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炎の魔法使い
説得
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ライダー達はまた同じ配置で夜に集積所周辺で息を潜めた。
ノアがゴミを出し終えると騎士8人がノアを取り囲んだ。
「はぁ~。潮時か」
ノアは大きな溜息をついた。
ライダーとアスカリッド以外の騎士達が剣を抜き、少しずつノアに近寄った。
「一度だけ警告する。誰か一人でも僕に斬りかかったら誰一人逃さないよ」
「自白ととっていいのかな」
「何が言いたい」
「我々の探している小隊を消したのはお前だな?」
「目撃者でもいたわけ?」
「足元の焦げ跡は死体を燃やしたのか」
「証拠も無しに僕に何するつもり?
犯人を挙げられないから僕を連れて行くの?
国王陛下に失笑されると思うよ」
「どうだろうな」
背後の一人がノアに近寄り剣を喉元に近付けた瞬間ライダーの静止命令がかかった。
「止めろ。退がれ」
背後の騎士がノアから距離を取った。
「改めて話がしたい。アスカリッドと私だけだ。頼む」
「隊を宿に戻せ。ここで聞こう」
ライダーは他の6名を宿屋に退がらせてノアと対峙した。
「ノア。君の恐れ知らずな余裕は腕力だけじゃない。かなりの強い魔法の使い手だからだね」
「どうだろう」
「私は誰かが魔法を発動しようとすると感知できるんだ。大小くらいは分かる。
君は部下が背後から接近し剣を近付けた時に魔法を使いかけた。
今まで感じ取ったことのない強さだった。
私の目的は調査とスカウトなんだ。
隊に入ってくれないか」
「断る」
「国王陛下に会って話を聞いて欲しい」
「犯人としてだろう」
「誓ってそうではない」
「あなたの誓いなど僕には何の意味もない。国王陛下の誓いであってもね」
「不敬だぞ!」
「アスタリッド隊長、止めろ」
「………」
「僕から言わせれば近衛騎士だからと何故特別視しなくてはならないんだ?近衛に入る奴は全員が聖人君子なのか?
あんたとあんたの家族の命を掛けるか?」
「助けて欲しい。君の力が必要だ」
「助ける理由がない」
「何を得るかは陛下と交渉してくれないか」
「結局連れて行くんだ」
「陛下を此処にお連れするわけにはいかないからな」
「13歳は間違いないのか」
「親は死んで独り身だ」
「宿屋との関係は」
「母の知人」
「急に辞めるとまずいのか」
「会わせるだけじゃないのは決定なんだ」
「……」
「大丈夫?ライダー隊長だっけ。
僕は国王陛下を亡き者に出来る力があるよ。
そんな者を引き合わせて責任とれるの?」
「きっとあいつらは君に手を出したのだろう。
君は無害な者は相手にしない」
「国王が害だと判断したら?」
「そんなに虐めないでくれよ」
「ハハッ、よく言うよ。最初の作戦が通じないから下手に出てるだけだろう。虐められてるなんて思ってもないくせに」
「お前、本当に13歳か?」
「嘘は言ってないよ。そう聞いているから」
「そう聞いている?」
「産まれた瞬間から歳を数えだす赤子なんていないでしょ」
「ノア、もし引き受けてくれるなら私の隊を希望してくれないか」
「近衛でしょ。無理だよ」
「無理?」
「何の経験もない平民の子供が近衛に入れると思ってるの?周りが文句言うでしょ」
「ノアの安全のためだ」
「はぁ~。危険があるなら断るだけだ。
国が抱える騎士は獣の集まりかなにかなのか。
いざという時は命をかけてもらうだけだ」
「ノア。私が君と共に戦いたい」
「他の騎士は足手纏いにならない?」
「統率は取れている」
「お守りは嫌だよ。隊を組ませてもらえるなら自由にさせてもらうよ」
「ノア……」
「何させようとしてるか分からないけど」
