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兄王との食事
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ガイア国王と王弟ゼノンとネスティフィーネの3人で夕食を食べていた。
ゼノンはネスティフィーネが帰りたいと言い出さないよう気を配り、ガイアは弟のためにネスティフィーネを長くフォルモントに滞在させたかった。
ネスティフィーネは村で食べる食事とは違うものに興味津々で口に運ぶ。
「しかし、ネスティフィーネ殿は本当に愛らしいな。ゼノンが喜んで振り回される理由がよくわかるよ。弟が相手でなければ……ゼノン、怖い顔をするな」
「させるようなことをおっしゃるからです」
「今夜のバルデオ公爵家のパーティには行くんだぞ」
「嫌です」
「エデンに出発する2ヶ月前に出席の返事を出しただろう。衣装だって作らせたじゃないか。国に戻って来て2週間近く経つ。それに断る理由がない。例えネスティフィーネ殿がまだ目覚めていなかったとしても危篤ではない以上、数時間のパーティには出席する義務がある。特に今夜は特別だ。前バルデオ公爵が完全に引退して住まいを移すし、現公爵夫妻の結婚20年の祝いのパーティだ。欠席という選択は許されるものではない。場所も王宮なのだから遅刻しないようにしてくれ」
「はい」
「パーティ?」
「ネスティフィーネ殿はパーティに行ったことはあるか?」
「村の誰かの誕生日とか結婚とか出産とかのお祝いで集まるよ」
「行きたいかい?」
「行きたくない」
「そうか。では遊び相手をつけるからゼノンを貸してくれるかな?」
「うん。私のじゃないけど」
ゼノンを見ると寂しそうな顔をしていたので何となく慰めることにしたはずなのに、ほぼ鞭になってしまった。
「ずっと遊んでいたんだから、お兄さんの言うことをきこう。お祝いなんでしょ?行くって言ったのに当日行かないなんて言い出すのはすごく良くないよ。がっかりさせちゃうよ。
そうだ、服作ってもらったんでしょ?ゼノンは顔がいいから何でも似合いそうだけど着てみせて」
「似合っていたらキスしてもいいか?」
「いいよ」
ガイアは自身の側近とゼノンの側近に視線を送ったが、側近達は“知りません”と合図を送った。
ガイアは2人がキスをする仲になっているとは思わなかった。夫婦の寝室を使っていたのは看病のためだと思っていたし、村にいた間は宿が二部屋しかなく平民の一人暮らしをしているネスティフィーネの家に滞在して一緒に寝ていたとも聞いていたが、ガイアには成長する前のネスティフィーネが少女のように見えたことから他意はないと思っていた。
だがたった今、ゼノンは抑えているらしい色気を漏らしながらキスを要求した。となると、確認せざるを得なかった。
「ゼノン、サフィール村でもずっと同じベッドで眠っていたのだよな?」
「部屋に入れてもらえたときから一緒です」
当然ですという顔をして返事をしたゼノンを見つめるガイア。
「ネスティフィーネ様、これから火をつけてデザートを炙りますので見にいらっしゃいますか?」
料理長がネスティフィーネに声をかけた。
「うん!料理長さんも火が吐けるんだね!仲間?」
「え?火は吐けません」
「あ、なんでもない」
勘違いしたネスティフィーネは席を立ち、少し離れた調理スペースに向かった。
一方、ネスティフィーネが席を離れたのでガイアは確認したいことがあった。
確かゼノンが相手にしていたのは高級娼館の娼婦だ。そこに通うならそっちが好みだったはずがない。王都には高級娼館が二軒あり、ククリという店には新人と幼く見える女とスレンダーな女が、フェガリはベテランで豊満な女が揃っている。少女が好みならククリを使っていたはずだ。
ネスティフィーネを見舞ったときは少女のように見えたが、成長熱を終えた今は魅惑な変化を遂げている。ゼノンがそんな予想をしていたはずがない。成長前のネスティフィーネに惹かれたはずだ。
「ゼノン、おまえは幼い感じの女が好きなのか?」
ガイアは小声でゼノンに尋ねた。
「はい?」
「だって寝込んでいたときは少女に見えたぞ」
「16歳ですが幼く見えましたね」
「今ではその…豊かなものを持っているが、村ではなかっただろう」
「兄上、俺はネスティフィーネが貧乳でも巨乳でも関係ないんです。ネスティフィーネそのものを愛してるんです」
「なるほど、安心した……おい、本当に火を吹いてるな」
「便利ですよ。暖炉や風呂などの薪とか、焚き火とか、パンの上にのせたチーズとか」
「便利だな。羨ましいよ」
