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婚約者候補の顛末 2
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【 後日の王都のコルネイユ公爵家 】
「それで、相手の子爵家の名前は?」
「…聞き忘れました」
「正気か!?アリシア。
エリーズが何をしたのか分かっているのか」
「ワンピースを着ていて使用人の子供だと思ったらしいの。それに貴族だとしても子爵令嬢よ?」
「貴族とは繋がりを持っているものだ。何処と繋がっているかわからないだろう。
それにワンピース云々は関係ない。
例え使用人の子だとしても公爵家の所有する人間だ。手出しなどしてはならない!
しかも非の無い5歳児を殴ったんだぞ!」
「猫を渡さなかったので…」
「お前の猫じゃないだろう!」
「はい」
「子供同士の揉め事なのに大袈裟だわ」
「アリシア。エリーズの年齢より倍で格上の令嬢に無関係の物を取り上げようとして倒れる程の力でエリーズを殴り飛ばしても、そう言うのか?」
「20歳は子供ではありませんわ」
「成程。よく分かった。お前は領地に行け。もう社交はしなくていい」
「そんな!」
「旦那様、王宮から早馬が」
「………呼び出しだ。すぐに行くと伝えてくれ。エリーズ、お前も来い。アリシアは荷物を纏めろ」
夕方、公爵家では。
「陛下はなんと」
「よりにもよってバルト家に手を出すとは」
「バルト子爵家だったのですね。でも陛下が何故」
「バルト子爵夫人と王妃様は親友だ!
5歳の子爵令嬢の顔に傷が残ると嘆いておられた!」
「蹴ったのはエリーズではないわ」
「きっかけの暴力はエリーズだろう!」
「っ!」
「子爵家は治療費も慰謝料も要らない。今後はバルト領とマルトー領とブッソール領に足を踏み入れるなと言われた」
「 ? 」
「はぁ…うちの大口取引先はバルト領の先にひとつとマルトー領の先に2つある」
「避けて通れば」
「お前はそれ以上口を開くな」
「なっ!」
「殴られたくなければ黙って聞け。
バルト領の右側は険しい谷があるし、左側はお前が学園で虐めた男爵領だ。
学生のノリで言葉を口にするなよ?
学生でなくなれば違う形で仕返しをされるだけだ。公爵夫人がなんだ。他領で襲われたらそれまでだろう。
つまり、大回りするか危険を承知で谷を通過するかだ。
マルトー領はこちらから取引先に向かうと横長に広がっている。避けて通ると余分に3箇所の領地を通らなくてはならない。
日数的にも支払う通行税も倍以上かかる。
そうなると利益は薄くなる」
「……」
「うちの領地から王都まで途中にブッソール領がある。そこも避けて通るのだぞ!何日余分にかかると思っているんだ!」
その上、10歳の公爵令嬢が5歳の子爵令嬢を殴り飛ばした。白い目で見られるだろうし、まともな貴族はそんな娘と婚約など結びたがらない。
エリーズは分家の適当な下位貴族に嫁がせる。己が下位貴族になれば思い知るだろう。
アリシア、領地に行っても自由はないぞ。権限は剥奪する。社交もしないから質素なドレスを年に2度仕立てる事を許す。靴は前のものが履けるなら買わない。
公爵夫人としての予算はない。使用人の中の一番低い賃金の者の額を基準にして7割を自由になる小遣いとして渡そう。
外出も不要なものは許可しない。
お前の実家には手紙を出しておいた。バルト家から恨まれたくなければ支援するなとな」
【 後日の王都のノワイエ侯爵家 】
1ヶ月後
「旦那様、王宮より早馬が到着しました」
「寄越せ」
「何て書いてあるの?」
「3人で登城しろと」
「王宮?王子の縁談かしら」
「上等な衣装を用意させよう」
謁見の間で立っていた3人の前に国王が現れた。
「咎めを受けにきたのにその服装はなんだ」
「「「 えっ!? 」」」
「先に煩そうな者の口を封じよう。
ノワイエ侯爵夫人。其方の祖国から書簡か届いた。此度の事件で心を痛められたそうだ」
「お父様は優しいわ!ね、あなた」
「クロッシュ国王陛下にお礼をしなければ」
「夫婦揃って何なんだ。発言してもいいなどと言っていない。黙って聞け。
ノワイエ侯爵夫人。クロッシュ王国の王族籍から除籍された。今後クロッシュを名乗るなと書いてある」
「は?」
「侯爵夫人でなくなれば平民だ。今後の後ろ盾はないから、自分の足でしっかり立つといい。言動は全て己に跳ね返るからな。
さらに今後、何か起こしてどんな処罰を受けようと気にしないから好きにしてくれと書いてある。
クロッシュ王が今溺愛しているのは5歳の孫娘だ。詳細を知って激怒なさったようだな」
「嘘よ…」
「其方宛の絶縁状もある。帰りに渡そう。
後、娘レオノールには平民街にて5000時間の奉仕活動を科す。入学までに終えなければ学園にもどの学校にも通わせない。そうなればデビューは出来ないぞ」
「5000時間なんて…」
「5000時間だと週3日で済む。残り4日で教育と休日を割り振ればいい。
監督官や指導係がいるが平民が多い。態度が悪ければ参加しても科せられた時間は減らないからな。怠けても減らないぞ」
「厳し過ぎます」
「侯爵、終われば自由だ。優しい処遇だろう。
被害者は世話になっている公爵家のペットを保護しただけなのに顔に一生残る大怪我を負わされたのだ。
嫌なら今からレオノールの顔に裂傷をつけさせてもらおう」
「そんなバカな事を!」
「この国の王に暴言とは肝の座った子供だな。
この娘を捕えよ!」
「お母様!!」
「レオノール!!」
「一般牢に1週間入れておけ。
その後、どちらにするか決めさせてから家に帰す」
「まだ子供です!どうか!」
「国王への不敬に子供かどうかなど関係ない。平民だったら説教で済ますが侯爵家の令嬢で母親は元王女。
ならば王族への礼儀は知っていて当然だ。
あと、バルト領とマルトー領とブッソール領に足を踏み入れるな。
マルトーは子爵夫人の実家、ブッソールは王妃の実家だ。
旅でも商いでもノワイエ侯爵家に関するものは通行できない。勝手に入れば捕えられて領内で消されるぞ。
お前達も一般牢に入りたく無ければ大人しく帰ってくれ。以上だ」
「それで、相手の子爵家の名前は?」
「…聞き忘れました」
「正気か!?アリシア。
エリーズが何をしたのか分かっているのか」
「ワンピースを着ていて使用人の子供だと思ったらしいの。それに貴族だとしても子爵令嬢よ?」
「貴族とは繋がりを持っているものだ。何処と繋がっているかわからないだろう。
それにワンピース云々は関係ない。
例え使用人の子だとしても公爵家の所有する人間だ。手出しなどしてはならない!
しかも非の無い5歳児を殴ったんだぞ!」
「猫を渡さなかったので…」
「お前の猫じゃないだろう!」
「はい」
「子供同士の揉め事なのに大袈裟だわ」
「アリシア。エリーズの年齢より倍で格上の令嬢に無関係の物を取り上げようとして倒れる程の力でエリーズを殴り飛ばしても、そう言うのか?」
「20歳は子供ではありませんわ」
「成程。よく分かった。お前は領地に行け。もう社交はしなくていい」
「そんな!」
「旦那様、王宮から早馬が」
「………呼び出しだ。すぐに行くと伝えてくれ。エリーズ、お前も来い。アリシアは荷物を纏めろ」
夕方、公爵家では。
「陛下はなんと」
「よりにもよってバルト家に手を出すとは」
「バルト子爵家だったのですね。でも陛下が何故」
「バルト子爵夫人と王妃様は親友だ!
5歳の子爵令嬢の顔に傷が残ると嘆いておられた!」
「蹴ったのはエリーズではないわ」
「きっかけの暴力はエリーズだろう!」
「っ!」
「子爵家は治療費も慰謝料も要らない。今後はバルト領とマルトー領とブッソール領に足を踏み入れるなと言われた」
「 ? 」
「はぁ…うちの大口取引先はバルト領の先にひとつとマルトー領の先に2つある」
「避けて通れば」
「お前はそれ以上口を開くな」
「なっ!」
「殴られたくなければ黙って聞け。
バルト領の右側は険しい谷があるし、左側はお前が学園で虐めた男爵領だ。
学生のノリで言葉を口にするなよ?
