4 / 19
お渡り
しおりを挟む
ティータイムにお菓子を持ってモアナ様とシャンティ様が突然訪ねて来た。
もしかしたらお詫びのつもりかも知れないとベルベナに耳打ちをされた。
「帝国のお菓子なの…です。お口に合うといいのですが」
「ありがとうございます」
「不自由はしていませんか」
「することがありませんが、不自由はありません」
「あの、部屋の入り口に飾ってあるものは…」
「お渡り無しの証明書ですわ」
「初めて耳にしますが」
「献上品が多いから、全部相手にするのは面倒だったのでしょう。閨事の希望を聞かれたので“無しで”と返答しましたの。一応 献上品の身ですから問題にならないよう書面化してみました」
「そ、そうですか」
「本当にそれでよろしいので?」
「はい。ここで余生を穏やかに過ごしたいと思います。追い出されるまでは」
「追い出される!?」
「皇帝の交代があったり、要らないと言われるかもしれませんから」
「……」
「何だかこのお部屋、質素過ぎやしませんか?」
私は小声で2人に教えた。
「(仕方ないんです。財政難ですから)」
「「え!?」」
「(ドレスを買ったら家具を注文できないらしいのです)」
「どんな家具ですか?」
「特注ではありますが然程高くはありません。あのソファよりも安いらしいです。商人が言っていましたから」
「ド、ドレスがよっぽど豪華なのかしら」
「私、ドレスを注文していないんです。するつもりもありません。クローゼットをみますか?」
ワンピースドレスを見せると2人は顔を見合わせていた。
「これはこちらで?」
「祖国でまとめて作って持参しました。
こちらでの購入は椅子のようなものと調薬器具くらいです」
「お薬を調合できるのですか?」
「はい。薬草をブレンドします」
「器具がお高いとか」
「多分、モアナ様かシャンティ様のお召しのドレスより安いはずです」
「……」
「後宮の維持も大変ですよね。いっそのこと変な慣習は無くして簡素化なさったらよろしいかと思うのですが、従属国の私が口にすることではありませんね。食事の見直しも提案しました。せめて節約に協力しようと思います」
モアナ様とシャンティ様がこの部屋で夕食を食べたいと言うので用意してもらった。パン1つ スープ(クズ野菜)1品 野菜と肉の煮込み(肉少なめ)1品 デザートは果物を少し。
「クズ野菜と言っても野菜は野菜。歯応えが良くてお腹が満たされますし、お肉は贅沢に食べきれない程のステーキにしなくても、煮込みに3口分もあれば十分です。デザートは砂糖やバターを無駄に消費しますからフルーツをいただきます。葡萄なら5粒あれば満足ですし、苺なら2、」
「ううっ…」
「ひぐっ」
「モアナ様!シャンティ様!どうなさったのですか!?」
「他国の王女様がこんなに努力していらしたのに、私達は祖国にとんでもない負担をかけておりました」
「料理は食べきれない程いつも用意させて…馬鹿でした」
「着もしないドレスを無駄に作って…愚かでしたわ」
「小国の王女様の個人資産に手を付けなくてはならない程だなんて」
「私、お父様に帝国の将来を公爵としてしっかり考えて 立て直せるよう尽力して欲しいと手紙を書きますわ」
「私もお母様に散財は止めて城に寄付しろと手紙を書きますわ。食材の寄付もいいかもしれませんわね」
「それはお伺いを立てた方がよろしいかも知れません。もし、賄賂扱いになったら困りますから」
「そ、そうよね」
「しっかり味わって、食べ物の恵みに感謝しながら食べましょう」
「美味しいっ、美味しいわっ」
「トマトが愛らしく見えるわ」
【 エルダの視点 】
帝国の貴族であるモアナ様とシャンティ様がユピルピア様の部屋で食事を摂ると聞いて、慌てて様子を見に来た。
血の気が引いた。揉め事が起こるのではと心配して来たのに、サイモン後宮長が懸念したことが目の前で起きているのだ。明日には外部に話が伝わり、数日内に“帝国財政難”と言う見出しの新聞が発行されるだろう。
