【完結】閨係の掟

ユユ

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焦り

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【 カインの視点 】


この国には王立学園と私立学園がある。

王立学園は奨学金がある。
受け取れる者は上位者のみ。
ただし、受け取れば国が指定する職につかなければならない。
期間は10年。無事に勤め上げればいいが、拒否をしたり、解雇になると受け取った奨学金を返さねばならない。
王族から平民まで受け入れる。

俺は私立学園にした。
こっちは、平民はいない。そして身分で校舎が分かれる。

侯爵家以上、伯爵家以下。
学費が高く、貧しい家門の子は通えない。

何故私立にしたか。
死ぬ前の世界では、この手の小説は溢れていて、平民や下級貴族が引っ掻き回すのだ。

無駄なトラブルに巻き込まれたくない。
ローランド兄上は王立で大変だったらしい。
だが王族は王立に行くものだと思っていたようだ。

俺は法律で規制されていなければ私立に行くと譲らなかった。

高位貴族の校舎は、金もあるから躾もされていて、王子にベタベタする者などいない。

最近、よく話すようになったローランド兄上に学園生活を話すと羨ましがられた。



ある日の食堂で。

「殿下が羨ましいです。専属の女がいて」

「僕も欲しいです。何しても逆らわす言うことを聞くのでしょう?」

「好きなときに好きなだけ…羨ましいですよ」

「女も殿下に抱かれて金を貰えるのだから喜んでいるでしょう」

「お前達。閨係を侮辱するな。
好きで応募する者もいれば、不本意な経緯でやってくる者もいる。
不本意な経緯でやってきた令嬢は、辞めたくても帰る場所がない。

閨係になってしまえば縁談は来ない。

担当する王子によって扱いは違うから、緊張を強いられる。
相手は不敬罪を口にできる王子だ。歴代の閨係の中には斬り殺されたり、重傷を負ったり、心を病む者もいるんだ。

お前達は耐えられるか?
親から王女の言いなりになれと言われ、城に着くと皆の前で全裸にされて王女に指をさされ、選ばれる。

躾をされた後に徹底的に王女に従う。
屈辱的なことでも、痛いことでも。

ドミニク。タマを踏みつけられても楽しいか?

ギル。手を喉に突っ込まれても笑顔でいられるか?

ルイ。棒を肛門に突っ込まれて裂けても嬉しいか?

モーリス。友人にも家族にも会えず、まさに籠の鳥で自由などない。町に出るどころか城内を自由に歩けもしない。
側の庭を少し歩き、後は本を読むだけだ。その生活を三年間送るか?」

「すみません殿下」

「失礼な事を言いました」

「申し訳ありません」

「二度と口にしません」

「身分が低かろうが、使用人だろうが、人としての敬意は待て。女を好き勝手出来るオモチャのように考えるな。

男など、女という生き物がいなければ生き残る確率は下がる。

母乳には赤ちゃんの免疫を上げる役割もあるし、柔らかな体で包んでもらえるから落ち着くんだ。

しかも母性というもので過酷な子育てを乗り越えてくれる。

男は二、三時間おきに叩き起こされて仕事を命じられる生活を何日続けられるんだ?
母親はそれをやってのけるんだよ。一年か、二年か。

誤飲による窒素や中毒、転倒による怪我、ちょっとした水により溺れたりもする。
特に会話が成り立たない幼子は危険とか分からない。
目が離せないんだ。

無数の危険の中で、俺たちは、母親や乳母達に守ってもらい生きながらえたんだ。
感謝したくなるだろう?

人を貶めたり危害を加えるような人間は男でも女でも敬意など不要だが、単に職で差別するな」


言い過ぎたか?

だが、翌日から食堂の職員が非常に愛想がいい。

こっそり閨係のお嬢さんにとお菓子や小物をくれるようになった。

これには最近様子がおかしいと報告の上がっているアリサも喜んだ。




アリサの教師が報告をする。

「意欲が削がれている気がします」

アリサの専属メイドが言う。

「明らかに何かを抱えておられます。
食事も残してしまうので、量を減らして欲しいと仰いました。ボーッとしていることが増えたと思えば、…涙を流されたのではないかと思うこともございます」

ローランド兄上が言う。

「アリサ嬢は悩みを抱えているようで、ブルイヤール伯爵が心配している。
いつでも辞めて自分のところへ来いと言っていた。
気をつけた方がいい」


だけど、心当たりが無い。
聞いてもアリサは特に無いと言うし。

閨係の場合、退職は本人の希望だけで直ぐに叶う。
その日までの給金を渡して終わりだ。
そこに王子の希望など反映させてはもらえない。

学園なんかに通っている場合では無いのに。











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