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炎の魔法使い
消えた小隊
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【 およそ二年半前 】
本名はノエリア。
子供の頃に父を亡くし、4年前に母を亡くしたノエリアは男装をして生活をしていた。
保護者のいない美少女の一人暮らしは危険だった。
宿を営む母の知人の元で住み込みで働くノエリアは、ノアという美少年として働いた。
近くで見れば疑いたくもなるのに何故バレなかったかというと、訪れる力自慢の男達よりも強かったから。
初日に宿泊客に一階の食堂で絡まれた時に、自身より遥かに大柄な男をノアは力でねじ伏せた。
「少年趣味なんて気持ち悪い。次は手加減せずに脚を折るからな」
食堂にいた客達が一瞬にして話を広めた。
安全を求めてやってくる客と自分の力を誇示したい挑戦者という客で人気の宿となった。
一方、ダニエル国王は五国統一の為に優秀な戦士をスカウトしてこいと命じていた。
剣を使えなくても訓練させて何かしらの武器を扱えればいいと身分を問わなかった。
国中に散ったスカウトマンのひとりがノアの噂を聞きつけた。
宿で筋骨隆々の男達を捩じ伏せる美少年に驚きはしたものの、旅の間に溜まっていた5人はいつものように女を拉致して欲を満たすのではなく、ノアに照準を合わせた。
「男でも華奢な美少年なら楽しめそうだ」
夜遅くに片付けを終わらせゴミを出しに外へ行ったノアのあとを追った。
人の気配のない集積所でノアは5人に囲まれた。
「……ご用はなんでしょう」
「今晩相手をしてくれないか」
「力比べてですか」
「お前が抵抗すればそうなる。
5人相手では流石に敵わないだろう?
従順になれば優しくしてやるぞ」
「少年をレイプしに来たんですか。身なりは良さそうなのに育ちが悪い」
「まだ痛い目に遭っていなくて判断を間違えたようだな。今後のために躾けてやろう」
「では、僕は殺す気で抗いますね」
「ちょっと力が強いからと過信し過ぎじゃないのかな?
氷結拘束!」
足元を凍らせる魔法を放った……はずなのに
「氷結拘束!!」
再度唱えてもノアの足元は凍らなかった。
「帰っていい?」
「おい、誰が唱えろ!」
「氷球」
「……じゃ!」
他の者が唱えても魔法がかからなかった。
男達は狼狽えながら剣を抜いた。
「止まれ。斬られたくなければついて来い」
「反撃していいのかな?」
「氷魔法を使えるのか!」
「使えないけど」
「素手で剣に立ち向かうとでもいうのか」
「そうでもない。かかってこないなら帰るよ」
「舐めやがって!」
ひとりが斬りかかったとき、
「炎塔」
ノアが唱えると直径30メートル高さ5メートル程のドームの中は炎で充満した。
5人が焼かれ苦しむ中、歩いてドームから出てきたのはノアだけだった。
「黒炎」
ドームの中の炎は赤から黒に変わった。
20秒ほど待ち、指を鳴らすとドームごと炎が消えた。
地面は直径30メートル程黒くなり、5人の存在した形跡は無くなっていた。
宿屋に戻り戸締りをして風呂に入り眠りについた。
半月後の王宮騎士団では、
「北西に向かった小隊が行方不明!?」
「はい。帰城せず連絡もありません」
「第三から小隊を組んで向かわせろ」
「はっ!」
第三から選ばれた5人は第五の行方不明5名の足取りを追った。
行き着いたのはある宿屋だった。
「5人の騎士ですか。確かに泊まりましたが居なくなりました」
「詳しく話してくれ」
「昼に着いて翌夜の夕食を食べ部屋に戻られた後、居なくなりました。
2泊分を前払いしていただいたのでチェックアウトの時間に部屋に行ったのですが誰も居ませんでした。
3時間過ぎても戻らなかったので荷物を移して次のお客様のために部屋の掃除をしました」
「彼らの荷物は」
「身分証をご提示ください」
「失礼した。王宮騎士団第三の調査隊だ」
男の提示した身分証を確認すると、備品庫から荷物を運びテーブルの上に置いた。
全部運び終わりお茶を入れに行った。
「あいつら、何も持って行っていない。全部ここにある」
「宿屋の仕業か?」
「なら荷物は処分するだろう。金も身分証もここにある。財布は無いが、普通はポケットにいれるからここにないのは当たり前だ。
それに魔法を使える騎士5人だぞ。あの夫婦にどうこうできるわけがない」
「薬を盛れば分かりませんよ」
「何の目的で?」
「あれは少女?」
「少年?」
「すごく綺麗な子ですね。エプロンをしているから従業員でしょう」
「君!ちょっといいか」
「はい」
「消えた5人を知っているか」
「質問の意図をお願いします」
「何処に行ったか知りたい」
「宿中を探しましたから宿内に居ないのは確かです」
「もしかして力の強い美少年とは君のことか」
「さぁ。よく挑戦者は来ます」
「……相手をしてもらっていいか」
「嫌です」
「どうしたら受けてもらえる?」
「勝負の後に何も要求せずこの荷物を持ってお引き取りいただければやります」
「いいだろう」
小隊のリーダーがノアと対峙し腕を組み合った。
「くっ!」
リーダーは必死に押し倒そうとするが少年の腕はびくともしなかった。
「では、勝負有り」
ダン!
