【完結】高給アクターは夢で癒す

ユユ

文字の大きさ
24 / 41

事件化

しおりを挟む
手首を確認してもらっている間に、あの男が通りかかった。

「っ!!」

ドアを開けて私の名を呼んで入ってこようとした。

「楓ちゃん」

警察官がサッと立ち上がり男の前に出た。

「あなたにお話を伺います」

「嫌だなぁ、痴話喧嘩ですよ」

「仕事を頼んで来てもらったのに襲うのが痴話喧嘩ですか?今日が初対面だったと聞いていますが」

「違いますよ、お巡りさん。彼女はデリヘル嬢ですよ」

トイレのドアが当たって顔が一部赤くなった男がヘラヘラと見下すように言った。腹が立って黙っていられなかった。

「株式会社アクターはそのそうなことは致しません!依頼主の悩みや希望に寄り添い適切な距離を保って仕事をしているんです!侮辱は止めてください!名誉毀損ですよ!私は睡眠士です!あなたの娘をあなたと奥さんの前で眠らせたじゃないですか!
もしあなたの言う通りなら、あなたは娘と妻がいるマンションの自宅に風俗嬢を呼び付ける非常識な男ということですけど!」

「そ、そこまでは睡眠士の仕事で、公園では恋人役じゃないか」

「いいから向こうに座りなさい」

「何でですか!」

「彼女の雇用主は被害届を出すと言っていますので、署から車が来たら連行して調書を取ります」

男は顔色を変えて慌て出した。

「大袈裟な…
なあ、会社に捜査が入ったら嫌だろう?」

「何度も言わせないでください。株式会社アクターはいかがわしい行為は禁じております」

そんな話をしている間にパトカーが到着した。彼はは連行されて行った。私は副社長が来るのを待ち、副社長と一緒に署に向かうことになっているらしい。

「あの、雪嶋さんの睡眠士の方ですよね」

「…はい」

「本物に会えた!」

「こら」

「すみません」

若いお巡りさんをベテランお巡りさんが注意した。

「今日も人助けをしてこられたのですね」

「私はただ、眠るお手伝いをしているだけです」

「素晴らしいお仕事ですね。人は必ず眠りますし、睡眠の質は大きな影響を与えますからね」

「皆様こそ。身を挺して弱者を守ってくださっているおかげで、こうやって身を寄せて危機を乗り越えることができました。本当に感謝しております」

その後もお巡りさんが気を使っていろいろ話をしてくださった。
しばらくしてアクターの車が到着した。

「楓!」

大輝くんは一直線に私の元へ来て怪我のチェック。
副社長の聡さんは、お巡りさんにお礼を言った。
車に乗り管轄の警察署へ行くと、刑事課の部屋のソファに座った。担当刑事の松尾さんと堀川さんに自己紹介をした。

「もしかして、中学の空手優勝をした伏原さんですか!?」

「まあそうです」

「僕、見てました。僕は敗退しましたけど、残ってずっと見てました」

堀川さんは目を輝かせて握手をしていた。

「高校では空手はやめたんですね」

「テコンドーに移って、その後は総合格闘技に」

「そうだったんですね、伏原選手と話題の睡眠士に会えるなんて嬉しいです」

「こら、堀川」

「あ、すみません」

「では、事件の話ですが、中村航平が同意だったと主張しています」

「は!?」

大輝くんは鬼の形相で立ち上がった。

「大輝、ちょっとって来るみたいに行こうとするな。座れ」

大輝くんが座ると話を続けた。

「その、帰り道に誘われて公園のトイレに寄ったけど、金額で揉めて二条さんが暴れて、むしろ暴行を受けたと被害を訴えているんです」

「やっぱりって来る」

「大輝、座れ」

「副社長!」

「おまえは後継者として仕事を始めたのに理性がミジンコでどうするんだ!」

ミジンコ…

「失礼しました。うちの二条には伏原達がいろいろなケースを元に身を守る術を教えています。ですから当然襲われたら反撃します。コンビニに逃げ込んだ二条は泣いていましたし、手首にも掴まれて引っ張られた痣と引っ掻き傷があります」

「分かっていますが、向こうも怪我をしていますので、しっかり調べないといけないんです」

「あの、私、ボディカメラを装着しているんです。
女が夜に他人の家に訪れて仕事をして遅くに帰るものですから。
今夜は中村さんに強引に送ると言われたときからスイッチを入れました。嫌な目つきをしていたので、予感がしたんです」

