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5年前とは違う幼馴染
お兄様が誕生日パーティを開くことになり、私はパートナーのことは考えていなかった。他所のパーティではなくリッチウェイのパーティなのだから必要ないと思っていた。
「エル?」
お兄様にお祝いの言葉と贈り物を渡し終えた頃、エルが正装をして現れた。
「今日はルセット家のエリオットだからな」
「あ、うん」
「エリーゼのパートナーをエリオットに頼んだんだ」
「お兄様!?」
「そうよ、今のあなたは虫が付きやすい状態だから一人になんてさせられないわ。いいわね?」
「はい、お義姉様」
「そろそろ客を迎えるから、エリオットと自由にしていればいい」
お兄様達は招待客との挨拶の準備をしに会場に、お父様達は既にエントランスにいる。
お祖父様は友人が昨日から本邸に滞在していて相手をしている。
「エリーゼ、人が集まるまで散歩でもしよう」
うちの私兵になり騎士になったエルは、その5年間ずっと “お嬢様” と呼んだ。すっかり低い声になった彼に久しぶりに “エリーゼ” と呼ばれると違和感を感じる。嫌というわけではない。
髪型を変え、仕立てた服に繊細な彫金のタイブローチを付け、その中央にはリッチウェイで採れた宝石が輝いている。これは色気というものなのだろうか、彼の眼差しがいつもと違う気がする。
それが不安で混乱して目を逸らした。
「戻って来て良かったな、あそこは寒かった」
「ごめんね、風邪を引かせて」
「まあ、エリーゼに温めてもらったから凍えずに済んだよ」
風邪を引いた2人の間に入り温め合って眠ったことを言っているのはわかっているのに、この姿のエルに言われると落ち着かない。
「何でエリーゼだけ引かなかったんだ? 風邪を引いた俺達に挟まれたら普通はうつるだろう」
「不思議ね」
「髪はクロエが?」
「今日は本邸のメイドよ」
「ドレスもよく似合ってる、綺麗だ」
「っ!」
何で……昔だって可愛いって言ってくれた。なのに何で今は動揺するの?
「エリーゼ?」
「私、やっぱりパートナーは要らないわ」
「それは許されない。伯爵の命令だ」
「お父様に私から、」
お父様の元へ向かおうとすると腕を掴まれて引き寄せられた。
「エリーゼ、俺がそんなに嫌か?」
傷付いた顔をしたエルを見て慌てて弁明した。
「違う、違うの、落ち着かないの。嫌だったら護衛騎士にはなれないでしょう?」
「何で落ち着かないんだ?」
「だって今日のエルは……」
エルは近くのガゼボに私を連れて来て座るとその膝の上に私を乗せた。
「エ、エル!?」
「落ち着かないか?」
「あ、当たり前じゃない」
「どうして? ずっと俺の膝の上にも座っていたじゃないか」
「あれは、子供だったから」
「何も変わらないだろう? 幼馴染のエリオットとエリーゼだ」
「……」
「こっちを見て」
「エル」
「本当は嫌いだから見ないんじゃないのか?」
仕方なくエルの顔を見た。声の近さでわかってはいたけど5年前より私は成長しているからすごく顔が近い。
「顔が少し赤いな、今頃風邪を引いたのか?」
「っ!」
エルは私の額に自分の額を付けてじっと私を見つめた。
思わず目を瞑ると頬に柔らかい何かが当たった。お父様もお祖父様もお兄様も昔のエルもしていたからわかる。頬にキスをされたのだ。
「エリーゼ、そこで目を閉じたらキスをねだっているのと同じだぞ? していいのか?」
彼の胸に手を置いて突っぱねようとしたけど全くビクともしない。
「よくないっ」
「俺だからこの程度で済むんだからな、他の男の上に座るなよ」
「わ、わかってるっ」
「どうかなぁ、エリーゼの反応は同意に感じるんだよなぁ」
「っ! エルは他の女性達とそうだったのかもしれないけど!」
「なんだ? 俺は他の女を上に乗せたことはないし、俺からキスをしたこともない。好きな女が振り向いてくれたら誘いになんかのらない」
「だからっ! 私相手に止めて!」
「だったらちゃんと見ろよ。見ないようにしているのがバレバレだぞ。そういうの傷付くからな」
「傷付けるつもりじゃなくて、見慣れないからちょっと困っただけで」
「困ることはないだろう」
「エルだって揶揄うことはないでしょう」
そこに使用人が呼びに来た。
「お、呼ばれてるな、行こうか」
エルは何事もなかったかのようにエスコートして会場に入った。私に挨拶にくる令息達や息子を連れた夫人方から私を守るように彼は話に割り込む。その間も彼は私の手を握ったまま。
