17 / 69
不誠実です
しおりを挟む
機嫌の悪い公爵を目の前にお茶を飲んでいる。
理由は…
「俺と行けば済むことじゃないか」
王太子殿下の誕生日のパーティにジャレッド公爵と行くと伝えたからだ。
「公爵は契約通りトリシア様をパートナーとして同伴なさってください」
「ジャレッド公爵は親世代だぞ!?」
「はい。お会いしましたので存じ上げております」
「何で父親みたいな公爵が良くて俺が駄目なんだ!」
「貴族間で歳が離れてることなんて咎められませんわ。
それに私が決めたのではなく公爵が決めたのです。
公爵は私に社交をしなくていいと。伴うのはトリシア様だと。
それを忠実に守っているのに何が駄目なのですか。
ジャレッド公爵は今のところ恋人ではありませんが、恋人を作って構わないと決めたのは公爵です。
だから出会いを望んだだけです。
そして互いに干渉しないということも公爵が望まれたことです。
守れないのなら契約不履行で婚姻の解消を申し立てます」
「だから、あの日 俺はどうかしていたんだ。
婚姻式の日に君を見た時から心を奪われて、」
「では、婚姻式後にトリシア様と体の触れ合いはなさっていないと?」
「そ、それは…」
「つまり、公爵のお気持ちなんてその程度のものなのです。
それに、どうかしてたで一々契約が覆っては堪ったものではありません。それを防ぐために教会へ提出したのです。
平民なら知識不足だと思うでしょうが、公爵は生まれながらにウィンター家の保護の元、幼い頃から優秀な家庭教師を雇い 学園を卒業なさって、公爵の執務までなさっているお方です。
自ら言い放ったことを書面にして署名する行為がどれだけ拘束力のあるものかご存知だったでしょう?
挙句、新婦を一目見て心を奪われたというのに愛人との生活を止めず、体の関係まで続けていたのは不誠実極まりない。
私にもトリシア様にも失礼です。
その様な貴方と親しくなりたいなどとは微塵も思いません。
最後まで己の発言に責任を持って、契約したことを守りトリシア様を大事になさってくださいませ」
はっきりと告げて居間から退室した。
あ~気分悪い。
そして数日後、王太子殿下の誕生日のパーティ当日となった。
ピアが言うにはトリシア様も出席するために支度をしていたらしい。これぞ元鞘。
「アイリーン様、ジャレッド公爵家の馬車が到着します」
窓の外を見ていたセイビアンが教えてくれた。
「下へ行くわ。みんな留守番をお願いね」
「付き添わなくてもよろしいのですか」
「大丈夫よ、ロザリーナ」
一階に降りると公爵とトリシア様がいた。
「ごきげんよう。直ぐに退きますのでお先に失礼します」
ジャレッド公爵家の馬車を出さないとウィンター家の馬車が出し難いはずだ。
外に出ると公爵が立っていた。
「びっくりした」
「驚かせてすみません、ジャレッド公爵」
「いえ、こちらこそ。
ご挨拶を、」
「直ぐに参りましょう。ウィンター公爵の馬車も出るところですので」
「では、このまま向かいましょう」
馬車に乗せてもらい王城を目指した。
ジャレッド公爵は引き締まった体をしている感じがした。
「ジャレッド公爵。そのスタイルをキープする秘訣は何ですか」
「え?」
「私、食べるのが好きなので、今のうちはいいとして そのうち太りやすくなったときの参考にしたいなと」
「……そうか。だが、私の場合は剣を中心とした鍛錬をほぼ毎朝行っている。
参考にはならないだろう」
「剣は重すぎますから無理ですね」
「ベロノワ伯爵夫人はどうしているんだ?」
「定期的に断食したり、食べる量をセーブしています」
「そうか」
「後でカトリス侯爵夫人に聞いてみます」
「残念だが、ナディアは太らない体質だ」
