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二度と死んだ少女

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暴れに暴れて死んだ。

抗争中に車に跳ねられた後、木刀で滅多打ちにされた。

体が痙攣して視界が揺れる。  

有名な進学高校に入って直ぐに通わなくなり、夜の街を徘徊。そして私と似たように家庭に問題のある子達と出会い仲間になった。まだ17歳。こんなことで死ぬなんて…



暗転したと思ったら、また激痛の中にいた。

『階段から落ちたところを誰も見てないというのか!』

手を握っている外国のおじさんが泣き叫んでいる。

『侯爵様、お嬢様の傷は古いものも無数にありますし、この痩せ方は異常です。
原因はともかく、これほどの状態の令嬢を医者に診せないのは不自然です』

『ああ!私のクリスティーナ!
お前をこんな目に遭わせた者は必ず処刑してやる!』

ああ゛うるっさい!!



そしてまた暗転したと思ったらベッドの上だった。

「おはようございます。クリスティーナ様」

「う……」

「額にお触れします…」

メイド服を着た西洋人が廊下に出てベルをけたたましく鳴らした。

「お嬢様が!! 誰か!!」

寒気がする。頭が痛い。関節も痛い。

あれ?手が小さい。


その後は、薬を飲まされて眠りについた。




花の香りがする。

「お目覚めですかな」

「……」

「熱は下がりました。目覚めましたので峠は無事に越せたかと」

「感謝する」

「では、薬を出しておきましょう。
クリスティーナ様、栄養をとって静養なさってください」

お医者さんらしい。


「旦那様、お嬢様の汗を拭いてお着替えをいたしますので」

「そうか。何かあれば知らせてくれ。エリン 頼んだぞ」

「かしこまりました」

ん? 全部分かる。あれ、父親だ。

「か、鏡を見せて」

「お持ちいたします」

手鏡を渡され覗き込むと赤毛の髪に青い瞳の可愛い女の子がいた。

これが私!?

「エリン。私は何歳?」

「…11歳でございます」

「何月?」

「2月でございます」

「私はどうしちゃったの?」

「高熱で意識を失われて3日昏睡状態でした。その後は熱が下がり始めて、発症してから6日目になります。
お医者様を呼び戻しましょう」

「いいの。ちょっと記憶が曖昧だっただけ。
お風呂に入りたいわ」

「まだいけません」

「お願い。どうしても入って清潔になってから寝たいの」

「かしこまりました」



この体の主はクリスティーナ。
ファーズ侯爵家の一人娘。

14歳を目前にした彼女は義姉達に殺された。
だけど私がクリスティーナの体に憑依したら時間が巻き戻った。

元の私は 若田澄子。昭和の不良だ。
家庭不和から道を外した結果、喧嘩で死んだ。
喧嘩は強かったけど、車には勝てなかった。

神様。二度も死の苦しみを与えることはなかったんじゃないの?


死ぬまでのクリスティーナの記憶を受け継いで11歳に戻ったけど、これから地獄が待っているのだ。
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