【完結】もう愛しくないです

ユユ

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婚約者候補の顛末

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三家は続々と帰路に着いた。

公爵は医師にエマの詳細を尋ねた。

「今回の件に関しては心の面は大丈夫そうです。前世の方が残酷な目にあったのでしょう。蹴られた場所は腫れて熱をもっています。縫合しましたが傷痕は残るでしょう」

「場所は」

「髪に隠れるところから少しはみ出して額へ。髪で隠れますが…前髪を全て上げる様な髪型にはできませんし、婚約にも難が出るかもしれません」

「ふぅ…幼子になんて事を」

「蹴られた後も血を流しながら泣かずに必死でフィーを守っていました」

「アレクサンドル」

「先生、エマはいつ治りますか」

「完治には1ヶ月はかかると思います。
内出血もあるので隠さなくて良くなるまでにはそのくらいは必要かと」

「先生、ありがとう。またよろしく頼む」

「はい公爵様。失礼いたします」



「父上、あんな恐ろしいことをする令嬢がいるのですね」

「ワンピースを着ていたから使用人の子だと思って遠慮がなかったのだろう」

「あんなに小さくて痩せた子に…」

「早く元気になるといいな」

「はい」


「旦那様、ファイエットはどうなさいますか」

「ファイエット?」

「お嬢様の側から離れようとしません。連れて行こうとすると攻撃してくるそうです」

「身を挺して守ってくれたエマを今度は自分が守ろうとしているのだろう。エマさえ良ければ自由にさせてやれ。傷だけは舐めさせないように」

「かしこまりました。別邸のメイドに伝えます」




バルト子爵には今回の件を報告し、いつでも来て欲しいと書き添えて手紙を送った。

公爵は陛下宛に見合いの件とエマの怪我の件の詳細を書き、1ヶ月休んで領地にいたいとお願いの手紙を出した。

直ぐに許可の手紙が届くと王都の屋敷を守る公爵夫人宛にしばらく戻れない理由を細かく書いて送った。





数日後、子爵が到着しエマを見舞った。
その数日後に公爵夫人が到着し、公爵からエマについて心の傷と前世の記憶について説明を受けた。


公爵夫婦の寝室では。

「あなた。エマちゃんは治るかしら」

「どうだろう。兆しが見え始めたところだったのに」

「エマちゃんがいなければ、暴力令嬢達か泥棒令嬢と婚約していたと思うと…。

エマちゃんに何かしてあげられないかしら」

「落ち着いたら教師を雇ってあげようと思っている。アレクサンドルもエマの側にいたいと言っているし」

「アレには驚きました。まるでアレクサンドルの隠し子みたいでしたわ。甲斐甲斐しく世話をして。フィーと争っていましたわ。
子爵夫人がオロオロなさってましたもの。子爵は笑っておられましたわ」

「いいご夫妻だ。子爵はちょっと怖い方の様だ。二家に慰謝料と治療費を請求すると言ったら、端金で許す気はない、子爵のやり方で罰を受けてもらうと言って私に手を引くよう頼んできた」

「…顛末を知りたいですわ」

「お願いしておこう」




【 後日の王都のレジュール侯爵家 】

「それで?」

「グレゴワール様?」

「はぁ。報告くらいまともにできないのか」

「っ!」

侯爵に叱られた妻は説明をした。

「ティファニーが備え付けの宝石箱の飾りの石を盗んだのだな。そして嘘をついたと」

「はい」

「お前達、よく聞け。
遊びに行ったのではない。見合いだ。
次期公爵夫人に相応しいかどうか見定めたんだ。
メイドに素行を監視するよう命じていたんだよ。我儘を言わないかとか些細な監視のはずが宝石を盗み出したからメイドも驚いただろう。

挙げ句の果てに保身の為に嘘をついた。
お前は侯爵令嬢に罪を被せる者がいると主張したんだ。

だとしたら第一容疑者はメイドだ。
平民のメイドだとしたら、公爵家の宝石を盗み侯爵令嬢に罪を被せたなら処刑だ。

その嘘が通ってしまったら、お前は人殺しになるところだった」

「「………」」

「ティファニー。15歳になる前日までお前を厳しい修道院にいれる」

「お父様!」

「グレゴワール様、そんな事をしたら王家に嫁いだパトリシアの立場が」

「盗人に育てておいて今更なんだ。そうでもしないと噂はすぐに広まるぞ。婚約者どころではなくなるしパトリシアは冷遇される」

「屋敷で謹慎しますから…お父様…」

「屋敷にいてソレなのだから何の解決にもならない。修道院で監視を付ける。更生されていないと分かったら除籍だ。寄付金は期限までの分しか納めないから、留め置いてはもらえないだろう」

「実の娘ですよ!?」

「だから金を払って修道院に入れるというチャンスを与えてやっているんだ。
普通に過ごせば侯爵令嬢の暮らしに戻れる。

教師も派遣するからしっかり学べ。
学園の入試に落ちても除籍だからな」

「私が可愛くないのですか」

「お前一人のために私やお前の母、婿に来てくれたケイシー、後継のマノン、他国の王子妃になったパトリシアが被害を被る。

信用を無くせば貴族や商家は離れていき、使用人の雇用も危うくなるし、領民も守れない。

だとしたら罪を犯した者を教育し直すべきだ。この家の中では無理だ」

「お祖母様の家に…」

パーン

ドサッ

「ティファニー!」

「反省もせず楽な道ばかり選ぼうとするな。
修道院に行きたくないなら行かなくてもいい。
その代わり除籍をして奉公に出す。
良家には預けられないから悪評のあるところを探す」

「ううっ」

「選べ」

「し、修道院に行きます」

「荷支度はメイド長に任せる。

エリーゼ。お前には貴族子女教育を受け直せ。教師は私が選ぶ。合格をもらうまで屋敷から出るな。
私が同伴する王宮の招待だけは行かせる」

「グレゴワール様、何故ですか」

「今の一時でさえ、貴族として侯爵夫人としてまともな判断ができていない。
縋るだけの女など妾で十分だろう。
一度習った事だ。1年以内に合格がもらえなければ離縁も視野にいれる」

「そんな…」

「退出しろ。公爵家に謝罪の手紙を書くから邪魔だ」

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