【完結】生まれ変わった男装美少女は命を奪った者達に復讐をする

ユユ

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炎の魔法使い

捜索

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第三の小隊のリーダーは団長の執務室にいた。

ノアに負けて、周辺の聞き取り調査をしてから帰城していた。

「“消えた”ねぇ」

「周辺の住民に書き込みをしたのですが情報は何も得られませんでした」

「ライダー隊長とアスカリッド隊長を呼べ」

「!! かしこまりました」





30分後、団長の執務室で調査隊の報告書を読む男は近衛騎士団の第四隊長エイダン・ライダーと、王宮騎士団の調査隊の隊長マリオ・アスカリッドだった。

報告書を読み終わる頃に王宮騎士団で調査や尋問を担当する団長ラズロ・ボワイエは声をかけた。

「どう思う」

「荷物が丸々残っていて、トラブルに巻き込まれたなどの目撃者もない。近くに迷うような森もないし崖などもない。

人為的だとしても王宮騎士団の騎士5人です。簡単に連れ去られるとは思えません」

「旅人が利用する程度の長閑な町ですか。
行かないことにはどうにも判断が付きませんね」

「相応しいと思う調査隊を組んでくれ。
失踪者探しとスカウトを同時にやってもらいたい」

「彼らは対象の人物と会えたのでしょうか」

「最後の連絡が街に着いたとだけでわからないな。

戦闘になるかもしれない。強者も連れて行け。ソーサ団長とマチュー近衛騎士団長にも報告を入れてくれ」

「では、すぐに編成して出発します」

「頼む」



5日後、スカウトと武力を担当するライダー隊長率いる7名と、調査を担当するアスカリッド隊長率いる5名が例の宿屋に到着した。

調査隊は別の宿に部屋を取った後に例の宿を再度調べ、スカウトの2人以外は調査隊と町中を中心に調査に散った。


その日の夜、アスカリッドの宿部屋にライダーがいた。

「ライダー隊長、やはり到着時以外の目撃情報も治安が悪いという情報も危険な場所もありませんでした。

変わったことと言えば集積所の側に直径30メール程地面が黒くなっておりました。
彼らが到着する前には無かったようです」

「こちらは噂の少年に会いに行った。
他の客とのやり取りを見たが礼儀正しくあの体からは信じられない力でねじ伏せていた。
表情も顔色も変わらない」

「遠目に見ましたが、かなりの美少年でしたね」

「13歳と言っていた。一見少女だな」

「ライダー隊長、実は失踪した5名は小隊長を中心に良くない噂があるのです」

「どんな噂だ」

「女狩りをしていると」

「女狩り?」

「娼婦を買わずに外を歩いている女を拐って欲を満たしているという噂です」

「我々は直接ここへ来たが、小隊は情報収集しながら辿り着いたはずだ。

噂が本当だとするとここまで1週間以上。
獲物を物色したくなる頃だな」

ライダーは少し悩むとアスカリッドに告げた。

「明日の朝、隊長と集積所へ私も行こう。
他の者は捜索範囲を広げさせてくれ」

「はっ!」



翌朝、食事を終えてライダーとアスカリッドは集積所へ来ていた。

土を触り臭いを嗅ぐ。

「燃焼の臭いだな」

「こんな焼け跡は見たことがありません」

「温度か?」

「ゴミを燃焼促進剤で焼いたとか」

「こんなふうになるか?」

「日々の積み重ねでこうなったのか」

2人は馬に乗り隣町の詰所に行き身分証を見せ尋ねる。

「隣町のゴミはどのようにして処理されるのかな」

「生ゴミとそうでないものに分けてそれぞれ契約した業者が回収します」

「その場で燃やすということは」

「ありません」

「この町では何も持たずに人が数人消えるといったことはあるか?」

「女性が拐われたということはなくもないですが、荷物を持たない数人は聞いたことがありません」

「事故や事件に遭いそうな場所や迷子になりそうな場所はあるか」

「ありません。森のない平地ですし、長閑な町ですから」

「助かった。ありがとう」


宿に戻る途中も焦げた跡について聞き回ったが知る者はいなかった。

「ライダー隊長、あの焦げ跡が小隊が目撃されていた頃は無かったとなると無関係ではない気がします」

「目撃者がいないのは時間帯の問題かもしれない。夜に集積所を張ろう」




夜、宿部屋の窓から外の人気が無くなるのを確認すると2人ずつ二つの宿に残り、隊長2人を含めた8人が集積所周辺に張った。

一番遅くに訪れたのは宿屋で働く美少年と酒場の従業員だった。


翌日午後に宿屋、夕方に酒場へ書き込みと1人ずつ面談をした。

「怪しい動きもありません。大量の燃焼促進剤もありません。騎士5人を倒せるほどの強者もおりません」

「強者……」


宿屋の食堂が落ち着いた頃、ライダーはノアに話しかけた。

「話をききたいのだが」

「またですか?忙しいので要点を絞ってください」

「時間を指定してほしい。対価は払う」

「業務終了後に少しだけなら」

「では終わったら部屋に来てくれ」

「……いえ、23時に食堂でお願いします」

「分かった」


ノアが去るとアストリッドが話しかけた。

「ライダー隊長にあの態度は凄いですね。
実力を知らないとはいえ近衛騎士の隊長だと分かっての態度だとは思えません」

「怖いものは無いと言った感じだな」

「この町にも周辺の町にも魔法が使える者は僅かで、使えたとしても何かを冷やす程度で凍らせるまではできませんでした。
強さは彼以上に名が挙がる者はおりません」

「少女みたいな子にやれるか?」

「もしかして、小隊は彼を標的にしたかもしれませんね」

「………試そう」


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