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宝石の色
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【 ヴィオレットの視点 】
ランフォール侯爵令嬢として生まれた私は、自由などない。
ランフォール家は7年ほど前まで栄えた家門だった。王妃殿下を輩出したユビス侯爵家の派閥にいたからだ。
ある日、ユビス家は地に堕ちた。
王妃殿下の実母である侯爵夫人が貴族の庶子と、侯爵の胎児を殺してしまった。
降格はしたものの、王妃殿下の生家として、辛うじて伯爵家として残った。
財力を失い、収入を激減させ、求心力も失った。
ランフォール家にも影響があった。
そんな中で第二王子の婚約者探しが始まった。
カイン王子殿下が次期国王になる可能性が出てきて、一気に令嬢達は騒ぎ出した。
婚約を解消する家門もあった。
だけど選考は王妃殿下が決めた。
父と母と私が呼ばれて内定したと言われた。
父と母は大喜びだったが、王妃殿下は王妃を狙うなと釘を刺した。
ローランド王子殿下からは、解消することも有り得ることも念を押された。
父と母は不満気だったが、最終的に私が決めることになった。
“従います”
密かにカイン王子殿下に憧れていた。
殿下は茶会で身分や見た目で差別することはない。
私の外見は平凡だ。何故か父と母の悪いところ取りをした子と陰で囁かれてきた。
錆色の髪にグレーの瞳。ソバカスは顔だけではない。
小さな頃は “感染する” と揶揄われたりもした。
シミ一つない白い肌を好むこの世では普通の反応ではあったがコンプレックになった。
だけどカイン王子殿下は、“見分けのつかない他人と同じ色よりもかっこいいぞ” と言ってくださった。
それ以来、お慕いする気持ちがあった。
だけど、いくら侯爵家でもこの容姿では選ばれないだろうと思っていた。ユビス家につられて衰えてもいたから。
せっかくの機会を逃したくなかった。
王立学園に行かないと聞いて、両親に頭を下げて私立学園へ行かせてもらった。
今のランフォール家には三年も高額な学費を払うのはかなり負担で、私の予算は6割削られた。
クラスは違ったけど、食堂で近くに座り殿下の声を聞いていた。
17歳になって閨係が選ばれたのは知っている。
その辺りから殿下が変わってきた。
放課後に声をかけられるのを嫌がるようになり、さっさと帰ってしまう。
王城で二週間に一度交流をしながら昼食をとっていたのに、一カ月に一度、ランフォール家で行うことになった。
王子妃教育は元々卒業後と言われているため登城理由が無い。だから偶然とか、せっかく来たのだからとお茶をご一緒などという機会が無い。
学園ではほとんど話さないし。
「殿下、好みが変わりましたか?」
カイン王子殿下の友人がそんな話題を切り出した。
「ソレ、贈り物ですよね。良かったですね」
振り向いて殿下を見ると見たこともない笑顔で“まあな” と答えていた。
ピアスにはカイン様の色ではない石が付いていた。
別の日には違うデザインのイヤーカーフ。
また別の日には指輪。
どれも同じ色の石がはめられていた。
ある日、茶会で事件の噂を耳にした。
「酷い話しですわね。愛人が後妻におさまった挙句、正妻の娘を冷遇していたとか。
不義の子は美人でスタイルが抜群で、正妻の娘である異母姉の婚約者を寝とったとか」
「後妻と不義の子は、子爵を毒殺して、異母姉を虐待したのよね。可哀想に」
「しかも勝手に応募されたらしいじゃない」
「だから食堂で叱責なさったのね」
「ヴィオレット様もそう思いませんか」
「あの、よく知らなくて」
「クロネック子爵家ですわ。正妻の娘はアリサ様といってカイン王子殿下の閨係ではありませんか。
まあ、後妻に勝手に応募されて仕方なくなったらしいですけど」
鼓動が煩い…
「彼女にお会いした方はいらっしゃいますか」
「最近、王城でお見かけしましたわ。
多分、兄君のクロネック子爵の面会のようでした。
使用人を連れてお見送りをなさっていて。
お召しのドレスも宝飾品も素敵でしたわ」
「令嬢の瞳の色はご存知ですか」
「オレンジと黄色の間の色で、透き通った美しいシトリンのような瞳に、栗色の髪。肌は白くて可愛らしい方でしたわ。
後妻や不義の子がいなければ、素敵な縁談が待っていたでしょうに」
ドクン…ドクン…
「まあ、ヴィオレット様。顔色が良くありませんわ」
「ヴィオレット様。ご令嬢は子爵家で、お務めも期間限定です。もしお気に召したとしても妾。
事情も事情ですし、気にすることはありませんわ」
「そうですわ。掟や監視を置かれて管理された関係です。他のご令嬢と恋仲になったり、病気をもらってきたり、孕ませたりすることがありませんもの。割り切って、心を広く持ち、感謝の気持ちを持つくらいがよろしいですわ」
「そうですわよね。
先日、浮気されて婚約破棄された伯爵家のご令嬢の哀れなこと」
「脚に縋り付いて泣いておりましたからね」
間違いない。
カイン王子殿下は閨係に心も体も囚われたのだわ。
帰りの馬車の中で悔しくて涙が出てきた。
あんな事を言って私の気持ちを揺らしておいて、結局は白い肌が美しく、宝石のような瞳をした可愛い容姿の女性を選ぶんじゃない!!
悔しい!憎い! 子爵家の娼婦のクセに!!
