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特命
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【 ウィリアムの視点 】
12歳まで遡る。
ファーズ伯爵とクリスティーナ嬢に謝罪をした後は大人しく婚約者候補と交流をしたが、どうしてもクリスティーナ嬢が選考漏れしていることに納得ができなかった。
「父上。何故クリスティーナ嬢は駄目なのですか」
「お前では手に負えないからだよ」
「どういう意味ですか」
「今度茶会を開こう。友人として交流してみるといい。失敗はするなよ」
「はい」
公爵家から男爵家まで、歳の近い令息令嬢が集まった。揉めやすいから上と下で分けるのに今回はどちらも呼んだ。
案の定、あちこちで揉めている。
「(殿下、庭園の噴水側へそっと近寄ってください)」
珍しく父上の侍従が私に付き添っていた。
彼の言う通り、トイレに立つフリをしてそっと噴水へ向かった。
そこにはノエルとクリスティーナ嬢、そして高位貴族の令息3人と子爵家の令息がいた。
ク「ちょっと!3人で弱いもの虐めなんて止めなさいよ!」
男「関係ないだろう、向こうに行ってろよ」
男「側にいると怪我するぞ」
男「公子、向こうに連れて行ってください」
令息3人がぽっちゃり子爵令息を虐めていたようだ。
仲裁しようとしたが侍従に止められた。
「(まぁ、見ていてください)」
「(止めないのか)」
「(陛下がご令嬢のすることは止めずに見てみるようにとの指示がございました)」
男達が子爵令息を突き飛ばして蹴り始めた。
するとクリスティーナ嬢が変貌した。
「このクソガキゃ~!!」
「ぐわっ!」
「うっ!」
「や、止め、ゲホッ」
「クッソ弱いくせに卑怯なことをしやがって。
次はタマを潰すからな」
クリスティーナ嬢は恐ろしい顔になり、走り込んで彼らの鳩尾に拳を入れて制圧してしまった。
男達は蹲って苦しんでいた。
「お前達、女の子に負けたなんて知られたくないだろう?私がやったことにしてやるから席に戻れ。
次はスプラナード家が相手になろう」
ノエルが告げると、動けるようになった彼らは足早に去っていった。
「ありがとう…グズっ」
「ほら、泣かないで」
「太ってるから、いつも揶揄われるんだ」
「ちょっとくらい太っていてもいいのよ。
ガリガリより良いわ。
太り過ぎは健康に良くないから、しっかりバランスよく食べて運動をしたらいいわ」
そう言いながらハンカチで汚れた膝などを拭いてあげていた。
ノエルはニコニコしている。
そっと場を離れた。
凄いものを見てしまった。
父上が“手に負えない” と言ったのはコレかと納得した。
クリスティーナ嬢は可愛いし、婿入り先にもいいだろうと思ったが…
「かっこよかったですね」
「そうだな」
弱いもの虐めを目撃して見て見ぬふりをしないクリスティーナ嬢は真っ直ぐな子なのだろう。だけど
「あの破落戸みたいなセリフは何処で覚えてくるんだ?」
「さあ」
ライバルだと思ったノエルはニコニコしていた。
アレを知っていてノエルはクリスティーナ嬢が好きなのだ。
「確かに手に負えないな」
それ以来、私は友人枠で二人と仲良くなった。
学園が始まる数日前、父上に呼ばれた。
人払いがされると父上の側近だけが残った。
「財務のトップが不正ですか」
「そうだ。狭き門を通過してトップにまで上り詰めたのに不定期調査で引っかかってしまった。
それで何年も引き継ぎを兼ねてファーズ侯爵に内偵を頼んでいるんだ。
だが、彼は娘次第では放り投げてしまう。
そこでだ。学園でクリスティーナ嬢を見守ってくれ。王子の地位で解決できる小さなことは解決しろ。報告は出してくれ。
ただ、ノエルもクリスティーナ嬢もBクラスなのが不便だな」
「ノエルがですか」
「予め団長に断りを入れたようだ。“手を抜く”と」
「……」
「ノエルはノエルなりに側にいて守ろうとしているのか、虫払いをしているのか、猛獣の監視か、とにかく心に決めているのだろう。
早く婚約してしまえばいいのだが、侯爵がその気になっていないし、クリスティーナ嬢も興味がないようだ。
まあ時間の問題だろう」
こうして任務付きの学園生活が始まった。
12歳まで遡る。
ファーズ伯爵とクリスティーナ嬢に謝罪をした後は大人しく婚約者候補と交流をしたが、どうしてもクリスティーナ嬢が選考漏れしていることに納得ができなかった。
「父上。何故クリスティーナ嬢は駄目なのですか」
「お前では手に負えないからだよ」
「どういう意味ですか」
「今度茶会を開こう。友人として交流してみるといい。失敗はするなよ」
「はい」
公爵家から男爵家まで、歳の近い令息令嬢が集まった。揉めやすいから上と下で分けるのに今回はどちらも呼んだ。
案の定、あちこちで揉めている。
「(殿下、庭園の噴水側へそっと近寄ってください)」
珍しく父上の侍従が私に付き添っていた。
彼の言う通り、トイレに立つフリをしてそっと噴水へ向かった。
そこにはノエルとクリスティーナ嬢、そして高位貴族の令息3人と子爵家の令息がいた。
ク「ちょっと!3人で弱いもの虐めなんて止めなさいよ!」
男「関係ないだろう、向こうに行ってろよ」
男「側にいると怪我するぞ」
男「公子、向こうに連れて行ってください」
令息3人がぽっちゃり子爵令息を虐めていたようだ。
仲裁しようとしたが侍従に止められた。
「(まぁ、見ていてください)」
「(止めないのか)」
「(陛下がご令嬢のすることは止めずに見てみるようにとの指示がございました)」
男達が子爵令息を突き飛ばして蹴り始めた。
するとクリスティーナ嬢が変貌した。
「このクソガキゃ~!!」
「ぐわっ!」
「うっ!」
「や、止め、ゲホッ」
「クッソ弱いくせに卑怯なことをしやがって。
次はタマを潰すからな」
クリスティーナ嬢は恐ろしい顔になり、走り込んで彼らの鳩尾に拳を入れて制圧してしまった。
男達は蹲って苦しんでいた。
「お前達、女の子に負けたなんて知られたくないだろう?私がやったことにしてやるから席に戻れ。
次はスプラナード家が相手になろう」
ノエルが告げると、動けるようになった彼らは足早に去っていった。
「ありがとう…グズっ」
「ほら、泣かないで」
「太ってるから、いつも揶揄われるんだ」
「ちょっとくらい太っていてもいいのよ。
ガリガリより良いわ。
太り過ぎは健康に良くないから、しっかりバランスよく食べて運動をしたらいいわ」
そう言いながらハンカチで汚れた膝などを拭いてあげていた。
ノエルはニコニコしている。
そっと場を離れた。
凄いものを見てしまった。
父上が“手に負えない” と言ったのはコレかと納得した。
クリスティーナ嬢は可愛いし、婿入り先にもいいだろうと思ったが…
「かっこよかったですね」
「そうだな」
弱いもの虐めを目撃して見て見ぬふりをしないクリスティーナ嬢は真っ直ぐな子なのだろう。だけど
「あの破落戸みたいなセリフは何処で覚えてくるんだ?」
「さあ」
ライバルだと思ったノエルはニコニコしていた。
アレを知っていてノエルはクリスティーナ嬢が好きなのだ。
「確かに手に負えないな」
それ以来、私は友人枠で二人と仲良くなった。
学園が始まる数日前、父上に呼ばれた。
人払いがされると父上の側近だけが残った。
「財務のトップが不正ですか」
「そうだ。狭き門を通過してトップにまで上り詰めたのに不定期調査で引っかかってしまった。
それで何年も引き継ぎを兼ねてファーズ侯爵に内偵を頼んでいるんだ。
だが、彼は娘次第では放り投げてしまう。
そこでだ。学園でクリスティーナ嬢を見守ってくれ。王子の地位で解決できる小さなことは解決しろ。報告は出してくれ。
ただ、ノエルもクリスティーナ嬢もBクラスなのが不便だな」
「ノエルがですか」
「予め団長に断りを入れたようだ。“手を抜く”と」
「……」
「ノエルはノエルなりに側にいて守ろうとしているのか、虫払いをしているのか、猛獣の監視か、とにかく心に決めているのだろう。
早く婚約してしまえばいいのだが、侯爵がその気になっていないし、クリスティーナ嬢も興味がないようだ。
まあ時間の問題だろう」
こうして任務付きの学園生活が始まった。
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