【完結】生まれ変わった男装美少女は命を奪った者達に復讐をする

ユユ

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炎の魔法使い

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「ライダー隊長、いいんですか」

「いいわけないだろう!!」

いつも冷静沈着なライダーが声を張り上げ怒鳴る姿を見るのは初めてのことで隊員は戸惑いを見せた。

「あんなガキ、連れて帰っても揉め事の元ですよ」

ドロスの言葉にライダーは怒気を強めた。

「お前達は私が無闇矢鱈にノアを連れて行こうとしていると思っているのか?

13歳の子供に何も感じずに頼み込んでいると思っているのか? 

私がどんな思いで跪いたと思っているんだ!」

「っ!!」

「ドロス、彼が言ったことは何ひとつ間違っていない。

彼には断る権利があるし隊員ではないから言うことを聞かなくてはいけない義務もない」

「小隊を消したのは彼だと思っておられるのでしょう!」

「彼は馬鹿じゃない。身に危険が降りかかったから対処しただけだ。

あんな子供を襲う奴らだ。仕返しのことを考えたら生かすのはリスクが高い。

両親が既に亡くなっているんだ。あの容姿で生き残るためには容赦などしては駄目なんだ」

「捕まえましょう」

アスタリッドの言葉にライダーは深い溜息をついた。

「アスタリッド隊長。今の台詞を実行してたら隊長の隊は全滅するぞ」

「ライダー隊長……」

「彼の言う通り、私が甘いからだな」

アスタリッドと隊員達はライダーに出来損ないと揶揄されたことに納得がいかなかった。

「じゃあ私達を捨てて追いかければいいじゃないですか」

ドロスの言葉に他の者達も無言の肯定を表した。ライダーはアスタリッドに向き直り腕章を渡した。

「アスタリッド隊長。今をもってこの隊の責任者は君だ。好きにしてくれ。
私は隊から外れ彼を追う。気を抜かずに城へ戻れ」

荷物を纏め馬に乗り出発しようとした時、ノアが去った方から馬が走ってきた。

「助けてくれ!商隊が襲われた!」

男は足と肩に矢が刺さっていた。

「少年がいなかったか!」

「目と鼻の先にいた!忠告したが徒歩だから捕まるだろう!」

徒歩だからそれ程離れていない。
ライダーは馬を走らせた。

少し走ると下り坂の下の方で既に商隊が倒されていた。二人の賊がノアを捕えようとしていた。

炎爆裂ファイアーブラスト

変声期を迎えていない子供の声でノアが唱えると十数名の賊を逃すことなく無数の爆発が起き炎が辺りを包み込んだ。

「ノア!!」

馬を木に繋ぎノアに駆け寄ろうとするも、アストリッドに羽交締めにされた。

「隊長!駄目です!死んでしまいます!!」

「ノアーっ!!」

爆発の中央にノアが居たのが見えていた。
炎に包まれたはずのノアを諦めきれずライダーがもがく。

「放せ!アストリッド!!」

「手遅れです!手遅れなんです!!」

他の隊達は馬が怯えて進めず、馬を宥めながら燃え盛る炎をみていた。

「何が起きているんだ……」

ライダーがもがくのを止めると炎の中から人影が見えた。その影は炎から出ると指を鳴らす。

パチン!

すると炎は一瞬で消え、地面に転がった無数の黒い塊から煙が立ち上がっていた。

「ノア!」

ライダーが駆け寄りノアの顔を両手で挟んだ。

「怪我をしていないか、火傷は!」

身体中を見て手を取り掌も甲も確認してまた顔を確認する。

「隊長、何ともないよ」

「本当だな!?」

「自分の魔法で傷付くわけがない」

「はぁ~っ 心配させるな」

そう言ってリュックを背負ったノアを抱き上げ馬に乗せ手綱を木から外し自身も跨った。

「ちょっと隊長!」

「落ちるぞ」

そう言って城へ向かい出した。アストリッドも他の隊員も無言で後に続いた。


「ノア。それでも炎の中にいないでくれ」

ノアが上を向くと真剣に心配するライダーの顔があった。
目が合った後、俯き呟いた。

「約束はしない。僕にとって炎の中が安全な場合もあるんだ」

「そうか……」

頭の上から聞こえた消えそうな声にノアは困惑していたが、さっきの叫びはしっかり聞こえていた。

「心配してくれてありがとう」

「駄目な隊長でごめんな」

ノアは身体をライダーに預けながら言った。

「着いたらすぐに食事にして」

「嫌いな物はあるか」

「特には無いけど辛い物は苦手だ」

「分かった」

「ケーキも」

「勿論だ」

「滞在中は鍵付きの部屋にして」

「対応させる」

「あ、お風呂付きの部屋にして」

「分かった」




休みながら城に向かったが馬での長旅は初めてだったノアは尻が痛かった。

「慣れる気がしないんだけど」

「筋肉をつけろ」

「クッションつけてよ」

「聞いたことないぞ」

「やっぱり宿にいるんだった」

「男だろう」

「痛いものは痛いの!」

ライダーはノアを宥めながらも確実に城を目指し、やっと目的の地に着いた。

ノアを応接間に待たせて団長室で報告をあげた。

「詳細な報告は後でしますから、今は連れて来た少年をもてなさなくてはなりません。
風呂のついた鍵のかかる部屋を用意してください。その前に食事をさせないと」

「面談が先だろう」

「難しい子なのです。何度も嫌がられ何とか連れてきたのです。彼をもてなさずに逃げられたら後悔しますよ。陛下からも咎めを受けるでしょう」

「本人は来たくなかったということか」

「はい。ですが絶対に必要な子なのです。
食べている間に陛下に説明に上がりますのでお願いします」

ノアに約束通りの待遇を与えている間にライダーは王宮騎士団長と共に国王に報告に行った。

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