慌ててサイモン後宮長に知らせに向かう途中、皇帝陛下とサイモン後宮長にニ階のお渡り用の廊下でお会いできた。
「サイモン後宮長、どちらに」
「ユピルピア様の部屋だ」
「現在モアナ様とシャンティ様がいらしていて食事を召し上がっております。今の状態でお部屋へ向かうのは避けた方がよろしいかと」
「どういうことだ」
「ま、先ずは後宮長にご報告を、」
「いいから説明しろ」
「ユピルピア様とは閨事は無しという契約をなさいました。それをモアナ様もシャンティ様もご存知です。何か理由が無くては契約を破りに来たと勘違いをなさるかもしれません。
そしてもう一つ、大事なご報告がございますが、廊下ではちょっと」
近くの応接間に入り、状況を説明した。
「やっぱり…」
後宮長が項垂れた。
「では、既にユピルピアの部屋では帝国が財政難ということになっていて、モアナとシャンティに受け継がれているのだな?」
「はい。ご家族にも手紙を出すと仰っておりました」
「理由が出来た。行くぞ」
皇帝陛下は応接間を出て一階に降りて、奥のユピルピア様の部屋に到着した。ノックをするとユピルピア様の侍女ベルベナがドアを開けた。
ベルベナは跪き挨拶をした。
「其方…」
「陛下、先ずはユピルピア様に」
「其方の主人の元へ案内してくれ」
「かしこまりました」
もしかしたらお詫びのつもりかも知れないとベルベナに耳打ちをされた。
「帝国のお菓子なの…です。お口に合うといいのですが」
「ありがとうございます」
「不自由はしていませんか」
「することがありませんが、不自由はありません」
「あの、部屋の入り口に飾ってあるものは…」
「お渡り無しの証明書ですわ」
「初めて耳にしますが」
「献上品が多いから、全部相手にするのは面倒だったのでしょう。閨事の希望を聞かれたので“無しで”と返答しましたの。一応 献上品の身ですから問題にならないよう書面化してみました」
「そ、そうですか」
「本当にそれでよろしいので?」
「はい。ここで余生を穏やかに過ごしたいと思います。追い出されるまでは」
「追い出される!?」
「皇帝の交代があったり、要らないと言われるかもしれませんから」
「……」
「何だかこのお部屋、質素過ぎやしませんか?」
私は小声で2人に教えた。
「(仕方ないんです。財政難ですから)」
「「え!?」」
「(ドレスを買ったら家具を注文できないらしいのです)」
「どんな家具ですか?」
「特注ではありますが然程高くはありません。あのソファよりも安いらしいです。商人が言っていましたから」
「ド、ドレスがよっぽど豪華なのかしら」
「私、ドレスを注文していないんです。するつもりもありません。クローゼットをみますか?」
ワンピースドレスを見せると2人は顔を見合わせていた。
「これはこちらで?」
「祖国でまとめて作って持参しました。
こちらでの購入は椅子のようなものと調薬器具くらいです」
「お薬を調合できるのですか?」
「はい。薬草をブレンドします」
「器具がお高いとか」
「多分、モアナ様かシャンティ様のお召しのドレスより安いはずです」
「……」
「後宮の維持も大変ですよね。いっそのこと変な慣習は無くして簡素化なさったらよろしいかと思うのですが、従属国の私が口にすることではありませんね。食事の見直しも提案しました。せめて節約に協力しようと思います」
モアナ様とシャンティ様がこの部屋で夕食を食べたいと言うので用意してもらった。パン1つ スープ(クズ野菜)1品 野菜と肉の煮込み(肉少なめ)1品 デザートは果物を少し。
「クズ野菜と言っても野菜は野菜。歯応えが良くてお腹が満たされますし、お肉は贅沢に食べきれない程のステーキにしなくても、煮込みに3口分もあれば十分です。デザートは砂糖やバターを無駄に消費しますからフルーツをいただきます。葡萄なら5粒あれば満足ですし、苺なら2、」
「ううっ…」
「ひぐっ」
