23 / 41
ねっとりとした視線
しおりを挟む
事故の悪夢を時々見てしまう優香ちゃんと対面した。
「優香ちゃん、私は楓。優香ちゃんが怖い夢を見ないようにおまじないをかけに来たの」
「おまじない?」
「うん。そろそろ寝ようか」
「寝たくない」
「横になって私と手を繋ごうか。それだけだったらいい?」
「…うん」
優香ちゃんをベッドに寝かせると絨毯の上に座り手を握った。
「お姉ちゃんの手、マシュマロみたい」
「優香ちゃんも柔らかくて可愛い手ね」
「お姉ちゃんきれい」
「ありがとう。優香ちゃんも可愛い」
後は絵本を2ページ読んだところで眠ってしまった。
1時間手を握り、更に2時間待機し、優香ちゃんが怖い夢を見て起きないことを確認したところで依頼は完了。
「では、これで失礼します」
「ありがとうございました」
「送ります。夜も遅いですし駅まで距離がありますから」
「大丈夫です」
「何かあったら申し訳ないので送ります」
そう言いながら靴まで履いてしまったご主人をこれ以上断ることができなかった。玄関を出るときにスイッチを入れた。
マンションから少し離れると中村さんが少しずつ本性を表した。
「まいったよ。優香は夜中に泣き出して大変だし、バイクの男は争うって言ってるし。
そもそも友人と飯を食いに行きたいからあの非常識な家に預けるなんて、母親失格だよ。それに出産した後に体を戻す母親はたくさんいるのにウチの優実はブクブク太ったまま。飯なんか食いに行っていないで運動すればいいのに。レスになったって仕方ないと思わない?」
「……」
「あ、ごめんね。楓ちゃんみたいに可愛くて自分を磨いているコが優香を眠らせてくれたから嬉しくて」
「…仕事ですので」
「アクターって、確か恋人役も請け負っていたよね?」
「はい」
「プライベートで会わない?」
「規約違反です」
「いいだろう?こういう出会いがあっても」
「中村さんは既婚者ですよね」
「あいつとは妊娠したときが最後だよ。
安心して。今はフリーだから」
つまり恋人かセフレを作って浮気三昧ってところか。
「私には恋人がいます」
「それはそれ、これはこれじゃん」
「ちょっと!」
私の腰に腕を回し引き寄せると股間を押し付けてきた。
「ちょっと寄って行こうか」
手首を掴まれて公園の方へ引っ張られた。
「止めてください!手を離してください!」
「ちょっとだけ」
「叫びますよ!」
「恋人役もやってるんだろう?」
「うちはそういう会社ではありません!」
「やってないわけないじゃん、あんな高額で」
「中村さんのいかがわしい世界に『アクター』を巻き込まないでください」
「ちょっと可愛いからって調子に乗ったら駄目じゃないか」
「止めて!」
力強く引き摺り込まれて行く。周りには誰も歩いていないし、叫んでも出て来て助けてくれるとは限らない。
いくつか教わった方法…
公園のトイレに引っ張られ個室に押し込まれ、手が離れた瞬間、ドアを思いっきり男にぶつけた。顔に当たり痛がってる隙に股間を蹴った。股間を押さえて屈んで頭を低くしたので膝蹴りを入れた。
「ぐあっ!」
倒れた中村さんを(仕方なく)踏みつけてトイレの外に出た。
コンビニか交番…どっちだったっけ。
仕事に来る前に駅から依頼主の家の道と交番とコンビニの場所は確認するようにしていた。これもさっきのも大輝くんと啓太さんの教えだった。
分からないけど全力で走った。すると駅前近くに出たのが分かった。人通りもありまだ営業している店を見つけた。そこに駆け込もうと思ったけど、その先にコンビニの看板が目に映ったのでコンビニに駆け込んだ。コンビニは強盗対策のため非常通報装置があるから。
ウィーン
