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人妻になります!
翌日、式の時間に合わせて教会に到着した。
ドレスだと馬車から降り辛い。
お兄様が手を貸してくれた。
中に入ると、子爵と子供達、子爵の両親がいた。
感じの悪かった子供達も、公爵の前では弱った子猫みたいに大人しい。
父「エリーズは自立できるので、放っておいて大丈夫だ。迷惑をかける代わりに支援をしたのだから、割り切って欲しい。ジスラン殿もソニア嬢もそのつもりでいて欲しい。
妾を迎えるのも恋人を作るのも子爵の自由だが、エリーズに害の無いようにして欲しい。
ブラージェル子爵夫人としてパーティか何かに同伴させたい時は予めエリーズに告げて欲しい。
他の女性を伴っても構わないが、王宮行事だけは駄目だ。いいね?」
ク「承知しました」
兄「始まるようだ。エリーズ、行っておいで」
私「はい」
子爵が腕を出した。
「??」
「エスコートは不要なようだな」
エスコート…婚約以降 エリーズは忙しすぎてパーティなどに参加していないし、自身の誕生日もパーティをしなかった。
デビュータントは一応レアンドルと参加したが、エスコートなどしてもらっていない。
エリーズの記憶を探っても無かったのだ。
「あ、ごめんなさい。こういうエスコートはもう記憶に無くて…ありがとうございます。こんな感じで大丈夫でしょうか」
「……それでは何かを強請る犬だ。私側の手だけでいい」
両手を乗せた私を見て子爵は少し笑った。
「笑いました?」
「いや…笑ってない」
多分こうだろうという想像は出来たが、惠莉はちょっと照れ臭かった。
馬鹿王子はあれでも絵本に出てくるような美男子、つまりエリのタイプではない。対して子爵は黒髪に濃い青の目の男前。魂が日本人のエリにとっては好みと言える。だからわざと両手を乗せた。
「笑いましたよね」
「気のせいだ」
祭壇の前に行く途中、長い裾のドレスで怖かった。
「コケたくないなぁ」
「……」
神父様がお決まりのセリフを言って、私達はそれぞれ“誓います”と宣誓し、署名を終えた。
「では、誓いのキスを」
するの!?
子爵も私をじっと見て固まっている。
「あの、届かないですし、私 したことないので、子爵様からお願いします」
「あ、ああ」
彼の顔が近付き、唇を重ねた……だけじゃなかった。
「!!!!!」
何で舌を入れるのよ!!
まさか、この世界ではこれが正解なの!?
「んん“」
長いキスになのか 舌を入れたことになのか分からないけど、神父が咳払いをした。
彼はキスを止めるとニヤリと口角を上げた。
もしかして揶揄われた!?
私のファーストキスなのに!?
「うぐっ」
「ふ、夫人!?」
思わず子爵の腹にグーパンを入れた。
「ア、アルミュア公爵家の伝統で、逞しい新郎にグーパンを入れて歓迎するのです」
「グーパン?」
「拳です」
「初めて聞きますね。子爵様、大丈夫ですか?」
「…大丈夫です。私は逞しい夫ですから」
案外 いい人かもしれない。
「では、二人を夫婦と認めます。神の祝福を」
振り返ると全員ポカンとしていた。お父様だけは下を向いて肩を震わせている。
「では子爵様、こちらで失礼します」
「え?」
「父達と屋敷に帰りますわ。長くは滞在できませんので、早速一緒に領内を少し見に行こうと思います。
今日はありがとうございました。では、ごきげんよう」
「……」
屋敷に戻って着替えると、4人で港町を見学した。
「うんまっ」
3種の貝の串焼きを食べていた。
「エリーズは美味そうに食べるな」
「新鮮な貝で美味しいですよ、お兄様」
「こんなに美しいお嬢様に喜んでもらえて嬉しいです」
露天のおばさんが微笑んだ。
「もうお嬢さんじゃないんです。さっき、夫が出来ました」
「…貴族のご令嬢であっていますか?」
「はい」
「さっきというのは1週間前とか?」
「3時間前です」
「この領地の教会で?」
「はい」
「まさか、領主様のところへ嫁いだ公女様!?」
「そんな感じです」
「お、お代をお返しします」
「駄目ですよ。商売なんですから。
あの、味はひとつですか?」
「あ、はい」
「刻んだ乾燥バジルをふりかけて、ガーリックオイルを塗って、塩を振りかけて軽く焼くといいですよ。バジルは焦がさないようにしてくださいね。
更に、仕上げに軽く粉チーズをふりかけてもいいかもしれませんよ。
粉唐辛子で少しピリ辛にしてもいいですし、フライパンでバター焼きにしても美味しいですよ。レモンを絞ればサッパリします」
「やってみます」
「チェリーより少し大きいくらいのトマトがあれば貝と貝の間に刺しても美味しいですよ。順番に食べれば口直しにもなりますし、一緒に食べればトマトの旨みが加わって違う感じになります。トマトはガーリックもチーズも相性がいいですからね。