エルはお兄様に謎の合図を送っていた。
「エル?」
お兄様にお祝いの言葉と贈り物を渡し終えた頃、エルが正装をして現れた。
「今日はルセット家のエリオットだからな」
「あ、うん」
「エリーゼのパートナーをエリオットに頼んだんだ」
「お兄様!?」
「そうよ、今のあなたは虫が付きやすい状態だから一人になんてさせられないわ。いいわね?」
「はい、お義姉様」
「そろそろ客を迎えるから、エリオットと自由にしていればいい」
お兄様達は招待客との挨拶の準備をしに会場に、お父様達は既にエントランスにいる。
お祖父様は友人が昨日から本邸に滞在していて相手をしている。
「エリーゼ、人が集まるまで散歩でもしよう」
うちの私兵になり騎士になったエルは、その5年間ずっと “お嬢様” と呼んだ。すっかり低い声になった彼に久しぶりに “エリーゼ” と呼ばれると違和感を感じる。嫌というわけではない。
髪型を変え、仕立てた服に繊細な彫金のタイブローチを付け、その中央にはリッチウェイで採れた宝石が輝いている。これは色気というものなのだろうか、彼の眼差しがいつもと違う気がする。
それが不安で混乱して目を逸らした。
「戻って来て良かったな、あそこは寒かった」
「ごめんね、風邪を引かせて」
「まあ、エリーゼに温めてもらったから凍えずに済んだよ」
風邪を引いた2人の間に入り温め合って眠ったことを言っているのはわかっているのに、この姿のエルに言われると落ち着かない。
「何でエリーゼだけ引かなかったんだ? 風邪を引いた俺達に挟まれたら普通はうつるだろう」
「不思議ね」
「髪はクロエが?」
「今日は本邸のメイドよ」
「ドレスもよく似合ってる、綺麗だ」
「っ!」
何で……昔だって可愛いって言ってくれた。なのに何で今は動揺するの?
「エリーゼ?」
「私、やっぱりパートナーは要らないわ」
「それは許されない。伯爵の命令だ」
「お父様に私から、」
お父様の元へ向かおうとすると腕を掴まれて引き寄せられた。
「エリーゼ、俺がそんなに嫌か?」
傷付いた顔をしたエルを見て慌てて弁明した。
「違う、違うの、落ち着かないの。嫌だったら護衛騎士にはなれないでしょう?」
「何で落ち着かないんだ?」
「だって今日のエルは……」
エルは近くのガゼボに私を連れて来て座るとその膝の上に私を乗せた。
「エ、エル!?」
「落ち着かないか?」
「あ、当たり前じゃない」
「どうして? ずっと俺の膝の上にも座っていたじゃないか」
「あれは、子供だったから」
「何も変わらないだろう? 幼馴染のエリオットとエリーゼだ」
「……」
「こっちを見て」
「エル」
「本当は嫌いだから見ないんじゃないのか?」
仕方なくエルの顔を見た。声の近さでわかってはいたけど5年前より私は成長しているからすごく顔が近い。
「顔が少し赤いな、今頃風邪を引いたのか?」
「っ!」
エルは私の額に自分の額を付けてじっと私を見つめた。
思わず目を瞑ると頬に柔らかい何かが当たった。お父様もお祖父様もお兄様も昔のエルもしていたからわかる。頬にキスをされたのだ。
「エリーゼ、そこで目を閉じたらキスをねだっているのと同じだぞ? していいのか?」
彼の胸に手を置いて突っぱねようとしたけど全くビクともしない。
「よくないっ」
「俺だからこの程度で済むんだからな、他の男の上に座るなよ」
「わ、わかってるっ」
「どうかなぁ、エリーゼの反応は同意に感じるんだよなぁ」
「っ! エルは他の女性達とそうだったのかもしれないけど!」
「なんだ? 俺は他の女を上に乗せたことはないし、俺からキスをしたこともない。好きな女が振り向いてくれたら誘いになんかのらない」
「だからっ! 私相手に止めて!」
「だったらちゃんと見ろよ。見ないようにしているのがバレバレだぞ。そういうの傷付くからな」
「傷付けるつもりじゃなくて、見慣れないからちょっと困っただけで」
「困ることはないだろう」
「エルだって揶揄うことはないでしょう」
そこに使用人が呼びに来た。
「お、呼ばれてるな、行こうか」
エルは何事もなかったかのようにエスコートして会場に入った。私に挨拶にくる令息達や息子を連れた夫人方から私を守るように彼は話に割り込む。その間も彼は私の手を握ったまま。
エルはお兄様に謎の合図を送っていた。
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