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伯爵
しおりを挟む【 ウィリアム王太子視点 】
翌日の午前中、兄のクロノス伯爵を呼んで説明をした。
「そうですか」
「伯爵、妹君があのような目にあっていたのに何故そのままにした」
「幼い頃からの付き合いで、ランドルフ殿がリリアーナを好きなのは知っていました。
だから父は婚約を許したのでしょう。
リリアーナも何も言わずにランドルフ殿に従っているので、それがリリアーナの気持ちなのかと。
本人が我慢しているのに引き裂くようなことは言えません。そう思っていましたが違ったのですね」
「嫌がっていたようだ」
「陛下、破棄は決定なのですね」
「昨日付けでな。
オヌール公爵家も普通なら廃嫡だろうが一人息子だし、そうならないだろう。だが第二王子の婚約者を寝取ったからには無事に済ますことは出来ない。サンドル侯爵家程の制裁は加えないが」
「伯爵、オヌール公爵令息は執着しているようです。警戒した方がいいかもしれません」
「王太子殿下、公爵夫妻は何と」
「子息に怒っておられました」
「何かある時は公爵家の総意というわけではないのですね。では早急に婚約者を探します」
「その件だが、リリアーナをエリアスの妃に欲しい」
「陛下、リリアーナには王子妃は務まりません」
「昨日の晩餐会は見事であったぞ。
あのカザハ公爵一家がリリアーナに惚れ込んでいる。2人の息子は既に婚姻しているから言わないが、息子が未婚ならリリアーナを息子の嫁にと言い出しただろう」
「凍死させられかけた時の慰謝料で自ら講師達を雇ったときいています。数ヶ月であそこまでになるなら講師も素晴らしいのでしょうがクロノス伯爵令嬢も才ある者ということです。サンドル侯爵令嬢がついていけなかったほどです」
「伯爵、リリアーナは充分妃の器だ」
「…今度こそ、リリアーナの気持ちを優先させます。ですので王子殿下の婚約者の打診はお受けできません」
「リリアーナがいいと言えば反対はしないのだな?」
「はい」
「互いに被害者とはいえ、今すぐは無理だ。半年後に婚約の申し込みをする。その時リリアーナの気持ちを確認し、返事をくれないか」
「かしこまりました。
あの、リリアーナをよく登城させているのは何故でしょう」
「守秘義務があるから詳しくは話せないがリリアーナには特別な能力があって、それを披露してもらっている。
基本はエリアスがリリアーナに勉強を教えている」
「特別な能力ですか」
「帰って問い詰めて聞こうとするなよ。
リリアーナの身を守る為に契約書まで交わして極秘にしているのだ。漏れるようなことがあれば王命でエリアスと結婚させることになる。王家で保護しなくてはならないからな」
「…かしこまりました」
陛下、初耳ですよ。
王命で王子と婚姻させるほどの能力って何ですか!
気になるじゃないですか!
「カザハ公爵が公爵領に遊びに来いと誘っていた。
もし具体的な話がでたらリリアーナを行かせてやってくれ」
「はい陛下」
その後、契約書に署名をし、私の恥ずかしい秘密を暴露してようやく教えてもらえた。
ギフトを授かった令嬢…怖っ!
身綺麗で良かった。王太子妃とは政略結婚だ。結婚して分かったが妃は私を熱狂的に慕っていた。
私の全てを把握し、私に色目を使うメイドは排除。令嬢は次に見かけた時は真っ青になり震えていた。
女性遍歴などあったらと思うと悪寒が…。
子が産まれずニ妃などを迎えた日にはどうなるのか。国のためにその時はエリアスに王座を譲ろうと思う。
私は生涯妃だけしか抱けないのだな。
いつか他の女を抱いてみたかったのに。
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