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殺意を受けた女
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【 アンジェルの視点 】
早速 夜這いをかけたが、罰として調理場の前の廊下に薄いナイトドレス姿で立たされた。
女使用人達はクスクスと笑い、男使用人は邪魔だと舌打ちし、一部は舐め回すように立ち止まってみてくる。
恥ずかしさは直ぐに気にならなくなった。それよりも立ちっぱなしが辛い。トイレは行かせてもらえたが、5分経つとドアを叩かれた。それでも座っていたくて“まだ”と答えたらドアを私兵に開けられ、手を掴まれて元の場所に連れてこられた。
倒れてみたが、水の入ったバケツに頭を沈められた。
ナイトドレスが濡れてもっと透けて貼り付いてしまった。
柱の影から勃った陰茎を扱きながら私を見る男もいた。
3日目の朝食の席に現れたミアーナはいい香りをさせて、上等のワンピースドレスを着ていた。
その後も商人が来ても呼ばれず、ディオン様はミアーナに買い与えているようだった。時には着飾って2人で外出したりしていた。
私はただ、この部屋に居るだけ。朝食と土日の夕食、後は散歩くらいしか自由にできなかった。
使用人達は冷たいし、ディオン様も相手にしてくれない。そしてお金も無い。 虚しい時間だけが過ぎていく。
ロテュス侯爵夫妻やディオン様の姉夫婦が訪れて、仲良くしようと試みても敵意で満ちていて、虐められるだけだった。
ミアーナは私をロテュス邸に迎えると言いながら、全員を使って攻撃してしていたのだ。
早く子を孕らなくては。
ミアーナとは私の手紙の影響か、閨事が止まっていると専属メイドが盗み聞きして来た。このチャンスを活かしたい。私が孕れば、ミアーナに勝てる。
2人が旅に出ている間に、アクセサリーを売らせて媚薬を買ってこさせた。これでディオン様と……。
だけど、戻って直ぐ、2人は夫婦の間に篭って出てこなくなった。時々近寄ると、あの声が聞こえてくる。
悔しくて堪らなかった。
数日して、部屋から出て使用人と話すディオン様は血色が良く機嫌のいい顔をしていた。
ある日は、窓から庭園を見ると、ディオン様とミアーナが散歩をしていた。
じっと見ていると、付き添っていた使用人が離れた。
ガゼボでディオン様がミアーナにキスをしているように見えた。ミアーナをテーブルに座らせ、ディオン様はしゃがみ秘部を舐めているように見えた。その次はディオン様の前にミアーナがしゃがみ、口淫しているようだった。
ミアーナはあんなことが出来るの!?しかもあんな場所で!
そして2人は何度か体位を変え動きを止めたあと、身だしなみを整えた。ディオン様がミアーナを抱き上げて屋敷の中へ入っていった。
あんなことをしていたなんて…だからなのね。
あんな娼婦みたいなことをされたら、私を相手にしなくなるはずだわ。ディオン様を繋ぎ止めるためにプライドを捨てたのね。
負けていられないと媚薬を使おうとするも、近寄れない。
夜は警備兵が立ってしまうし、飲み物に混入しようとしても淹れさせてもらえないし、近寄れない。
私があげたお菓子は口にしていないようだ。
そんなことをしている間に屋敷が騒ぎになった。
『どうしたのか聞いて来て』
戻って来た専属メイドは節目がちに報告した。
『若奥様のご懐妊です』
『は?』
『安定期には入っておりませんが、授かったのは確実だそうです』
何なの!?
子を産むのは私の役目じゃない!
妾として私を呼んでおいて、ディオン様との交わりを邪魔して、自分は妊娠!?
許せなかった。
産ませるわけにはいかない。
そうだ。嫌々娶った妻だもの。死ねば正気に戻ってくれる!
だから体当たりをして階段から落とした。
オスカーという侍従がミアーナを守るように転落した。
階下で、オスカーもミアーナも倒れている。
死んだ?
『うう……』
生きてる!
『キャア!放しなさい!』
『この人殺しが!!』
『死んでないじゃないの!!しぶとい女ね!』
押さえ付けられて動けない。
ディオン様が駆け付けると、私を押さえ付けている使用人が、告げ口をした。
ディオン様は階段を登って来た。
『助けて、ディオン様っ…ギャァ!』
髪を掴まれ引き摺られ、近くの窓をディオン様が開けたと思ったら体が浮いた。
え?