「モアナ様!シャンティ様!どうなさったのですか!?」
「他国の王女様がこんなに努力していらしたのに、私達は祖国にとんでもない負担をかけておりました」
「料理は食べきれない程いつも用意させて…馬鹿でした」
「着もしないドレスを無駄に作って…愚かでしたわ」
「小国の王女様の個人資産に手を付けなくてはならない程だなんて」
「私、お父様に帝国の将来を公爵としてしっかり考えて 立て直せるよう尽力して欲しいと手紙を書きますわ」
「私もお母様に散財は止めて城に寄付しろと手紙を書きますわ。食材の寄付もいいかもしれませんわね」
「それはお伺いを立てた方がよろしいかも知れません。もし、賄賂扱いになったら困りますから」
「そ、そうよね」
「しっかり味わって、食べ物の恵みに感謝しながら食べましょう」
「美味しいっ、美味しいわっ」
「トマトが愛らしく見えるわ」
【 エルダの視点 】
帝国の貴族であるモアナ様とシャンティ様がユピルピア様の部屋で食事を摂ると聞いて、慌てて様子を見に来た。
血の気が引いた。揉め事が起こるのではと心配して来たのに、サイモン後宮長が懸念したことが目の前で起きているのだ。明日には外部に話が伝わり、数日内に“帝国財政難”と言う見出しの新聞が発行されるだろう。
慌ててサイモン後宮長に知らせに向かう途中、皇帝陛下とサイモン後宮長にニ階のお渡り用の廊下でお会いできた。
「サイモン後宮長、どちらに」
「ユピルピア様の部屋だ」
「現在モアナ様とシャンティ様がいらしていて食事を召し上がっております。今の状態でお部屋へ向かうのは避けた方がよろしいかと」
「どういうことだ」
「ま、先ずは後宮長にご報告を、」
「いいから説明しろ」
「ユピルピア様とは閨事は無しという契約をなさいました。それをモアナ様もシャンティ様もご存知です。何か理由が無くては契約を破りに来たと勘違いをなさるかもしれません。
そしてもう一つ、大事なご報告がございますが、廊下ではちょっと」
近くの応接間に入り、状況を説明した。
「やっぱり…」
後宮長が項垂れた。
「では、既にユピルピアの部屋では帝国が財政難ということになっていて、モアナとシャンティに受け継がれているのだな?」
「はい。ご家族にも手紙を出すと仰っておりました」
「理由が出来た。行くぞ」
皇帝陛下は応接間を出て一階に降りて、奥のユピルピア様の部屋に到着した。ノックをするとユピルピア様の侍女ベルベナがドアを開けた。
ベルベナは跪き挨拶をした。
「其方…」
「陛下、先ずはユピルピア様に」
「其方の主人の元へ案内してくれ」
「かしこまりました」
1,628
あなたにおすすめの小説
初恋に見切りをつけたら「氷の騎士」が手ぐすね引いて待っていた~それは非常に重い愛でした~
ひとみん
恋愛
メイリフローラは初恋の相手ユアンが大好きだ。振り向いてほしくて会う度求婚するも、困った様にほほ笑まれ受け入れてもらえない。
それが十年続いた。
だから成人した事を機に勝負に出たが惨敗。そして彼女は初恋を捨てた。今までたった 一人しか見ていなかった視野を広げようと。
そう思っていたのに、巷で「氷の騎士」と言われているレイモンドと出会う。
好きな人を追いかけるだけだった令嬢が、両手いっぱいに重い愛を抱えた令息にあっという間に捕まってしまう、そんなお話です。
ツッコミどころ満載の5話完結です。
【短編】旦那様、2年後に消えますので、その日まで恩返しをさせてください
あさぎかな@コミカライズ決定
恋愛
「二年後には消えますので、ベネディック様。どうかその日まで、いつかの恩返しをさせてください」
「恩? 私と君は初対面だったはず」
「そうかもしれませんが、そうではないのかもしれません」
「意味がわからない──が、これでアルフの、弟の奇病も治るのならいいだろう」
奇病を癒すため魔法都市、最後の薬師フェリーネはベネディック・バルテルスと契約結婚を持ちかける。
彼女の目的は遺産目当てや、玉の輿ではなく──?