また来ますね」
本当は醤油が欲しい。
その後は海鮮レストランで食事をして屋敷に帰った。
翌日は別の場所を観光し、翌々日にお父様達は帰ってしまった。
「お嬢様、お手紙が届きました」
「誰から?」
「漁港商会です」
漁港組合とか商店街組合みたいなものかな。
「要約して」
「商会長が挨拶と相談をしたいそうです」
「何だろう。来てって返事を出して」
「かしこまりました」
早くて明日かと思ったら、午後の4時頃に訪ねて来た。
「漁港商会長ナタナエルと申します。ブラージェル夫人にご挨拶を申し上げます」
「ナタナエル商会長、初めまして。エリーズ・ブラージェルと申します。
お急ぎのようですが、何か問題でも?」
「先日にいらしてくださった 貝の串焼きを売っている店のことを覚えておいででしょうか」
「覚えています。三種類の貝が刺さっておりました」
「味付けのアドバイスをなさったのを覚えていらっしゃいますか」
「はい」
「その後、雑貨屋でエプロンのデザインについてもアドバイスをなさって、海鮮レストランの内装や持て成しについてアドバイスをなさいましたか」
「はい」
「子爵夫人、漁港の改革のアドバイスをしていただきたいのです」
「え!? さすがに私などではお役に立てそうにありませんわ」
「貝の串焼き。ご指示通りにしましたら売れに売れています」
まあ、味付けが塩味だけだったからね。
「ポケットを増やしたエプロンもすごく売れています」
だって、あるとしても ○ラえもんの四次元ポケットみたいに大きいのがひとつだけで使い勝手が悪そうだったんだもの。
何種類か地面に書いて教えてみたのよね。
「レストランでは、シーフードグラタンという料理の表面のチーズに文字の焦げ目を付けて誕生日ケーキ代わりにする案を教えてくださいました。
焦げ目じゃなくても、紙か板に文字を切り抜いて、上から刻んだ乾燥パセリやバジルを振りかけて文字にすればいいと教えてくださいました。
特に 甘い物より酒を飲みたい大人の男性へのお祝いに人気が出て、予約が次々と入っております。
言葉は おめでとう、ありがとう、大好き の3つですが十分でした。ありがとうの文字を選ぶことで 手軽に感謝を伝えられると評判です。
お子様ランチというメニューも子供が大喜びで、レストランでは船型の皿や馬車型や動物型の皿を作らせ始めました。
マッシュポテトなどという料理も城型にして小さな旗をたてました。
ご指摘のあった改装もやると言っております。
どうか港町を回ってアドバイスをくださいませんか」
「う~ん、」
「簡単にでもいいんです」
商会長が深々と頭を下げた。
ドレスだと馬車から降り辛い。
お兄様が手を貸してくれた。
中に入ると、子爵と子供達、子爵の両親がいた。
感じの悪かった子供達も、公爵の前では弱った子猫みたいに大人しい。
父「エリーズは自立できるので、放っておいて大丈夫だ。迷惑をかける代わりに支援をしたのだから、割り切って欲しい。ジスラン殿もソニア嬢もそのつもりでいて欲しい。
妾を迎えるのも恋人を作るのも子爵の自由だが、エリーズに害の無いようにして欲しい。
ブラージェル子爵夫人としてパーティか何かに同伴させたい時は予めエリーズに告げて欲しい。
他の女性を伴っても構わないが、王宮行事だけは駄目だ。いいね?」
ク「承知しました」
兄「始まるようだ。エリーズ、行っておいで」
私「はい」
子爵が腕を出した。
「??」
「エスコートは不要なようだな」
エスコート…婚約以降 エリーズは忙しすぎてパーティなどに参加していないし、自身の誕生日もパーティをしなかった。
デビュータントは一応レアンドルと参加したが、エスコートなどしてもらっていない。
エリーズの記憶を探っても無かったのだ。
「あ、ごめんなさい。こういうエスコートはもう記憶に無くて…ありがとうございます。こんな感じで大丈夫でしょうか」
「……それでは何かを強請る犬だ。私側の手だけでいい」
両手を乗せた私を見て子爵は少し笑った。
「笑いました?」
「いや…笑ってない」
多分こうだろうという想像は出来たが、惠莉はちょっと照れ臭かった。
馬鹿王子はあれでも絵本に出てくるような美男子、つまりエリのタイプではない。対して子爵は黒髪に濃い青の目の男前。魂が日本人のエリにとっては好みと言える。だからわざと両手を乗せた。
「笑いましたよね」
「気のせいだ」
祭壇の前に行く途中、長い裾のドレスで怖かった。
「コケたくないなぁ」
「……」
神父様がお決まりのセリフを言って、私達はそれぞれ“誓います”と宣誓し、署名を終えた。
「では、誓いのキスを」
するの!?