自動ドアが開いてカウンターの近くへ行った。追って来てはいなかったから自分で電話をかけた。アクターの非常ボタンアプリを押して副社長の聡さんに繋がるボタンを選んだ。
〈どうした!〉
「襲われました…依頼主の家から…公園があって…走ってコンビニに」
〈相手は〉
「少しボコりましたが…追ってくるか諦めるかは…」
〈その駅には交番があるから、こっちから電話をかけて向かってもらう。コンビニの店員に代わってくれ〉
「あの、すみません。私の会社の者と話してくださいませんか」
コンビニの店員さんはただならぬ雰囲気と私が泣いているのですぐに代わってくれた。
「もしもし、はい。駅から少し離れた○○○○店です。はい、うちはウォークイン冷蔵庫です。はい、分かりました」
店員さんは私をバックヤードに入れ、冷凍室に入れた。
「警察と会社以外の人が来たら“知らない”と答えるから、ここで隠れていて。巡回や事件で不在でなければお巡りさんが3分もかからずに来るから」
「ありがとうございます」
閉められた冷蔵庫の中で数分待つと扉が開いた。お巡りさんだった。
「怪我はありませんか」
「ちょっと手首が痛いです」
「歩ける?」
「はい」
「交番へ移動しよう」
コンビニの店員さんに深々頭を下げてお礼を言って交番に向かった。
中村さんの家を訪ねて依頼主の航平さんが出てきたとき、ねっとりとした視線を感じていた。話をする間もそれは続いていたから、送ると言われたときに断ったんだけど。
家を出てからは遠慮なく私の体を見ていた。
「気持ち悪い」
「優香ちゃん、私は楓。優香ちゃんが怖い夢を見ないようにおまじないをかけに来たの」
「おまじない?」
「うん。そろそろ寝ようか」
「寝たくない」
「横になって私と手を繋ごうか。それだけだったらいい?」
「…うん」
優香ちゃんをベッドに寝かせると絨毯の上に座り手を握った。
「お姉ちゃんの手、マシュマロみたい」
「優香ちゃんも柔らかくて可愛い手ね」
「お姉ちゃんきれい」
「ありがとう。優香ちゃんも可愛い」
後は絵本を2ページ読んだところで眠ってしまった。
1時間手を握り、更に2時間待機し、優香ちゃんが怖い夢を見て起きないことを確認したところで依頼は完了。
「では、これで失礼します」
「ありがとうございました」
「送ります。夜も遅いですし駅まで距離がありますから」
「大丈夫です」
「何かあったら申し訳ないので送ります」
そう言いながら靴まで履いてしまったご主人をこれ以上断ることができなかった。玄関を出るときにスイッチを入れた。
マンションから少し離れると中村さんが少しずつ本性を表した。
「まいったよ。優香は夜中に泣き出して大変だし、バイクの男は争うって言ってるし。
そもそも友人と飯を食いに行きたいからあの非常識な家に預けるなんて、母親失格だよ。それに出産した後に体を戻す母親はたくさんいるのにウチの優実はブクブク太ったまま。飯なんか食いに行っていないで運動すればいいのに。レスになったって仕方ないと思わない?」
「……」
「あ、ごめんね。楓ちゃんみたいに可愛くて自分を磨いているコが優香を眠らせてくれたから嬉しくて」
「…仕事ですので」
「アクターって、確か恋人役も請け負っていたよね?」
「はい」
「プライベートで会わない?」
「規約違反です」
「いいだろう?こういう出会いがあっても」
「中村さんは既婚者ですよね」
「あいつとは妊娠したときが最後だよ。
安心して。今はフリーだから」
つまり恋人かセフレを作って浮気三昧ってところか。
「私には恋人がいます」
「それはそれ、これはこれじゃん」
「ちょっと!」
私の腰に腕を回し引き寄せると股間を押し付けてきた。
「ちょっと寄って行こうか」
