【完結】絶縁してでも愛を選んだのに、祭壇の前で夫が豹変しました。

ユユ

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再構築なんてありえない

指定された日時にお祖父様達と一緒に調停に臨んだ。
角を曲がった廊下で夫に会ってしまった。

「エリーゼ!」

彼が手を伸ばすとエルが彼を止めた。私はお祖父様の後ろに隠れた。

「エリーゼ! こっちに来い!」

「バルト子爵、話し合いのために来たのでは?」

「その通りです。中にお入りください」

部屋の中から出て来た人に注意され、夫は渋々中に入り、続いて私達も入った。

私が出した婚姻無効届けに対し夫が異議を申立てて、お祖父様が反論を提出したところで呼ばれている。

「夫、オリバー・バルト子爵は結婚生活に問題はなく、婚姻の継続を希望するのですね?」

「はい」

「妻、エリーゼ・バルト夫人は夫婦生活はなかったとして婚姻無効を申し立てた。更には継続しがたい理由を追加提出したことに間違いありませんか、代理人ローランド・リッチウェイ前伯爵」

「間違いありません」

「では、一番の証拠の検証をしますので、夫人は女官について行ってください」

「はい」

促されて別室へ行くと女医がいてを受けた。
初めてのことでとても恥ずかしかった。

お祖父様達のいる部屋に女医と戻ると調停は再開した。

「先生、どうでしたか?」

「間違いなくエリーゼ・バルト夫人には純潔の証がありました」

うわぁ……恥ずかしいっ!!
顔に熱が集まり両手で顔を覆った。

「子爵、どういうことでしょう」

「それは、妻が嫌がったからです」

は!?

「1年もですか?」

「そうです」

「結婚後数ヶ月で愛人を同じ屋敷に住まわせ、夫婦の寝室を愛人と使っていたからではありませんか?」

「それは、跡継ぎを産ませるのは貴族の役目ですから」

「現在、愛人のシャルロット・エヴュー男爵令嬢はご懐妊ですね? 彼女を夫人にすればよろしいのではありませんか?」

「子爵夫人の役目は子を産むだけではありません」

「ですが、バルト子爵家でいう貴族の暮らしは夫人を粗末な部屋に追いやり必要な物さえ買い与えず、茶葉さえも使わせず水を飲ませる生活のことですか?」

「え?」

「硬くなった余り物のパンと具がほとんど入っていない冷めたスープだけの食事を1日一回か二回与える生活のことですか?」

「まさかそんなことはありません」

「領地の屋敷に調査員を向かわせて夫人の部屋を確認し、使用人達からも聞き取り調査をしましたよ?」

「っ!」

「初夜はメイドが相手だったとか」

「っ!!」

「しばらくはそのメイドが愛人で、エヴュー嬢が現れたことで解雇されたとか」

「か、解雇はちゃんと理由があって、」

「孤児院育ちの下級メイドの妊娠は困るからですか?」

え!? 妊娠させていたの!?

「わ、私の子ではありません!!」

「生まれた子を見に行かせました。ほら似ていましたよ?」

助手の方が絵を見せた。今回は親子鑑定ではないので連れてくることはしなかったようだけど、代わりに似顔絵を色付きで描かせたみたい。確かに顔の雰囲気が彼に似ていて瞳の色も同じ。

「赤ちゃんが離乳するまで、育ててもらった孤児院に身を寄せるそうです」

「きっと誤解が……」

「子爵が不貞に勤しむ中、夫人はドレス1着も仕立てていませんね」

「その辺りはよくわかりませんが、必要ならば作ったはずです」

「愛人にも作らせていなかったら無頓着だったのかと思わなくもないのですが、愛人は何着も仕立てて宝飾品なども買い漁っているのに肝心の夫人がゼロなんて説明がつきませんよ。帳簿を見た調査官が心を痛めていました。私も痛みます。バルト夫人になるとそんな暮らしを強いられるのですね」

「つ、妻の希望です」

は? 何言ってるの!?