『ギャアアアアッ!!』
痛い!痛い痛い痛い痛い!!
しばらく放置された後、運ばれたのは牢屋だった。
その後 医師の診察を受けた。
「側に生えていた木の枝で勢いが弱まり、植え込みの上に落ちたので軽症です。軽い切り傷とアザと左肘の脱臼だけです」
だけって…2階から落とされたのよ!?
「死ねば良かったのに」
腕を組んだディオン様が鉄格子の向こうに立っていた。
「ディオン様?」
硬い音と数人の足音が聞こえて来た。
「貴族殺人未遂犯はこの女ですか」
「はい。ロテュス侯爵家の次期侯爵の妻でリスフィユ伯爵家の娘ミアーナと、私との胎の子、そして公子を突き落とした女です」
え?公子!?
「オスカーは平民ですよね」
「オスカー殿の名前はオスカー・ゼロー。ゼロー公爵の弟だ」
「ゼロー…」
ゼローって騎士一家の!?
「身柄を引き渡してもらいます」
「この女は居候なだけで、プリムヴェル子爵家の女です。
妻ミアーナに酷い文を送りつけて傷付けたのです。妻は心が弱り、この女の滞在を許しました。その恩も忘れて胎の子ごと殺そうと突き落としたのです」
「分かりました。
この女を連行しろ!」
王宮の兵士達が私を引き摺り、護送馬車に乗せた。
「ディオン様!!ディオン様!!」
ディオン様は振り向くこともせず、立ち去った。
城の地下牢に入れられて何度も尋問を受けた。
2週間ほど経ったあと、貴族裁判の部屋へ連れてこられた。
そこにはお父様達がいて、ディオン様、ロテュス侯爵夫妻、リスフィユ伯爵夫妻、ゼロー公爵と前公爵が傍聴席にいると教えられた。
裁「ディオン・ロテュス殿。アンジェルとの関係を教えてください」
デ「はい。昔交際をしていた女です。一時は妾になどと口約束をしましたが、破棄して慰謝料というか手切れ金を支払いました。受け取ったので、他人です」
裁「子爵、どうですか」
父「はい。仰る通りです。忠告を受け、手切れ金も受け取りました」
裁「何故同居を?」
デ「証拠として提出した手紙をあの女が妻に送り付けたのです。妻は傷付き、あの女を呼び寄せました。
ですが、手切れ金を受け取った後ですので、妾としてではなく、居候として滞在させると子爵に伝えました」
裁「子爵」
父「はい。お金を返済に充ててしまい、返せませんでした。アンジェルには強く注意をして、居候として夫人に逆らわないようにと伝えました」
裁「治療にあたった医師の報告書を読んでくれ」
補佐「オスカー・ゼロー公子は、打ち身多数。額の裂傷は7針の縫合、指の骨折2本に重度の足首の捻挫を負いました。ミアーナ・ロテュス夫人は打ち身と擦り傷を負いました。胎児は無事です。ですが安静が必要でベッドからは出られません」
裁「尋問官」
官「私は尋問官のビゼットと申します。
アンジェル・プリムヴェルは、己のやったことは認めていますが、経緯や理由については妄想や思い込みが支配をしていて、罪の意識がありません。被害妄想によるものですが、やったことについては制裁だと被告人は考えています。
そして再犯の恐れありと判断いたします」
私「はぁ!? あの女が私からディオン様を奪って、孕んだりするから間違いを正そうとしただけではありませんか!!」
裁「なるほど。他人のものに手を出していながら、盗られたと考えているのか。
妻が夫の子を産むのは当たり前だろう。それが間違い?殺すことが正すこと?」
私「ディオン様の子を産むのは私だけの役目なのに、あの女が!」
裁「口を塞いてしまえ」
私「何!?触らないで!!」
側にいた兵士が私の口に布を詰めた。
私「んー!!」
裁「反省の色も無く、再犯も懸念されるな。
判決を言い渡す!
胎の子を含めた貴族3名に対する殺人未遂で極刑に処す!