「ずるい」
「……」
「仕方ないので太りやすくなったら食べる量を減らします」
「多少ぽっちゃりしていても可愛いんじゃないか?」
「それ、実際にぽっちゃりすると捨てられるパターンです。
自国で聞いたことがあります。
“太っても可愛いよ”とか言っておいて本当に太ったら“醜いから寄るな!別れる!”って言い出していました」
「そ、そうなんだ。酷いね」
「ええ、本当に」
「伯爵はどう維持しているのかな。伯爵夫人は食べる量をセーブしているんだよな。具体的にどの程度なんだ?」
「父は常に忙しいので仕事痩せですね。母は服がキツくなると食べたつもり痩せしていました」
「ん?つもり?」
「はい。本当は食べていませんが食べたつもりになるんです。
例えばケーキの代わりに野菜のゼリー寄せとか、お肉の代わりに茹でた野菜を固めてお肉に見立てて軽く焼いてソースかけるとか」
「つまり、将来 何かしらしないといけないということだな」
「やっぱりそうですか……でも食べるのは止めたくないので母式は選ばないと思います」
そんな話をしている間に到着し、控え室に入った。
皆さん こちらを見てちょっと驚いている。
「アイリーン様」
「カトリス侯爵夫人」
「外でもナディアと呼んで。
お兄様。お互いに名前で呼ばないと変な感じよ」
「…アイリーン嬢といった感じだが夫人なんだよな。
アイリーン様でいいか」
「は、はい。ルイ様」
「今回は当主夫妻宛の招待で、一緒に出席できない場合は他のパートナーを同伴するんだ。
第一王子が婚姻して王太子となったのが昨年だ。
王太子になって初の誕生日のパーティになる。
王子のうちは学友でもデビューしていれば呼べるが、王太子になれば招待を当主にして関わりを持たせるんだよ」
グゥ~
「……」
「可愛い返事だな」
「失礼しました!」
「オナカすいちゃったのね。困ったわ」
「ちょっと外します」
控え室からでて、廊下の突き当たりの奥の影に隠れてポケットから取り出した物を口に入れた。
「何してるんだ」
「!!」
理由は…
「俺と行けば済むことじゃないか」
王太子殿下の誕生日のパーティにジャレッド公爵と行くと伝えたからだ。
「公爵は契約通りトリシア様をパートナーとして同伴なさってください」
「ジャレッド公爵は親世代だぞ!?」
「はい。お会いしましたので存じ上げております」
「何で父親みたいな公爵が良くて俺が駄目なんだ!」
「貴族間で歳が離れてることなんて咎められませんわ。
それに私が決めたのではなく公爵が決めたのです。
公爵は私に社交をしなくていいと。伴うのはトリシア様だと。
それを忠実に守っているのに何が駄目なのですか。
ジャレッド公爵は今のところ恋人ではありませんが、恋人を作って構わないと決めたのは公爵です。
だから出会いを望んだだけです。
そして互いに干渉しないということも公爵が望まれたことです。
守れないのなら契約不履行で婚姻の解消を申し立てます」
「だから、あの日 俺はどうかしていたんだ。
婚姻式の日に君を見た時から心を奪われて、」
「では、婚姻式後にトリシア様と体の触れ合いはなさっていないと?」
「そ、それは…」
「つまり、公爵のお気持ちなんてその程度のものなのです。
それに、どうかしてたで一々契約が覆っては堪ったものではありません。それを防ぐために教会へ提出したのです。
平民なら知識不足だと思うでしょうが、公爵は生まれながらにウィンター家の保護の元、幼い頃から優秀な家庭教師を雇い 学園を卒業なさって、公爵の執務までなさっているお方です。
自ら言い放ったことを書面にして署名する行為がどれだけ拘束力のあるものかご存知だったでしょう?
