【完結】絶縁してでも愛を選んだのに、祭壇の前で夫が豹変しました。

ユユ

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片想い

【 エリオット・ルセットの視点 】

俺は次男にしては恵まれていたと思う。
リッチウェイ伯爵家のシオンと友達になれたから。

屋敷も近いし、幼い頃からよく父親や母親に連れられてリッチウェイ伯爵邸に遊びに来ていた。


6歳の頃、運命を感じることになった。

『手を洗って』

『うん』

手を洗うと入ったことのない部屋に連れてこられた。
そこにはベビーベッドがあり、乳母とメイド達がいた。

『ほら、エリーゼだよ。生まれて3ヶ月だ』

『あう~』

『ちっちゃい手だろう? 爪なんかこんなだぞ。足の指の爪も信じられないくらい小さいんだ』

『エリーゼ様、小さいな』

『様なんかいらないよ、僕達の妹なんだから』

『妹……』

『ほら、僕のことが大好きだから指を近付けると握るんだ』

『う~』

『エリオットもやってみなよ』

『う、うん』

恐る恐る人差し指を近付けるとギュッと掴まれた。そして

パクっ

『ちゅぱっ』

!!!!!

『あ! こら、エリーゼ! 口に咥えるなら僕の指だろう』

『ふぇっ ぎゃああああ!』

『ご、ごめん、違うんだ、怒ったんじゃないんだっ』

『ぎゃああああ』

『失礼しますね、シオン様。エリーゼ様、抱っこですよ。カミーラが抱っこしますからね』

『グズっ』

乳母が抱くとエリーゼは泣き止んだ。

『エリーゼ、また来るから。エリオット、行こう』



屋敷に戻ってからもあの感触がとれない。

『エリーゼ様はどうだった?』

兄上はまだ会っていなかったのか。

『ふふっ、エリオットったら』

後で兄上から聞いたら、俺は真っ赤になっていたらしい。

小さな口だった。温かくて柔らかくて。小さな舌が触れて吸われた。

その夜は全く眠れなかった。



エリーゼが1歳になる頃日には争奪戦だった。
天使のように可愛いエリーゼはいつも誰かが抱っこして、膝の上に乗せていた。
自分の番なんかなかなか回ってこない。

だけど、エリーゼが2歳のとき、伯爵夫妻とエリーゼの両親が王都に向かい、僕とシオンだけになった。
エリーゼを膝の上に乗せることができた。

ずっしりとした砂袋を持ち上げているような感じがする。感触が異常に柔らかい。エリーゼはちょっとぽっちゃりしていた。細くやわらな髪、長いまつ毛、そして…

『あーん』

食べさせてもらうのが当たり前で、葡萄を食べさせろと口を開けた。

『エリオット、エリーゼは皮を剥いてやらないと嫌がるぞ』

手はベタベタになるし手間だけど喜んで剥いて食べさせた。

『っ!』

時々エリーゼが俺の指まで口に入れるから。その感触がたまらなかった。



エリーゼが5歳の頃、隣領の令息がエリーゼに付き纏った。シオンを巻き込んでそいつを呼び出して脅した。

エリーゼが歳を重ねるごとに害虫が飛んでくる。嫌で仕方なかった。



『エル、抱っこ』

エリーゼは12歳になっても、抱っこしろと両腕を伸ばす。階段を自分で登りたくないだけなのは知ってる。

『掴まっていろよ』

抱き上げるとギュッと首に腕を回してしがみつく。
彼女の頬が俺の頬に触れ、髪からはいい香りがする。
耳元で声を聞き息が当たり、時々唇やまつ毛が俺の頬に当たる。
持ち上げ直したときに、彼女の首筋に鼻を埋めて匂いを嗅ぐ時もある。

この頃にはエリーゼは大人の女になろうとして少し胸が膨らんでいた。年頃の俺にはかなりの刺激だった。


エリーゼが15歳の誕生日、新しいドレスだと言って披露したが、胸元が少し広く、白い胸の膨らみによからぬ妄想をした。
渇望という言葉が相応しいのか、彼女を抱いている夢まで見るようになった。
それからは、会えばエリーゼを女として見ていた。それを必死に隠して、甘える彼女の言うがまま側にいた。

