【完結】もう愛しくないです

ユユ

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デニス 2

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痛がる声が煩わしくてクッションを頭に押し付けた。

シーツの処女の証を見てふと思った。
この女の有責で婚約破棄しよう。醜聞にして莫大な慰謝料を貰おう。

さっさと吐き捨てて服を着た。
次の約束をして、用は済んだから出て行くように言った。




待ち合わせの宿で下着姿の婚約者を縛った。
その後、続き部屋に通していた友人2人と御者を招き入れた。

あの女が複数人の男と遊んでいたとして婚約破棄をする為に仕組んだ事だった。

何を言おうと態々下着を買い、宿を予約したのは女の方だ。この宿はそう言う場所で複数人の男が出入りしたとなれば…。

宿側はプライバシーを守る。それが売りの宿だ。だがヤる事が目的の宿とは知らず変装もせず訪れたはず。目撃証言が得られるはずだ。

今までの鬱憤を晴らそうと3人にも解放した。どうせ破棄するのだから手垢が付いても構わない。

破棄後にティファニーも解消させて、愛する者同士で婚約できると思っていたのにあんなことになるなんて。



息をしていない婚約者を置き去りにして逃げ帰った。

2日後、私がいない隙に伯爵家うちに憲兵が聞き込みに来てそのまま御者を連れて行ったらしい。

夜、仕事から帰った父が母から昼間の話を聞いたようだ。

『デニス、お前や護衛騎士や御者の事を聞かれたそうだ。憲兵の中でも黒地に銀のラインの腕章は、王族の次に重要な者が殺されたか重症を負った際に担当する精鋭だ。

お前、何かしたのか』

『何も…』

『デニス、正直に話しなさい』

『身に覚えがありません』

王族の次に重要な者?だとしたら私じゃない。

『じゃあ何故御者が連れて行かれるんだ』

『何か目撃したとか、知り合いとか?』

『もういい。明日探ってくる』



眠れない夜になった。



『デニス様!

デニス様!起きてください!』

『なんだ…まだ夜が明けているところじゃないか』

『大急ぎ応接間に来てください』

『は?』

そこに父が現れた。

『デニス!モタモタするな!早く来い!』

ガウンを羽織り1階の応接間に着くと外には騎士2人、中に入ると黒地に銀のラインが入った腕章をつけた5人の男がいた。

『デニス・ノーディング。お前をエマ・バルト子爵令嬢殺害の罪で逮捕する』

『デニス!貴様!!』

『何かの間違いです!私がエマを殺すはずがないでしょう!』

『本当にエマ嬢は死んだのか?』

『はい。2日前、複数の男達に凌辱された後窒息死させられました』

『それなら複数の男達と楽しんだ末の事故とも言えるだろう』

『手首を紐で縛らた痕跡があります。痣だけでなく皮膚が裂け肉が抉れる程に。そんな合意はありませんよ』

『そういう趣味かもしれないだろう』

『性器にも傷が多数あり、押さえ付けられた痣からすると手の大きさは複数人。
髪も強く引っ張られて抜け落ちています』

『だから!痛めつけられるのか好きな…』

『デニス・ノーディング!!』

『っ!』

『エマ様をこれ以上侮辱するな。子爵がエマ様の亡骸と対面した時の悲しみと怒りは相当なものだ。楽に死にたいなら言葉を選べ』

『だから何なんだよ!私じゃないと言ってるだろう!』

『物的証拠があります。口に詰められた布と死因である喉に詰められた布が貴方のハンカチだからです』

『ハンカチ?ハンカチなど誰でも持っているだろう!』

『裂いて丸めて詰めたハンカチは刺繍がしてありました。ぱっと見は分かりにくいですが白地に白糸で刺繍が入っているのです。すごく小さく家紋とあなたの名前が』

え?

家紋

名前?

『…デニス、貴方に持たせているハンカチは全てエマさんが刺繍を施してプレゼントしてくださった物なのよ…貴方が学園に行っている間にここに来て沢山作ってくれたの。

同じ物だから飽きないかと言ったけど、“私の気持ちがハンカチとなって毎日デニス様といられると思うと楽しい時間ですわ”って。

貴方がハンカチに華美な刺繍を好まないから目立たぬよう白地に白糸で施したのよ。

あんなに愛して大事にしてくれていたエマさんに貴方は何てことを……』

そんな事は知らない!

『あいつはいつも私を束縛して貶んできたしゃないか!』

『どこをどうしたらそんな風に思えるんだ。
束縛?貶む?何のことだ!』

『金の使い道を細かく報告させた!学園の休みの度に会いに来てあちこち出かけさせて』

『それは私が選んだ。
報告無しなら融資、報告有りなら支援という寄付にするとの事だったからだ。

報告と言っても日頃付けている帳簿を見せるだけ。それだけでお前は贅沢をさせて貰えていただろう!

服だって高級な物だし食事も何もかも裕福な貴族家の暮らしだ。質を上げるよう言ってくださったのはエマ嬢だ!』

『出かけた先は美術館や観劇、宝飾店やレストランだったじゃないの!それは知識を養うためよ!そのおかげで社交で話題に困らなかったでしょう!』

そんなわけ…

『バルト子爵家の……エマ嬢の支援が無ければ、ノーディング家は服どころか使用人も雇えず食事も事欠いた。

学園に通わせる金などなく、上位5名に入らないと奨学金は貰えないからお前の成績では無理だ。通えたとしても徒歩で通う事になったし友人付き合いなど夢だ。

卒業後は何処かで働いて家に金を入れる生活だ。

服も仕立てられず社交をしなくてはならない。伯爵家以上は王宮主催のパーティが複数あるからな。

つまり支援が無かったら今頃我々は平民になって、運が良ければ事務員、運がなければ肉体労働の生活をする運命だったんだぞ』

『領地は…屋敷は…』

『売り払っても借金は返しきれない』

そこまで酷かったなんて知らなかった。
…エマには悪いことをしたけど、ティファニーを愛してしまったんだ!

『私にはティファニーがいる』

『ティファニー?』

『ティファニー・レジュール。私の恋人です!彼女が助けてくれます!』

『貴方…不貞をしていたの!?』

『お前は愚か者だ。莫大な借金を払ってくれるわけが無いだろう』

『借金は子爵家が払ったんですよね』

『お前が不貞、もしくは危害を加えた時点で契約不履行だ。借金の代返や今までの支援は融資に変わる。違約金と利息が発生し慰謝料が追加される。不貞と子爵の溺愛するひとり娘を痛ぶり殺した慰謝料がな。

お前のせいでノーディング家は没落だ』

『不貞の上での殺害ということですね。連行します』



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