ランフォール侯爵令嬢として生まれた私は、自由などない。
ランフォール家は7年ほど前まで栄えた家門だった。王妃殿下を輩出したユビス侯爵家の派閥にいたからだ。
ある日、ユビス家は地に堕ちた。
王妃殿下の実母である侯爵夫人が貴族の庶子と、侯爵の胎児を殺してしまった。
降格はしたものの、王妃殿下の生家として、辛うじて伯爵家として残った。
財力を失い、収入を激減させ、求心力も失った。
ランフォール家にも影響があった。
そんな中で第二王子の婚約者探しが始まった。
カイン王子殿下が次期国王になる可能性が出てきて、一気に令嬢達は騒ぎ出した。
婚約を解消する家門もあった。
だけど選考は王妃殿下が決めた。
父と母と私が呼ばれて内定したと言われた。
父と母は大喜びだったが、王妃殿下は王妃を狙うなと釘を刺した。
ローランド王子殿下からは、解消することも有り得ることも念を押された。
父と母は不満気だったが、最終的に私が決めることになった。
“従います”
密かにカイン王子殿下に憧れていた。
殿下は茶会で身分や見た目で差別することはない。
私の外見は平凡だ。何故か父と母の悪いところ取りをした子と陰で囁かれてきた。
錆色の髪にグレーの瞳。ソバカスは顔だけではない。
小さな頃は “感染する” と揶揄われたりもした。
シミ一つない白い肌を好むこの世では普通の反応ではあったがコンプレックになった。
だけどカイン王子殿下は、“見分けのつかない他人と同じ色よりもかっこいいぞ” と言ってくださった。
それ以来、お慕いする気持ちがあった。
だけど、いくら侯爵家でもこの容姿では選ばれないだろうと思っていた。ユビス家につられて衰えてもいたから。
せっかくの機会を逃したくなかった。
王立学園に行かないと聞いて、両親に頭を下げて私立学園へ行かせてもらった。
今のランフォール家には三年も高額な学費を払うのはかなり負担で、私の予算は6割削られた。
クラスは違ったけど、食堂で近くに座り殿下の声を聞いていた。
17歳になって閨係が選ばれたのは知っている。
その辺りから殿下が変わってきた。
放課後に声をかけられるのを嫌がるようになり、さっさと帰ってしまう。
王城で二週間に一度交流をしながら昼食をとっていたのに、一カ月に一度、ランフォール家で行うことになった。
王子妃教育は元々卒業後と言われているため登城理由が無い。だから偶然とか、せっかく来たのだからとお茶をご一緒などという機会が無い。
学園ではほとんど話さないし。
「殿下、好みが変わりましたか?」
カイン王子殿下の友人がそんな話題を切り出した。
「ソレ、贈り物ですよね。良かったですね」
振り向いて殿下を見ると見たこともない笑顔で“まあな” と答えていた。
ピアスにはカイン様の色ではない石が付いていた。
別の日には違うデザインのイヤーカーフ。
また別の日には指輪。
どれも同じ色の石がはめられていた。
ある日、茶会で事件の噂を耳にした。
「酷い話しですわね。愛人が後妻におさまった挙句、正妻の娘を冷遇していたとか。
不義の子は美人でスタイルが抜群で、正妻の娘である異母姉の婚約者を寝とったとか」
「後妻と不義の子は、子爵を毒殺して、異母姉を虐待したのよね。可哀想に」
「しかも勝手に応募されたらしいじゃない」
「だから食堂で叱責なさったのね」
「ヴィオレット様もそう思いませんか」
「あの、よく知らなくて」
「クロネック子爵家ですわ。正妻の娘はアリサ様といってカイン王子殿下の閨係ではありませんか。
まあ、後妻に勝手に応募されて仕方なくなったらしいですけど」
鼓動が煩い…
「彼女にお会いした方はいらっしゃいますか」
「最近、王城でお見かけしましたわ。
多分、兄君のクロネック子爵の面会のようでした。
使用人を連れてお見送りをなさっていて。
お召しのドレスも宝飾品も素敵でしたわ」
「令嬢の瞳の色はご存知ですか」
「オレンジと黄色の間の色で、透き通った美しいシトリンのような瞳に、栗色の髪。肌は白くて可愛らしい方でしたわ。
後妻や不義の子がいなければ、素敵な縁談が待っていたでしょうに」
ドクン…ドクン…
「まあ、ヴィオレット様。顔色が良くありませんわ」
「ヴィオレット様。ご令嬢は子爵家で、お務めも期間限定です。もしお気に召したとしても妾。
事情も事情ですし、気にすることはありませんわ」
「そうですわ。掟や監視を置かれて管理された関係です。他のご令嬢と恋仲になったり、病気をもらってきたり、孕ませたりすることがありませんもの。割り切って、心を広く持ち、感謝の気持ちを持つくらいがよろしいですわ」
「そうですわよね。
先日、浮気されて婚約破棄された伯爵家のご令嬢の哀れなこと」
「脚に縋り付いて泣いておりましたからね」
間違いない。
カイン王子殿下は閨係に心も体も囚われたのだわ。
帰りの馬車の中で悔しくて涙が出てきた。
あんな事を言って私の気持ちを揺らしておいて、結局は白い肌が美しく、宝石のような瞳をした可愛い容姿の女性を選ぶんじゃない!!
悔しい!憎い! 子爵家の娼婦のクセに!!
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すべてフィクションです。不快に思われた方は読むのを止めて下さい。
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