【完結】生まれ変わった男装美少女は命を奪った者達に復讐をする

ユユ

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解れた心

婚約は有効

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【 マクセルの視点 】

五国統一後、エストフラムから戻ったノアは城出をしてしばらくグローリー邸に滞在していた。

そのノアが南の塔に戻ると言い出した。

そこにクリストファーが涙を浮かべた。

「寂しい」

「くっ…」

効果があった。

週三回南の塔で過ごすことで妥協した。


「クリストファー、どういうつもりだ」

「どうもなにも、父上はノアさんが好きなのでしょう?
油断していたら、すぐ捕られちゃいますよ。

私もノアさんが大好きです。
他の女性を後妻に迎えないでください」

「歳が近いが」

「義母とは呼びません。姉のような感じですからね」

クリストファーも成長したな。



しかし、ドミニクは相変わらずノアに付き纏ったし、ミシェル国王からは求婚の手紙が届く。

どうやってノアを手に入れるのか悩んでいた。

結局契約の三年が経とうとしていた。

「父上、ノアさんは旅に出るみたいです。
ファヴールとエストフラムに行くと言っていました。

ファヴールは美しい国王がいて、その人は求婚しているのですよね?
エストフラムの国王も独身でしたね?」

「……」

「うっかり婚姻契約書に署名してくれませんかね」

その言葉で閃いた。

送別会でノアを酔わせて署名させることにした。

酔うのは早かった。

「ノア、署名して」

「ん……」

「ほら、ここだよ、ここ」

ペンを握らせ署名させた。

陛下に見せると呆れた顔をされたが、

「(ノアが他国へ移住する可能性を防ぎたいのではありませんか)」

「!! 受理した」

陛下が署名してくれたので跪き指輪をはめた。

もう寝ていたが。



ロイクがノアを抱き上げて寝室へ運び、ガブリエルが薬を選んでいた。

宴会は一時間後に終わり、最後に残ってロイクを呼んだ。

「ロイク、辞表を出したそうだな」

「はい。俺はノアに騎士の忠誠を誓いましたから、ついていきます」

「グローリー家の騎士としてノアの側にいる気はないか?」

「侯爵家の?」

「グローリー家で雇ったグローリー夫人になるノエリアの専属騎士だ」

「いいのですか?」

「守りやすくなると思うしノアが遠慮しなくて済む。ロイクがフリーだとノアがロイクの将来を気にしてしまう」

「騎士らしくはないですよ」

「“勇者”だからか?」

「平民の孤児ですし」

「ノアの境遇も同じだろう。
支えてくれないか」

「かしこまりました」

「もしかしたら婚約したことを覚えていないかもしれないからよろしく頼む」

「分かりました」



旅立つ前にロイクが書いた手紙が届いた。

“微塵も覚えていませんでした。
行ってまいります”

ロイク、旅先でノアに酒を飲ませないでくれ。もう居ないので祈るしかない。



最初のファヴールからの手紙では、

“ミシェル国王が破棄しろと言い寄っています。酔った署名は無効だと泣いて説得しました。

帰ったら頑張ってください”

くっ……ミシェル国王は歳下だから泣き落としが簡単にできるのか。

次のエストフラムでは、

“同窓会です。
過去のことがあるので自制があります。
言い寄ることはないでしょう”

ロイクからの手紙にだいぶホッとしたが、帰ってから無効と言われかねないので外堀を固めることにした。

「陛下、城の小さな会場で婚約披露をさせてもらえませんか。
ミシェル国王陛下が婚約は無効だと吹き込んだようなので、言い出せない状況を作りたいと思います」

「任せておけ」




そして、国境を越えたと早馬が着き、大急ぎで指示を出した。

到着予定日に合わせて支度が始まる。

かなり大掛かりな支度に王都の飲食店も巻き込んだ。

数日後、予定通り王都入りした合図が届いた。

城門を通ったノアを乗せた馬車が通過すると割れんばかりの声援で溢れた。

五国統一の果たした炎の魔法使いと宰相の婚約に城の者達で庭園パーティを開くことにした。

大臣から下働きまでほとんどの者が外に出て声援を送った。

戸惑うノアの手を取って連れてきたのは国境で作戦を書いた紙を渡して知らせておいたロイクだ。

私にノアを引き渡すとノアの斜め後ろに立った。

私は跪き、ノアの手に口付けをした。

「今日は、マクセル・グローリーと、ノア改め、ノエリア・ヒートの婚約パーティだ」

国王陛下が告げると皆が拍手をした。

「婚姻は二カ月後。皆で祝おう!」

皆におめでとうと言われ、祝いの品を渡す者も少なくなく、ノアは頑張って笑顔を作った。


その夜はクリストファーとロイクと私でノアと南の塔に泊まった。

翌日、陛下にお礼の挨拶をしてグローリー邸に連れ帰った。


「奥様、おかえりなさいませ」

「お、奥様!?」

「お荷物は私共で運びます。
お疲れでしょう。すぐにお部屋にご案内いたします」

「え?」

前の部屋ではなく夫婦の部屋に連れて行かせた。

寝室を中央に、左右にそれぞれの部屋がある。

ただし、扉は無い。

「これ……夫婦の……」

「左様でございます。
もう夫婦と変わりはございません。

ある程度の物は旦那様がお選びになり買い揃えました。ノエリア様が戻られるのを心待ちにしておられました」

「マクセルが?」

「はい。家具の配置まで事細かに指示を出されました。ソファも、いくつも座っては不満を漏らし、やっと購入できました」

「あれ?ベッドは……」

「中央のベッドだけでいいと、それぞれの私室には置いておりません」

「じゃあ、」

「はい。毎晩共寝でございます」

「こ、今夜から?」

「はい。ベッドも特注品でございます」




メリンダの報告では、拒否感が出ていると言うことなので夕食で果実酒を飲ませた。

酔い潰れはしなかったが、リラックスしてウトウトしだした。

「父上、ノエリア様を連れて行ってください。フォークで顔を刺しそうです」

クリストファーがそう言うので、ノエリアを連れて行こうとしたらロイクが抱き上げ連れて行ってしまった。

少ししてロイクから報告を受けた。

「湯浴みは夕食前に済ませてあるので、歯磨きをしました。今、メイドが着替えさせています」

「ご苦労」





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