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兄じゃない
驚いた。
前世の実兄様が、今の私を正妻にしたいと考えていたなんて。
兄妹としての認識が強い私には、夫婦の務めは果たせない。
ノワールの掟では子を産ませることは必須。
妻にはなれない。
きっとセヴリアンも私のような気持ちでいるのだろうと考えていると、窓を叩く音がする。
カーテンを開けると彼がいた。
「リン兄様、どうなさったのですか」
「入れてくれ」
「ダメです」
「話がある」
仕方なく窓の施錠を解除して部屋に入れた。
「求婚を断ったんだって?」
「私にとってローエン様は兄様だから無理なの」
「そうか」
「婚約おめでとう」
「ああ、聞いたのか」
「アコールでばったりお会いしました」
「来たがっていたからな」
聞きたくない。
「そろそろお戻りください」
「泊まっていく」
「いけません。帰ってください」
「何でだよ」
「もうリン兄様には婚約者がいるからです」
「別に構わないだろう?俺達は、」
「帰って」
「どうした?」
「前世のときは兄妹弟子の関係ではありましたが、本当の兄妹ではありません。
今はもっと他人です。
つまり私からみても世間が見ても、私とセヴリアン・デュケットは他人なのです。
婚約者ができた以上、私達は適切な距離を取るべきです」
「本気か?」
「そうです」
「…今夜は帰るけど、納得していないからな」
「……」
翌日、ヴェリテ邸に行って相談しようと思ったらお父様がいた。
お母様に話そうと思ったのに……。
「お父様、お帰りなさいませ」
「シェイナ、おいで」
お父様の隣に座ると頭を撫でてくれた。
「大人しくしていたか?」
「多分」
「困り事があれば直ぐに相談するんだぞ」
「……はい」
「で、何を悩んでいるんだ」
「引っ越そうかなと」
「まだ一年にも満たないのにか?」
「はい」
「何があったんだ」
ミラのことはまだ言えない。
「お母様を呼んでください」
お父様とお母様に、ミラ抜きで今の状況を話した。
ローエン・ノワール公爵から求婚をされて断ったこと。
セヴリアン・デュケットを好きになったが、妹扱いのまま 彼が婚約してしまったこと。
気持ちを変えるには、デュケット子爵家所有の部屋では難しいこと。
アコールに婚約者が現れること。
父「戻っておいで」
私「でも、一応独立したのに」
父「王宮に部屋を借りるのは嫌なんだろう?」
私「はい。公私が分けられませんから」
父「一年で契約を切って戻っておいで。
ゆっくり安全ないい物件を探せばいい」
私「……そうします」
父「本来ならまだ学生で親に甘えている時期なんだから、深く考えずにここにいなさい。
本格的な大人になると甘えられなくなることも増えていく。だから今のうちに甘えなさい」
母「そうよ。もったいないわ」
お父様にギュッと抱きついて甘えた。
翌日の仕事帰りにアコールを覗いてデュケット子爵に話をした。
「部屋を解約する?」
「はい。一度実家に戻って甘えようと思います。
更新せず満了解約でお願いします」
「ローエンのことか」
「帳簿はキリのいいところまでやりますが、引き続きが必要でしたら仰ってください」
「決心は変わらないのか?」
「はい」
「そうか。たまには食事に誘ってもかまわないかな?」
「はい。叔父様だけでしたら」
「セヴリアンは駄目なのか」
「リン兄様は婚約なさいました。私は血のつながらない他人です。距離を置かねばなりません」
「そこまでしなくても」
「リン兄様の距離感が近いのです。
周囲が見たら誤解なさいます」
「分かった。セヴリアンは私から言い聞かせておく」
「お願いします」
「一度デュケット邸に遊びに来ないか」
「お会いするのが叔父様だけなら」
「では、再来週の日曜日はどうかな?ここに迎えの馬車を寄越すから、シヴァも連れておいで」
「はい」
前世の実兄様が、今の私を正妻にしたいと考えていたなんて。
兄妹としての認識が強い私には、夫婦の務めは果たせない。
ノワールの掟では子を産ませることは必須。
妻にはなれない。
きっとセヴリアンも私のような気持ちでいるのだろうと考えていると、窓を叩く音がする。
カーテンを開けると彼がいた。
「リン兄様、どうなさったのですか」
「入れてくれ」
「ダメです」
「話がある」
仕方なく窓の施錠を解除して部屋に入れた。
「求婚を断ったんだって?」
「私にとってローエン様は兄様だから無理なの」
「そうか」
「婚約おめでとう」
「ああ、聞いたのか」
「アコールでばったりお会いしました」
「来たがっていたからな」
聞きたくない。
「そろそろお戻りください」
「泊まっていく」
「いけません。帰ってください」
「何でだよ」
「もうリン兄様には婚約者がいるからです」
「別に構わないだろう?俺達は、」
「帰って」
「どうした?」
「前世のときは兄妹弟子の関係ではありましたが、本当の兄妹ではありません。
今はもっと他人です。
つまり私からみても世間が見ても、私とセヴリアン・デュケットは他人なのです。
婚約者ができた以上、私達は適切な距離を取るべきです」
「本気か?」
「そうです」
「…今夜は帰るけど、納得していないからな」
「……」
翌日、ヴェリテ邸に行って相談しようと思ったらお父様がいた。
お母様に話そうと思ったのに……。
「お父様、お帰りなさいませ」
「シェイナ、おいで」
お父様の隣に座ると頭を撫でてくれた。
「大人しくしていたか?」
「多分」
「困り事があれば直ぐに相談するんだぞ」
「……はい」
「で、何を悩んでいるんだ」
「引っ越そうかなと」
「まだ一年にも満たないのにか?」
「はい」
「何があったんだ」
ミラのことはまだ言えない。
「お母様を呼んでください」
お父様とお母様に、ミラ抜きで今の状況を話した。
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気持ちを変えるには、デュケット子爵家所有の部屋では難しいこと。
アコールに婚約者が現れること。
父「戻っておいで」
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私「はい。公私が分けられませんから」
父「一年で契約を切って戻っておいで。
ゆっくり安全ないい物件を探せばいい」
私「……そうします」
父「本来ならまだ学生で親に甘えている時期なんだから、深く考えずにここにいなさい。
本格的な大人になると甘えられなくなることも増えていく。だから今のうちに甘えなさい」
母「そうよ。もったいないわ」
お父様にギュッと抱きついて甘えた。
翌日の仕事帰りにアコールを覗いてデュケット子爵に話をした。
「部屋を解約する?」
「はい。一度実家に戻って甘えようと思います。
更新せず満了解約でお願いします」
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「決心は変わらないのか?」
「はい」
「そうか。たまには食事に誘ってもかまわないかな?」
「はい。叔父様だけでしたら」
「セヴリアンは駄目なのか」
「リン兄様は婚約なさいました。私は血のつながらない他人です。距離を置かねばなりません」
「そこまでしなくても」
「リン兄様の距離感が近いのです。
周囲が見たら誤解なさいます」
「分かった。セヴリアンは私から言い聞かせておく」
「お願いします」
「一度デュケット邸に遊びに来ないか」
「お会いするのが叔父様だけなら」
「では、再来週の日曜日はどうかな?ここに迎えの馬車を寄越すから、シヴァも連れておいで」
「はい」
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