学生でなくなれば違う形で仕返しをされるだけだ。公爵夫人がなんだ。他領で襲われたらそれまでだろう。
つまり、大回りするか危険を承知で谷を通過するかだ。
マルトー領はこちらから取引先に向かうと横長に広がっている。避けて通ると余分に3箇所の領地を通らなくてはならない。
日数的にも支払う通行税も倍以上かかる。
そうなると利益は薄くなる」
「……」
「うちの領地から王都まで途中にブッソール領がある。そこも避けて通るのだぞ!何日余分にかかると思っているんだ!」
その上、10歳の公爵令嬢が5歳の子爵令嬢を殴り飛ばした。白い目で見られるだろうし、まともな貴族はそんな娘と婚約など結びたがらない。
エリーズは分家の適当な下位貴族に嫁がせる。己が下位貴族になれば思い知るだろう。
アリシア、領地に行っても自由はないぞ。権限は剥奪する。社交もしないから質素なドレスを年に2度仕立てる事を許す。靴は前のものが履けるなら買わない。
公爵夫人としての予算はない。使用人の中の一番低い賃金の者の額を基準にして7割を自由になる小遣いとして渡そう。
外出も不要なものは許可しない。
お前の実家には手紙を出しておいた。バルト家から恨まれたくなければ支援するなとな」
【 後日の王都のノワイエ侯爵家 】
1ヶ月後
「旦那様、王宮より早馬が到着しました」
「寄越せ」
「何て書いてあるの?」
「3人で登城しろと」
「王宮?王子の縁談かしら」
「上等な衣装を用意させよう」
謁見の間で立っていた3人の前に国王が現れた。
「咎めを受けにきたのにその服装はなんだ」
「「「 えっ!? 」」」
「先に煩そうな者の口を封じよう。
ノワイエ侯爵夫人。其方の祖国から書簡か届いた。此度の事件で心を痛められたそうだ」
「お父様は優しいわ!ね、あなた」
「クロッシュ国王陛下にお礼をしなければ」
「夫婦揃って何なんだ。発言してもいいなどと言っていない。黙って聞け。
ノワイエ侯爵夫人。クロッシュ王国の王族籍から除籍された。今後クロッシュを名乗るなと書いてある」
「は?」
「侯爵夫人でなくなれば平民だ。今後の後ろ盾はないから、自分の足でしっかり立つといい。言動は全て己に跳ね返るからな。
さらに今後、何か起こしてどんな処罰を受けようと気にしないから好きにしてくれと書いてある。
クロッシュ王が今溺愛しているのは5歳の孫娘だ。詳細を知って激怒なさったようだな」
「嘘よ…」
「其方宛の絶縁状もある。帰りに渡そう。
後、娘レオノールには平民街にて5000時間の奉仕活動を科す。入学までに終えなければ学園にもどの学校にも通わせない。そうなればデビューは出来ないぞ」
「5000時間なんて…」
「5000時間だと週3日で済む。残り4日で教育と休日を割り振ればいい。
監督官や指導係がいるが平民が多い。態度が悪ければ参加しても科せられた時間は減らないからな。怠けても減らないぞ」
「厳し過ぎます」
「侯爵、終われば自由だ。優しい処遇だろう。
被害者は世話になっている公爵家のペットを保護しただけなのに顔に一生残る大怪我を負わされたのだ。
嫌なら今からレオノールの顔に裂傷をつけさせてもらおう」
「そんなバカな事を!」
「この国の王に暴言とは肝の座った子供だな。
この娘を捕えよ!」
「お母様!!」
「レオノール!!」
「一般牢に1週間入れておけ。
その後、どちらにするか決めさせてから家に帰す」
「まだ子供です!どうか!」
「国王への不敬に子供かどうかなど関係ない。平民だったら説教で済ますが侯爵家の令嬢で母親は元王女。
ならば王族への礼儀は知っていて当然だ。
あと、バルト領とマルトー領とブッソール領に足を踏み入れるな。
マルトーは子爵夫人の実家、ブッソールは王妃の実家だ。
旅でも商いでもノワイエ侯爵家に関するものは通行できない。勝手に入れば捕えられて領内で消されるぞ。
お前達も一般牢に入りたく無ければ大人しく帰ってくれ。以上だ」
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