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ライアン達の子
愛されない令嬢と婚約者
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【 ビクトリアの視点 】
今日は王立学園の卒業パーティが王城で開かれる。
一時間ほど早く来てくれと陛下より手紙をいただいて登城した。
そこにはまだ着替えていない陛下とゼイン殿下が待っていた。
陛「パトローヌ侯爵、夫人、ビクトリア嬢。
これから話す詳細は他言無用としたい。誓約書に署名をして欲しい」
よくは分からないが他言しなきゃいいだけ。
署名をした。
陛「感謝する。
実はゼインとビクトリア嬢の婚約を解消したいという話だ。理由を聞いて、解消にするか、パトローヌ家からの破棄にするか選んで欲しい」
父「どういうことですか!」
母「ビクトリアはもう18歳なのですよ!」
陛「一昨日、ゼインが他の令嬢と関係を持った」
私「そんなっ!」
父「ビクトリア。冷静になりなさい。
陛下。その程度のことは珍しくもありません。
殿下は歳頃の男です。我慢できないこともあれば、摘み食いをしてしまうこともあるでしょう」
陛「相手が問題で、しかも合意は得ていない」
父「まさか、高位貴族のご令嬢を襲ったのですか!?」
母「責任をとって次期王妃にしろと?」
陛「そのようなことを言う当主でも令嬢でもない。
令嬢は“殿下には婚約者がいます”と言いながら抵抗した。
だが、ゼインは止めなかった。
令嬢は問題になることを望んでいない。
思うこともあるだろうが、令嬢の意を汲み、当主も静観してくれた」
父「お相手は」
陛「リリアン・バトラーズ公爵令嬢だ」
母「公爵家…よりにもよってバトラーズ嬢だなんて」
私「あり得ません!マキシア伯爵家の私兵に勝って、セロン様の手首を切り落とした令嬢が?
彼女が誘ったに決まっております!」
陛「ビクトリア嬢。リリアン嬢は常に帯剣しているわけではない。剣を持たなければ非力な女だ。力では男に勝てないのだよ。
それに同意が無かったのは証言するものが複数いる」
父「では何故、その者たちは止めてはくださらなかったのですか」
ゼ「メイドは止めて、護衛は異議を唱えましたが、私が護衛騎士に命じて、メイドを拘束し、王子宮を封鎖してリリアンを犯した。
婚約しているのだから駄目だと言って抵抗するリリアンを縛って、事が成せるよう薬を使った」
私「お、王子宮を? まさか夫婦の間を使ったのですか!」
ゼ「使った」
私「あそこは私が住む場所ではありませんか!
よくもそんな酷いことを!」
ゼ「狙ったわけではない。一番近いのが王子宮だった」
私「他の部屋でもいいではありませんか!」
ゼ「私の判断だった」
陛「こうなった以上、婚約を続けることは無理だろう」
私「嫌です!解消などしません!」
ゼ「其方は私を愛しているのか?」
私「お慕いしております!」
ゼ「そうか。なら着いて行ってくれるのだな」
私「え?」
陛「ゼインは罪を犯した。貴族の中で最大の力を誇るバトラーズ公爵家の当主が溺愛する娘を犯しておいて、ゼインだけ無傷というわけにはいかない。
リリアン嬢は純潔だった。他国の王族や純潔を重んじる貴族へは嫁げなくなったのだからな。
リリアン嬢へ責任をとれないのであれば、王子としていさせるわけにはいかない。
国内の僻地に一般兵としてゼインを配属する。
そのときは王位継承は剥奪となり、ビクトリア嬢の産むゼインの子も王位継承は生じない。
罪を理由に廃嫡された王族の子は、血が繋がっていようと王族として扱われない。
罪人のゼインに爵位は与えられないから平民ということになる。
一般兵として働いたゼインの給金ではメイドどころか小屋のような家しか借りれないだろうが、きっとパトローヌ家の支援もあるだろうから飢えはしないだろう。
婚姻前に掃除や洗濯や料理を教えてもらうといい。
身の回りの支度も自身ですることになる。
火を起こすのも湯を沸かすのも、風呂の準備も其方がやることになる。薪が買えなければ拾いに出なければならないし、馬車などないから枝を拾うのも買い物も体力勝負だ。
トイレ掃除や始末も其方がやることになる。
虫が出ても自分で退治しないとならないし、子が産まれたら汚れたおしめも洗わなくてはならない。
冬場は凍るように水が冷たいし、井戸や川から水を運ぶのも一苦労だ。
愛がなければ無理だろうが、大丈夫そうだな」
父「解消ましょう」
私「お父様!?」
母「貴女にそんな生活は無理よ」
私「……」
父「王族との婚姻を許したのだ」
私「では、ゼイン殿下は彼女と!?」
父「ゼイン殿下は責任をとってバトラーズ公爵令嬢を娶らなくてはならない。貴族間でもたまに、別の令嬢を傷モノにしたから婚約を解消して、責任をとって娶るということはあるんだ」
陛「今のところ相手にその気が無いので、別のかたちで償うことになるかもしれないが」
私「彼女を側妃に、」
陛「ビクトリア嬢。
二人とも娶るなら、其方が側妃となる。
リリアン嬢は公爵令嬢で被害者なのに側妃になってくれと言うのは侮辱行為だ。其方より格下ならあり得たがな」