プリムヴェル子爵家はゼロー公爵家、ロテュス侯爵家、リスフィユ伯爵家に慰謝料の支払いを命じる!」
母「お終いだわ」
お父様、助けて!! ディオン様!!
父「この手で殺しておくべきだった」
お父様!?
処刑は1週間後だと言われた。
もう私の指にあの指輪は無い。
裁判から2日後の夜、足音が私の牢の前で止まった。
「罪人アンジェル」
顔を向けるとゼロー前公爵だった。
「はい」
「プリムヴェル一家は全員首を吊ったそうだ」
「え?」
「今朝、使用人が外に出ると、木に紐をかけて全員首を吊っていた。お前の祖母と姪は先に締め殺されていたらしい」
「どうして…」
「当然だろう。相手が悪い。ミアーナ嬢の姉君は隣国の王太子妃だ。いずれ王妃となるだろう。その王太子妃の妹と甥か姪を殺そうとしたのだからな。隣国の王家からは抗議文が届いたと聞いた。
それに、姉君だけではないぞ。他にも他国の王子妃になっている叔母などもいるからな。3代前の王弟殿下の妃はリスフィユ伯爵家のご令嬢だぞ。
それに、三家に支払う慰謝料が捻出できないし、周囲の貴族や商人が離れてしまった。立て直すことは不可能と判断したのだろう。身一つで追い出されたら生きていけないと前夜に口走っていたそうだ」
「おかしい…おかしいわ。ミアーナ、ミアーナって」
「そうか。早くおかしな世界から解放されるといいな」
前公爵はそう言い残して立ち去った。
その後は誰一人現れなかった。
処刑当日、ディオン様とオスカー公子達も来ていた。
オスカーが近付き、執行人に許可を得て小声で話しかけてきた。
「(私のミアーナ様を敬わず傷付けるお前がずっと目障りだった。だから態と転落した。押されたからといって、お前の姿が見えていた私は足を踏ん張れた。
だが、始末するための口実が欲しかったから上手に落ちたんだよ)」
「だって子が…」
「(何が起きてもミアーナ様には私がいる)」
オスカー公子は微笑んで距離を取った。
執行人が大斧を振り上げた。
「悪魔…」
早速 夜這いをかけたが、罰として調理場の前の廊下に薄いナイトドレス姿で立たされた。
女使用人達はクスクスと笑い、男使用人は邪魔だと舌打ちし、一部は舐め回すように立ち止まってみてくる。
恥ずかしさは直ぐに気にならなくなった。それよりも立ちっぱなしが辛い。トイレは行かせてもらえたが、5分経つとドアを叩かれた。それでも座っていたくて“まだ”と答えたらドアを私兵に開けられ、手を掴まれて元の場所に連れてこられた。
倒れてみたが、水の入ったバケツに頭を沈められた。
ナイトドレスが濡れてもっと透けて貼り付いてしまった。
柱の影から勃った陰茎を扱きながら私を見る男もいた。
3日目の朝食の席に現れたミアーナはいい香りをさせて、上等のワンピースドレスを着ていた。
その後も商人が来ても呼ばれず、ディオン様はミアーナに買い与えているようだった。時には着飾って2人で外出したりしていた。
私はただ、この部屋に居るだけ。朝食と土日の夕食、後は散歩くらいしか自由にできなかった。
使用人達は冷たいし、ディオン様も相手にしてくれない。そしてお金も無い。 虚しい時間だけが過ぎていく。
ロテュス侯爵夫妻やディオン様の姉夫婦が訪れて、仲良くしようと試みても敵意で満ちていて、虐められるだけだった。
ミアーナは私をロテュス邸に迎えると言いながら、全員を使って攻撃してしていたのだ。
早く子を孕らなくては。
ミアーナとは私の手紙の影響か、閨事が止まっていると専属メイドが盗み聞きして来た。このチャンスを活かしたい。私が孕れば、ミアーナに勝てる。
2人が旅に出ている間に、アクセサリーを売らせて媚薬を買ってこさせた。これでディオン様と……。
だけど、戻って直ぐ、2人は夫婦の間に篭って出てこなくなった。時々近寄ると、あの声が聞こえてくる。
悔しくて堪らなかった。
数日して、部屋から出て使用人と話すディオン様は血色が良く機嫌のいい顔をしていた。
ある日は、窓から庭園を見ると、ディオン様とミアーナが散歩をしていた。
じっと見ていると、付き添っていた使用人が離れた。
ガゼボでディオン様がミアーナにキスをしているように見えた。ミアーナをテーブルに座らせ、ディオン様はしゃがみ秘部を舐めているように見えた。その次はディオン様の前にミアーナがしゃがみ、口淫しているようだった。
ミアーナはあんなことが出来るの!?しかもあんな場所で!
そして2人は何度か体位を変え動きを止めたあと、身だしなみを整えた。ディオン様がミアーナを抱き上げて屋敷の中へ入っていった。
あんなことをしていたなんて…だからなのね。
あんな娼婦みたいなことをされたら、私を相手にしなくなるはずだわ。ディオン様を繋ぎ止めるためにプライドを捨てたのね。
負けていられないと媚薬を使おうとするも、近寄れない。
夜は警備兵が立ってしまうし、飲み物に混入しようとしても淹れさせてもらえないし、近寄れない。
私があげたお菓子は口にしていないようだ。
そんなことをしている間に屋敷が騒ぎになった。
『どうしたのか聞いて来て』
戻って来た専属メイドは節目がちに報告した。
『若奥様のご懐妊です』
『は?』
『安定期には入っておりませんが、授かったのは確実だそうです』
何なの!?
子を産むのは私の役目じゃない!
妾として私を呼んでおいて、ディオン様との交わりを邪魔して、自分は妊娠!?
許せなかった。
産ませるわけにはいかない。
そうだ。嫌々娶った妻だもの。死ねば正気に戻ってくれる!
だから体当たりをして階段から落とした。
オスカーという侍従がミアーナを守るように転落した。
階下で、オスカーもミアーナも倒れている。
死んだ?
『うう……』
生きてる!
『キャア!放しなさい!』
『この人殺しが!!』
『死んでないじゃないの!!しぶとい女ね!』
押さえ付けられて動けない。
ディオン様が駆け付けると、私を押さえ付けている使用人が、告げ口をした。
ディオン様は階段を登って来た。
『助けて、ディオン様っ…ギャァ!』
髪を掴まれ引き摺られ、近くの窓をディオン様が開けたと思ったら体が浮いた。
え?
『ギャアアアアッ!!』
痛い!痛い痛い痛い痛い!!
しばらく放置された後、運ばれたのは牢屋だった。
その後 医師の診察を受けた。
「側に生えていた木の枝で勢いが弱まり、植え込みの上に落ちたので軽症です。軽い切り傷とアザと左肘の脱臼だけです」
だけって…2階から落とされたのよ!?
「死ねば良かったのに」
腕を組んだディオン様が鉄格子の向こうに立っていた。
「ディオン様?」
硬い音と数人の足音が聞こえて来た。
「貴族殺人未遂犯はこの女ですか」
「はい。ロテュス侯爵家の次期侯爵の妻でリスフィユ伯爵家の娘ミアーナと、私との胎の子、そして公子を突き落とした女です」
え?公子!?
「オスカーは平民ですよね」
「オスカー殿の名前はオスカー・ゼロー。ゼロー公爵の弟だ」
「ゼロー…」
ゼローって騎士一家の!?
