【完結】双子の公子様に執着された貧乏モブ令嬢になりました

ユユ

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運命のはずなのに

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【 ニコラ王子の視点 】

カレン嬢は着替えを用意していて着替えたが、結局胸の大きく開いたドレスだった。
カレン嬢はボロボロで、終始ミスが目立った。ナプキンやカトラリーを落としたり音を立てたり、先に手を付けたり様々な失敗を繰り広げながら、振られた会話にもまともに答えることが出来なかった。
最終的に食事が終わる頃には酔って、立ちあがろうとしたときにバランスを崩して倒れた。単独で倒れたら良かったのだが、テーブルクロスを掴んでしまい三分の一ほどズレたため、侯爵と侯爵夫人とカレン嬢の上に皿やグラスやティーカップが落ちてしまった。
国王父上のグラスも倒れ、中身が掛かってしまった。

侯爵夫妻は必死に謝罪をしていた。


ベリー侯爵家が帰った後、着替えた父上と母上と私と、父上が呼び事情を聞いた王太子兄上で話し合いが始まった。

王妃「いくら何でもあの娘を王子妃には出来ませんわ!あれほど反対しましたのに陛下が」

興奮気味にそう言うのは王妃だ。
私は王妃母上の実子ではない。父王と第二妃の間に生まれた。産みの母は産後に風邪をうつされて亡くなった。無駄な王子として疎まれていると思っていた。だからカレン・ベリーが婚約者になったのだと思っていた。
決めたのは母上ではなく父上だったとは。

父王「ベリー侯爵を評価してのことだった」

王妃「ですが、あの有様ではありませんか!」

兄「母上、落ち着いてください」

王太子は王妃が産んだ。その後 女児を流産して子に恵まれず、側室を二人迎え入れた。
実母は第二王子と第三王子と第五王子の私を産んだ。第二王子を産んだ時点で妃に格上げになった。住まいも予算も全く違う。
もう一人の側室は女児しか産めずにそのまま。
王妃の体では もう産めないと判断されていたが、奇跡的に第四王子を産んでいた。

私「母上、カレン嬢には問題がありますが、ベリー侯爵は王家との婚姻がどのようなものなのかしっかり理解し、カレン嬢を叱っておりました。

今回、食事会を開いて欲しいとお願いした理由は、もう一度、父上や母上、兄上にカレン嬢を見極めていただきたかったからです」

兄「すまない。そんなこととは知らずに招待を断ってしまった」

私「予定があったのですから謝らないでください」

父王「きっかけがあったのだな?」

私「はい。

私はカルデック家の双子と、カルデック家が庇護下におく令嬢と仲良くなりました。
カレン嬢はそれが気に入らず、トイレに行くメイを3人で追いかけて口論になり、カレン嬢がメイを2回も平手打ちをしたのです」

王妃「まあ!」

私「駆け付けた双子の兄アレンがカレン嬢を1回平手打ちをしました。
学園側はベリー家に警告を、一緒にいた令嬢達の家には注意をしました。
この気性のカレン嬢を王子妃にするのに不安を感じてしまったのです」

父王「なるほどな」

兄「ニコラが嫌なら解消するのはどうでしょう」

王妃「そうね。今なら解消で済むわ。もっといい令嬢にしましょう」

私「ありがとうございます」

父王「もうベリー家とは交流をしなくていい。解消の話し合いをこちらで進めておく。
それより、カルデック公爵家の庇護している令嬢とはどの程度親しいのだ?」

私「メイは困窮した男爵家の令嬢です。あの双子が過保護なほどに守る子です」

父王「だとしたら善人ということだな」

兄「どこの男爵家だ?」

私「モヴィーです」

兄「ああ、確か貴族と呼ぶのはギリギリの家門か」

私「ですが、メイは多才です。偏りはありますが優秀です」

兄「もしかして、外交部門が騒いでいた女学生か?」

私「はい」

父王「今度呼びなさい」

私「それが、本人からも双子からも断られてしまうのです」

王妃「王子あなたが誘っているのに?」

私「メイはカレン嬢みたいな令嬢が出てくることを恐れて 最初から拒絶します。
無視したりはしませんし、話しかければ応えますが、今は私が押しかけている状態です」

兄「その男爵令嬢が好きなのだな?」

私「私は…」

父王「公子に連れてきてもらうのは駄目なのか?」

私「双子はメイをここに来させません」

王妃「私か陛下が招待状を送れば来るわよ」

私「メイに嫌われます。
それに偏りがあるのです。育ちのせいで庶民に近いのです。カルデック家で教師を付けて詰め込もうとしたら家出騒動を起こしたらしくて、入学のための勉強だけで、その他はゆっくり覚えさせることにしたようです」

兄「その子の何が優れているんだ?」

メイのことを説明した。

王妃「ジブランシュ公爵邸には行っていて演奏しているのね?」

私「はい、セレス嬢と仲良くなって招待を受けてジブランシュ邸に遊びに行ったら家族に気に入られて交流を始めているそうです」

兄「来年になるが、ニコラの誕生日のパーティに呼べばいい。それなら断らないだろう」

王妃「そうね、それなら招待状を出せるし断らないわね」

私「くれぐれも、演奏の強要はしないでください」

王妃「弾いてもらえないか聞くのも駄目なの?」

私「私が言えばメイは断りますが、母上や父上が言ったら断りたくても断れないでしょう。
メイは弾いてくれるでしょうが、その場は良くても後の関係に響きます」

父王「確か、その頃は東の遠国と南の遠国から客が来る予定だ。ニコラのパーティにも招待しているが大丈夫か?」

私「寧ろ活躍してくれるはずです」

父王「分かった。後は任せない」

私「父上、母上、兄上、ありがとうございます」

メイが来年の誕生日のパーティに来てくれる、そう思ったら嬉しかった。


あれ以来カレン嬢は閉じこもっているという。
解消は間違いないが、時期をみると言われた。
大きな事件を起こしたわけではないし、自殺でもされたら困るという判断だった。
彼女は長い間欠席し、退学ギリギリで登校するも、自分の殻にこもっているようだった。


進級すると、双子とメイがAクラスに上がってきて、とても嬉しかった。
ライヤー男爵令嬢の鬱陶しさは相変わらずだが、メイがいる。

だが、ある日を境にメイと双子の間にあった薄い壁さえ取り払われていた。
メイは躊躇うことなく全身で甘え、双子達は満足そうな顔をする。それがどうして私とメイではないのか 狡いとさえ思ってしまう。

休みの日に遊びに行くと、毛布に包まれたメイはアレンの膝の上で抱っこされていた。
メイは嫌がることもなく身を委ねている。

メイは私のことを弟のようだと言う。

メイ達と一緒にいると背伸びをしないでありのままでいられるからだと言った。

じっと私を見つめるメイに双子が言った。

“彼は第五王子だよ?第一や第二とは違ってうちに来られるくらいには伸び伸びとした生活を送っているんだ”

だけどメイは…

“でも、貴族でいえば、継げる可能性の低い五男が 跡継ぎ並みの教育をこなさなくてはならないのですよ?少しくらい自由をもらわないと やれませんよ”

心がふわっと軽くなり胸がドキドキと音を立てて始めた。まるで心の中を覗かれたようだった。
メイは私の心に寄り添える貴重な存在だと感じた。

“メイ…ありがとう。メイと友人になれて良かった”

すごく嬉しいのに、胸の高鳴りはズキズキとしたものに変わった。

“ふふっ こちらこそ、殿下がいてくださって楽しいです”

アレンはメイをその腕の中に閉じ込めながら、私に鋭い視線を送っていた。

さすがに厄介な男爵家の娘と王子の私が結ばれることはないだろうし、アレン達が手放すとも思えない。何よりアレンに向けたメイの安心しきった表情が、手遅れだと告げているように思えた。

こんなことで泣きたくなるなんて。
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