挙句、新婦を一目見て心を奪われたというのに愛人との生活を止めず、体の関係まで続けていたのは不誠実極まりない。
私にもトリシア様にも失礼です。
その様な貴方と親しくなりたいなどとは微塵も思いません。
最後まで己の発言に責任を持って、契約したことを守りトリシア様を大事になさってくださいませ」
はっきりと告げて居間から退室した。
あ~気分悪い。
そして数日後、王太子殿下の誕生日のパーティ当日となった。
ピアが言うにはトリシア様も出席するために支度をしていたらしい。これぞ元鞘。
「アイリーン様、ジャレッド公爵家の馬車が到着します」
窓の外を見ていたセイビアンが教えてくれた。
「下へ行くわ。みんな留守番をお願いね」
「付き添わなくてもよろしいのですか」
「大丈夫よ、ロザリーナ」
一階に降りると公爵とトリシア様がいた。
「ごきげんよう。直ぐに退きますのでお先に失礼します」
ジャレッド公爵家の馬車を出さないとウィンター家の馬車が出し難いはずだ。
外に出ると公爵が立っていた。
「びっくりした」
「驚かせてすみません、ジャレッド公爵」
「いえ、こちらこそ。
ご挨拶を、」
「直ぐに参りましょう。ウィンター公爵の馬車も出るところですので」
「では、このまま向かいましょう」
馬車に乗せてもらい王城を目指した。
ジャレッド公爵は引き締まった体をしている感じがした。
「ジャレッド公爵。そのスタイルをキープする秘訣は何ですか」
「え?」
「私、食べるのが好きなので、今のうちはいいとして そのうち太りやすくなったときの参考にしたいなと」
「……そうか。だが、私の場合は剣を中心とした鍛錬をほぼ毎朝行っている。
参考にはならないだろう」
「剣は重すぎますから無理ですね」
「ベロノワ伯爵夫人はどうしているんだ?」
「定期的に断食したり、食べる量をセーブしています」
「そうか」
「後でカトリス侯爵夫人に聞いてみます」
「残念だが、ナディアは太らない体質だ」
「ずるい」
「……」
「仕方ないので太りやすくなったら食べる量を減らします」
「多少ぽっちゃりしていても可愛いんじゃないか?」
「それ、実際にぽっちゃりすると捨てられるパターンです。
自国で聞いたことがあります。
“太っても可愛いよ”とか言っておいて本当に太ったら“醜いから寄るな!別れる!”って言い出していました」
「そ、そうなんだ。酷いね」
「ええ、本当に」
「伯爵はどう維持しているのかな。伯爵夫人は食べる量をセーブしているんだよな。具体的にどの程度なんだ?」
「父は常に忙しいので仕事痩せですね。母は服がキツくなると食べたつもり痩せしていました」
「ん?つもり?」
「はい。本当は食べていませんが食べたつもりになるんです。
例えばケーキの代わりに野菜のゼリー寄せとか、お肉の代わりに茹でた野菜を固めてお肉に見立てて軽く焼いてソースかけるとか」
「つまり、将来 何かしらしないといけないということだな」
「やっぱりそうですか……でも食べるのは止めたくないので母式は選ばないと思います」
そんな話をしている間に到着し、控え室に入った。
皆さん こちらを見てちょっと驚いている。
「アイリーン様」
「カトリス侯爵夫人」
「外でもナディアと呼んで。
お兄様。お互いに名前で呼ばないと変な感じよ」
「…アイリーン嬢といった感じだが夫人なんだよな。
アイリーン様でいいか」
「は、はい。ルイ様」
「今回は当主夫妻宛の招待で、一緒に出席できない場合は他のパートナーを同伴するんだ。
第一王子が婚姻して王太子となったのが昨年だ。
王太子になって初の誕生日のパーティになる。
王子のうちは学友でもデビューしていれば呼べるが、王太子になれば招待を当主にして関わりを持たせるんだよ」
グゥ~
「……」
「可愛い返事だな」
「失礼しました!」
「オナカすいちゃったのね。困ったわ」
「ちょっと外します」
控え室からでて、廊下の突き当たりの奥の影に隠れてポケットから取り出した物を口に入れた。
「何してるんだ」
「!!」
608
あなたにおすすめの小説
旦那様には愛人がいますが気にしません。
りつ
恋愛
イレーナの夫には愛人がいた。名はマリアンヌ。子どものように可愛らしい彼女のお腹にはすでに子どもまでいた。けれどイレーナは別に気にしなかった。彼女は子どもが嫌いだったから。
※表紙は「かんたん表紙メーカー」様で作成しました。
王太子妃は離婚したい
凛江
恋愛
アルゴン国の第二王女フレイアは、婚約者であり、幼い頃より想いを寄せていた隣国テルルの王太子セレンに嫁ぐ。
だが、期待を胸に臨んだ婚姻の日、待っていたのは夫セレンの冷たい瞳だった。
※この作品は、読んでいただいた皆さまのおかげで書籍化することができました。
綺麗なイラストまでつけていただき感無量です。
これまで応援いただき、本当にありがとうございました。
レジーナのサイトで番外編が読めますので、そちらものぞいていただけると嬉しいです。
https://www.regina-books.com/extra/login
私も貴方を愛さない〜今更愛していたと言われても困ります
せいめ
恋愛
『小説年間アクセスランキング2023』で10位をいただきました。
読んでくださった方々に心から感謝しております。ありがとうございました。
「私は君を愛することはないだろう。
しかし、この結婚は王命だ。不本意だが、君とは白い結婚にはできない。貴族の義務として今宵は君を抱く。
これを終えたら君は領地で好きに生活すればいい」
結婚初夜、旦那様は私に冷たく言い放つ。
この人は何を言っているのかしら?
