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父親の悩み
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【 ペッシュナー伯爵の視点 】
“お父様、王子様が迎えにくるから婚約者なんて勝手に決めないでください”
“野菜なんて食べたくないです”
“ちょっと!お茶がぬるいじゃない!淹れなおしてちょうだい!”
娘 シルビアは我儘で夢見る子だった。
妻はそれでは駄目だと厳しい教師をつけたが、シルビアの反発は強かった。
領地に逃げてしまった。
跡継ぎが必要なのは分かっていたが、私は娘が欲しかった。
息子二人が生まれ、最後にともう一人作って生まれたのがシルビアだった。
妻と妻にそっくりの息子達は、かなりの美貌だ。
シルビアは私寄りの顔だが平凡な容姿だった。
だけど目の中に入れても痛くないとはこのことかと思うほど、可愛くて仕方がなかった。
野菜は分からないように料理や菓子に入れろと命じた。
学園に行きたくないと言うので 行かなくていいと行った。義務ではないからだ。
婚約だってしなくていい。
シルビア専用に屋敷を建て、使用人を雇い、死ぬまで不自由なく暮らせる金はある。
毎月ドレスを新調したところで痛くも痒くもない。
時々領地に行って愛しい娘シルビアと過ごした。
だがある日、早馬が到着した。
“お嬢様が事故に遭い、意識が戻りません”
領地の執事からの手紙だった。
妻は馬車で、私は護衛の私兵と馬で領地へ向かった。
目立った外傷は無いが 頭部を打って目を覚まさなかったようだが、2日後に目覚めたという。
既に目覚めて数日経ったシルビアに会うと 別人だった。
瞳の色も髪の色も 顔も指の形も 黒子の位置も同じでこの体はシルビアなのに違う気がする。
「実はシルビアお嬢様は記憶が部分的に欠如なさっております。我々使用人のことは分からず、現在の国王陛下のお名前も答えられません。
読み書きはできます。他にもお調べしますか?」
「テストをしてみてくれ」
「手配いたします」
シルビアは私を父親と認識していた。
家族は覚えているのだな。
数日後 テストをして、その結果と一緒に医師の診断が下った。
「歴史は諦めてください。
数学はかなりの実力です。
自然学は偏りがあります。固有のものは諦めてください。
そして淑女教育はやり直さねばなりません。
王族、貴族について全てお忘れです。
貴族ルールもご存知ありません。礼やダンス、テーブルマナーもお忘れになりました」
テストをした講師は困った顔をしていた。
「記憶以外、体に異常はございません。
性格が変わります。培ってきたものが消えてしまったのですから有り得ることです。
ひとつだけ嬉しいニュースがございます」
「嬉しいニュース?」
「野菜好きになりました」
「……分かった」
戸惑うシルビアに違和感を覚えるなど どうかしている。
だが、一緒に過ごせば過ごすほど中身が別人に思えた。
「だとしたら、娘ではないと放り出すおつもりですか」
妻が問いかけた。
「いや」
「あの子は私と貴方の子です。死にたくなるような痛みに耐えて産んだ子です。
シルビアを拒否なさるなら、私はシルビアを連れて離縁します」
「怒らないでくれ。
シルビアは私の娘だ」
事故後のシルビアは順応が早かった。
“パパ” と呼び、甘えてくれる。
私が夢見た娘との関わりだった。
そして中身がシルビアではないことは確信できた。
偶然や閃きで済まされない知識が 事故後のシルビアにはあった。それはこの大陸には無い物のことを口に出してしまっていた。
しまった! と言う顔をして誤魔化す。
次第にボロが出ることは少なくなっていった。
きっとシルビアはあの時天に召され、我々の世界より進んだ世界の魂が入り込んだのだろう。
全てとは言わないが、神が同情をしてくださったのだと思い、新しいシルビアを受け入れた。
不可解なことは終わりじゃなかった。
“お父様、王子様が迎えにくるから婚約者なんて勝手に決めないでください”
“野菜なんて食べたくないです”
“ちょっと!お茶がぬるいじゃない!淹れなおしてちょうだい!”
娘 シルビアは我儘で夢見る子だった。
妻はそれでは駄目だと厳しい教師をつけたが、シルビアの反発は強かった。
領地に逃げてしまった。
跡継ぎが必要なのは分かっていたが、私は娘が欲しかった。
息子二人が生まれ、最後にともう一人作って生まれたのがシルビアだった。
妻と妻にそっくりの息子達は、かなりの美貌だ。
シルビアは私寄りの顔だが平凡な容姿だった。
だけど目の中に入れても痛くないとはこのことかと思うほど、可愛くて仕方がなかった。
野菜は分からないように料理や菓子に入れろと命じた。
学園に行きたくないと言うので 行かなくていいと行った。義務ではないからだ。
婚約だってしなくていい。
シルビア専用に屋敷を建て、使用人を雇い、死ぬまで不自由なく暮らせる金はある。
毎月ドレスを新調したところで痛くも痒くもない。
時々領地に行って愛しい娘シルビアと過ごした。
だがある日、早馬が到着した。
“お嬢様が事故に遭い、意識が戻りません”
領地の執事からの手紙だった。
妻は馬車で、私は護衛の私兵と馬で領地へ向かった。
目立った外傷は無いが 頭部を打って目を覚まさなかったようだが、2日後に目覚めたという。
既に目覚めて数日経ったシルビアに会うと 別人だった。
瞳の色も髪の色も 顔も指の形も 黒子の位置も同じでこの体はシルビアなのに違う気がする。
「実はシルビアお嬢様は記憶が部分的に欠如なさっております。我々使用人のことは分からず、現在の国王陛下のお名前も答えられません。
読み書きはできます。他にもお調べしますか?」
「テストをしてみてくれ」
「手配いたします」
シルビアは私を父親と認識していた。
家族は覚えているのだな。
数日後 テストをして、その結果と一緒に医師の診断が下った。
「歴史は諦めてください。
数学はかなりの実力です。
自然学は偏りがあります。固有のものは諦めてください。
そして淑女教育はやり直さねばなりません。
王族、貴族について全てお忘れです。
貴族ルールもご存知ありません。礼やダンス、テーブルマナーもお忘れになりました」
テストをした講師は困った顔をしていた。
「記憶以外、体に異常はございません。
性格が変わります。培ってきたものが消えてしまったのですから有り得ることです。
ひとつだけ嬉しいニュースがございます」
「嬉しいニュース?」
「野菜好きになりました」
「……分かった」
戸惑うシルビアに違和感を覚えるなど どうかしている。
だが、一緒に過ごせば過ごすほど中身が別人に思えた。
「だとしたら、娘ではないと放り出すおつもりですか」
妻が問いかけた。
「いや」
「あの子は私と貴方の子です。死にたくなるような痛みに耐えて産んだ子です。
シルビアを拒否なさるなら、私はシルビアを連れて離縁します」
「怒らないでくれ。
シルビアは私の娘だ」
事故後のシルビアは順応が早かった。
“パパ” と呼び、甘えてくれる。
私が夢見た娘との関わりだった。
そして中身がシルビアではないことは確信できた。
偶然や閃きで済まされない知識が 事故後のシルビアにはあった。それはこの大陸には無い物のことを口に出してしまっていた。
しまった! と言う顔をして誤魔化す。
次第にボロが出ることは少なくなっていった。
きっとシルビアはあの時天に召され、我々の世界より進んだ世界の魂が入り込んだのだろう。
全てとは言わないが、神が同情をしてくださったのだと思い、新しいシルビアを受け入れた。
不可解なことは終わりじゃなかった。
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