ライダーは宿屋の夫婦にノアをスカウトしに来たといい、金貨を数枚置いて行った。
道中もひとり部屋を希望し、テントもひとりで使うという。
4日目、不満を持つ隊員が不満を口にした。
「何様だよ」
「………じゃあ、帰るわ」
「ノア!」
「何が“私の隊に”だよ。面倒臭い。
統率取れてないじゃん。
僅か4日で口に出すなんて近衛騎士は軟弱だね。それか上官を舐めてるんだろうな」
「貴様!!」
「止めろ!ドロス!」
「っ!」
「移動の条件はプライバシーを確保できること。それを約束したのは私だ。申し訳ない」
「申し訳ないじゃ済まないよ。
僕と遊ぶために連れて行くわけじゃないんでしょ。こんな些細なことで乱れてどうするのさ。
試して良かったよ。引き受けてから知ったんじゃ遅いからな」
「ドロスには罰を与える」
「そんな必要はない。僕はもう彼と共に過ごすことはない。隊長さんが仲良くしたらいい。じゃあ、あなた達はもうすぐだろうからお疲れ様」
自分の荷物を纏めて背負うと来た道をひとり戻ろうと歩み出した。
その前に回り込みライダーは跪いた。
「お願いだ、ノア」
「一度だけだよ。次は何をやられても帰るから」
「感謝する。
ノア。手合わせしてやってくれないか」
「加減を忘れそうだから止めておくよ。
もうひとつ約束してくれる?僕に害を加えよとしたら殺しても罪に問わないと」
「それは…」
「ハハッ、甘いよ隊長。だから統率が取れないんだよ。
ねぇ。今の会話の意味分かってる?
この程度で命令に反する意思を表に出す部下を育てておいてさ、僕の安全は保証したくないと言ったんだよ。
害を加えなければいいだけの話だよね。
僕は自分の命を守る権利がある。
我儘でも贅沢でも違法でも無いはずだ」
「ノアの言っていることは尤もだけど部下の命をかけさせる権限は私にはないんだ」
「結論は出てるんだよ。一緒には居られない。約束なんてなくても危害を加えるなら命をもらうけどね。
じゃあ、さようなら」
ノアはひとりで来た道を戻って行った。
ノアがゴミを出し終えると騎士8人がノアを取り囲んだ。
「はぁ~。潮時か」
ノアは大きな溜息をついた。
ライダーとアスカリッド以外の騎士達が剣を抜き、少しずつノアに近寄った。
「一度だけ警告する。誰か一人でも僕に斬りかかったら誰一人逃さないよ」
「自白ととっていいのかな」
「何が言いたい」
「我々の探している小隊を消したのはお前だな?」
「目撃者でもいたわけ?」
「足元の焦げ跡は死体を燃やしたのか」
「証拠も無しに僕に何するつもり?
犯人を挙げられないから僕を連れて行くの?
国王陛下に失笑されると思うよ」
「どうだろうな」
背後の一人がノアに近寄り剣を喉元に近付けた瞬間ライダーの静止命令がかかった。
「止めろ。退がれ」
背後の騎士がノアから距離を取った。
「改めて話がしたい。アスカリッドと私だけだ。頼む」
「隊を宿に戻せ。ここで聞こう」
ライダーは他の6名を宿屋に退がらせてノアと対峙した。
「ノア。君の恐れ知らずな余裕は腕力だけじゃない。かなりの強い魔法の使い手だからだね」
「どうだろう」
「私は誰かが魔法を発動しようとすると感知できるんだ。大小くらいは分かる。
君は部下が背後から接近し剣を近付けた時に魔法を使いかけた。
今まで感じ取ったことのない強さだった。
私の目的は調査とスカウトなんだ。
隊に入ってくれないか」
「断る」
「国王陛下に会って話を聞いて欲しい」
「犯人としてだろう」
「誓ってそうではない」
「あなたの誓いなど僕には何の意味もない。国王陛下の誓いであってもね」
「不敬だぞ!」
「アスタリッド隊長、止めろ」
「………」
「僕から言わせれば近衛騎士だからと何故特別視しなくてはならないんだ?近衛に入る奴は全員が聖人君子なのか?
