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溝
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【 アレクサンドル 】
数日後、父上からエマが子爵家に戻ると聞かされた。
「エマ!どうして帰るだなんて!」
「元々私がここにいる事はおかしな事だったのです。
王子殿下だけでなく誰もが思う事だと思いますわ。それは誰のためにもなりません。
ご迷惑をおかけしました」
「迷惑だなんて言うな!居て欲しくて頼み込んだのは公爵家なんだから気にせずここに居てくれ」
「ごめんなさい」
「エマ…」
彼女の居なくなった屋敷は退屈な空間となってしまった。
掃除をした後のエマの部屋にはまだエマの匂いがする。
毎日エマの頭を撫でて髪や頬に触れ手を握ったり菓子を食べさせていたのに。
食事も味気ないし、寝付きも悪くクマが出来てきた。
学園で王子が話しかけてきても適当にあしらった。
エマが去って2カ月後、父上と一緒に登城すると国王夫妻が待っていた。
そして続いてジェイド殿下が入室してきた。
「アレクサンドル。すまなかった」
「陛下に謝っていただくような事はございません」
「大まかな事情は話してあったのに、エマを言い寄っている令嬢と思い込んでとんでもないことをしでかしてくれたわ。
バルト子爵家には謝罪の手紙を出したのだけど“気にしないで”とだけ。
エマを大事にしていた貴方の気持ちまで傷付けてしまったわ」
「アレクサンドル…本当にすまなかった」
「謝罪は受けますが、それだけです。今後も知り合い程度の距離でお願いします」
「友人だったじゃないか」
「エマは去ってしまったのに、何故自分の友情は元に戻るとお考えなのですか。
あり得ませんが、例え言い寄った令嬢だとしても、私は婚約者がいるわけではないのですから問題ありませんよね。
公爵家の意思は無視ですか」
「アレクサンドルに相応しくないと…」
「身分だけで?エマを知りもせずに?
殿下のなさった事は、行き過ぎた友情ではなく王子の越権行為です。法律で禁じられていない以上、私が平民と婚姻しても殿下が口を挟める事ではないのです。
挟めるとしたら私の両親だけです」
「王子殿下、思い込みで相手を攻撃するなどあってはならない事です。王族でなければ殴って放り出していたかも知れません。
心の傷は王子殿下の目に見えなかったようですが重症だったのです。
長い年月をかけて王子殿下に対面して挨拶ができるまでになりました。
ですがあの場でも平気だった訳ではありません。かなりの勇気を振り絞ったのです。
あの後エマは熱を出し、2日後に下がると子爵領に帰ると言いました。
私が子爵に頼んで預かった大事なひとり娘をこんな形で帰さなくてはならないなんて、私は子爵にどんな顔をして会えばいいのか」
「子爵家には私から公爵家は一切悪くないと手紙を書きましたわ。本当にごめんなさい」
「謝罪は受けますが元には戻りません。
それは受け入れてください。
ジェイド殿下、側近の打診もお断りいたします」
「っ!」
「まだ決めなくてもいいのではないか」
「陛下……私には無理です。溝のある側近など迎えない方が互いの為です」
「わかった。息子がすまなかった。
あまり眠れていないようだな。栄養をとって休んでくれ。
休日に呼び立てて悪かった」
「それでは失礼いたします」
「失礼いたします」
サースワルド公爵と子息が去った後。
「ジェイド、アレクサンドルとは距離をおけ。お前から近寄るな」
「父上」
「アレクサンドルはエマ嬢を愛していたんだ。片思いだったのだろう。彼女はまだ11歳だからな。
だから食が細くなり眠れないのだろう」
「あまりに完璧な礼をしたので11歳という気がしなかったのです。受け答えがしっかりしていてとても療養中とは思えませんでしたし」
「お前の思い込みで傷付けた相手は、エマ嬢だけではない。アレクサンドルと2人の両親も傷付けたんだ。
しかも子爵夫人は恩人でありお前の母の親友だと言ったはずだ。
