34 / 35
やっぱり欲しい
始めて先触れ無しにブラージェル邸を訪れた。
「エリーズ…よく来たね」
「大事なお話があります。人払いをお願いします」
クリス様は血の気の引いた顔色をしながらメイド達を部屋から出した。
「ありがとうございます。実は私、」
「待った!」
「あの、私、」
「駄目だ!心の準備が…
何でだ?何で…出来る限り束縛しないように自制してきたし、鬱陶しいと思われないようにもっと一緒にいたいなんて言わなかった。なのに何故だ…私の何が気に入らない」
「はい?」
「歳はどうしようもない。顔もどうしようもない。家柄ももうしようもない。
なんてことだ…どうしようもない事だらけじゃないか」
「……」
「若い男のように頑張れると思うが初々しさを求められたらそれはない。まさか、臭い!?」
「あの、クリス様、」
「待てよ、まさか夜は演技だったのか!?」
「ちょっと!私の話を聞いてください!!」
「……ぜんぜん駄目だが聞こう」
ソファの上で正座をして頭を下げた。
「ごめんなさい!!」
「…事後報告か。誰と?…待て、聞きたくない。浮気は隠し通してくれ」
クリス様は顔を覆って項垂れた。
「赤ちゃんです!」
「妊娠?…いっそのこと今すぐ私を殺してくれ」
「赤ちゃんが欲しいんです!!」
「…え?…養子?」
「違います。
…その、以前子作りを断っておいて言い出しにくいのですが、一人欲しいです」
「まさか、私との子を産みたいと!?」
「はい」
「本当に?」
「はい。それも直ぐに」
「直ぐ?」
「もうクリス様は40歳を過ぎていますし」
「そうだな。すぐ作ろう」
妊娠するかも分からないし、セイラと時期が大きくずれるかもしれない。だけど似た時期を狙えるかもしれない。つまり、一人では怖いけどセイラも産むならという、一緒に産めば怖くない的な気持ちからだ。
その夜はブラージェル邸で。
いつもより熱い眼差しを向けられ長いキスをした。
その後、もう一度クリス様は確認をした。
「本当に?」
「本当です」
しっかり解すと ゆっくり私のナカに入ってきた。
「…することは同じなのに緊張します」
「確かに。だけど喜びの方が勝っているよ」
馴染ませるようにゆっくり抽送を始め、私の弱いところを執拗に押し擦り、達している最中に激しく突かれて吐精された。
グッグッと腰を押し付けた。
快楽の渦から抜け出すと、クリス様はゆっくり抜き去った。
「赤ちゃんの名前、考えておいて」
そして、
「エリーズ様、そろそろです」
「頑張って、セイラ!」
私もセイラも王都のアルミュア邸で妊婦生活を送っていた。此処が一番安全だと思ったから。
良い腕を持つ専属医が常駐しているからだ。
セイラが先に妊娠したから出産も先で、たった今 産気付いた。共に悪阻を乗り越え ママ友になるのかもしれない。
そういえば、クリス様は孫も産まれることになる。どんな気分なんだろう。
「あれ?…いっ!!」
私も陣痛が始まった。1ヶ月以上は早いのに…。
セイラは標準的な男児を産んだ。私は小さめの女児を産んだ。今のところ問題は無いけど、とにかく衛生管理を徹底させた。アルコール消毒や煮沸消毒の徹底、交代制でベビールーム担当メイドも用意して無闇に部屋を出入りさせないようにした。
ベビールーム担当メイドは勤務前に問診をクリアしなくてはならない。
ベビールームに入ると直ぐ衝立で作った着替え場があって、そこで専用の服に着替える。赤ちゃんまで菌を持ち込ませないためだ。
手洗いもさせてマスク着用。乳母も同様だ。
セイラにはとにかく初乳が大事で赤ちゃんに飲ませなくてはならないと教えた。その後も出来る限り母乳を飲ませることを勧めた。
後は授乳期間の母親の食事に気を付けさせた。
この世界で赤ちゃんを少しでも守るために、やれることはやっておきたい。
クリス様とジスランはガラス越しに赤ちゃんと面会。
「僕の妹 ちっちゃい!」
「少し早く産まれたからな」
「絶対にお母様似ですね」
「エリーズに似ているなら多くの虫が付くぞ。先ずジスランは学園で上位に入らないとな」
「頑張ります」
その後 クリス様は領地と王都を行き来してもらい、赤ちゃんが生後1年になったところで領地に帰った。
クリス様は常に娘アリサが気になるようだ。
抱っこしてソファに座り、そのまま一緒に寝ていることもある。成長に合わせた構い方をしてアリサを楽しませているし、教育もしている。
「アリサ、スプーンを使おうか」
アリサがヨタヨタと歩くようになると犬を連れてきた。大きい。
「訓練された犬なんだ。きっとアリサの面倒を見てくれる」
犬のヘルメスは賢かった。アリサに会わせると 護るべき者として認識したらしく、常にアリサに寄り添い安全に気をつかう。
近寄ってはいけない方へ進むとヘルメスが行く手をふさぎ、もしくは服を噛んで引っ張るなどして阻止。戯れ中も、上に乗ろうが引っ張ろうが絶対に怒ることはない。
何処へでもついて行くし一緒に寝る。
おかげで安心して過ごせるようになった。
「また釣書だ。アリサにはまだまだ早いのに」
「でも良い家門だったら検討しても良いかもしれません。どんどん良い条件の子はとられてしまいますもの」
「嫁に行かなくてもいいんじゃないか?」
「セイラにもそう言いましたか?」
「……」
クリス様はバツが悪そうだった。
あなたにおすすめの小説
幼馴染しか見えない婚約者と白い結婚したので、夜明け前にさよならしました
ゆぷしろん
恋愛
公爵令嬢レティシアは、家同士の都合で伯爵アルフレッドに嫁ぐ。
けれど夫は結婚後もずっと幼馴染のシルヴィばかりを優先し、婚礼の夜から夫婦として触れ合おうともしなかった。名ばかりの妻として伯爵家を支え、領地経営まで立て直しても、彼にとってレティシアは“都合のいい伯爵夫人”でしかない。
やがて結婚一周年の夜、アルフレッドが自分を手放す気はない一方で、幼馴染を屋敷に迎え入れようとしている会話を聞いてしまったレティシアは、ついに決意する。
――もう、この結婚には見切りをつけよう。
夜明け前、彼女は離縁の準備を整え、伯爵邸を出奔。
身を寄せた北の港町で薬舗を手伝いながら、自分の力で生きる穏やかな日々を手に入れていく。そこで出会ったのは、身分ではなく一人の女性として彼女を尊重してくれる青年医師ノアだった。
一方、都合よく尽くしてくれる妻を失ったアルフレッドは、ようやく自分が何を失ったのかを思い知ることになる。
幼馴染ばかりを優先する婚約者との白い結婚に終止符を打ち、傷ついた公爵令嬢が新天地で本当の幸せを掴む、離縁から始まる逆転ラブストーリー。
【掌編集】今までお世話になりました旦那様もお元気で〜妻の残していった離婚受理証明書を握りしめイケメン公爵は涙と鼻水を垂らす
まほりろ
恋愛
新婚初夜に「君を愛してないし、これからも愛するつもりはない」と言ってしまった公爵。
彼は今まで、天才、美男子、完璧な貴公子、ポーカーフェイスが似合う氷の公爵などと言われもてはやされてきた。
しかし新婚初夜に暴言を吐いた女性が、初恋の人で、命の恩人で、伝説の聖女で、妖精の愛し子であったことを知り意気消沈している。
彼の手には元妻が置いていった「離婚受理証明書」が握られていた……。
他掌編七作品収録。
※無断転載を禁止します。
※朗読動画の無断配信も禁止します
「Copyright(C)2023-まほりろ/若松咲良」
某小説サイトに投稿した掌編八作品をこちらに転載しました。
【収録作品】
①「今までお世話になりました旦那様もお元気で〜ポーカーフェイスの似合う天才貴公子と称された公爵は、妻の残していった離婚受理証明書を握りしめ涙と鼻水を垂らす」