『馬に乗せて。カミーラのお見舞いに行きたいの』

乳母が捻挫をして自宅療養を始めていた。
エリーゼを前に乗せて馬を歩かせたが、揺れに伴い体が擦れ合う。落馬の恐れがあるから、彼女の腹に腕を回して引き寄せていた。彼女の柔らかな尻が当たってどうしようもなくなった。

エリーゼを降ろし、俺はトイレで二度絞り出すと平静を取り戻した。

これではいつが起こるかわからない。
仕方なく結婚したての兄上に相談した。

『リッチウェイとは揉められない』

『わかっています』

『エリーゼ様を傷付けることは絶対に許されない』

『だから相談しているんです』

『だが、体は正常だ。娼館に行くといい』

『嫌ですよ』

『それが手っ取り早いんだ』


兄上が連れて行ってはくれたものの、独特の雰囲気が抵抗感を高める。

『一番人気を指名したから楽しんでおいで』

兄上は他の嬢と個室に入った。

結局俺は拒絶した。
個室に入るまで、順番待ちをしている客やラウンジで飲んでいる客や終わって階段を降りてくる客を視界に入れた。その男達の掃き溜めかと思ったら無理だった。

次に連れて行かれたのは夜会だった。会場では仮面を付けて積極的に声を掛け合っていた。

『いいか、エリオット。一夜限りでも交際してもかまわない。だが未来の約束はしては駄目だ。“機会があれば連絡する”程度にするんだ。恋人ではないこと、結婚するつもりもないことをしっかり伝えるんだ。相手に勘違いさせるとややっこしくなる』

『エリーゼ以外の令嬢と?』

『仕方ないだろう。エリーゼ様を傷付けないためだ。娼婦は嫌なんだろう? 使用人に手を付けるのは絶対駄目だ。後は相手を求めている夫人か令嬢を相手にするしかない』

『……』

『私はあの子を誘ってみよう』

兄上が声をかけに行くと、一人になった俺に女が声をかけてきた。

兄上の忠告に従って、彼女と会場を出た。
部屋に行くと女がいろいろと教えてくれた。
既婚者らしく指輪が光る。

事が終わると服を着た。

『また会いたいわ』

『ありがとうございます、ですが約束はしません』

『いいのよ。来週も来ているから気が向いたら声をかけて』

返事はせずに部屋を出ると会場の入り口で兄上が待っていた。

『どうだった? 上手くいったか?』

『歳上でしたので』

兄上はホッとした表情を見せた。

その後は童貞の俺を知っている安心感からか、5週続けて最初の夫人と寝た。

別の夜会に行くようになると令嬢達と関係を持った。


22歳の頃、サーシャ・グレイと関係を持った。彼女はエリーゼに歳が近く、まだ交わることに慣れていなかった。
エリーゼを抱いているつもりで少し優しくしてしまった。。

何度か交わるうちに彼女からの熱を感じた。だが、彼女は侯爵家、俺は子爵家の次男。俺と結婚したいと言うはずがないと安心し切っていた。

『エリオット様が望んでくださるなら私は……』

『最初に告げたはずだ』

『でも、あんな風に抱かれたら、』

『勘違いさせたなら謝る』

サーシャは傷付いた表情をしたが、次に会ったときはいつもの彼女だった。


ある日、父上とリッチウェイ邸に呼び出された。
用件はエリーゼの婚約者を検討しているという話だった。リッチウェイ家に婿入りさせるつもりらしい。

『最終的にエリーゼが拒絶しなければエリオットにしたい。エリーゼだけの夫になれるか?』

『俺がエリーゼとですか!? もちろんです!』

夢のようだった。
屋敷に戻り報告すると、兄上から女達と縁を切るように言われ、急いで別れを告げた。

“婚約が決まりそうだからもう会わない”

サーシャは泣いていた。



味方をしてくれたと思った神はすぐに外方を向いた。

“お父様、私、好きな人がいます。彼と結婚したいんです”

エリーゼはそう言ったと聞いた。

慌ててリッチウェイ家は相手の男の調査をして、難ありと判断。結婚に反対した。
だがエリーゼが頑なで、絶縁という脅しを使ったが、彼女は受け入れてしまった。

そしてさっさと結婚してしまった。

何もする気になれなかった。

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