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困惑する夫
結婚して以来、クロエが身銭を切った分を返そうとしたら、それはお祖父様からだと打ち明けられた。
「え!? お祖父様が!?」
「はい。リッチウェイ家と縁を切ったことになっているから大っぴらに援助できないけどとおっしゃって。私は現在大旦那様個人に雇われてお給料をいただいておりますが、他にお嬢様の生活を支えるためのお金も預かっております」
「知らなかったわ」
「もっといろいろとお出ししたかったのですが、高価な物を私が買っては怪しまれてしまい、それでは内緒になりませんから」
「ありがとう、クロエ」
「大旦那様にはバレたとお伝えします」
「お祖父様は私の結婚生活の詳細をご存知なの?」
「はい」
「心配かけてしまっているのね」
「そうですね。早く別れることを心待ちにしているみたいです」
「でも、行き場がないわ」
「大旦那様が受け入れてくださいます」
「そうかしら」
お祖父様は、5年前にお祖母様が天に召された際に、お父様に爵位を譲り一線を退いている。
リッチウェイ家は王都の一等地の本邸の他に、王都の南外れの落ち着いた場所にもう一邸かまえていてお祖父様はそこに滞在する。本邸だと騒がしいかららしい。領地では敷地内の別邸に住み、自由を満喫している。
リッチウェイ伯爵家の領地では定番色の他に珍しい色彩のサファイアが採れ、それは世界に輸出されている。石だけで売ることはほぼなく、冠やネックレスなどにして出すため、その分売値は高くなる。小さな石はそれ1つで出すことはない。たくさん敷き詰めたパヴェリングやパヴェバンクルなどにして売り出す。だから安価な商品はない。
彫金の技術にも優れ、デザイン次第ではバルモンドから依頼を受けることもある。
酪農でも有名だ。
固定客がずっと予約枠を維持しているので、口にするには購入した人の屋敷に行って振る舞ってもらうか、仕入れているレストランを予約して食べに行くか。
生産量が少ない年は幻のチーズ、幻の肉などと呼ばれる。
夫はリッチウェイの富を雨の恵みのように考えていそうだけど、大昔、採掘して外れたことも何度とあったけど諦めなかったから稀少な運を手にできた。酪農も環境や餌の研究を重ね、チーズ作りも何度も何度も失敗し、最初の成功で良しとせず研究改良を繰り返した。リッチウェイの富は心が折れるほどの多くの失敗と無数の努力の積み重ねの上にある。
「もちろんです、同じ瞳を持つ最愛の孫娘ですから」
リッチウェイの中で稀にグリーンとブルーが混じらず放射状に虹彩を色付け、透明度を誇る泉のような瞳の持ち主が生まれる。現在生きてその瞳を持つ者はお祖父様と私だけ。この瞳はリッチウェイを繁栄させると言われている。
お祖父様が生まれてすぐに、感染力が強く重症化する風邪が流行って大勢が亡くなった。そのときリッチウェイの領地内に死者が出ることはなかった。
その数年後、品種改良に成功して病気になりにくく肉質の良いブランド牛を繁殖させた。
お祖父様は、三階から転落したのに小さな擦り傷しかなかったという奇跡が一番すごかったと話してくれたことがある。
私の瞳の効果は? と聞かれてもよくわからない。
お祖父様の瞳のおかげかもしれないし。
数週間後。
用もないのに夫と愛人シャルロットが領地の屋敷に戻った。
いつもの古くて見すぼらしいワンピースに着替えて居間へ向かう。
「お帰りなさいませ」
シャルロットを見ると今にも泣き喚きそうな顔をしている。
「……おい。何故かみんなの態度がおかしいんだ。何か知っているか?」
何を尋ねているのか、何が起きているのか心当たりがあるけど、普通はその言葉だけで答えに辿り着くことはない。
「あの、もっと詳しく教えてくださらないと何をおっしゃっているのか」
「今まで交流があった貴族や友人達から避けられているんだ。いつの間にか私を外して集まっていて、何を聞いてもはぐらかされる。それに自ら御用聞に来ていた商人も来なくなった」
「そうよ! 呼んでやっても粗末な品か売れなさそうな高価な品だけしか持って来ないし、説明しないし売る気がないの! しかも来たのは荷物運びの下男と見習いの売り子だけなのよ!?」
なかなか頼もしい店じゃない。
「何て店でしたか?」
「ピリア」
店の名に心当たりがなく、クロエを見ると声を出さず口が動いていた。
〈 フィ・リ・ア 〉
エリーゼ、落ち着くの。笑っては駄目。読もうと思えばピリアとも読めるかも。違うことを一度考えるの。そう、愛して結婚したはずの夫が豹変した日のことを……。
込み上げる笑いを不幸な思い出で掻き消した。
「何か外で目に引くようなことをなさいましたか?」
「別に」
気付かせないと。もっとヒントをあげないと。
「声を張り上げたり、感情を抑えなかったり。例えば怒りとか」
「ん~、あったかなぁ」
ここまで言っても!?