②「何をされてもやり返せない臆病な公爵令嬢は、王太子に竜の生贄にされ壊れる。能ある鷹と天才美少女は爪を隠す」
③「運命的な出会いからの即日プロポーズ。婚約破棄された天才錬金術師は新しい恋に生きる!」
④「4月1日10時30分喫茶店ルナ、婚約者は遅れてやってきた〜新聞は星座占いを見る為だけにある訳ではない」
⑤「『お姉様はズルい!』が口癖の双子の弟が現世の婚約者! 前世では弟を立てる事を親に強要され馬鹿の振りをしていましたが、現世では奴とは他人なので天才として実力を充分に発揮したいと思います!」
⑥「婚約破棄をしたいと彼は言った。契約書とおふだにご用心」
⑦「伯爵家に半世紀仕えた老メイドは伯爵親子の罠にハマり無一文で追放される。老メイドを助けたのはポーカーフェイスの美女でした」
⑧「お客様の中に褒め褒めの感想を書ける方はいらっしゃいませんか? 天才美文感想書きVS普通の少女がえんぴつで書いた感想!」
【完結】遡ったのは君だけじゃない。離縁状を置いて出ていった妻ーー始まりは、そこからだった。
沼野 花
恋愛
【残り数話を持ちまして3月29日完結!!】
夫にも子どもにも、私は選ばれなかった。
長年の裏切りを抱え、離縁状を置いて家を出た――。
待っていたのは、凍てつく絶望。
けれど同時に、それは残酷な運命の扉が開く瞬間でもあった。
「夫は愛人と生きればいい。
今さら縋られても、裏切ったあなたを許す力など残っていない」
それでも私は誓う――
「子どもたちの心だけは、必ず取り戻す」
歪で、完全な幸福――それとも、破滅。
“石”に翻弄された者たちの、狂おしい物語。
〈完結〉【書籍化&コミカライズ】悪妃は余暇を楽しむ
ごろごろみかん。
恋愛
「こちら、離縁届です。私と、離縁してくださいませ、陛下」
ある日、悪妃と名高いクレメンティーナが夫に渡したのは、離縁届だった。彼女はにっこりと笑って言う。
「先日、あなた方の真実の愛を拝見させていただきまして……有難いことに目が覚めましたわ。ですので、王妃、やめさせていただこうかと」
何せ、あれだけ見せつけてくれたのである。ショックついでに前世の記憶を取り戻して、千年の恋も瞬間冷凍された。
都合のいい女は本日で卒業。
今後は、余暇を楽しむとしましょう。
吹っ切れた悪妃は身辺整理を終えると早々に城を出て行ってしまった。
〈完結〉伯爵令嬢リンシアは勝手に幸せになることにした
ごろごろみかん。
恋愛
前世の記憶を取り戻した伯爵令嬢のリンシア。
自分の婚約者は、最近現れた聖女様につききっきりである。
そんなある日、彼女は見てしまう。
婚約者に詰め寄る聖女の姿を。
「いつになったら婚約破棄するの!?」
「もうすぐだよ。リンシアの有責で婚約は破棄される」
なんと、リンシアは聖女への嫌がらせ(やってない)で婚約破棄されるらしい。
それを目撃したリンシアは、決意する。
「婚約破棄される前に、こちらから破棄してしてさしあげるわ」
もう泣いていた過去の自分はいない。
前世の記憶を取り戻したリンシアは強い。吹っ切れた彼女は、魔法道具を作ったり、文官を目指したりと、勝手に幸せになることにした。
☆ご心配なく、婚約者様。の修正版です。詳しくは近況ボードをご確認くださいm(_ _)m
☆10万文字前後完結予定です
完結 そんなにその方が大切ならば身を引きます、さようなら。
音爽(ネソウ)
恋愛
相思相愛で結ばれたクリステルとジョルジュ。
だが、新婚初夜は泥酔してお預けに、その後も余所余所しい態度で一向に寝室に現れない。不審に思った彼女は眠れない日々を送る。
そして、ある晩に玄関ドアが開く音に気が付いた。使われていない離れに彼は通っていたのだ。
そこには匿われていた美少年が棲んでいて……