「さっきはわからないと答えたのに、今は夫人の希望だと証言を変えるのですか?」

「あ、それは、」

「リッチウェイ家で雇い夫人に付けていた侍女が個人で茶葉を購入し、それを夫人に飲ませていたのですよ? 少しでも栄養をとらせようと食事を買って来たり、様々な必需品を用意したのです」

「き、きっとメイド達の気が回らなかったんだと思います。今度はちゃんと世話をするように指示します。それに初夜もやり直して夜の生活も、」

「冗談でしょ、気持ち悪い」

「え?」

今更抱いてやると言われて、つい心の声が漏れてしまった。この男に抱かれることになると想像しただけで鳥肌が立つ。

夫は、何だ今のは聞き間違いか? と言いたげな顔をしている。

「失礼しました」

「夫人、どう思うか聞かせてください」

「結婚式を挙げた夜からメイドと交わり、次は男爵令嬢と交わり愛人として屋敷に住まわせ、既に実質のバルト夫人として振る舞う男爵令嬢を妊娠させた穢らわしい男に体を開けと? いっそのこと死んだ方がマシです」

「エリーゼ!!」

「子爵、黙りなさい」

「それに、何故持参金を彼が勝手に使い込んでいるのか理解できません」

以前、補佐官達に帳簿を見せてもらい、急にバルト家にお金が沸いた理由を聞いたら、リッチウェイ家が用意した私の持参金を使って夫が儲けたと教えてくれた。夫からは、私が使ってくださいと差し出したものだと説明を受けたらしい。

「あ、あれはおまえがバルト家のために使えと渡したんだろう!」

「全くそんな事実はありません。バルト子爵、あなたの言うバルト家のためとは愛人を作る費用のことですか? 愛人に買い与えるドレスや宝石、そしてデート代のことですか?」

「それは投資で儲けた金だ!」

「その投資は誰のお金で? 私の持参金で投資したなら儲けたお金も私のものでは?」

「ち、違う、あれはバルト家の金で投資したんだ」

「帳簿を見ましたが、私が嫁ぐ前のバルト家はツケの支払いが止まっている状態でした。私の持参金ではないのであれば誰から借りたのですか?」

「それは……」

「愛人に使った分は投資の儲けを使っていて、その投資の資金もバルト家のお金で、私の持参金をそれらに使っていないのなら、持参金はまだたくさん残っていますわね? でしたら今すぐ回収に向かわせます」

「エ、エリーゼ」

「とにかく再構築なんてあり得ませんわ」

「金庫の中も確認させましたが、リッチウェイ家の紋章入りの箱の中は空でした。これ以上の審議は必要ありませんね。オリバー・バルトとエリーゼ・リッチウェイの婚姻は無効。バルト子爵はリッチウェイ家の持参金を全て今月中に返すように」

「そんな無茶なっ」

「持参金は夫人のためのものです。無効なら全額戻す義務があります」

そこでお祖父様が追い討ちをかけた。

「あの、持参金の金貨はスィデロ帝国発行金貨です。よってスィデロ帝国の紋章入りの金貨でお願いします」

「それは……大変そうですね」

裁判官達は彼に哀れみの目を向けた。

「スィデロの紋章入りの金貨? 何のことだ」

「子爵、スィデロ帝国が発行する金貨は質が違います。つまり我らの国の金貨どころか王家の紋章入りの金貨より価値が高いのです」

「は? だって普通に……」

価値の高い金貨を普通の金貨として投資に充てたらしい。
相手は気付かなかった可能性もあるけど、多分知っていて黙って受け取り差額を懐に収めたのだろう。

「スィデロ帝国発行の紋章入りの金貨で返してくださいね」

「ぶ、分割で頼む」

「投資や愛人に使っていないのですよね? でしたら大して使っていないはずですよ? なのに分割で返すのですか?」

「そ、それは……」

「今月中にリッチウェイ家の本邸に届けてください」

「エリーゼ、シャルロットは追い出す! だから戻って来てくれ!」

「祭壇の前で、私をリッチウェイ家から縁を切られた使えない女だと罵ったではありませんか。あなたの言葉を信じて全てを捨てて嫁いだ私に向かって……」

それ以上は声が震えて言葉にならなかった。涙を流す私をお祖父様は抱きしめ、彼にはっきり告げた。

「婚姻は無効。泥棒と噂を立てられたくなければ今月内にスィデロ帝国発行の金貨を届けろ。紋章入りだそ。普通の金貨に勝手に帝国の紋章を刻めば極刑は免れないから気を付けた方がいい」

「そんな」

蒼白の彼を無視して閉廷し、別邸に戻った。

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