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ダニエル/苛立ち

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【 ダニエル・ フォリーの転覆】


私はいつも苛立ちに満ちていた。
何故、全く洗練されていないデブが私の婚約者なのだろうか。

12歳の時に婚約をしたが、その日の夜に高熱を出して二週間も寝込んだ。そして記憶がまるで無い。
ただ、二つ歳下の伯爵令嬢と婚約したから 他の異性との関わりは気を付けなさいと父上に忠告された。

私は公爵家に生まれた三人兄弟の長男だった。
次男のジョゼフは優秀だが、余程のことがない限り長男が爵位を継ぎ、次男以下は補佐にまわるなり婿入りする。

私は次期公爵として安泰だった。

なのに何故、伯爵家の娘など?
彼女の姉は王太子妃で確かに美女だが、コゼットは違う。
 
もっと美人や可愛い令嬢は沢山いるのにどうしてと言いたくなる。

強く思ったのはデビュータント。
私の時はコゼットが二つ歳下ということで 従姉に頼んだが、コゼットのデビュータントは既に成人している私がパートナーとしてエスコートした。

契約時ぶりに会うという彼女を見たとき、悪夢だと思った。醜い婚約者をエスコートする屈辱はトラウマのように私の心を蝕んだ。


屋敷で父上に婚約者を変えてくれと迫ったが、

『お前が“コゼットと婚約できなければ死んでやる” と首にナイフを突き付けて、無理矢理成した婚約だろう』

『へ?』

『渋るブラウニー伯爵夫妻を説得するのに苦労した』

は? あの醜さで私との婚約を渋った!?

『解消は』

『しない』


その後は荒れた。

女遊びに明け暮れた。

世の中にはコゼットより可愛い女も 美しい女も 華奢な女も 魅惑的な女もいるというのに何故…。

『結婚は墓場だという言葉を聞いたことがあるが、私の場合は地獄だよ。まるで抱く気がしない』

『白い結婚にすればいいじゃないか』

友人達が酒を飲みながら妙案を口にした。

『愛人を作るんだよ。
身分が良ければ第二夫人に。下級貴族や困窮した令嬢なら妾にすればいい。
公爵家なら夫人をもう一人娶れるだろう』

『正妻には家のことをやらせて愛人と楽しめばいい』

『ありがとう。少し希望が見えてきた』


こうして私は単なる女遊びではなく、愛人を探し始めた。そこで出会ったのはミリアだった。
飛び抜けた容姿ではないが可愛いし愛嬌があった。
体も普通だが、コゼットよりはいい。何よりドレスから見える胸の谷間に胸が高まった。

ブスのくせに可愛げが無くデブのコゼットとは大違いだった。


ミリアはトゥローペル男爵家の四人姉妹の長女だった。
身に付けている物からすると裕福ではない。
援助が必要なのかも知れない。

だが、褒め上手で甘え上手だったせいか、すっかりミリアに魅入られてしまった。

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