手首を掴まれて公園の方へ引っ張られた。
「止めてください!手を離してください!」
「ちょっとだけ」
「叫びますよ!」
「恋人役もやってるんだろう?」
「うちはそういう会社ではありません!」
「やってないわけないじゃん、あんな高額で」
「中村さんのいかがわしい世界に『アクター』を巻き込まないでください」
「ちょっと可愛いからって調子に乗ったら駄目じゃないか」
「止めて!」
力強く引き摺り込まれて行く。周りには誰も歩いていないし、叫んでも出て来て助けてくれるとは限らない。
いくつか教わった方法…
公園のトイレに引っ張られ個室に押し込まれ、手が離れた瞬間、ドアを思いっきり男にぶつけた。顔に当たり痛がってる隙に股間を蹴った。股間を押さえて屈んで頭を低くしたので膝蹴りを入れた。
「ぐあっ!」
倒れた中村さんを(仕方なく)踏みつけてトイレの外に出た。
コンビニか交番…どっちだったっけ。
仕事に来る前に駅から依頼主の家の道と交番とコンビニの場所は確認するようにしていた。これもさっきのも大輝くんと啓太さんの教えだった。
分からないけど全力で走った。すると駅前近くに出たのが分かった。人通りもありまだ営業している店を見つけた。そこに駆け込もうと思ったけど、その先にコンビニの看板が目に映ったのでコンビニに駆け込んだ。コンビニは強盗対策のため非常通報装置があるから。
ウィーン
自動ドアが開いてカウンターの近くへ行った。追って来てはいなかったから自分で電話をかけた。アクターの非常ボタンアプリを押して副社長の聡さんに繋がるボタンを選んだ。
〈どうした!〉
「襲われました…依頼主の家から…公園があって…走ってコンビニに」
〈相手は〉
「少しボコりましたが…追ってくるか諦めるかは…」
〈その駅には交番があるから、こっちから電話をかけて向かってもらう。コンビニの店員に代わってくれ〉
「あの、すみません。私の会社の者と話してくださいませんか」
コンビニの店員さんはただならぬ雰囲気と私が泣いているのですぐに代わってくれた。
「もしもし、はい。駅から少し離れた○○○○店です。はい、うちはウォークイン冷蔵庫です。はい、分かりました」
店員さんは私をバックヤードに入れ、冷凍室に入れた。
「警察と会社以外の人が来たら“知らない”と答えるから、ここで隠れていて。巡回や事件で不在でなければお巡りさんが3分もかからずに来るから」
「ありがとうございます」
閉められた冷蔵庫の中で数分待つと扉が開いた。お巡りさんだった。
「怪我はありませんか」
「ちょっと手首が痛いです」
「歩ける?」
「はい」
「交番へ移動しよう」
コンビニの店員さんに深々頭を下げてお礼を言って交番に向かった。
中村さんの家を訪ねて依頼主の航平さんが出てきたとき、ねっとりとした視線を感じていた。話をする間もそれは続いていたから、送ると言われたときに断ったんだけど。
家を出てからは遠慮なく私の体を見ていた。
「気持ち悪い」
118
あなたにおすすめの小説
処刑前夜に逃亡した悪役令嬢、五年後に氷の公爵様に捕まる〜冷徹旦那様が溺愛パパに豹変しましたが私の抱いている赤ちゃん実は人生2周目です〜
放浪人
恋愛
「処刑されるなんて真っ平ごめんです!」 無実の罪で投獄された悪役令嬢レティシア(中身は元社畜のアラサー日本人)は、処刑前夜、お腹の子供と共に脱獄し、辺境の田舎村へ逃亡した。 それから五年。薬師として穏やかに暮らしていた彼女のもとに、かつて自分を冷遇し、処刑を命じた夫――「氷の公爵」アレクセイが現れる。 殺される!と震えるレティシアだったが、再会した彼は地面に頭を擦り付け、まさかの溺愛キャラに豹変していて!?
