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ロバートの仮婚約者
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【 ロバートの視点 】
親同士が学友で、父上とガデュエット伯爵はとても親しかった。
当主達は子を婚姻させて縁を繋げようとしていた。
10歳の時にガデュエット伯爵邸に連れて行かれて紹介された子は 父上から聞いていた子だった。
5つも歳下で未来の妻と言われても良く分からなかった。
“お人形さんみたい”
こんな小さな子でも、女は女だと思った。
茶会でも、親戚でも、令嬢達が付き纏う。
拒否権は無いだろうと諦めた。
だが小さな女の子はそれだけで、俺に一切興味を示さなかった。不躾に見ることもないし、腕を絡ませることもない。
伯爵の膝の上に乗ってお菓子を食べさせてもらっていたり、兄君達にかまってもらったりして笑顔でいるだけだった。
話しかけても会話は続かない。
『ビビアン、嫌いな食べ物は何?』
『カニ』
『どうして?』
『カニだから』
後で伯爵夫人に聞いたら、蜘蛛に似ていて触れないらしい。
『蟹が生きていれば 泣きながら走って消えるのよ。
だけど身だけを出すと“美味しい” って言ってよく食べるわ』
と笑っていた。
俺に話しかけないし質問もしない。
“お人形さんみたい” というのはそのままの意味で、俺に全く興味がないのが分かった。
観察しているととても可愛いかった。
容姿は普通だが、見ていて胸があたたかくなる。
蟻に餌をあげようと葉っぱを拾ってきて蜂蜜を垂らして地面に置いたと思ったら、蟻をジュースの中にたくさん入れて俺にくれた。
『アリジュース。あげる』
『え?…ありがとう』
これは嫌がらせか?
父上はもらっておきなさいと言うし、伯爵はニコニコしていた。
一瞬 ビビアンが顔を逸らしたすきに兄君が空のグラスを渡して、アリジュースを回収した。
『(美味しかったって言って)』
兄君のショーン殿が耳打ちをした。
『ビビアン、美味しかったよ』
『良かった。もう一杯飲む?』
『ビビアン、蟻ジュースは10年に一度しか飲んではいけないと王様が仰っていたのを忘れたのか?
ビビアンは赤ちゃんの時に飲んだから当分飲めないって説明しただろう?
ロバート殿だって同じだよ』
『忘れてた』
そしてビビアンの興味は別のものに移り、それ以降は俺に話しかけることも無かった。
仮婚約はしたが、領地は近くないしピノール家は王都に屋敷を構えていなかったので子供の間は交流しなくてもいいだろうということになった。
節目に花だけ送り合うという両家の決まりを作っただけだった。
学園が始まると、令嬢達が鬱陶しくて嫌だった。
気持ち悪い猫撫で声に、気持ち悪い笑顔。
いつもビビアンを思い出して心を鎮めていた。
大人になったビビアンと会うことを心待ちにしていた。
それでも嫌でたまらなくて二年次からは騎士コースを選択した。別棟になり、令嬢達と関わることが少なくなるからだ。
三年生になると王城に見学に行く日があって、良く分からない講義を受けた。
週末の休みに2人が呼び出された。
もう一人はボー侯爵家のアンドリュー殿だった。
『私は騎士団に身を置いているバーノックという者で特殊任務に就く隊員をスカウトし育てる役目を任されている。
騎士団の中では師団長の位置けにある。
先日の講義はテストだった。
君達2人には適正があったから今日はスカウトのために呼んだ。
2人は能力の種類が違うから訓練も任務も別々だし、どんな能力なのか どんな任務なのか口外してはならないという制約を課すことになる。
それぞれ説明を聞いてから受けるか受けないか返事が欲しい。
学園は卒業してもらうが、下準備は始めさせてもらう。
では個別に説明をしよう。ボー殿は隣の部屋へ案内しよう』