母「ゼイン殿下、バトラーズ嬢に手を出した理由は何ですか」
ゼ「ビクトリア嬢の言葉がきっかけです」
今日は王立学園の卒業パーティが王城で開かれる。
一時間ほど早く来てくれと陛下より手紙をいただいて登城した。
そこにはまだ着替えていない陛下とゼイン殿下が待っていた。
陛「パトローヌ侯爵、夫人、ビクトリア嬢。
これから話す詳細は他言無用としたい。誓約書に署名をして欲しい」
よくは分からないが他言しなきゃいいだけ。
署名をした。
陛「感謝する。
実はゼインとビクトリア嬢の婚約を解消したいという話だ。理由を聞いて、解消にするか、パトローヌ家からの破棄にするか選んで欲しい」
父「どういうことですか!」
母「ビクトリアはもう18歳なのですよ!」
陛「一昨日、ゼインが他の令嬢と関係を持った」
私「そんなっ!」
父「ビクトリア。冷静になりなさい。
陛下。その程度のことは珍しくもありません。
殿下は歳頃の男です。我慢できないこともあれば、摘み食いをしてしまうこともあるでしょう」
陛「相手が問題で、しかも合意は得ていない」
父「まさか、高位貴族のご令嬢を襲ったのですか!?」
母「責任をとって次期王妃にしろと?」
陛「そのようなことを言う当主でも令嬢でもない。
令嬢は“殿下には婚約者がいます”と言いながら抵抗した。
だが、ゼインは止めなかった。
令嬢は問題になることを望んでいない。
思うこともあるだろうが、令嬢の意を汲み、当主も静観してくれた」
父「お相手は」
陛「リリアン・バトラーズ公爵令嬢だ」
母「公爵家…よりにもよってバトラーズ嬢だなんて」
私「あり得ません!マキシア伯爵家の私兵に勝って、セロン様の手首を切り落とした令嬢が?
彼女が誘ったに決まっております!」
陛「ビクトリア嬢。リリアン嬢は常に帯剣しているわけではない。剣を持たなければ非力な女だ。力では男に勝てないのだよ。
それに同意が無かったのは証言するものが複数いる」
父「では何故、その者たちは止めてはくださらなかったのですか」
ゼ「メイドは止めて、護衛は異議を唱えましたが、私が護衛騎士に命じて、メイドを拘束し、王子宮を封鎖してリリアンを犯した。
婚約しているのだから駄目だと言って抵抗するリリアンを縛って、事が成せるよう薬を使った」
私「お、王子宮を? まさか夫婦の間を使ったのですか!」
ゼ「使った」
私「あそこは私が住む場所ではありませんか!
よくもそんな酷いことを!」
ゼ「狙ったわけではない。一番近いのが王子宮だった」
私「他の部屋でもいいではありませんか!」
ゼ「私の判断だった」
陛「こうなった以上、婚約を続けることは無理だろう」
私「嫌です!解消などしません!」
ゼ「其方は私を愛しているのか?」
私「お慕いしております!」
ゼ「そうか。なら着いて行ってくれるのだな」
私「え?」
陛「ゼインは罪を犯した。貴族の中で最大の力を誇るバトラーズ公爵家の当主が溺愛する娘を犯しておいて、ゼインだけ無傷というわけにはいかない。
リリアン嬢は純潔だった。他国の王族や純潔を重んじる貴族へは嫁げなくなったのだからな。
リリアン嬢へ責任をとれないのであれば、王子としていさせるわけにはいかない。
国内の僻地に一般兵としてゼインを配属する。
そのときは王位継承は剥奪となり、ビクトリア嬢の産むゼインの子も王位継承は生じない。
罪を理由に廃嫡された王族の子は、血が繋がっていようと王族として扱われない。
罪人のゼインに爵位は与えられないから平民ということになる。
一般兵として働いたゼインの給金ではメイドどころか小屋のような家しか借りれないだろうが、きっとパトローヌ家の支援もあるだろうから飢えはしないだろう。
婚姻前に掃除や洗濯や料理を教えてもらうといい。
身の回りの支度も自身ですることになる。
火を起こすのも湯を沸かすのも、風呂の準備も其方がやることになる。薪が買えなければ拾いに出なければならないし、馬車などないから枝を拾うのも買い物も体力勝負だ。
トイレ掃除や始末も其方がやることになる。
虫が出ても自分で退治しないとならないし、子が産まれたら汚れたおしめも洗わなくてはならない。
冬場は凍るように水が冷たいし、井戸や川から水を運ぶのも一苦労だ。
愛がなければ無理だろうが、大丈夫そうだな」
父「解消ましょう」
私「お父様!?」
母「貴女にそんな生活は無理よ」
私「……」
父「王族との婚姻を許したのだ」
私「では、ゼイン殿下は彼女と!?」
父「ゼイン殿下は責任をとってバトラーズ公爵令嬢を娶らなくてはならない。貴族間でもたまに、別の令嬢を傷モノにしたから婚約を解消して、責任をとって娶るということはあるんだ」
陛「今のところ相手にその気が無いので、別のかたちで償うことになるかもしれないが」
私「彼女を側妃に、」
陛「ビクトリア嬢。
二人とも娶るなら、其方が側妃となる。
リリアン嬢は公爵令嬢で被害者なのに側妃になってくれと言うのは侮辱行為だ。其方より格下ならあり得たがな」
母「ゼイン殿下、バトラーズ嬢に手を出した理由は何ですか」
ゼ「ビクトリア嬢の言葉がきっかけです」
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