「愛しているレティシア! 二度と離さない!」 「(顔が怖いです公爵様……!)」
不器用すぎて顔が怖い旦那様の暴走する溺愛。 そして、二人の息子であるシオン(1歳)は、実は前世で魔王を倒した「英雄」の生まれ変わりだった! 「パパとママは僕が守る(物理)」 最強の赤ちゃんが裏で暗躍し、聖女(自称)の陰謀も、帝国の侵略も、古代兵器も、ガラガラ一振りで粉砕していく。
冷遇妃マリアベルの監視報告書
Mag_Mel
ファンタジー
シルフィード王国に敗戦国ソラリから献上されたのは、"太陽の姫"と讃えられた妹ではなく、悪女と噂される姉、マリアベル。
第一王子の四番目の妃として迎えられた彼女は、王宮の片隅に追いやられ、嘲笑と陰湿な仕打ちに晒され続けていた。
そんな折、「王家の影」は第三王子セドリックよりマリアベルの監視業務を命じられる。年若い影が記す報告書には、ただ静かに耐え続け、死を待つかのように振舞うひとりの女の姿があった。
王位継承争いと策謀が渦巻く王宮で、冷遇妃の運命は思わぬ方向へと狂い始める――。
(小説家になろう様にも投稿しています)
英雄魔術師様とのシークレットベビーが天才で隠し通すのが大変です
氷雨そら
恋愛
――この魔石の意味がわからないほど子どもじゃない。
英雄魔術師カナンが遠征する直前、フィアーナと交わした一夜で授かった愛娘シェリア。フィアーナは、シェリアがカナンの娘であることを隠し、守るために王都を離れ遠い北の地で魔石を鑑定しながら暮らしていた。けれど、シェリアが三歳を迎えた日、彼女を取り囲む全ての属性の魔石が光る。彼女は父と同じ、全属性の魔力持ちだったのだ。これは、シークレットベビーを育てながら、健気に逞しく生きてきたヒロインが、天才魔術師様と天才愛娘に翻弄されながらも溺愛される幸せいっぱいハートフルストーリー。小説家になろうにも投稿しています。
聖女は聞いてしまった
夕景あき
ファンタジー
「道具に心は不要だ」
父である国王に、そう言われて育った聖女。
彼女の周囲には、彼女を心を持つ人間として扱う人は、ほとんどいなくなっていた。
聖女自身も、自分の心の動きを無視して、聖女という治癒道具になりきり何も考えず、言われた事をただやり、ただ生きているだけの日々を過ごしていた。
そんな日々が10年過ぎた後、勇者と賢者と魔法使いと共に聖女は魔王討伐の旅に出ることになる。
旅の中で心をとり戻し、勇者に恋をする聖女。
しかし、勇者の本音を聞いてしまった聖女は絶望するのだった·····。
ネガティブ思考系聖女の恋愛ストーリー!
※ハッピーエンドなので、安心してお読みください!
侯爵家の愛されない娘でしたが、前世の記憶を思い出したらお父様がバリ好みのイケメン過ぎて毎日が楽しくなりました
下菊みこと
ファンタジー
前世の記憶を思い出したらなにもかも上手くいったお話。
ご都合主義のSS。
お父様、キャラチェンジが激しくないですか。
小説家になろう様でも投稿しています。
突然ですが長編化します!ごめんなさい!ぜひ見てください!
冷徹宰相様の嫁探し
菱沼あゆ
ファンタジー
あまり裕福でない公爵家の次女、マレーヌは、ある日突然、第一王子エヴァンの正妃となるよう、申し渡される。
その知らせを持って来たのは、若き宰相アルベルトだったが。
マレーヌは思う。
いやいやいやっ。
私が好きなのは、王子様じゃなくてあなたの方なんですけど~っ!?
実家が無害そう、という理由で王子の妃に選ばれたマレーヌと、冷徹宰相の恋物語。
(「小説家になろう」でも公開しています)
子持ちの私は、夫に駆け落ちされました
月山 歩
恋愛
産まれたばかりの赤子を抱いた私は、砦に働きに行ったきり、帰って来ない夫を心配して、鍛錬場を訪れた。すると、夫の上司は夫が仕事中に駆け落ちしていなくなったことを教えてくれた。食べる物がなく、フラフラだった私は、その場で意識を失った。赤子を抱いた私を気の毒に思った公爵家でお世話になることに。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる