【完結】道をそれた少女は別世界でも竹刀を握る

ユユ

文字の大きさ
30 / 53

バーバラの現実

しおりを挟む
【 バーバラ・ノマックの視点 】


子爵家うちの歴史は浅い。
何代が前に武勲を上げた先祖がいて、平民から準男爵、さらに子爵となった。 
後方支援に尽力し 長く続く戦争を持ち堪えた。そこで爵位を賜り、更に終結に導く戦略を考案し見事に平和へと導いたとして子爵を賜った。

それなのに、元平民と生粋の貴族の壁は天まで届くほど高く、分厚い。

しかも貴族の生活を維持することは大金がかかった。

領地の改善や設備などに大金がかかるし、馬車や兵士や使用人の維持もかなりかかる。
そして社交があるので家族全員の衣装や装飾品にも大金がかかった。
貴族夫人は 祝い事や王宮行事には同じドレスは着ていけない。子供達は成長とともに新調せざるを得ない。

かなりの報奨金をもらったが、パパの代で無くなってしまった。

領地の農作物はあまり期待できない。
どうやら農地に適したと思われる場所は、果物の木を植えても、野菜や穀物を育てようとしても枯れてしまう。領地の6割がそんな感じらしい。
領地内で消費する分を収穫するだけで精一杯。

牛の酪農も三代前に疫病で全頭処分しなくてはならなくなって、それ以来手を付けていない。
つまり、領主に納める分と 国に納める分が無い。


この説明を聞いたのは12歳のとき。
第二王子主催のお茶会の招待状が届いたときだった。

王子様との出会いに夢を膨らませて、ドレスの新調をすべくママにお強請りをした。

パパがノマック家の歴史と現状を説明した後、続きを聞かされた。

『バーバラには既に婚約者がいるから、殿下や他の令息に近寄ってはいけないよ』

『え?』

『バーバラの婚約者はジョージ・ロペという男爵令息なんだ。ロペ家から支援を受けて生活ができているんだよ』

『支援?』

『食事も備品も様々なものが支援金で賄われている。婚約が無くなればパパもママもお祖父様やお祖母様、妹達も食べる物にもに困ってしまう。
パパもママもお祖父様達も外に働きに行かなければならないし、お前達3人は学園へは行かせてやれない。

バーバラは成人したら住み込みで働ける職を探さないとならない。

だからロペ家の機嫌を損ねては駄目なんだ』

『格下でしょ?』

『爵位が上でも金が無ければ意味がない。
それどころか、金の無いノマックにとって子爵位は足枷なんだ。

ロペ家は歴史も古く裕福だ。
我々は逆らえないのだよ』



ショックだった。

ドレスもロペ家が誕生日に贈ってくれたドレスを着ていけと言われた。
あのドレスは家族だけの誕生日祝いに着たもので、質素なものだった。

もっとキラキラした可愛いドレスが着たかった。



馬車に揺られて到着した王城はとても大きくて煌びやかだった。

次に王城へ来るのはデビューのときだから、令嬢の友人を作って文通しなさいと言われたけど。

会場には入ると令息令嬢達はとても華やかだった。
その中でも囲まれている令嬢が数人いた。
近寄り会話を聞いた。

『おめでとうございます』

『まだ候補でしかありませんわ』

候補?

『イザベル様なら必ず内定をいただけますわ』

『王子妃選考のお手紙をいただいたときは食事が喉を通りませんでした』

『私も』

『直ぐに落ちたので、倍食べましたわ』

『私は宝石を買っていただきました』

『え? うちには手紙なんて来ていないわ』

つい口に出してしまった。

令嬢達が一斉に私を見た。

『貴女…どちらのご令嬢かしら』

『ノマック子爵家の長女バーバラです』

静まり返ると皆が口元を扇子で隠した。

『貴族教育が未だでいらっしゃるのね』

『王子妃を望めるのは伯爵家以上。
それに実家の財力も必要ですのよ』

『家族の人物調査もありますわ』

『格上の貴族の会話に不躾に割り込むなんて。
私達の歳でその作法ですと、たとえ伯爵家だったとしても絶対に手紙は届きませんわ』

『教師はついているのですよね?
違う方にお願いした方がよろしいですわ』

散々言われて悔しかった。

子爵家は王子妃は望めない。
そんなの知らなかったもの。


王子様が登場すると場の雰囲気が変わった。
益々居辛くなってしまった。
端で観察していると様々な令息がいた。

王子妃が無理でも公爵夫人や侯爵夫人を狙えるかもしれない。だっていつも可愛いって言われるもの。

話しかけに行ったけど、ほとんど無視された。



意地悪な子ばかりだとガッカリして領地に戻った。







しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

さようなら婚約者

あんど もあ
ファンタジー
アンジュは、五年間虐げられた婚約者から婚約破棄を告げられる。翌日、カバン一つを持って五年住んだ婚約者の家を去るアンジュ。一方、婚約者は…。

学園では婚約者に冷遇されていますが、有能なので全く気になりません。〜学園でお山の大将されてても、王宮では私の方が有能ですから〜

織り子
恋愛
王都カラディナにある国立魔術学園では、満十六歳の生徒たちの社交界デビューを兼ねた盛大なパーティーが開かれていた。 侯爵令嬢タレイア・オルトランは、婚約者である第二王子アスラン・オグセリアの迎えを待つも、結局ひとりで会場へ向かうことになる。 学園では身分の差がないとはいえ、アスランが公然とタレイアを侮辱し続けてきたことで、彼女は生徒たちから冷笑と蔑視の的となっていた。しかしタレイアは、王城で政務を担ってきた聡明さと矜持を失わず、毅然と振る舞う。

ネグレクトされていた四歳の末娘は、前世の経理知識で実家の横領を見抜き追放されました。これからはもふもふ聖獣と美食巡りの旅に出ます。

旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
アークライト子爵家の四歳の末娘リリアは、家族から存在しないものとして扱われていた。食事は厨房の残飯、衣服は兄姉のお下がりを更に継ぎ接ぎしたもの。冷たい床で眠る日々の中、彼女は高熱を出したことをきっかけに前世の記憶を取り戻す。 前世の彼女は、ブラック企業で過労死した経理担当のOLだった。 ある日、父の書斎に忍び込んだリリアは、ずさんな管理の家計簿を発見する。前世の知識でそれを読み解くと、父による悪質な横領と、家の財産がすでに破綻寸前であることが判明した。 「この家は、もうすぐ潰れます」 家族会議の場で、リリアはたった四歳とは思えぬ明瞭な口調で破産の事実を突きつける。激昂した父に「疫病神め!」と罵られ家を追い出されたリリアだったが、それは彼女の望むところだった。 手切れ金代わりの銅貨数枚を握りしめ、自由を手に入れたリリア。これからは誰にも縛られず、前世で夢見た美味しいものをたくさん食べる生活を目指す。

【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます

腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった! 私が死ぬまでには完結させます。 追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。 追記2:ひとまず完結しました!

婚約破棄がやって来る

あんど もあ
ファンタジー
賊に馬車を襲われた公爵令嬢。なぜか、彼女は喜んで娼館に売られたがる……。

義妹の嫌がらせで、子持ち男性と結婚する羽目になりました。義理の娘に嫌われることも覚悟していましたが、本当の家族を手に入れることができました。

石河 翠
ファンタジー
義母と義妹の嫌がらせにより、子持ち男性の元に嫁ぐことになった主人公。夫になる男性は、前妻が残した一人娘を可愛がっており、新しい子どもはいらないのだという。 実家を出ても、自分は家族を持つことなどできない。そう思っていた主人公だが、娘思いの男性と素直になれないわがままな義理の娘に好感を持ち、少しずつ距離を縮めていく。 そんなある日、死んだはずの前妻が屋敷に現れ、主人公を追い出そうとしてきた。前妻いわく、血の繋がった母親の方が、継母よりも価値があるのだという。主人公が言葉に詰まったその時……。 血の繋がらない母と娘が家族になるまでのお話。 この作品は、小説家になろうおよびエブリスタにも投稿しております。 扉絵は、管澤捻さまに描いていただきました。

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

幼馴染みの婚約者が「学生時代は愛する恋人と過ごさせてくれ」と言ってきたので、秒で婚約解消を宣言した令嬢の前世が、社畜のおっさんだった件。

灯乃
ファンタジー
子爵家の総領娘である令嬢の前に、巨乳美少女と腕を組んだ婚約者がやってきた。 曰く、「学生時代くらいは、心から愛する恋人と自由に過ごしたい。それくらい、黙って許容しろ」と。 婚約者を甘やかし過ぎていたことに気付いた彼女は、その場で婚約解消を宣言する。 前半はたぶん普通の令嬢もの、後半はおっさんコメディーです。

処理中です...