「視線をたくさん浴びたりとか」
「ん~」
「あ、オペラのチケットの件ですわ。抗議したときに」
「あれは向こうが悪いんだろう」
「感情を出して声を張り上げたりすると事情を知らない方々には異様に映ったかもしれません。多くのお客様がいらしたのではありませんか?」
「確かに、公演が終わって客がたくさん出てきたな」
「それですわ」
やっと指摘できて良かったわ。
「なんでだ?」
「本当におかしいです! 私達は当然のことを言っただけですのに全く相手にしようとせず、帰れって言いましたのよ!」
「そうだ! 失礼な奴らだった!」
本当よ。どうして私はこの男が輝いて見えたのかしら。
結婚前はこんな馬鹿なことは言い出さなかった。優しくて話を聞いてくれて、よく王宮内の庭園の開放日にデートに連れて行ってくれた。たくさん褒めてくれて愛してると言ってくれた。彼とならリッチウェイを出ても穏やかで愛のある日々を過ごせると思っていた。
今ならわかる。話を聞くのは無料、せいぜいお茶代くらい。王宮庭園の開放日を利用すれば無料、昔から他の女性にも何度と使っていたデートコースなら庭師並みに花の知識もあるはずよね。観劇とか連れて行ってもらったことはない、だからこの惨事。無料開放の美術品展示とかそういうお金のかからないデートばかりだった。
バルト家に余裕がないと感じていたから、そんなデートも彼の最大限の心遣いだと思っていた。
私の生きてきた世界でそれが新鮮に感じたの。
餌代が惜しかったなんて気付かず、“私のような者は君に相応しくないのはわかっているが、一生側にいたいなんて夢を見てしまうんだ” なんてプロポーズらしき言葉を放つ彼からいかにも売れ残りの萎れ気味の花をもらって喜んでいた。
私のバカ。
「え!? お祖父様が!?」
「はい。リッチウェイ家と縁を切ったことになっているから大っぴらに援助できないけどとおっしゃって。私は現在大旦那様個人に雇われてお給料をいただいておりますが、他にお嬢様の生活を支えるためのお金も預かっております」
「知らなかったわ」
「もっといろいろとお出ししたかったのですが、高価な物を私が買っては怪しまれてしまい、それでは内緒になりませんから」
「ありがとう、クロエ」
「大旦那様にはバレたとお伝えします」
「お祖父様は私の結婚生活の詳細をご存知なの?」
「はい」
「心配かけてしまっているのね」
「そうですね。早く別れることを心待ちにしているみたいです」
「でも、行き場がないわ」
「大旦那様が受け入れてくださいます」
「そうかしら」
お祖父様は、5年前にお祖母様が天に召された際に、お父様に爵位を譲り一線を退いている。
リッチウェイ家は王都の一等地の本邸の他に、王都の南外れの落ち着いた場所にもう一邸かまえていてお祖父様はそこに滞在する。本邸だと騒がしいかららしい。領地では敷地内の別邸に住み、自由を満喫している。
リッチウェイ伯爵家の領地では定番色の他に珍しい色彩のサファイアが採れ、それは世界に輸出されている。石だけで売ることはほぼなく、冠やネックレスなどにして出すため、その分売値は高くなる。小さな石はそれ1つで出すことはない。たくさん敷き詰めたパヴェリングやパヴェバンクルなどにして売り出す。だから安価な商品はない。
彫金の技術にも優れ、デザイン次第ではバルモンドから依頼を受けることもある。
酪農でも有名だ。
固定客がずっと予約枠を維持しているので、口にするには購入した人の屋敷に行って振る舞ってもらうか、仕入れているレストランを予約して食べに行くか。
生産量が少ない年は幻のチーズ、幻の肉などと呼ばれる。
夫はリッチウェイの富を雨の恵みのように考えていそうだけど、大昔、採掘して外れたことも何度とあったけど諦めなかったから稀少な運を手にできた。酪農も環境や餌の研究を重ね、チーズ作りも何度も何度も失敗し、最初の成功で良しとせず研究改良を繰り返した。リッチウェイの富は心が折れるほどの多くの失敗と無数の努力の積み重ねの上にある。
「もちろんです、同じ瞳を持つ最愛の孫娘ですから」
リッチウェイの中で稀にグリーンとブルーが混じらず放射状に虹彩を色付け、透明度を誇る泉のような瞳の持ち主が生まれる。現在生きてその瞳を持つ者はお祖父様と私だけ。この瞳はリッチウェイを繁栄させると言われている。
お祖父様が生まれてすぐに、感染力が強く重症化する風邪が流行って大勢が亡くなった。そのときリッチウェイの領地内に死者が出ることはなかった。
その数年後、品種改良に成功して病気になりにくく肉質の良いブランド牛を繁殖させた。
お祖父様は、三階から転落したのに小さな擦り傷しかなかったという奇跡が一番すごかったと話してくれたことがある。
私の瞳の効果は? と聞かれてもよくわからない。
お祖父様の瞳のおかげかもしれないし。
数週間後。
用もないのに夫と愛人シャルロットが領地の屋敷に戻った。
いつもの古くて見すぼらしいワンピースに着替えて居間へ向かう。
「お帰りなさいませ」
シャルロットを見ると今にも泣き喚きそうな顔をしている。
「……おい。何故かみんなの態度がおかしいんだ。何か知っているか?」
何を尋ねているのか、何が起きているのか心当たりがあるけど、普通はその言葉だけで答えに辿り着くことはない。
「あの、もっと詳しく教えてくださらないと何をおっしゃっているのか」
「今まで交流があった貴族や友人達から避けられているんだ。いつの間にか私を外して集まっていて、何を聞いてもはぐらかされる。それに自ら御用聞に来ていた商人も来なくなった」
「そうよ! 呼んでやっても粗末な品か売れなさそうな高価な品だけしか持って来ないし、説明しないし売る気がないの! しかも来たのは荷物運びの下男と見習いの売り子だけなのよ!?」
なかなか頼もしい店じゃない。
「何て店でしたか?」
「ピリア」
店の名に心当たりがなく、クロエを見ると声を出さず口が動いていた。
〈 フィ・リ・ア 〉
エリーゼ、落ち着くの。笑っては駄目。読もうと思えばピリアとも読めるかも。違うことを一度考えるの。そう、愛して結婚したはずの夫が豹変した日のことを……。
込み上げる笑いを不幸な思い出で掻き消した。
「何か外で目に引くようなことをなさいましたか?」
「別に」
気付かせないと。もっとヒントをあげないと。
「声を張り上げたり、感情を抑えなかったり。例えば怒りとか」
「ん~、あったかなぁ」
ここまで言っても!?
「視線をたくさん浴びたりとか」
「ん~」
「あ、オペラのチケットの件ですわ。抗議したときに」
「あれは向こうが悪いんだろう」
「感情を出して声を張り上げたりすると事情を知らない方々には異様に映ったかもしれません。多くのお客様がいらしたのではありませんか?」
「確かに、公演が終わって客がたくさん出てきたな」
「それですわ」
やっと指摘できて良かったわ。
「なんでだ?」
「本当におかしいです! 私達は当然のことを言っただけですのに全く相手にしようとせず、帰れって言いましたのよ!」
「そうだ! 失礼な奴らだった!」
本当よ。どうして私はこの男が輝いて見えたのかしら。
結婚前はこんな馬鹿なことは言い出さなかった。優しくて話を聞いてくれて、よく王宮内の庭園の開放日にデートに連れて行ってくれた。たくさん褒めてくれて愛してると言ってくれた。彼とならリッチウェイを出ても穏やかで愛のある日々を過ごせると思っていた。
今ならわかる。話を聞くのは無料、せいぜいお茶代くらい。王宮庭園の開放日を利用すれば無料、昔から他の女性にも何度と使っていたデートコースなら庭師並みに花の知識もあるはずよね。観劇とか連れて行ってもらったことはない、だからこの惨事。無料開放の美術品展示とかそういうお金のかからないデートばかりだった。
バルト家に余裕がないと感じていたから、そんなデートも彼の最大限の心遣いだと思っていた。
私の生きてきた世界でそれが新鮮に感じたの。
餌代が惜しかったなんて気付かず、“私のような者は君に相応しくないのはわかっているが、一生側にいたいなんて夢を見てしまうんだ” なんてプロポーズらしき言葉を放つ彼からいかにも売れ残りの萎れ気味の花をもらって喜んでいた。
私のバカ。
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