あんたとあんたの家族の命を掛けるか?」
「助けて欲しい。君の力が必要だ」
「助ける理由がない」
「何を得るかは陛下と交渉してくれないか」
「結局連れて行くんだ」
「陛下を此処にお連れするわけにはいかないからな」
「13歳は間違いないのか」
「親は死んで独り身だ」
「宿屋との関係は」
「母の知人」
「急に辞めるとまずいのか」
「会わせるだけじゃないのは決定なんだ」
「……」
「大丈夫?ライダー隊長だっけ。
僕は国王陛下を亡き者に出来る力があるよ。
そんな者を引き合わせて責任とれるの?」
「きっとあいつらは君に手を出したのだろう。
君は無害な者は相手にしない」
「国王が害だと判断したら?」
「そんなに虐めないでくれよ」
「ハハッ、よく言うよ。最初の作戦が通じないから下手に出てるだけだろう。虐められてるなんて思ってもないくせに」
「お前、本当に13歳か?」
「嘘は言ってないよ。そう聞いているから」
「そう聞いている?」
「産まれた瞬間から歳を数えだす赤子なんていないでしょ」
「ノア、もし引き受けてくれるなら私の隊を希望してくれないか」
「近衛でしょ。無理だよ」
「無理?」
「何の経験もない平民の子供が近衛に入れると思ってるの?周りが文句言うでしょ」
「ノアの安全のためだ」
「はぁ~。危険があるなら断るだけだ。
国が抱える騎士は獣の集まりかなにかなのか。
いざという時は命をかけてもらうだけだ」
「ノア。私が君と共に戦いたい」
「他の騎士は足手纏いにならない?」
「統率は取れている」
「お守りは嫌だよ。隊を組ませてもらえるなら自由にさせてもらうよ」
「ノア……」
「何させようとしてるか分からないけど」
ライダーは宿屋の夫婦にノアをスカウトしに来たといい、金貨を数枚置いて行った。
道中もひとり部屋を希望し、テントもひとりで使うという。
4日目、不満を持つ隊員が不満を口にした。
「何様だよ」
「………じゃあ、帰るわ」
「ノア!」
「何が“私の隊に”だよ。面倒臭い。
統率取れてないじゃん。
僅か4日で口に出すなんて近衛騎士は軟弱だね。それか上官を舐めてるんだろうな」
「貴様!!」
「止めろ!ドロス!」
「っ!」
「移動の条件はプライバシーを確保できること。それを約束したのは私だ。申し訳ない」
「申し訳ないじゃ済まないよ。
僕と遊ぶために連れて行くわけじゃないんでしょ。こんな些細なことで乱れてどうするのさ。
試して良かったよ。引き受けてから知ったんじゃ遅いからな」
「ドロスには罰を与える」
「そんな必要はない。僕はもう彼と共に過ごすことはない。隊長さんが仲良くしたらいい。じゃあ、あなた達はもうすぐだろうからお疲れ様」
自分の荷物を纏めて背負うと来た道をひとり戻ろうと歩み出した。
その前に回り込みライダーは跪いた。
「お願いだ、ノア」
「一度だけだよ。次は何をやられても帰るから」
「感謝する。
ノア。手合わせしてやってくれないか」
「加減を忘れそうだから止めておくよ。
もうひとつ約束してくれる?僕に害を加えよとしたら殺しても罪に問わないと」
「それは…」
「ハハッ、甘いよ隊長。だから統率が取れないんだよ。
ねぇ。今の会話の意味分かってる?
この程度で命令に反する意思を表に出す部下を育てておいてさ、僕の安全は保証したくないと言ったんだよ。
害を加えなければいいだけの話だよね。
僕は自分の命を守る権利がある。
我儘でも贅沢でも違法でも無いはずだ」
「ノアの言っていることは尤もだけど部下の命をかけさせる権限は私にはないんだ」
「結論は出てるんだよ。一緒には居られない。約束なんてなくても危害を加えるなら命をもらうけどね。
じゃあ、さようなら」
ノアはひとりで来た道を戻って行った。
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