにも掲載しています。

私の意地悪な旦那様

柴咲もも
恋愛
わたくし、ヴィルジニア・ヴァレンティーノはこの冬結婚したばかり。旦那様はとても紳士で、初夜には優しく愛してくれました。けれど、プロポーズのときのあの言葉がどうにも気になって仕方がないのです。 ――《嗜虐趣味》って、なんですの? ※お嬢様な新妻が性的嗜好に問題ありのイケメン夫に新年早々色々されちゃうお話 ※ムーンライトノベルズからの転載です

【完結】愛する夫の務めとは

Ringo
恋愛
アンダーソン侯爵家のひとり娘レイチェルと結婚し婿入りした第二王子セドリック。 政略結婚ながら確かな愛情を育んだふたりは仲睦まじく過ごし、跡継ぎも生まれて順風満帆。 しかし突然王家から呼び出しを受けたセドリックは“伝統”の遂行を命じられ、断れば妻子の命はないと脅され受け入れることに。 その後…… 城に滞在するセドリックは妻ではない女性を何度も抱いて子種を注いでいた。 ※完結予約済み ※全6話+おまけ2話 ※ご都合主義の創作ファンタジー ※ヒーローがヒロイン以外と致す描写がございます ※ヒーローは変態です ※セカンドヒーロー、途中まで空気です

【完結】私は義兄に嫌われている

春野オカリナ
恋愛
 私が5才の時に彼はやって来た。  十歳の義兄、アーネストはクラウディア公爵家の跡継ぎになるべく引き取られた子供。  黒曜石の髪にルビーの瞳の強力な魔力持ちの麗しい男の子。  でも、両親の前では猫を被っていて私の事は「出来損ないの公爵令嬢」と馬鹿にする。  意地悪ばかりする義兄に私は嫌われている。

隣国に嫁いだちょいぽちゃ王女は帰りたい

恋愛
パンデルム帝国の皇帝の末娘のシンシアはユリカ王国の王太子に政略結婚で嫁ぐことになった。食べることが大好きなシンシアはちょいぽちゃ王女。 しかし王太子であるアルベートにはライラールという恋人がいた。 アルベートは彼女に夢中。 父である皇帝陛下には2年間で嫌になったら帰ってもいいと言われていたので、2年間耐えることにした。 内容はありがちで設定もゆるゆるです。 ラブラブは後半。 よく悪役として出てくる隣国の王女を主役にしてみました。

届かぬ温もり

HARUKA
恋愛
夫には忘れられない人がいた。それを知りながら、私は彼のそばにいたかった。愛することで自分を捨て、夫の隣にいることを選んだ私。だけど、その恋に答えはなかった。すべてを失いかけた私が選んだのは、彼から離れ、自分自身の人生を取り戻す道だった····· ◆◇◆◇◆◇◆ 読んでくださり感謝いたします。 すべてフィクションです。不快に思われた方は読むのを止めて下さい。 ゆっくり更新していきます。 誤字脱字も見つけ次第直していきます。 よろしくお願いします。

処理中です...