ノアはリーダーの腕を押し倒した。
本名はノエリア。
子供の頃に父を亡くし、4年前に母を亡くしたノエリアは男装をして生活をしていた。
保護者のいない美少女の一人暮らしは危険だった。
宿を営む母の知人の元で住み込みで働くノエリアは、ノアという美少年として働いた。
近くで見れば疑いたくもなるのに何故バレなかったかというと、訪れる力自慢の男達よりも強かったから。
初日に宿泊客に一階の食堂で絡まれた時に、自身より遥かに大柄な男をノアは力でねじ伏せた。
「少年趣味なんて気持ち悪い。次は手加減せずに脚を折るからな」
食堂にいた客達が一瞬にして話を広めた。
安全を求めてやってくる客と自分の力を誇示したい挑戦者という客で人気の宿となった。
一方、ダニエル国王は五国統一の為に優秀な戦士をスカウトしてこいと命じていた。
剣を使えなくても訓練させて何かしらの武器を扱えればいいと身分を問わなかった。
国中に散ったスカウトマンのひとりがノアの噂を聞きつけた。
宿で筋骨隆々の男達を捩じ伏せる美少年に驚きはしたものの、旅の間に溜まっていた5人はいつものように女を拉致して欲を満たすのではなく、ノアに照準を合わせた。
「男でも華奢な美少年なら楽しめそうだ」
夜遅くに片付けを終わらせゴミを出しに外へ行ったノアのあとを追った。
人の気配のない集積所でノアは5人に囲まれた。
「……ご用はなんでしょう」
「今晩相手をしてくれないか」
「力比べてですか」
「お前が抵抗すればそうなる。
5人相手では流石に敵わないだろう?
従順になれば優しくしてやるぞ」
「少年をレイプしに来たんですか。身なりは良さそうなのに育ちが悪い」
「まだ痛い目に遭っていなくて判断を間違えたようだな。今後のために躾けてやろう」
「では、僕は殺す気で抗いますね」
「ちょっと力が強いからと過信し過ぎじゃないのかな?
氷結拘束!」
足元を凍らせる魔法を放った……はずなのに
「氷結拘束!!」
再度唱えてもノアの足元は凍らなかった。
「帰っていい?」
「おい、誰が唱えろ!」
「氷球」
「……じゃ!」
他の者が唱えても魔法がかからなかった。
男達は狼狽えながら剣を抜いた。
「止まれ。斬られたくなければついて来い」
「反撃していいのかな?」
「氷魔法を使えるのか!」
「使えないけど」
「素手で剣に立ち向かうとでもいうのか」
「そうでもない。かかってこないなら帰るよ」
「舐めやがって!」
ひとりが斬りかかったとき、
「炎塔」
ノアが唱えると直径30メートル高さ5メートル程のドームの中は炎で充満した。
5人が焼かれ苦しむ中、歩いてドームから出てきたのはノアだけだった。
「黒炎」
ドームの中の炎は赤から黒に変わった。
20秒ほど待ち、指を鳴らすとドームごと炎が消えた。
地面は直径30メートル程黒くなり、5人の存在した形跡は無くなっていた。
宿屋に戻り戸締りをして風呂に入り眠りについた。
半月後の王宮騎士団では、
「北西に向かった小隊が行方不明!?」
「はい。帰城せず連絡もありません」
「第三から小隊を組んで向かわせろ」
「はっ!」
第三から選ばれた5人は第五の行方不明5名の足取りを追った。
行き着いたのはある宿屋だった。
「5人の騎士ですか。確かに泊まりましたが居なくなりました」
「詳しく話してくれ」
「昼に着いて翌夜の夕食を食べ部屋に戻られた後、居なくなりました。
2泊分を前払いしていただいたのでチェックアウトの時間に部屋に行ったのですが誰も居ませんでした。
3時間過ぎても戻らなかったので荷物を移して次のお客様のために部屋の掃除をしました」
「彼らの荷物は」
「身分証をご提示ください」
「失礼した。王宮騎士団第三の調査隊だ」
男の提示した身分証を確認すると、備品庫から荷物を運びテーブルの上に置いた。
全部運び終わりお茶を入れに行った。
「あいつら、何も持って行っていない。全部ここにある」
「宿屋の仕業か?」
「なら荷物は処分するだろう。金も身分証もここにある。財布は無いが、普通はポケットにいれるからここにないのは当たり前だ。
それに魔法を使える騎士5人だぞ。あの夫婦にどうこうできるわけがない」
「薬を盛れば分かりませんよ」
「何の目的で?」
「あれは少女?」
「少年?」
「すごく綺麗な子ですね。エプロンをしているから従業員でしょう」
「君!ちょっといいか」
「はい」
「消えた5人を知っているか」
「質問の意図をお願いします」
「何処に行ったか知りたい」
「宿中を探しましたから宿内に居ないのは確かです」
「もしかして力の強い美少年とは君のことか」
「さぁ。よく挑戦者は来ます」
「……相手をしてもらっていいか」
「嫌です」
「どうしたら受けてもらえる?」
「勝負の後に何も要求せずこの荷物を持ってお引き取りいただければやります」
「いいだろう」
小隊のリーダーがノアと対峙し腕を組み合った。
「くっ!」
リーダーは必死に押し倒そうとするが少年の腕はびくともしなかった。
「では、勝負有り」
ダン!
ノアはリーダーの腕を押し倒した。
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