ノートパソコンをもってきてもらい、繋げて動画を見た。玄関で断った後から録画が開始している。

《何かあったら申し訳ないので送ります》

《本当に大丈夫ですから》

そして、プライベートで会おうと言われ、規約違反だと断るシーンや、男がさらに豹変して公園に引っ張っていくシーン、トイレでのシーンが流れた。

「偉いぞ、楓。危機管理ができているな」

聡さんが褒めてくれた。

「武器はどこまで持たせてもいいですか?」

大輝くんは真剣な顔で刑事さん達に質問をした。

「だ、駄目ですよ」

「日本は武器の所持は厳しいんです。
二条さん、被害届を出すということで間違いありませんね?」

「はい」

あの男はそうでもして白黒はっきりさせないと、『アクター』への偏見と嘘を止めないだろうから。

「では、この動画で強制わいせつ未遂の容疑で逮捕します。中村航平には犯歴はありませんので執行猶予が付くと思います。しばらくは気を付けてください」

逆恨みのことを言っているのだと分かった。
被害に遭ってもまた被害に遭う恐怖が付き纏うなんて理不尽過ぎると感じた。



しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

処刑前夜に逃亡した悪役令嬢、五年後に氷の公爵様に捕まる〜冷徹旦那様が溺愛パパに豹変しましたが私の抱いている赤ちゃん実は人生2周目です〜

放浪人
恋愛
「処刑されるなんて真っ平ごめんです!」 無実の罪で投獄された悪役令嬢レティシア(中身は元社畜のアラサー日本人)は、処刑前夜、お腹の子供と共に脱獄し、辺境の田舎村へ逃亡した。 それから五年。薬師として穏やかに暮らしていた彼女のもとに、かつて自分を冷遇し、処刑を命じた夫――「氷の公爵」アレクセイが現れる。 殺される!と震えるレティシアだったが、再会した彼は地面に頭を擦り付け、まさかの溺愛キャラに豹変していて!? 「愛しているレティシア! 二度と離さない!」 「(顔が怖いです公爵様……!)」 不器用すぎて顔が怖い旦那様の暴走する溺愛。 そして、二人の息子であるシオン(1歳)は、実は前世で魔王を倒した「英雄」の生まれ変わりだった! 「パパとママは僕が守る(物理)」 最強の赤ちゃんが裏で暗躍し、聖女(自称)の陰謀も、帝国の侵略も、古代兵器も、ガラガラ一振りで粉砕していく。

冷遇妃マリアベルの監視報告書

Mag_Mel
ファンタジー
シルフィード王国に敗戦国ソラリから献上されたのは、"太陽の姫"と讃えられた妹ではなく、悪女と噂される姉、マリアベル。 第一王子の四番目の妃として迎えられた彼女は、王宮の片隅に追いやられ、嘲笑と陰湿な仕打ちに晒され続けていた。 そんな折、「王家の影」は第三王子セドリックよりマリアベルの監視業務を命じられる。年若い影が記す報告書には、ただ静かに耐え続け、死を待つかのように振舞うひとりの女の姿があった。 王位継承争いと策謀が渦巻く王宮で、冷遇妃の運命は思わぬ方向へと狂い始める――。 (小説家になろう様にも投稿しています)

悪役令嬢、隠しキャラとこっそり婚約する

下菊みこと
恋愛
悪役令嬢が隠しキャラに愛されるだけ。 ドゥニーズは違和感を感じていた。やがてその違和感から前世の記憶を取り戻す。思い出してからはフリーダムに生きるようになったドゥニーズ。彼女はその後、ある男の子と婚約をして…。 小説家になろう様でも投稿しています。

侯爵家の愛されない娘でしたが、前世の記憶を思い出したらお父様がバリ好みのイケメン過ぎて毎日が楽しくなりました

下菊みこと
ファンタジー
前世の記憶を思い出したらなにもかも上手くいったお話。 ご都合主義のSS。 お父様、キャラチェンジが激しくないですか。 小説家になろう様でも投稿しています。 突然ですが長編化します!ごめんなさい!ぜひ見てください!

冷徹宰相様の嫁探し

菱沼あゆ
ファンタジー
あまり裕福でない公爵家の次女、マレーヌは、ある日突然、第一王子エヴァンの正妃となるよう、申し渡される。 その知らせを持って来たのは、若き宰相アルベルトだったが。 マレーヌは思う。 いやいやいやっ。 私が好きなのは、王子様じゃなくてあなたの方なんですけど~っ!? 実家が無害そう、という理由で王子の妃に選ばれたマレーヌと、冷徹宰相の恋物語。 (「小説家になろう」でも公開しています)

聖女は聞いてしまった

夕景あき
ファンタジー
「道具に心は不要だ」 父である国王に、そう言われて育った聖女。 彼女の周囲には、彼女を心を持つ人間として扱う人は、ほとんどいなくなっていた。 聖女自身も、自分の心の動きを無視して、聖女という治癒道具になりきり何も考えず、言われた事をただやり、ただ生きているだけの日々を過ごしていた。 そんな日々が10年過ぎた後、勇者と賢者と魔法使いと共に聖女は魔王討伐の旅に出ることになる。 旅の中で心をとり戻し、勇者に恋をする聖女。 しかし、勇者の本音を聞いてしまった聖女は絶望するのだった·····。 ネガティブ思考系聖女の恋愛ストーリー! ※ハッピーエンドなので、安心してお読みください!

夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い

青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。 神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。 もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。 生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。 過去世と同じ轍を踏みたくない……

子持ちの私は、夫に駆け落ちされました

月山 歩
恋愛
産まれたばかりの赤子を抱いた私は、砦に働きに行ったきり、帰って来ない夫を心配して、鍛錬場を訪れた。すると、夫の上司は夫が仕事中に駆け落ちしていなくなったことを教えてくれた。食べる物がなく、フラフラだった私は、その場で意識を失った。赤子を抱いた私を気の毒に思った公爵家でお世話になることに。

処理中です...