「身柄を引き渡してもらいます」
「この女は居候なだけで、プリムヴェル子爵家の女です。
妻ミアーナに酷い文を送りつけて傷付けたのです。妻は心が弱り、この女の滞在を許しました。その恩も忘れて胎の子ごと殺そうと突き落としたのです」
「分かりました。
この女を連行しろ!」
王宮の兵士達が私を引き摺り、護送馬車に乗せた。
「ディオン様!!ディオン様!!」
ディオン様は振り向くこともせず、立ち去った。
城の地下牢に入れられて何度も尋問を受けた。
2週間ほど経ったあと、貴族裁判の部屋へ連れてこられた。
そこにはお父様達がいて、ディオン様、ロテュス侯爵夫妻、リスフィユ伯爵夫妻、ゼロー公爵と前公爵が傍聴席にいると教えられた。
裁「ディオン・ロテュス殿。アンジェルとの関係を教えてください」
デ「はい。昔交際をしていた女です。一時は妾になどと口約束をしましたが、破棄して慰謝料というか手切れ金を支払いました。受け取ったので、他人です」
裁「子爵、どうですか」
父「はい。仰る通りです。忠告を受け、手切れ金も受け取りました」
裁「何故同居を?」
デ「証拠として提出した手紙をあの女が妻に送り付けたのです。妻は傷付き、あの女を呼び寄せました。
ですが、手切れ金を受け取った後ですので、妾としてではなく、居候として滞在させると子爵に伝えました」
裁「子爵」
父「はい。お金を返済に充ててしまい、返せませんでした。アンジェルには強く注意をして、居候として夫人に逆らわないようにと伝えました」
裁「治療にあたった医師の報告書を読んでくれ」
補佐「オスカー・ゼロー公子は、打ち身多数。額の裂傷は7針の縫合、指の骨折2本に重度の足首の捻挫を負いました。ミアーナ・ロテュス夫人は打ち身と擦り傷を負いました。胎児は無事です。ですが安静が必要でベッドからは出られません」
裁「尋問官」
官「私は尋問官のビゼットと申します。
アンジェル・プリムヴェルは、己のやったことは認めていますが、経緯や理由については妄想や思い込みが支配をしていて、罪の意識がありません。被害妄想によるものですが、やったことについては制裁だと被告人は考えています。
そして再犯の恐れありと判断いたします」
私「はぁ!? あの女が私からディオン様を奪って、孕んだりするから間違いを正そうとしただけではありませんか!!」
裁「なるほど。他人のものに手を出していながら、盗られたと考えているのか。
妻が夫の子を産むのは当たり前だろう。それが間違い?殺すことが正すこと?」
私「ディオン様の子を産むのは私だけの役目なのに、あの女が!」
裁「口を塞いてしまえ」
私「何!?触らないで!!」
側にいた兵士が私の口に布を詰めた。
私「んー!!」
裁「反省の色も無く、再犯も懸念されるな。
判決を言い渡す!
胎の子を含めた貴族3名に対する殺人未遂で極刑に処す!
プリムヴェル子爵家はゼロー公爵家、ロテュス侯爵家、リスフィユ伯爵家に慰謝料の支払いを命じる!」
母「お終いだわ」
お父様、助けて!! ディオン様!!
父「この手で殺しておくべきだった」
お父様!?
処刑は1週間後だと言われた。
もう私の指にあの指輪は無い。
裁判から2日後の夜、足音が私の牢の前で止まった。
「罪人アンジェル」
顔を向けるとゼロー前公爵だった。
「はい」
「プリムヴェル一家は全員首を吊ったそうだ」
「え?」
「今朝、使用人が外に出ると、木に紐をかけて全員首を吊っていた。お前の祖母と姪は先に締め殺されていたらしい」
「どうして…」
「当然だろう。相手が悪い。ミアーナ嬢の姉君は隣国の王太子妃だ。いずれ王妃となるだろう。その王太子妃の妹と甥か姪を殺そうとしたのだからな。隣国の王家からは抗議文が届いたと聞いた。
それに、姉君だけではないぞ。他にも他国の王子妃になっている叔母などもいるからな。3代前の王弟殿下の妃はリスフィユ伯爵家のご令嬢だぞ。
それに、三家に支払う慰謝料が捻出できないし、周囲の貴族や商人が離れてしまった。立て直すことは不可能と判断したのだろう。身一つで追い出されたら生きていけないと前夜に口走っていたそうだ」
「おかしい…おかしいわ。ミアーナ、ミアーナって」
「そうか。早くおかしな世界から解放されるといいな」
前公爵はそう言い残して立ち去った。
その後は誰一人現れなかった。
処刑当日、ディオン様とオスカー公子達も来ていた。
オスカーが近付き、執行人に許可を得て小声で話しかけてきた。
「(私のミアーナ様を敬わず傷付けるお前がずっと目障りだった。だから態と転落した。押されたからといって、お前の姿が見えていた私は足を踏ん張れた。
だが、始末するための口実が欲しかったから上手に落ちたんだよ)」
「だって子が…」
「(何が起きてもミアーナ様には私がいる)」
オスカー公子は微笑んで距離を取った。
執行人が大斧を振り上げた。
「悪魔…」
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