【完結】もう愛しくないです

ユユ

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デニス

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【 デニス・ノーティング 】

私は前世の記憶がある。

金でノーディング家を、私を支配し付き纏う大嫌いな婚約者を死なせてしまった記憶がある。

父は言った。この見合いは拒否してはならないと。
子供の頃から制限され窮屈な思いをしてきた。買う物に自由はないし、好みでもない女と頻繁に会わなくてはならなかった。

にこにこしやがって。支配するのはそんなに楽しいのか!

学園が始まると私は運命的な出会いをした。
ホワイトブロンドにピンクの瞳の美しい女性だった。ティファニー・レジュール。美貌のレジュール侯爵家の三女。姉の一人は他国の王子妃になった。

隣のクラスの彼女とは選択科目が一緒で話す機会があった。彼女と準備当番になった時、並んでいる姿が鏡に映った。
物語の挿絵のようにぴったりとはまった。

友人の誕生日パーティーで見かけた彼女は学校とは違う装いで、華奢な体が際立つ。
ダンスに誘うとふわっと私の手を取り微笑んだ。

羽のように軽いとはまさにこのことだろう。何処かへ飛んでいってしまいそうで抱きしめたくなる。彼女の香りに酔いそうだ。

『あの、近々私の誕生日パーティーがありますの。ノーディング様にも祝っていただけたら…』

『喜んで伺うよ。デニスと呼んでくれティファニー』


彼女の誕生日パーティーでは多くの令息達がティファニーに贈り物をしていた。皆高価な物だった。
しまった。私の贈り物は平凡たったからがっかりされてしまう。

『ティファニー、誕生日おめでとう。オーダー品が間に合わなくて』

『ごめんなさい。お誘いしたのが5日前でしたものね』

『仕上がったら改めてお祝いさせてもらいないだろうか』

『嬉しいわ。楽しみにしているわね』


慌てて宝石店に行くが女性に人気の店は数ヶ月待ちは当たり前だと言われた。レジュール家の名前を出したがダメだった。

3軒目は人気で1番高級な店だった。ここも最短で数ヶ月待ちだと言われた。可能性は極めて低いがレジュール家も駄目なら試してみようと思った。

『婚約者のバルト子爵令嬢が急にここの美しい宝飾品を付けてパーティーに行きたいと言い出したので、無理だとは言ったのですが。
では失礼』

『少しお待ちください』

店員が奥から連れてきたのは

『店長のアルバートと申します。奥のお部屋でお伺いいたします』

応接室に案内され、時期や予算を聞かれた。

『一刻も早くとなりますと…だいぶ先の納期の品がひとつございます。ネックレスですがこれから石を嵌めるだけの物がございます。

似てしまいますが、少し手を加えれば全く同じとはなりません。
ただかなり大きな石の為のデザインになっておりますので予算を大幅にオーバーしてしまいます』

それはまずい。

『有難いが婚約者があまり大きな装飾品を好んでいなくて。デビュー前の令嬢が普段使いに出来るものだと良いのだが』

『既製品ではありますが人気のシリーズがあります。限定品なので多くは作っておりません。ひとつ確保している品がございます。
こちらでしたら予算にも合うかと』

『無理を言ってすまない。
それをいただこう。別にオーダーしておいていいかな。またこういったことがあるかもしれない。通常納期にしてもらえれば』

『かしこまりました。ではデザイン担当をお呼びいたします。限定品のブレスレットもお持ちいたします』

王都に屋敷を持たないバルト子爵家の名前がこんな高級店で融通してもらえるほど通っているなんて…レジュール侯爵やノーディング伯爵家よりも。

そんなに金があるのか。



週末にティファニーと会い早速渡した。

『オーダー品はやはり数ヶ月かかってしまうと言われた。その代わりこれを』

『まぁ!素敵!

これってナタナエルの限定品!
レジュール家も買えなかったのに』

『気に入ってくれた?つけるから手を出して』

ティファニーの折れそうな細く白い手首にブレスレットをつけた。

それから毎日つけてくれているようだ。贈った甲斐があった。

父には婚約者へのサプライズにするつもりで限定品だから押さえておかないとならなかったと言って誤魔化した。



翌年の誕生日は1年近く前から予約していた人気のレストランへティファニーを連れて行き、去年オーダーしていたネックレスをプレゼントした。

『私ね、婚約者が好きになれないの』

『サースワルド公爵令息?』

『うん。

分かるのよね。この人は私のことを好きじゃないって。
子供の頃からずっと。エスコートにも愛がない。結婚したらこれが続くんだと思うと憂鬱で。正直見た目も好みじゃないの』

『子供の頃に見かけた時は綺麗な子だったけど今は逞しい感じだね』

『私は美しい人や物が好きなの。デニスやデニスの贈り物みたいにね』

『私の婚約者は束縛が激しいんだ。好きでもない相手から束縛されるのは辛いよ。一生続くのかと思うと…まるで地獄だよ。

相手がティファニーだったらいいのに』


帰りの馬車で口付けをした。

学園でも人目を忍んで口付けをした。
夜会が一緒になった時は休憩室で、外出すれば隠れ宿で体を重ねた。


婚約者の入学とデビューの年がやってきた。
できるだけ他人のフリをしたかったのに、あっという間に周知されてしまった。

ある日、話があるから伯爵家うちで会いたいと言った。

話とはティファニーとの事だった。バレていた。報告されては堪らないと言い訳をしたが段々と腹が立ってきてしまった。

しかも私とティファニーの愛を性欲の捌け口のように言った。

この女はどこまで私を侮辱し続ければ気が済むのか。
もう我慢の限界だった。

本人がいいというのだから文句ないだろう。
自分の言ったことがどういうことなのか身をもって教えてやった。



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