そんなことは言われなくても分かっている。
私は誰かを愛することも、愛されることも許されないのだから。
私も貴方を愛さない……
侯爵令嬢だった私は、ある日、記憶喪失になっていた。
そんな私に冷たい家族。その中で唯一優しくしてくれる義理の妹。
記憶喪失の自分に何があったのかよく分からないまま私は王命で婚約者を決められ、強引に結婚させられることになってしまった。
この結婚に何の希望も持ってはいけないことは知っている。
それに、婚約期間から冷たかった旦那様に私は何の期待もしていない。
そんな私は初夜を迎えることになる。
その初夜の後、私の運命が大きく動き出すことも知らずに……
よくある記憶喪失の話です。
誤字脱字、申し訳ありません。
ご都合主義です。
完結 貴方が忘れたと言うのなら私も全て忘却しましょう
音爽(ネソウ)
恋愛
商談に出立した恋人で婚約者、だが出向いた地で事故が発生。
幸い大怪我は負わなかったが頭を強打したせいで記憶を失ったという。
事故前はあれほど愛しいと言っていた容姿までバカにしてくる恋人に深く傷つく。
しかし、それはすべて大嘘だった。商談の失敗を隠蔽し、愛人を侍らせる為に偽りを語ったのだ。
己の事も婚約者の事も忘れ去った振りをして彼は甲斐甲斐しく世話をする愛人に愛を囁く。
修復不可能と判断した恋人は別れを決断した。
婚約破棄に、承知いたしました。と返したら爆笑されました。
パリパリかぷちーの
恋愛
公爵令嬢カルルは、ある夜会で王太子ジェラールから婚約破棄を言い渡される。しかし、カルルは泣くどころか、これまで立て替えていた経費や労働対価の「莫大な請求書」をその場で叩きつけた。
いいえ、望んでいません
わらびもち
恋愛
「お前を愛することはない!」
結婚初日、お決まりの台詞を吐かれ、別邸へと押し込まれた新妻ジュリエッタ。
だが彼女はそんな扱いに傷つくこともない。
なぜなら彼女は―――
旦那様から彼女が身籠る間の妻でいて欲しいと言われたのでそうします。
クロユキ
恋愛
「君には悪いけど、彼女が身籠る間の妻でいて欲しい」
平民育ちのセリーヌは母親と二人で住んでいた。
セリーヌは、毎日花売りをしていた…そんなセリーヌの前に毎日花を買う一人の貴族の男性がセリーヌに求婚した。
結婚後の初夜には夫は部屋には来なかった…屋敷内に夫はいるがセリーヌは会えないまま数日が経っていた。
夫から呼び出されたセリーヌは式を上げて久しぶりに夫の顔を見たが隣には知らない女性が一緒にいた。
セリーヌは、この時初めて夫から聞かされた。
夫には愛人がいた。
愛人が身籠ればセリーヌは離婚を言い渡される…
誤字脱字があります。更新が不定期ですが読んで貰えましたら嬉しいです。
よろしくお願いします。
【完結】旦那は堂々と不倫行為をするようになったのですが離婚もさせてくれないので、王子とお父様を味方につけました
よどら文鳥
恋愛
ルーンブレイス国の国家予算に匹敵するほどの資産を持つハイマーネ家のソフィア令嬢は、サーヴィン=アウトロ男爵と恋愛結婚をした。
ソフィアは幸せな人生を送っていけると思っていたのだが、とある日サーヴィンの不倫行為が発覚した。それも一度や二度ではなかった。
ソフィアの気持ちは既に冷めていたため離婚を切り出すも、サーヴィンは立場を理由に認めようとしない。
更にサーヴィンは第二夫妻候補としてラランカという愛人を連れてくる。
再度離婚を申し立てようとするが、ソフィアの財閥と金だけを理由にして一向に離婚を認めようとしなかった。
ソフィアは家から飛び出しピンチになるが、救世主が現れる。
後に全ての成り行きを話し、ロミオ=ルーンブレイス第一王子を味方につけ、更にソフィアの父をも味方につけた。
ソフィアが想定していなかったほどの制裁が始まる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる