【完結】双子の公子様に執着された貧乏モブ令嬢になりました

ユユ

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ファラルの誤算

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【 天界の神ファラルの視点 】

私は書物の神ファラル。

……だ。

昔、小説部門 恋愛小説の女神ペイジが、別の世界の人間を殺して恋愛小説[桃恋]の中へ放り込んだ。

放り込んだ人間は物語を大きく変えてしまった。
更には最後はR18指定本さながらの展開に、沢山のボカシが必要になった。ボカシ過ぎて天界の神々からクレームが届き、仕方なくボカシを取って恋愛小説本からR18小説にジャンル変えすると、天界の神々の人気書物と化した。

部下で恋愛小説の女神ペイジは殺人罪で大左遷。
私は書物の統括だったのに、小説部門 R18小説の神に異動が決まった。
は“期待している” “ファラルしかいない”などと言っているが、多くの書物を統括してきた私にとって、1ジャンルの担当になるなど大左遷でしかない。

仕方なく、似た世界にいた魂を死後にR18小説の世界に送り出してもパッとせず。
天界歴で数えて400年の間に三回送り出したのだが人気は出なかった。

そこで司令書が届いた。
“[桃恋]の時のように全くの別の世界の魂を使うように”と。

でもな…世界が違い過ぎるとジャジャ馬が好き勝手する危険があるんだよ。前のように。

机の上の司令書をもう一度見た。

「逆らえないよなぁ…」

仕方がない。


私は[桃恋]のときに女神ペイジが殺しに行った世界の人間の魂を連れてくることにした。
死んで直ぐの魂が必要だから、日本を覗いていた。
歳を取り過ぎていても駄目 子供過ぎても駄目だ。恋愛出来そうな年齢でないと。
犯罪者も駄目、変態も駄目、陰湿な性格や人見知りの激しい性格も駄目。

あれは何だ?

近くの子供が親に“新幹線”と言って興奮している。
電車の一種か?

沢山の客を乗せて高速で走る細長い乗り物が、乗り場ホームへ向かってきた。この世界を覗いて電車を知ってから乗ってみたかったんだよな。

あれ?スピードを落とさない?
前に人がいたが私は神。生きた人間の体などすり抜けられる。だから人を避けずに乗り物を見ようと前に出た。

ドン!!

「え?」

「え!?」

フォーーーーーーーーン

「ギャアアアアッ!」

「うわあああああっ!」

「女の子が新幹線に飛び込んだぞ!!」

「違うわ!に押されたのよ!」


信じられない。
何故だ!生きている者が我々かみなんて!

私もペイジと同じ場所へ大左遷されるのか…。

「誰よ!!私を押したのは!!」

声の先を見るとホームと乗り物の隙間から魂が出てきた。

「……」

「あっ!!あんたでしょう!!その変な色の髪が一瞬見えたもの!!痛いじゃないの!!」

「人の子よ、悪いが時間が無い。私と来て欲しい」

「は、放して変態!!」

「変態ではない!」

「私はこれから行かなきゃいけないところがあるのよ!」

「それは叶わない」

「は?」

「君は死んだ。転落して乗り物に轢かれて死んだんだ。今の君は死にたての魂なんだ」

「は!?」

彼女は近くにいた人の腕を触ろうとしたが、通り抜けた。

「嘘…」

何度も人を変え、触れる場所を変えて試すも通り抜けた。そして線路を覗こうとした。

「止めておけ。悲惨な状態だ」

「……あんたのせいじゃない」

「その通り。だが、死んですぐなら別の世界で生きることができる。急ごう」

「ちょっと!!」


文句を言い続ける彼女を天界へ連れて来た。
何とか宥めて事情を説明した。

「本当に申し訳ない。普通は我々神が触れようと思わない限り 神と生きた人間がぶつかるなんてことは無いんだ」

「触れようと思ったのね」

「思っていない!乗り物が見たくて前へ出ただけなんだ」

「鉄オタか」

「え?」

「あ~、そういえば私、たまにんだった。怨霊とか」

「私は神だ!」

「それが殺めた相手にする態度?」

「申し訳ない」

「で、何の小説に送り込もうとしているのよ」

「王国とか貴族とかドレスとかそういう世界だ」

「シンデレラみたいな?」

「まあ、そんな感じだ」

「うわ、いい加減な感じ」

「詫びに何かスキルを与えよう」

「…詐欺臭がする。他の方を当たってください、
私を成仏方面へ送ってください」

「手遅れだ」

「え?ダメ?」

「他の神々も君に期待している」

「うっかり殺したのに?後付けは止めようよ」

「……」

「はぁ。分かった。
じゃあ、毎日ささやかな幸せを恵んで」

「承知した。毎日は大変だから月に一度渡しに行く」

「無敵の天才大魔法使いでお願いします」

「魔法小説ではない」

「シンデレラは魔法の世界じゃない」

「行くのは違う小説の世界だ」

「顔は可愛くしてよね」

「承知した」

「赤ちゃんからやるのは勘弁してね」

「承知した」

「健康体で」

「承知した」

「後は…どうしよう」

「駄目だ!後5秒しかない!」

「はい!?」

「シンデレラのような不遇環境から始まる話にしておいたぞ、よろしく頼む」

「は!?ちょっと!待ちなさ、」

彼女の魂は本の中に吸い込まれて行った。

頑張ってくれ……
名前聞くの忘れたな。




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