アンドリュー・ボーがいなくなり ふたりきりになると、誓約書を書かされた後にバーノック師団長が説明を始めた。
親同士が学友で、父上とガデュエット伯爵はとても親しかった。
当主達は子を婚姻させて縁を繋げようとしていた。
10歳の時にガデュエット伯爵邸に連れて行かれて紹介された子は 父上から聞いていた子だった。
5つも歳下で未来の妻と言われても良く分からなかった。
“お人形さんみたい”
こんな小さな子でも、女は女だと思った。
茶会でも、親戚でも、令嬢達が付き纏う。
拒否権は無いだろうと諦めた。
だが小さな女の子はそれだけで、俺に一切興味を示さなかった。不躾に見ることもないし、腕を絡ませることもない。
伯爵の膝の上に乗ってお菓子を食べさせてもらっていたり、兄君達にかまってもらったりして笑顔でいるだけだった。
話しかけても会話は続かない。
『ビビアン、嫌いな食べ物は何?』
『カニ』
『どうして?』
『カニだから』
後で伯爵夫人に聞いたら、蜘蛛に似ていて触れないらしい。
『蟹が生きていれば 泣きながら走って消えるのよ。
だけど身だけを出すと“美味しい” って言ってよく食べるわ』
と笑っていた。
俺に話しかけないし質問もしない。
“お人形さんみたい” というのはそのままの意味で、俺に全く興味がないのが分かった。
観察しているととても可愛いかった。
容姿は普通だが、見ていて胸があたたかくなる。
蟻に餌をあげようと葉っぱを拾ってきて蜂蜜を垂らして地面に置いたと思ったら、蟻をジュースの中にたくさん入れて俺にくれた。
『アリジュース。あげる』
『え?…ありがとう』
これは嫌がらせか?
父上はもらっておきなさいと言うし、伯爵はニコニコしていた。
一瞬 ビビアンが顔を逸らしたすきに兄君が空のグラスを渡して、アリジュースを回収した。
『(美味しかったって言って)』
兄君のショーン殿が耳打ちをした。
『ビビアン、美味しかったよ』
『良かった。もう一杯飲む?』
『ビビアン、蟻ジュースは10年に一度しか飲んではいけないと王様が仰っていたのを忘れたのか?
ビビアンは赤ちゃんの時に飲んだから当分飲めないって説明しただろう?
ロバート殿だって同じだよ』
『忘れてた』
そしてビビアンの興味は別のものに移り、それ以降は俺に話しかけることも無かった。
仮婚約はしたが、領地は近くないしピノール家は王都に屋敷を構えていなかったので子供の間は交流しなくてもいいだろうということになった。
節目に花だけ送り合うという両家の決まりを作っただけだった。
学園が始まると、令嬢達が鬱陶しくて嫌だった。
気持ち悪い猫撫で声に、気持ち悪い笑顔。
いつもビビアンを思い出して心を鎮めていた。
大人になったビビアンと会うことを心待ちにしていた。
それでも嫌でたまらなくて二年次からは騎士コースを選択した。別棟になり、令嬢達と関わることが少なくなるからだ。
三年生になると王城に見学に行く日があって、良く分からない講義を受けた。
週末の休みに2人が呼び出された。
もう一人はボー侯爵家のアンドリュー殿だった。
『私は騎士団に身を置いているバーノックという者で特殊任務に就く隊員をスカウトし育てる役目を任されている。
騎士団の中では師団長の位置けにある。
先日の講義はテストだった。
君達2人には適正があったから今日はスカウトのために呼んだ。
2人は能力の種類が違うから訓練も任務も別々だし、どんな能力なのか どんな任務なのか口外してはならないという制約を課すことになる。
それぞれ説明を聞いてから受けるか受けないか返事が欲しい。
学園は卒業してもらうが、下準備は始めさせてもらう。
では個別に説明をしよう。ボー殿は隣の部屋へ案内しよう』
アンドリュー・ボーがいなくなり ふたりきりになると、誓約書を書かされた後にバーノック師団長が説明を始めた。
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