私達の気持ちも考えて欲しい。
しっかり反省してくれ」
「申し訳ございません」
数日後、父上からエマが子爵家に戻ると聞かされた。
「エマ!どうして帰るだなんて!」
「元々私がここにいる事はおかしな事だったのです。
王子殿下だけでなく誰もが思う事だと思いますわ。それは誰のためにもなりません。
ご迷惑をおかけしました」
「迷惑だなんて言うな!居て欲しくて頼み込んだのは公爵家なんだから気にせずここに居てくれ」
「ごめんなさい」
「エマ…」
彼女の居なくなった屋敷は退屈な空間となってしまった。
掃除をした後のエマの部屋にはまだエマの匂いがする。
毎日エマの頭を撫でて髪や頬に触れ手を握ったり菓子を食べさせていたのに。
食事も味気ないし、寝付きも悪くクマが出来てきた。
学園で王子が話しかけてきても適当にあしらった。
エマが去って2カ月後、父上と一緒に登城すると国王夫妻が待っていた。
そして続いてジェイド殿下が入室してきた。
「アレクサンドル。すまなかった」
「陛下に謝っていただくような事はございません」
「大まかな事情は話してあったのに、エマを言い寄っている令嬢と思い込んでとんでもないことをしでかしてくれたわ。
バルト子爵家には謝罪の手紙を出したのだけど“気にしないで”とだけ。
エマを大事にしていた貴方の気持ちまで傷付けてしまったわ」
「アレクサンドル…本当にすまなかった」
「謝罪は受けますが、それだけです。今後も知り合い程度の距離でお願いします」
「友人だったじゃないか」
「エマは去ってしまったのに、何故自分の友情は元に戻るとお考えなのですか。
あり得ませんが、例え言い寄った令嬢だとしても、私は婚約者がいるわけではないのですから問題ありませんよね。
公爵家の意思は無視ですか」
「アレクサンドルに相応しくないと…」
「身分だけで?エマを知りもせずに?
殿下のなさった事は、行き過ぎた友情ではなく王子の越権行為です。法律で禁じられていない以上、私が平民と婚姻しても殿下が口を挟める事ではないのです。
挟めるとしたら私の両親だけです」
「王子殿下、思い込みで相手を攻撃するなどあってはならない事です。王族でなければ殴って放り出していたかも知れません。
心の傷は王子殿下の目に見えなかったようですが重症だったのです。
長い年月をかけて王子殿下に対面して挨拶ができるまでになりました。
ですがあの場でも平気だった訳ではありません。かなりの勇気を振り絞ったのです。
あの後エマは熱を出し、2日後に下がると子爵領に帰ると言いました。
私が子爵に頼んで預かった大事なひとり娘をこんな形で帰さなくてはならないなんて、私は子爵にどんな顔をして会えばいいのか」
「子爵家には私から公爵家は一切悪くないと手紙を書きましたわ。本当にごめんなさい」
「謝罪は受けますが元には戻りません。
それは受け入れてください。
ジェイド殿下、側近の打診もお断りいたします」
「っ!」
「まだ決めなくてもいいのではないか」
「陛下……私には無理です。溝のある側近など迎えない方が互いの為です」
「わかった。息子がすまなかった。
あまり眠れていないようだな。栄養をとって休んでくれ。
休日に呼び立てて悪かった」
「それでは失礼いたします」
「失礼いたします」
サースワルド公爵と子息が去った後。
「ジェイド、アレクサンドルとは距離をおけ。お前から近寄るな」
「父上」
「アレクサンドルはエマ嬢を愛していたんだ。片思いだったのだろう。彼女はまだ11歳だからな。
だから食が細くなり眠れないのだろう」
「あまりに完璧な礼をしたので11歳という気がしなかったのです。受け答えがしっかりしていてとても療養中とは思えませんでしたし」
「お前の思い込みで傷付けた相手は、エマ嬢だけではない。アレクサンドルと2人の両親も傷付けたんだ。
しかも子爵夫人は恩人でありお前の母の親友だと言ったはずだ。
私達の気持ちも考えて欲しい。
しっかり反省してくれ」
「申し訳ございません」
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