子爵も私をじっと見て固まっている。
「あの、届かないですし、私 したことないので、子爵様からお願いします」
「あ、ああ」
彼の顔が近付き、唇を重ねた……だけじゃなかった。
「!!!!!」
何で舌を入れるのよ!!
まさか、この世界ではこれが正解なの!?
「んん“」
長いキスになのか 舌を入れたことになのか分からないけど、神父が咳払いをした。
彼はキスを止めるとニヤリと口角を上げた。
もしかして揶揄われた!?
私のファーストキスなのに!?
「うぐっ」
「ふ、夫人!?」
思わず子爵の腹にグーパンを入れた。
「ア、アルミュア公爵家の伝統で、逞しい新郎にグーパンを入れて歓迎するのです」
「グーパン?」
「拳です」
「初めて聞きますね。子爵様、大丈夫ですか?」
「…大丈夫です。私は逞しい夫ですから」
案外 いい人かもしれない。
「では、二人を夫婦と認めます。神の祝福を」
振り返ると全員ポカンとしていた。お父様だけは下を向いて肩を震わせている。
「では子爵様、こちらで失礼します」
「え?」
「父達と屋敷に帰りますわ。長くは滞在できませんので、早速一緒に領内を少し見に行こうと思います。
今日はありがとうございました。では、ごきげんよう」
「……」
屋敷に戻って着替えると、4人で港町を見学した。
「うんまっ」
3種の貝の串焼きを食べていた。
「エリーズは美味そうに食べるな」
「新鮮な貝で美味しいですよ、お兄様」
「こんなに美しいお嬢様に喜んでもらえて嬉しいです」
露天のおばさんが微笑んだ。
「もうお嬢さんじゃないんです。さっき、夫が出来ました」
「…貴族のご令嬢であっていますか?」
「はい」
「さっきというのは1週間前とか?」
「3時間前です」
「この領地の教会で?」
「はい」
「まさか、領主様のところへ嫁いだ公女様!?」
「そんな感じです」
「お、お代をお返しします」
「駄目ですよ。商売なんですから。
あの、味はひとつですか?」
「あ、はい」
「刻んだ乾燥バジルをふりかけて、ガーリックオイルを塗って、塩を振りかけて軽く焼くといいですよ。バジルは焦がさないようにしてくださいね。
更に、仕上げに軽く粉チーズをふりかけてもいいかもしれませんよ。
粉唐辛子で少しピリ辛にしてもいいですし、フライパンでバター焼きにしても美味しいですよ。レモンを絞ればサッパリします」
「やってみます」
「チェリーより少し大きいくらいのトマトがあれば貝と貝の間に刺しても美味しいですよ。順番に食べれば口直しにもなりますし、一緒に食べればトマトの旨みが加わって違う感じになります。トマトはガーリックもチーズも相性がいいですからね。
また来ますね」
本当は醤油が欲しい。
その後は海鮮レストランで食事をして屋敷に帰った。
翌日は別の場所を観光し、翌々日にお父様達は帰ってしまった。
「お嬢様、お手紙が届きました」
「誰から?」
「漁港商会です」
漁港組合とか商店街組合みたいなものかな。
「要約して」
「商会長が挨拶と相談をしたいそうです」
「何だろう。来てって返事を出して」
「かしこまりました」
早くて明日かと思ったら、午後の4時頃に訪ねて来た。
「漁港商会長ナタナエルと申します。ブラージェル夫人にご挨拶を申し上げます」
「ナタナエル商会長、初めまして。エリーズ・ブラージェルと申します。
お急ぎのようですが、何か問題でも?」
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「覚えています。三種類の貝が刺さっておりました」
「味付けのアドバイスをなさったのを覚えていらっしゃいますか」
「はい」
「その後、雑貨屋でエプロンのデザインについてもアドバイスをなさって、海鮮レストランの内装や持て成しについてアドバイスをなさいましたか」
「はい」
「子爵夫人、漁港の改革のアドバイスをしていただきたいのです」
「え!? さすがに私などではお役に立てそうにありませんわ」
「貝の串焼き。ご指示通りにしましたら売れに売れています」
まあ、味付けが塩味だけだったからね。
「ポケットを増やしたエプロンもすごく売れています」
だって、あるとしても ○ラえもんの四次元ポケットみたいに大きいのがひとつだけで使い勝手が悪そうだったんだもの。
何種類か地面に書いて教えてみたのよね。
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言葉は おめでとう、ありがとう、大好き の3つですが十分でした。ありがとうの文字を選ぶことで 手軽に感謝を伝えられると評判です。
お子様ランチというメニューも子供が大喜びで、レストランでは船型の皿や馬車型や動物型の皿を作らせ始めました。
マッシュポテトなどという料理も城型にして小さな旗をたてました。
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