【完結】絶縁してでも愛を選んだのに、祭壇の前で夫が豹変しました。

ユユ

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取り戻す日常

王都の別邸に来て1週間。

ルイーズをこの別邸に初めて招いてお茶を飲んでいた。

「素敵な場所よね。何でうちは買わなかったのかしら」

彼女の疑問に答えるべく、先祖から伝え聞いた経緯をルイーズに説明することにした。

王都の中の南外れにあるこの土地は未開発だった。広さは、庭園や小離宮を含む王宮の敷地の50分の1ほどで、一画をまとめて売るには広すぎたし、分割して売りに出すには多額の費用が必要だった。

草木が鬱蒼としていて多くの大木が鎮座していた。水量が乏しい湧き水が土を緩くしている部分もあったりして開発するにはかなり手間のかかる状態だった。
更には、大昔の何かが原因で殺された人達の骨が五十体近く埋まっていて、不吉だと放置され誰も立ち入らない土地だった。
国もこの一画を開発しなくても困らなかった。

だからといって管理維持費がかからないわけではない。
定期的に草や蔦を引き枝を落とし、病気になった樹木の処分をしなくてはならなかった。

百年以上前、稀に見ぬ大嵐が発生して、折れて飛んでいった枝が近くの屋敷の窓ガラスを割ったり、根こそぎ倒れた大木が隣接する屋敷を半壊させたりして死傷者を何十人も出した。その中には貴族も複数人いた。

そこで、どうにかしなくてはと検討をした結果売りに出すことになった。だけど購入するには広すぎる上に呪われた土地として知られていて、莫大な初期費用もかかるため入札数はゼロだった。

苦肉の策として国が全ての権利を放棄するから誰か買い取ってくれともう一度募った。
その一画は王都内にありながらも他の領地のような扱いとなり領法のような独自の定めを一画の中で行使できる。放棄したので特産品などの収益が出ても申告する必要もない。小さく呪われた土地だからこその案だった。

そこで具体的にどこまで許されるのか国王並びに法律家と協議したのが当時のリッチウェイ伯爵だった。
一画全てがリッチウェイの占有地になるのだから許可なく敷地内に入れないという条件は至極真っ当だと判断された。
国側は、広い敷地の中に屋敷が建つ程度に考えていた。それにリッチウェイ家は謀反を企てる兵力は持っていないので問題無しと答えた。

だが入札日、共同購入だとわかった国は拒否しようとしたが、共同購入不可とか単独購入のみと定めておらず拒否する理由がない。ここで中止すると国が嘘をついたことになり、二度と買い手が現れない可能性が高い。
リッチウェイ伯爵達も立ち入り制限をかける理由を、整備後に観光目的で立ち入ったり購入者の金で整えた道を旅や商業目的に使って欲しくないだけだと説明し、妥協点を擦り合わせて落札が叶った。
他に入札する者がいなかったこともある。

通常なら国が土地を更地分割して道を整えた後で売りに出せば、この土地から見える素晴らしい景色に気付けたはず。王族を含めた様々な貴族達が手を挙げ競値が釣り上がっただろう。

「その……人骨はどうなったの?」

説明を聞いたルイーズは遠慮気味に質問をした。

「当時、共同購入した主人達で郊外の共同墓地に人骨を移したの。墓石も用意して神官と共に全員で弔ったそうよ。更には枢機卿に人骨が埋まっていた穴を浄めてもらって、土地全体の祝福式を行ってもらったと聞いたわ」

「よく来てくださったわね」

「その年の寄付額は歴代最高額となったみたい」

「そ、そうなのね」

「複数ある共有ガゼボのうち1つは鎮魂のために作られているの。慰霊碑と神像と祭壇と礼拝のための椅子などが石で作られていて、住人や使用人がよく使っているみたい。私も一度行ったけど、他所のお屋敷に呼ばれた商人が祈っていたわ」

リッチウェイ家の当時の当主やその友人達が声を掛け合い共同購入。それぞれが広い敷地を保有し、道や残した自然は全て共有資産にした。そして整備し独自の規則を作り価値を何十倍にも高めた。後に王族が何度と土地を欲しがり交渉したがいくら積まれても誰も譲らなかった。