笑わない妻を娶りました
mios
恋愛
伯爵家嫡男であるスタン・タイロンは、伯爵家を継ぐ際に妻を娶ることにした。
同じ伯爵位で、友人であるオリバー・クレンズの従姉妹で笑わないことから氷の女神とも呼ばれているミスティア・ドゥーラ嬢。
彼女は美しく、スタンは一目惚れをし、トントン拍子に婚約・結婚することになったのだが。
下賜されまして ~戦場の餓鬼と呼ばれた軍人との甘い日々~
星森
恋愛
王宮から突然嫁がされた18歳の少女・ソフィアは、冷たい風の吹く屋敷へと降り立つ。迎えたのは、無愛想で人嫌いな騎士爵グラッド・エルグレイム。金貨の袋を渡され「好きにしろ」と言われた彼女は、侍女も使用人もいない屋敷で孤独な生活を始める。
王宮での優雅な日々とは一転、自分の髪を切り、服を整え、料理を学びながら、ソフィアは少しずつ「夫人」としての自立を模索していく。だが、辻馬車での盗難事件や料理の失敗、そして過労による倒れ込みなど、試練は次々と彼女を襲う。
そんな中、無口なグラッドの態度にも少しずつ変化が現れ始める。謝罪とも言えない金貨の袋、静かな気遣い、そして彼女の倒れた姿に見せた焦り。距離のあった二人の間に、わずかな波紋が広がっていく。
これは、王宮の寵姫から孤独な夫人へと変わる少女が、自らの手で居場所を築いていく物語。冷たい屋敷に灯る、静かな希望の光。
⚠️本作はAIとの共同製作です。
身代わり令嬢、恋した公爵に真実を伝えて去ろうとしたら、絡めとられる(ごめんなさぁぁぁぁい!あなたの本当の婚約者は、私の姉です)
柳葉うら
恋愛
(ごめんなさぁぁぁぁい!)
辺境伯令嬢のウィルマは心の中で土下座した。
結婚が嫌で家出した姉の身代わりをして、誰もが羨むような素敵な公爵様の婚約者として会ったのだが、公爵あまりにも良い人すぎて、申し訳なくて仕方がないのだ。
正直者で面食いな身代わり令嬢と、そんな令嬢のことが実は昔から好きだった策士なヒーローがドタバタとするお話です。
さくっと読んでいただけるかと思います。
毒味役の私がうっかり皇帝陛下の『呪い』を解いてしまった結果、異常な執着(物理)で迫られています
白桃
恋愛
「触れるな」――それが冷酷と噂される皇帝レオルの絶対の掟。
呪いにより誰にも触れられない孤独な彼に仕える毒味役のアリアは、ある日うっかりその呪いを解いてしまう。
初めて人の温もりを知った皇帝は、アリアに異常な執着を見せ始める。
「私のそばから離れるな」――物理的な距離感ゼロの溺愛(?)に戸惑うアリア。しかし、孤独な皇帝の心に触れるうち、二人の関係は思わぬ方向へ…? 呪いが繋いだ、凸凹主従(?)ラブファンタジー!
顔も知らない旦那様に間違えて手紙を送ったら、溺愛が返ってきました
ラム猫
恋愛
セシリアは、政略結婚でアシュレイ・ハンベルク侯爵に嫁いで三年になる。しかし夫であるアシュレイは稀代の軍略家として戦争で前線に立ち続けており、二人は一度も顔を合わせたことがなかった。セシリアは孤独な日々を送り、周囲からは「忘れられた花嫁」として扱われていた。
ある日、セシリアは親友宛てに夫への不満と愚痴を書き連ねた手紙を、誤ってアシュレイ侯爵本人宛てで送ってしまう。とんでもない過ちを犯したと震えるセシリアの元へ、数週間後、夫から返信が届いた。
※この作品は、『小説家になろう』様『カクヨム』様にも投稿しています。
※全部で四話になります。
婚約者は冷酷宰相様。地味令嬢の私が政略結婚で嫁いだら、なぜか激甘溺愛が待っていました
春夜夢
恋愛
私はずっと「誰にも注目されない地味令嬢」だった。
名門とはいえ没落しかけの伯爵家の次女。
姉は美貌と才覚に恵まれ、私はただの飾り物のような存在。
――そんな私に突然、王宮から「婚約命令」が下った。
相手は、王の右腕にして恐れられる冷酷宰相・ルシアス=ディエンツ公爵。
40を目前にしながら独身を貫き、感情を一切表に出さない男。
(……なぜ私が?)
けれど、その婚約は国を揺るがす「ある計画」の始まりだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる