【完結】高給アクターは夢で癒す

ユユ

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ねっとりとした視線

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事故の悪夢を時々見てしまう優香ちゃんと対面した。

「優香ちゃん、私は楓。優香ちゃんが怖い夢を見ないようにおまじないをかけに来たの」

「おまじない?」

「うん。そろそろ寝ようか」

「寝たくない」

「横になって私と手を繋ごうか。それだけだったらいい?」

「…うん」

優香ちゃんをベッドに寝かせると絨毯の上に座り手を握った。

「お姉ちゃんの手、マシュマロみたい」

「優香ちゃんも柔らかくて可愛い手ね」

「お姉ちゃんきれい」

「ありがとう。優香ちゃんも可愛い」

後は絵本を2ページ読んだところで眠ってしまった。
1時間手を握り、更に2時間待機し、優香ちゃんが怖い夢を見て起きないことを確認したところで依頼は完了。

「では、これで失礼します」

「ありがとうございました」

「送ります。夜も遅いですし駅まで距離がありますから」

「大丈夫です」

「何かあったら申し訳ないので送ります」

そう言いながら靴まで履いてしまったご主人をこれ以上断ることができなかった。玄関を出るときにを入れた。

マンションから少し離れると中村さんが少しずつ本性を表した。

「まいったよ。優香は夜中に泣き出して大変だし、バイクの男は争うって言ってるし。
そもそも友人と飯を食いに行きたいからあの非常識な家に預けるなんて、母親失格だよ。それに出産した後に体を戻す母親はたくさんいるのにウチの優実はブクブク太ったまま。飯なんか食いに行っていないで運動すればいいのに。レスになったって仕方ないと思わない?」

「……」

「あ、ごめんね。楓ちゃんみたいに可愛くて自分を磨いているコが優香を眠らせてくれたから嬉しくて」

「…仕事ですので」

「アクターって、確か恋人役も請け負っていたよね?」

「はい」

「プライベートで会わない?」

「規約違反です」

「いいだろう?こういう出会いがあっても」

「中村さんは既婚者ですよね」

「あいつとは妊娠したときが最後だよ。
安心して。フリーだから」

つまり恋人かセフレを作って浮気三昧ってところか。

「私には恋人がいます」

「それはそれ、これはこれじゃん」

「ちょっと!」

私の腰に腕を回し引き寄せると股間を押し付けてきた。

「ちょっと寄って行こうか」

手首を掴まれて公園の方へ引っ張られた。

「止めてください!手を離してください!」

「ちょっとだけ」

「叫びますよ!」

恋人役デリヘルもやってるんだろう?」

「うちはそういう会社ではありません!」

「やってないわけないじゃん、あんな高額で」

「中村さんのいかがわしい世界に『アクター』を巻き込まないでください」

「ちょっと可愛いからって調子に乗ったら駄目じゃないか」

「止めて!」

力強く引き摺り込まれて行く。周りには誰も歩いていないし、叫んでも出て来て助けてくれるとは限らない。
いくつか教わった方法…

公園のトイレに引っ張られ個室に押し込まれ、手が離れた瞬間、ドアを思いっきり男にぶつけた。顔に当たり痛がってる隙に股間を蹴った。股間を押さえて屈んで頭を低くしたので膝蹴りを入れた。

「ぐあっ!」

倒れた中村さんを(仕方なく)踏みつけてトイレの外に出た。
コンビニか交番…どっちだったっけ。
仕事に来る前に駅から依頼主の家の道と交番とコンビニの場所は確認するようにしていた。これもさっきのも大輝くんと啓太さんの教えだった。
分からないけど全力で走った。すると駅前近くに出たのが分かった。人通りもありまだ営業している店を見つけた。そこに駆け込もうと思ったけど、その先にコンビニの看板が目に映ったのでコンビニに駆け込んだ。コンビニは強盗対策のため非常通報装置があるから。

ウィーン

自動ドアが開いてカウンターの近くへ行った。追って来てはいなかったから自分で電話をかけた。アクターの非常ボタンアプリを押して副社長の聡さんに繋がるボタンを選んだ。

〈どうした!〉

「襲われました…依頼主の家から…公園があって…走ってコンビニに」

〈相手は〉

「少しボコりましたが…追ってくるか諦めるかは…」

〈その駅には交番があるから、こっちから電話をかけて向かってもらう。コンビニの店員に代わってくれ〉

「あの、すみません。私の会社の者と話してくださいませんか」

コンビニの店員さんはただならぬ雰囲気と私が泣いているのですぐに代わってくれた。

「もしもし、はい。駅から少し離れた○○○○店です。はい、うちはウォークイン冷蔵庫です。はい、分かりました」

店員さんは私をバックヤードに入れ、冷凍室に入れた。

「警察と会社以外の人が来たら“知らない”と答えるから、ここで隠れていて。巡回や事件で不在でなければお巡りさんが3分もかからずに来るから」

「ありがとうございます」

閉められた冷蔵庫の中で数分待つと扉が開いた。お巡りさんだった。

「怪我はありませんか」

「ちょっと手首が痛いです」

「歩ける?」

「はい」

「交番へ移動しよう」

コンビニの店員さんに深々頭を下げてお礼を言って交番に向かった。


中村さんの家を訪ねて依頼主の航平さんが出てきたとき、ねっとりとした視線を感じていた。話をする間もそれは続いていたから、送ると言われたときに断ったんだけど。
家を出てからは遠慮なく私の体を見ていた。

「気持ち悪い」


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