声をかけた当主全員が賛同したと聞いているから、バルモンド侯爵家に声を掛けていないはず。

「私もお祈りに行きたいわ」

「後で案内するわね」

「当時、うちの先祖もリッチウェイ家と親しかったら声を掛けてもらえたかしら」

「もちろんよ」

「はぁ~、こんな素敵な別邸があったら隠居したくもなるわ。そういえば王女殿下はいらしたことはあるの?」

「ないわよ」

「入り浸るかもしれないからその方がいいわ。私は入り浸ってもいいわよね?」

「跡継ぎが何を言ってるのよ」

「ふふっ、それにしても前伯爵は婚歴のあるエリーゼがまだ6歳くらいだと思っているのかしら」

ソファのぬいぐるみを膝の上に乗せながら言った。

「そうみたい。だから私も遠慮なく甘えているわ」

「私もリッチウェイに生まれたかったなぁ」

現在のバルモンド侯爵家の当主はルイーズの祖父。彼はルイーズしか生まなかった息子の嫁を責め、もう1人娶って男児を産ませろと言い続けていた。だけど政略結婚だったはずなのにルイーズの父は侯爵からの圧力や親類からの圧力にも屈することはなく妻だけだと譲らなかった。
ルイーズは両親に愛情を注がれて育ったけど、そんな過程を見てきたので養子でも迎えて自分を嫁に出せばいいのにといまだに思っている。

「シオン様と結婚したかった」

シオンとは私の兄。既に結婚している。バルモンド家がルイーズを嫁に出す気がないから当然時を巻き戻しても婚約できない。

「兄と結婚しても此処には住めないわよ?」

「そうなの?」

「この別邸は私が貰いそうなの。この土地の購入は領地のお金とは関係ない私財で購入していて、相続も別なの」

「いいなぁ」

コンコンコンコン

ノックの音に入り口へ顔を向けるとお祖父様が立っていた。

「バルモンド嬢、よく来てくれた。今後もエリーゼに会いに来てくれると嬉しい」

ドアは開けっ放しだから話は聞こえていたみたい。

「不躾で申し訳ありません」

「エリーゼの親友なら儂の孫娘も同然だからかまわんよ」

その後、徐々に気を許したルイーズは泊まりたいと言ってバルモンド邸に連絡を入れて泊まった。一緒に夕焼けを眺め、早朝も日の出を眺めた。

「はぁ、帰らないと。婚約者と約束しているの」

バルモンド侯爵は親類の中から優秀な令息を探しルイーズと婚約させた。彼は既にバルモンド家で教育を受けていて、時々王都の屋敷にも来るらしい。

「またね」

ルイーズを見送り居間に戻ると、ちょうどエルが戻って来た。

「お帰り」

「ただいま戻りました」

リッチウェイ伯爵家の騎士エリオット・ルセットは分家のルセット子爵家の次男。一応血族ではあるけどかなり血は薄くなっている。エルはシオン兄様と同い歳で仲が良く、小さな頃からよく遊びに来ていた。
6つ歳下の私もよく面倒を見てもらっていた。子供の頃の私は誰かの膝の上にいた記憶で占めている。エルが来ると彼の膝の上に座っていたし。

「デート?」

彼は跡継ぎではないけどモテないはずはない。優しいし容姿もいいし鍛えていて体は引き締まっているし。

「まさか。シオン様に呼ばれたんですよ。お嬢様に会いたくて仕方ないみたいでしたけど閣下が伯爵様や夫人以外にシオン様の出入りも禁止したので来ることができないんです」

「お祖父様?」

「ここは儂の屋敷だ。アランが態度を改めるまでは誰も来させない」

アランとはお祖父様の息子であり私の父で現在のリッチウェイ伯爵だ。私との絶縁を維持しているお父様達にお祖父様は怒っていた。

「悪いのは私ですから」

「蝶よ花よと育てたエリーゼに虫が近寄るのを防げなかった分際で」

「お祖父様」

「エリーゼが騙されたのはアランのせいだ」

「違います。お祖父様、そんなことはおっしゃらないでください」

「おまえも同罪だぞ、エリオット」

「申し訳ございません」

「どうしてエルまで責めるんですか! エルは関係ないです」

「お嬢様、閣下のおっしゃる通りです」

ただの八つ当たりのはずなのにエルは深々と頭を下げた。

「エルまで責められたら私もここにはいられません」

「よし、もう怒ってないぞ」

お祖父様ったら。

「明日、買い物に行くぞ。呼び付けようと思ったが見て回るのもいいだろう」

「はい、お祖父様」



翌日からお祖父様の散財が始まった。
ドレスなどをたくさんオーダーし、ネックレスなども次々と購入。馬まで買おうとしていたのでめた。

その様子は目撃されていて、招待状が別邸に届くようになった。王女は大喜びで私を呼び付けては話し相手にした。

そして2ヶ月後に調停のために呼び出された。


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