【完結】救済版：ずっと好きだった

ライアン達の子

あのシーンを再び

【 ライアンの視点 】


リリアンが王城に泊まった翌朝の１０時過ぎに執事が慌てて知らせに来た。

「旦那様、騎士団の方がいらっしゃいました」


エントランスへ向かうと何かが起きたことは分かった。

騎士団長が跪く

「団長…リリアンは生きているのですか」

「朝食を召し上がりました」

？

「では何故、帯剣もせず跪くのですか」

「箝口令が発動しておりまして、私にも詳しくは分かりませんが、陛下が最上級の礼を尽くしてお連れするようにと命じられました」

何かあったことは間違いない。だが、この感じ、既視感がある。


居間に戻り、グレースに指示を出した。

「グレース。何かトラブルが起きたようだ。
こっちは大丈夫だと思うが、警備に厳戒態勢を敷くよう指示を出し、グレースも武装して屋敷に立て篭れ」

「分かったわ。リリアンをよろしくね」



帯剣をして用意された馬車に乗り込んだ。
王族が使う馬車だろう。

不安のまま通されたのは謁見の間だった。扉が開くと、陛下と王妃殿下の前にゼイン殿下が正座をしていた。

こちらを見て気まずそうな顔と喜びの顔を交互させていた。

思い出した。エヴァンとミーシェだ。


「陛下、結論は分かりました。経緯を聞く前にリリアンはどこです」

驚いた顔をした三人は顔を見合わせた。

「朝食を食べた後、また眠ってしまって、連れてくるところだ」

「……」

「ゼイン殿下。貴方には婚約者がいるのにどうしてリリアンに手を出した」

三人はまた驚いた。

「私はリリアンを愛しています。

あんな男と何故何度もデートなんかさせたのですか」

「知っているのか？」

「あの男は、リリアンを何度もデートに誘っておきながらリリアンではその気になれないと。
あの男は、リリアンに誤解を与える行動を取りながら、リリアンより胸の豊かな女がいいと。

私は愛を伝えたかった。
あの監獄のような王子宮で、リリアンと花を見ながら思ってしまった。
リリアンが妻なら王子宮は楽園になる。

リリアンが死ねと言うなら死にます。
公爵が処刑すると言ったら首を差し出します。
父上が廃嫡を決めればその足であの男を殺しに行きます！

私はあの男と違ってリリアンしか抱けない。
リリアンにしか欲情しないんです。キスさえできない！

シャルール伯爵がリリアンを大事にしてくれるならと、胸の中のドロドロを抑えながら、リリアンのデートの話を笑顔で聞いた。何度も何度も！

なのに あの男はリリアンを傷付けた！

私はリリアンと出かけることすら出来ないし、未来もない。なのにおかしいだろう」

「あ、パパ」

あ～ ……この子はミーシェそっくりだ。

前世でも、キョトンとしてココに入ってきた。

「リリアン。両陛下にご挨拶なさい」

「いいのよ。もう挨拶はしてもらっているから」

「失礼しました。

リリアン。状況は分かっているか？」

「…ごめんなさい？」

「リリアン。何が起きたか覚えているか？」

「うろ覚え？」

陛下と王妃殿下と私で天を仰いだ。

「長くなりそうだから応接間に移ろう。
まだ何もしていないのに疲れた」




そしてリリアンとゼイン殿下の話を聞いた。

リ「確かに…嫌とも止めてとも言いませんでした」

私「嫌ではなかったのか」

リ「嫌かどうかとかそんなことより、殿下の婚約者のことが頭から離れず、駄目だと言いました」

ゼ「私は、リリアンに想いを告げてキスをしました。そこであの男が言ったことを聞いて頭に血が上りました。

リリアンを夫婦の間に運んで封鎖を命じました」

私「リリアン。その後のことは覚えてないのだな？」

リ「夢を見ていたかのような、ぼんやりとした記憶しか。

だけど嫌ではなかった気がします」


陛下と目が合うと何が言いたいのか分かった。

「リリアン。体は辛いか？」

「怠いような、重いような」

「部屋を借りて寝ていなさい」

陛下が指示を出してリリアンは退室した。

「ゼイン。自分の部屋に戻っていなさい」

「はい、失礼します」



陛下が頭を下げた。

「ゼインが申し訳なかった」

「どうするのですか」

「ゼインはリリアン嬢でなければ難しいだろう。
だが、リリアン嬢はゼインに情はあるようだが婚約者からその座を奪う気はなさそうだ。

先ずは婚約を解消してリリアン嬢の気持ちを聞こうと思う。彼女がノーと言えば、オルテオの継承権順位を上げようと思うが、公爵はどうだろう」

「パトローヌ侯爵令嬢は引き下がりますか」

「ゼインが無理矢理、既成事実を作ってしまったと伝えて慰謝料を払おうと思う」

「それでもいいと言ったら？」

「廃嫡になるかもしれないが構わないかと問いかけるつもりだ」

「いつですか」

「卒業パーティの前に告げる」

「分かりました」

「本当にすまなかった」

「リリアンもあのような感じですし、ゼイン殿下の愛の告白を聞いたら、伯爵の後では怒り辛いですよ。

それに私はまだ伯爵から何を言われたのか娘から聞き出せていませんでした。

リリアンを預けてもいいなどと思ってしまった私の責任もあります」

「リリアン嬢が受け入れてくれると嬉しいのだがな」



リリアンを連れて公爵邸に戻り、説明するとグレースの目が泳いだ。