デザートと一緒に戻ってきたネスティフィーネは、デザートを食べた後、厨房に行きたいと言うのでアミルス達が付き添った。
【 部屋に残った兄弟の視点 】
ネスティフィーネがいなくなり、気兼ねなく会話を始めた。
「兄上、バルデオ公爵家は、」
「ダナエが出戻ったな」
「はい」
「おまえに言い寄っていたな」
「はい。カルディア(王国)の第二王子の元から出戻った理由をご存知ですか?」
「ニコラス王子は以前から女関係には問題があった。未婚既婚は関係なく気に入ったら手を出す。一度は兄王子の婚約者に手を出して揉めたこともある。どの女もけして無理強いはしていないから自己責任ということになる。兄王子の婚約者はニコラス王子の後宮に納められたそうだ。自己責任とはいえかなりの醜聞で、もうその令嬢に価値はなくなってしまったし、兄王子の婚約者と関係を持つのは不適切過ぎるということで責任を取らせたかたちだ。
カルディアはうちと違って王子達の中で戦わせて、一番強い王子と二番目に強かった王子に後宮を持つことが認められている。ニコラス王子と兄王子は戦うたびに順位が入れ替わっているようだ」
「まだ決着がつかないんですね」
「ルールがなければどちらかが死んでいただろうな。
いずれにしても5人までしか後宮に女を住まわすことはできないのは知ってるな?」
「はい、結婚相手は国王が決めますが後宮の女は王子が選んでいいと聞きました」
「その通り。
だが意外にもニコラスの後宮は増えなかった。兄王子の元婚約だけ。その後娶った正妃のダナエとは初夜以降、寝室を共にすることはなかった。後宮にも通わず妻も抱かず、外で女遊びを繰り返した。
いずれにしてもニコラスには子が生まれていない。
放置されたダナエは浮気をした。相手は誰だと思う?」
「まさか兄王子とか?」
「義父だ」
「カルディアの国王!?」
「男児が3人生まれたら後宮は役割を終える。新しい女は入れられない。第三王子が生まれた日から国王の後宮にその規制が適用された。ダナエが嫁いだ頃には王妃は50代、後宮の女達も全員40代。
若い女に久しかった国王と初夜は済ませたが相手にされずに持て余していたダナエが関係を持った。ダナエの方は魔がさしたのだろう。だが国王は頻繁に呼び出しては相手をさせた。ニコラスが現場をおさえて離縁を求めた。それでダナエは離縁して出戻った」
「公爵が兄上に報告を?」
「いや、カルディアのイリス王妃が私宛に手紙を寄越したんだ」
「王妃はお怒りだったのですね」
「自分の夫と息子の二股だからな」
「元凶はニコラス王子のような気がしますが」
「ダナエのどこが気に入らなかったのだろう。ゼノンも縁談を何度と断っていたな」
ダナエ・バルデオは公爵令嬢だし、フォルモントでは社交界の華だった。美人だしスタイルも良いから男達からのアプローチは多かった。
「鼻に付くんですよ。自分が一番でチヤホヤされるべき女だと思っているのが滲み出ているんです。自分より劣ると思った女には蔑み傲慢に接しますし、自分に並ぶかもと思えばマウントを取ろうと執拗になったこともあります。そのためには利用できる男やと関係を持ったり、ライバルの恋人や家族と寝ることもあります。前にも言いましたが好みの顔ではないのに節操もない女は妻にしても抱けません。
バルデオ公爵家はワインやシャンパンなどの特産品で潤っている家門です。子を産ませるだけなら強い人狼族が生まれ続けている家門の女がいいと思って断りました」
「その悪い癖をカルディアで発揮させたのかもな。
実はそのニコラス王子が来ているんだ」
「え?王子が?」
「来たいと言うから許可したんだが、パーティに出席するつもりらしい」
「自分の父親と寝ていたから別れたのにですか?」
「表向きは円満離婚だからな。それにカルディアはバルデオから酒を輸入しているからそれを心配しているのだろう」
フォルモントでも農作物は育てているし、畜産も手がけている。ただやはりエデンのように豊かに実らないから収穫量が不十分でエデンからの輸入に頼っている。肉質も劣る。
カルディアはうちよりも北にありもっと育ちにくい。特にカルディアの酒は好んでは飲まないレベルだ。今では金はないが酒は飲みたい者向けに安価で販売する程度に生産している。それ以外の者向けは輸入品に頼っている。フォルモントのバルデオ公爵領はカルディアから一番近い酒の産地だ。
「早く帰国してもらいたいですね」
カルディアとフォルモントは昔一つの国だった。当時の国王に余命があまりないと知るや否や第二王子が王太子に下剋上をしかけ、2人は抗争を始めた。決着がついた頃、王が崩し遺言が公開された。国を半分に分けて統治させるという王命だった。勝った王太子にはフォルモントを、負けた第二王子にはカルディアを与えた。つまりどちらも人狼族の国である。それ以来、どちらの国も後継者は強い王子というしきたりができた。
「だいぶ血は薄まったが赤の他人ではない。表面上くらい仲良くやってくれ」
「はい」
ゼノンはネスティフィーネが帰りたいと言い出さないよう気を配り、ガイアは弟のためにネスティフィーネを長くフォルモントに滞在させたかった。
ネスティフィーネは村で食べる食事とは違うものに興味津々で口に運ぶ。
「しかし、ネスティフィーネ殿は本当に愛らしいな。ゼノンが喜んで振り回される理由がよくわかるよ。弟が相手でなければ……ゼノン、怖い顔をするな」
「させるようなことをおっしゃるからです」
「今夜のバルデオ公爵家のパーティには行くんだぞ」
「嫌です」
「エデンに出発する2ヶ月前に出席の返事を出しただろう。衣装だって作らせたじゃないか。国に戻って来て2週間近く経つ。それに断る理由がない。例えネスティフィーネ殿がまだ目覚めていなかったとしても危篤ではない以上、数時間のパーティには出席する義務がある。特に今夜は特別だ。前バルデオ公爵が完全に引退して住まいを移すし、現公爵夫妻の結婚20年の祝いのパーティだ。欠席という選択は許されるものではない。場所も王宮なのだから遅刻しないようにしてくれ」
「はい」
「パーティ?」
「ネスティフィーネ殿はパーティに行ったことはあるか?」
「村の誰かの誕生日とか結婚とか出産とかのお祝いで集まるよ」
「行きたいかい?」
「行きたくない」
「そうか。では遊び相手をつけるからゼノンを貸してくれるかな?」
「うん。私のじゃないけど」
ゼノンを見ると寂しそうな顔をしていたので何となく慰めることにしたはずなのに、ほぼ鞭になってしまった。
「ずっと遊んでいたんだから、お兄さんの言うことをきこう。お祝いなんでしょ?行くって言ったのに当日行かないなんて言い出すのはすごく良くないよ。がっかりさせちゃうよ。
そうだ、服作ってもらったんでしょ?ゼノンは顔がいいから何でも似合いそうだけど着てみせて」
「似合っていたらキスしてもいいか?」
「いいよ」
ガイアは自身の側近とゼノンの側近に視線を送ったが、側近達は“知りません”と合図を送った。
ガイアは2人がキスをする仲になっているとは思わなかった。夫婦の寝室を使っていたのは看病のためだと思っていたし、村にいた間は宿が二部屋しかなく平民の一人暮らしをしているネスティフィーネの家に滞在して一緒に寝ていたとも聞いていたが、ガイアには成長する前のネスティフィーネが少女のように見えたことから他意はないと思っていた。
だがたった今、ゼノンは抑えているらしい色気を漏らしながらキスを要求した。となると、確認せざるを得なかった。
「ゼノン、サフィール村でもずっと同じベッドで眠っていたのだよな?」
「部屋に入れてもらえたときから一緒です」
当然ですという顔をして返事をしたゼノンを見つめるガイア。
「ネスティフィーネ様、これから火をつけてデザートを炙りますので見にいらっしゃいますか?」
料理長がネスティフィーネに声をかけた。
「うん!料理長さんも火が吐けるんだね!仲間?」
「え?火は吐けません」
「あ、なんでもない」
勘違いしたネスティフィーネは席を立ち、少し離れた調理スペースに向かった。
一方、ネスティフィーネが席を離れたのでガイアは確認したいことがあった。
確かゼノンが相手にしていたのは高級娼館の娼婦だ。そこに通うならそっちが好みだったはずがない。王都には高級娼館が二軒あり、ククリという店には新人と幼く見える女とスレンダーな女が、フェガリはベテランで豊満な女が揃っている。少女が好みならククリを使っていたはずだ。
ネスティフィーネを見舞ったときは少女のように見えたが、成長熱を終えた今は魅惑な変化を遂げている。ゼノンがそんな予想をしていたはずがない。成長前のネスティフィーネに惹かれたはずだ。
「ゼノン、おまえは幼い感じの女が好きなのか?」
ガイアは小声でゼノンに尋ねた。
「はい?」
「だって寝込んでいたときは少女に見えたぞ」
「16歳ですが幼く見えましたね」
「今ではその…豊かなものを持っているが、村ではなかっただろう」
「兄上、俺はネスティフィーネが貧乳でも巨乳でも関係ないんです。ネスティフィーネそのものを愛してるんです」
「なるほど、安心した……おい、本当に火を吹いてるな」
「便利ですよ。暖炉や風呂などの薪とか、焚き火とか、パンの上にのせたチーズとか」
「便利だな。羨ましいよ」
デザートと一緒に戻ってきたネスティフィーネは、デザートを食べた後、厨房に行きたいと言うのでアミルス達が付き添った。
【 部屋に残った兄弟の視点 】
ネスティフィーネがいなくなり、気兼ねなく会話を始めた。
「兄上、バルデオ公爵家は、」
「ダナエが出戻ったな」
「はい」
「おまえに言い寄っていたな」
「はい。カルディア(王国)の第二王子の元から出戻った理由をご存知ですか?」
「ニコラス王子は以前から女関係には問題があった。未婚既婚は関係なく気に入ったら手を出す。一度は兄王子の婚約者に手を出して揉めたこともある。どの女もけして無理強いはしていないから自己責任ということになる。兄王子の婚約者はニコラス王子の後宮に納められたそうだ。自己責任とはいえかなりの醜聞で、もうその令嬢に価値はなくなってしまったし、兄王子の婚約者と関係を持つのは不適切過ぎるということで責任を取らせたかたちだ。
カルディアはうちと違って王子達の中で戦わせて、一番強い王子と二番目に強かった王子に後宮を持つことが認められている。ニコラス王子と兄王子は戦うたびに順位が入れ替わっているようだ」
「まだ決着がつかないんですね」
「ルールがなければどちらかが死んでいただろうな。
いずれにしても5人までしか後宮に女を住まわすことはできないのは知ってるな?」
「はい、結婚相手は国王が決めますが後宮の女は王子が選んでいいと聞きました」
「その通り。
だが意外にもニコラスの後宮は増えなかった。兄王子の元婚約だけ。その後娶った正妃のダナエとは初夜以降、寝室を共にすることはなかった。後宮にも通わず妻も抱かず、外で女遊びを繰り返した。
いずれにしてもニコラスには子が生まれていない。
放置されたダナエは浮気をした。相手は誰だと思う?」
「まさか兄王子とか?」
「義父だ」
「カルディアの国王!?」
「男児が3人生まれたら後宮は役割を終える。新しい女は入れられない。第三王子が生まれた日から国王の後宮にその規制が適用された。ダナエが嫁いだ頃には王妃は50代、後宮の女達も全員40代。
若い女に久しかった国王と初夜は済ませたが相手にされずに持て余していたダナエが関係を持った。ダナエの方は魔がさしたのだろう。だが国王は頻繁に呼び出しては相手をさせた。ニコラスが現場をおさえて離縁を求めた。それでダナエは離縁して出戻った」
「公爵が兄上に報告を?」
「いや、カルディアのイリス王妃が私宛に手紙を寄越したんだ」
「王妃はお怒りだったのですね」
「自分の夫と息子の二股だからな」
「元凶はニコラス王子のような気がしますが」
「ダナエのどこが気に入らなかったのだろう。ゼノンも縁談を何度と断っていたな」
ダナエ・バルデオは公爵令嬢だし、フォルモントでは社交界の華だった。美人だしスタイルも良いから男達からのアプローチは多かった。
「鼻に付くんですよ。自分が一番でチヤホヤされるべき女だと思っているのが滲み出ているんです。自分より劣ると思った女には蔑み傲慢に接しますし、自分に並ぶかもと思えばマウントを取ろうと執拗になったこともあります。そのためには利用できる男やと関係を持ったり、ライバルの恋人や家族と寝ることもあります。前にも言いましたが好みの顔ではないのに節操もない女は妻にしても抱けません。
バルデオ公爵家はワインやシャンパンなどの特産品で潤っている家門です。子を産ませるだけなら強い人狼族が生まれ続けている家門の女がいいと思って断りました」
「その悪い癖をカルディアで発揮させたのかもな。
実はそのニコラス王子が来ているんだ」
「え?王子が?」
「来たいと言うから許可したんだが、パーティに出席するつもりらしい」
「自分の父親と寝ていたから別れたのにですか?」
「表向きは円満離婚だからな。それにカルディアはバルデオから酒を輸入しているからそれを心配しているのだろう」
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「早く帰国してもらいたいですね」
カルディアとフォルモントは昔一つの国だった。当時の国王に余命があまりないと知るや否や第二王子が王太子に下剋上をしかけ、2人は抗争を始めた。決着がついた頃、王が崩し遺言が公開された。国を半分に分けて統治させるという王命だった。勝った王太子にはフォルモントを、負けた第二王子にはカルディアを与えた。つまりどちらも人狼族の国である。それ以来、どちらの国も後継者は強い王子というしきたりができた。
「だいぶ血は薄まったが赤の他人ではない。表面上くらい仲良くやってくれ」
「はい」
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