【完結】平凡な容姿の召喚聖女はそろそろ貴方達を捨てさせてもらいます

ユユ

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5年前 召喚

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“(生きてる?)”

“(早く脈をみろ!)”

知らない言葉が行き交う中、知らない人が首と手首に触れた。

“生きています”

“やったぞ!成功だ!生きているぞ!”

遠くの泉に連れて行かれ無理矢理入水させられると まるでスポットライトを浴びるように天から照らされた。

“聖女様だ!間違いない!”

“陛下達にお知らせしろ!”

あれ?言葉が分かる。

また連れて帰られ、部屋に案内され、お風呂や食事や身支度をしてくれた。
周りを見渡すとファンタジーの世界だった。いかにも科学の進んでいない様に愕然とする。しかも移動は馬車だったし。ここはお城だし。

周囲の人は西洋の白人で違和感半端ない。
だって黒目黒髪が基本の日本人だから。


しばらく待たされると絵画の中の王子様という感じの青年が現れた。金髪碧眼で服はお貴族様もしくは王族様といった感じだ。

「なんだコレは。
こんなモノを私は妻にしなければならないのか」

彼の第一声だった。

「シャルル王子殿下、せっかく成功した聖女様ですぞ」

「聖女は女神のように美しいのではないのか!」

「たまたま前回現れた聖女様がお美しかっただけでございます」

「もういい。後は父上に会わせて決めてくれ」

「……」

元の世界では可愛い方で、“可愛い”“天使みたい”とよく言われていたのに。



王子が去ると別の人が現れた。

「陛下がお会いになるそうです。聖女様をお連れします」

「待って」

「言葉を話してる!我らの言葉を!」

「煩い。聖女のこと、何故私が此処にいるかを説明して」

「先ずは陛下との謁見を、」

「陛下って国王陛下ってこと?喧嘩になるわよ」

「え?」

「私は誘拐されたんだもの。罵る権利があるわ」

「はい?」

「違う国なら思想も法律も違うの。私の国で誘拐はどんな身分でも罪という法律なの。国王並びにこの件に関わった人全員に逮捕状がでるんだけど」

「なっ!」

「しかも誘拐罪は死刑だったらどうするつもりだったわけ?」

「ま、まさか!」

「私、戻れるの?」

男達は首を振った。

「誘拐に永久監禁ね」

「監禁!?」

「この世界から出られないのだから監禁でしょう」

「……」

「で、何で召喚したの」

「それは…」


ここスルス王国には五つの泉があって聖なる泉と呼ばれていた。祈りを捧げ収穫していた作物を供えていた。

泉は、慈悲の泉 覚醒の泉 豊穣の泉 予言の泉に分かれていて、残る一つは無垢の泉と呼ばれ王城の敷地内にある。というか、無垢の泉のあるところに建てられたらしい。

で、この国の人は泉が認めた者だけ魔法が使えたが、千数百年前に事件が起きた。王子が心移りをして 好きな女と結ばれたいが為に婚約者を手に掛け泉に捨てたのだ。

無垢の泉は赤黒くなり濁ってしまった。
慈悲の泉は病や怪我を治すこともなく、覚醒の泉は魔法を使えるようになる為の蓋を外すことなく、豊穣の泉の水を使っても作物は育たず、予言の泉は啓示を得ることは無くなった。

国内は荒れ他国からも何度と攻め入られることになるが、泉が荒廃する前に覚醒した者が国を守っていた。そして魔法に頼らない兵士の育成に力を注いだ。

あるとき、少女が無垢の泉に祈りを捧げ続けると濁りがほぼ消えた。
様々な祈りを試したが、彼女のような能力のある者が現れなかった。 

聖女判別は覚醒の泉に入ると空から光が降り注ぐことや、無垢の泉に祈りを捧げて効果を上げることで確定する。ただし乙女に限る。

最初の少女は他国の王女だった。
スルスは王女を妃に迎えたが、初夜以降、次第に泉は祈り前の濁った泉に戻っていった。その後は彼女が祈っても泉に変化は与えられなかった。

国外から乙女を招き覚醒の泉で判別し 祈りを捧げてもらったが、効果のある少女が現れるまで数十年かかった。

やっと見つかった次の乙女は聖女と呼ばれ、王子妃となったが白い結婚となった。

だが、平民出の妃は心を病み早世しがちだった。
貴族出身の妃は傲慢になりやすく、泉に嫌われたのか力が弱まりやすかった。

数十年、時には百何十年と聖女が見つからないこともあった。
ちなみに魔法では泉は綺麗にならないらしい。

泉が一時復活したときに覚醒できた魔法使い達はダラダラと他国から少女を泉の前に連れてくるのではなく、聖女の召喚を試みることにした。

長い年月 召喚の失敗を繰り返し やっと成功したのが遥か遠くの国の平民だった。

だが、彼女は怯え、言葉が分からず難航したが、手厚く持て成し、絵本で説明すると祈りを捧げて泉を綺麗にした。

その少女が年老いて死ぬと、また召喚しようとしたが現れなかった。
同じ世界にいないのだろうと悟ると異世界から連れてくることを試みた。古代や異世界への転移や召喚を夢見て研究していた魔法使いがいたが、あまりの難しさに挫折し、放置されては後世の者が引き継ぎ挫折する、ということを繰り返していた。

召喚が出来るようにはなったが、ソレは人の姿を留めていなかった。最初は原型は無く肉や臓器の塊が魔法陣の上に現れた。
改良を重ねても欠損や脳の障害があった。 

今から100年ほど前に同じ世界の聖女の召喚が叶い、異世界からの召喚に猶予が出来た。少女は平民だったがとても美しかったため、当時の国王が手を付けてしまった。

そしてまた異世界からの召喚を繰り返し、私が召喚された。異世界召喚の成功例の第一号らしい。


何故 王子が喜ばないのか。
それは100年前の聖女の肖像画があって、シャルル王子はいつも眺めては陶酔し、いつか自分にも彼女の様な美少女を妻にできると思っていたから。

「悪かったわね。お気に召さない容姿で」

「も、申し訳ございませんっ」

「もしかして、元聖女の子孫がアレなわけ?」

「違います。100年前の聖女ララ様は、お役目が果たせない身体となり、毒殺されました」

「はあ!? 誰がヤったの」

「当時の王妃殿下の侍女が、お役目を果たさない平民の女を王族として置いてはおけないと、毒を盛ったそうです」

トカゲの尻尾切りじゃない。王妃の命令でしょう。

「何故 聖女は王族と婚姻を強いられるの?」

「泉のそばに居ていただくためです」

「妃じゃなくたっていいじゃない」

「利用する貴族が現れたり、他国の王族から求婚させないためです」

選択肢は無いってことね。
もし次の聖女が現れたら、反抗的な態度で祈ることを拒否すると牢屋にぶち込まれそう。

かといって、さっきの王子バカは嫌だ。


「聖女様、謁見の間に参りましょう」
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