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目覚め
優しく頭を撫でられてる?
手も握られている。
啜り泣く声も聞こえる。
母「シェイナ!」
目を開けると目を腫らしたお母様が手を握って側にいた。
頭を撫でていたのはデュケット子爵だった。
だけどうっかり口に出してしまった。
私「お父様まで、何かあったのですか」
母「シェイナ?」
子「シェイナ。ここはヴェリテ領にあるヴェリテ邸だ。
シェイナと辺境伯は牛泥棒の現場に居合わせて襲われた。
その後、生捕にできた賊を兵士に引き渡し、近くの宿屋で返り血を洗い流した。
宿屋の女主人に服を借りて、兵士の詰所に様子を見に行った。
そこで、口封じに現れた者達に襲われた。
毒矢を受けて2日半以上昏睡していたんだ」
そうだ。矢が飛んできて……
私「フェリシアンは!」
母「貴女は腕にかするように当たったけど、彼は胸に刺さったの。だから彼の方が回った毒が多くて、まだ昏睡しているわ」
私「フェリシアンは私を庇ってくれたの!フェリシアンはどこ!」
母「解毒薬は投与しているから待ちましょう。
貴女はまだ休まないと駄目よ」
私「フェリシアンはどの部屋にいるの!!」
子「私が連れて行こう」
叔父様が車椅子に乗せてくれた。
客室に着くとフェリシアンが眠っていた。
胸に巻かれた包帯からはもう血は滲んでいない。
私「フェリシアン。ごめんね」
彼の手を握って頬に付けた。
彼の回復を待ちながら、デュケット子爵を“お父様”と呼んだことについて聞かれて前世の話をお母様に打ち明けた。
母「デュケット子爵がノワール公爵だったときの娘ミラの生まれ変わり?」
私「そうです」
母「それを知っている人は?」
子「私とセヴリアンとローエンです。
会ってすぐに気が付きました。
シェイナにミラの記憶があることを、ローエンに知らせたのは最近です」
母「それで戦うという選択肢がシェイナにはあるのですね」
子「はい。才能あふれる子でした。そして一番愛おしい子でした。ですがまだ14歳という若さで殺されて、私達はミラを守れなかったことを後悔しました。
一番愛おしいからこそ、実子の中で一番気にかけていないフリをしたことが裏目に出てしまったのです。
まだ子供のミラを死なせてしまった。
一度も気持ちを伝えることなく別れることになったことをどれだけ悔やんだことか」
私「お父様、私は気にしていません」
母「親が愛する我が子を失うのは、身を切られるように辛いのよ。特に後悔がある時は死にたくなるほどにね」
私「……」
母「だから、今から我儘を言いなさい。
それをデュケット子爵が叶えてくださるわ」
私「思いつきません」
母「時々会って、子爵が満足するまで我儘を言いなさい。無茶なことは言っては駄目よ。
きっと子爵は貴女の願いを叶えてくださるうちに、少しは癒されると思うわよ」
フェリシアンが目覚めたのは それから2日後。
その間、叔父様に本を読み聞かせてもらったり、お菓子を食べさせてもらったりした。
叔父様を“お父様”と呼ぶと、母が不貞をしたみたいになるから叔父様と呼び続けることにした。
一方。
サガス領の制圧を行ったのはノワール家だ。
ドミニクは男児を安値で買って、肉体労働者か賊に育てていた。
ローエンは賊に育った男達を始末した。
それ以外の子供と娼婦にさせられた女達を領地内の孤児院や教会に預けて、サガスのメイド達を一時的に孤児院と教会へ派遣した。
国がどうするか決めるまでの措置だ。
国王は副団長ユリウス・ウィルソンにヴェリテ領内の治安回復を命じた。
現在のウィルソン公爵の末弟がユリウスで、ウィルソン公爵家はティーティアが子供の頃から交流があった。ユリウスは一時 ヴェリテ預かりになっていたことがあって、ヴェリテ領を熟知していた。
詰所のヴェリテの領兵と、フェリシアンとその護衛騎士達とシェイナで応戦はしたが、毒矢にやられたこともあり、数人逃してしまっていた。
無事に全員捕えることができた。
最後に残っていたサガス伯爵の処刑をもって、没落とした。
この事件は改めて、王家とウィルソン公爵家とヴェリテ公爵家の強い結び付きを証明しただけでなく、ノワール公爵家もヴェリテの味方であると印象付けた。
そして 辺境を守るバロウ伯爵がヴェリテ領に滞在していた事実と、公女を守るために毒矢を受け負傷したことが知られると、恋愛小説のようだと あちらこちらの茶会で話題に出され、本人達が知らぬ間に理想の恋人に仕上がっていた。
手も握られている。
啜り泣く声も聞こえる。
母「シェイナ!」
目を開けると目を腫らしたお母様が手を握って側にいた。
頭を撫でていたのはデュケット子爵だった。
だけどうっかり口に出してしまった。
私「お父様まで、何かあったのですか」
母「シェイナ?」
子「シェイナ。ここはヴェリテ領にあるヴェリテ邸だ。
シェイナと辺境伯は牛泥棒の現場に居合わせて襲われた。
その後、生捕にできた賊を兵士に引き渡し、近くの宿屋で返り血を洗い流した。
宿屋の女主人に服を借りて、兵士の詰所に様子を見に行った。
そこで、口封じに現れた者達に襲われた。
毒矢を受けて2日半以上昏睡していたんだ」
そうだ。矢が飛んできて……
私「フェリシアンは!」
母「貴女は腕にかするように当たったけど、彼は胸に刺さったの。だから彼の方が回った毒が多くて、まだ昏睡しているわ」
私「フェリシアンは私を庇ってくれたの!フェリシアンはどこ!」
母「解毒薬は投与しているから待ちましょう。
貴女はまだ休まないと駄目よ」
私「フェリシアンはどの部屋にいるの!!」
子「私が連れて行こう」
叔父様が車椅子に乗せてくれた。
客室に着くとフェリシアンが眠っていた。
胸に巻かれた包帯からはもう血は滲んでいない。
私「フェリシアン。ごめんね」
彼の手を握って頬に付けた。
彼の回復を待ちながら、デュケット子爵を“お父様”と呼んだことについて聞かれて前世の話をお母様に打ち明けた。
母「デュケット子爵がノワール公爵だったときの娘ミラの生まれ変わり?」
私「そうです」
母「それを知っている人は?」
子「私とセヴリアンとローエンです。
会ってすぐに気が付きました。
シェイナにミラの記憶があることを、ローエンに知らせたのは最近です」
母「それで戦うという選択肢がシェイナにはあるのですね」
子「はい。才能あふれる子でした。そして一番愛おしい子でした。ですがまだ14歳という若さで殺されて、私達はミラを守れなかったことを後悔しました。
一番愛おしいからこそ、実子の中で一番気にかけていないフリをしたことが裏目に出てしまったのです。
まだ子供のミラを死なせてしまった。
一度も気持ちを伝えることなく別れることになったことをどれだけ悔やんだことか」
私「お父様、私は気にしていません」
母「親が愛する我が子を失うのは、身を切られるように辛いのよ。特に後悔がある時は死にたくなるほどにね」
私「……」
母「だから、今から我儘を言いなさい。
それをデュケット子爵が叶えてくださるわ」
私「思いつきません」
母「時々会って、子爵が満足するまで我儘を言いなさい。無茶なことは言っては駄目よ。
きっと子爵は貴女の願いを叶えてくださるうちに、少しは癒されると思うわよ」
フェリシアンが目覚めたのは それから2日後。
その間、叔父様に本を読み聞かせてもらったり、お菓子を食べさせてもらったりした。
叔父様を“お父様”と呼ぶと、母が不貞をしたみたいになるから叔父様と呼び続けることにした。
一方。
サガス領の制圧を行ったのはノワール家だ。
ドミニクは男児を安値で買って、肉体労働者か賊に育てていた。
ローエンは賊に育った男達を始末した。
それ以外の子供と娼婦にさせられた女達を領地内の孤児院や教会に預けて、サガスのメイド達を一時的に孤児院と教会へ派遣した。
国がどうするか決めるまでの措置だ。
国王は副団長ユリウス・ウィルソンにヴェリテ領内の治安回復を命じた。
現在のウィルソン公爵の末弟がユリウスで、ウィルソン公爵家はティーティアが子供の頃から交流があった。ユリウスは一時 ヴェリテ預かりになっていたことがあって、ヴェリテ領を熟知していた。
詰所のヴェリテの領兵と、フェリシアンとその護衛騎士達とシェイナで応戦はしたが、毒矢にやられたこともあり、数人逃してしまっていた。
無事に全員捕えることができた。
最後に残っていたサガス伯爵の処刑をもって、没落とした。
この事件は改めて、王家とウィルソン公爵家とヴェリテ公爵家の強い結び付きを証明しただけでなく、ノワール公爵家もヴェリテの味方であると印象付けた。
そして 辺境を守るバロウ伯爵がヴェリテ領に滞在していた事実と、公女を守るために毒矢を受け負傷したことが知られると、恋愛小説のようだと あちらこちらの茶会で話題に出され、本人達が知らぬ間に理想の恋人に仕上がっていた。
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