14 / 15
ダニエル/騙された!
しおりを挟む
【 ダニエルの視点 】
プラチナブロンドの艶やかな髪
アクアマリンの煌めく瞳
引き締まった体に豊かな胸
これがコゼット!?
確かに髪も瞳も姉の王太子妃殿下と色が同じだ。
声もコゼットだ。首元のホクロも。
父上の手紙の内容が本当だったのだと知ったダニエルは怒りが込み上げた。
「コゼット! お前!私を騙していたな!」
「騙す?」
「髪はカツラ!前髪を鬱陶しく伸ばして瞳を隠して!デブはどうした!」
「私の婚約者になんという無礼を!」
「は? 婚約者!? 浮気していたのか!」
「はぁ」
「最初からその姿でいれば!愛人など作らなかった!」
「ダニエル様!?」
「奥方が驚いているではありませんか。言葉を選んだらどうですか」
「何故 騙した!」
「は?
婚約してくれなきゃ死んでやると言って脅して、仕方なく承諾すると、髪を隠せ、瞳を隠せ、太れ、可愛いドレスを着るなと命じたのは貴方ですけど」
「私が!?」
父上の手紙は全部本当!? ペナルティも?
「フォリー公爵も聞いていらしたから確認なさってください」
「そんなっ」
「私は貴方の脅迫に負けて婚約して、毎日頑張って食べましたわ。なかなか太らずドレスの中に詰め物までして、態々地方からドレスを取り寄せてカツラも特注しましたのに、貴方は再会したデビュータントで私を侮辱しましたわ。
だから意地でもあの姿を続けましたの。
浮気の噂も沢山耳に入りましたから その内 婚約を止めたいと言い出すだろうと待ちましたわ。
高熱で忘れたのは可哀想だけど、だからといって貴方の言動は許されるものではありません」
「コゼット…やり直そう。
子爵夫人より公爵夫人の方がいいだろう?」
「貴方なんてお断りよ」
「寄りを戻せば父上もまた受け入れてくれる。
浮気のことは悪かった。二度としないから。
君だけを大事に愛すると約束するよ」
「結構です。婚姻1ヶ月前に貴族達の前で婚約破棄をした人なんてお断りですわ。
それに妻が妊娠してるのに呆れました」
「ううっ」
「夫人。泣くのはおよしなさい。
被害者のフリなどなさらないで。
貴女は他人の婚約者を奪った加害者じゃない。
婚約者を裏切って破棄して愛人を正妻にしようとするクズを選んだのは貴女よ。
そのクズがクズっぷりを発揮するのは想定内じゃない。
女遊びをする男は油断ならないのも変わらないわ。
そうですわよね?エリック様」
「そ、そうだな。私はコゼット一筋だ」
「トゥローペル夫妻。是非とも私に関わることなく生きてくださいね」
「コゼット…」
「コゼットと呼ばないでもらいたいですわ」
その後、妖精のように愛らしいコゼットは子爵とダンスをしていた。
私と踊ったときとは雲泥の差で、まさに妖精の舞と言いたくなるほどだった。
可愛くて純潔で胸もあると思って選んだミリアは偽物で、醜いデブだと思っていたコゼットはミリアなんか足元にも及ばない可愛く美しい顔と 白く柔らかく揺れる胸を持つ、純潔の乙女だった。
公爵位まで失った。
その夜は王都内の安宿に泊まった。
苛立ちをミリアで発散しようとしたが、ミリアが拒否した。
バシッ!
「キャアッ!」
バシッ!
「止めて!」
「妻の役目は夫の昂りを鎮めることだろう!
取り柄が無いのだからそれくらいしたらどうだ!」
バシッ! バシッ! バシッ! ……
疲れたので叩くのを止めて、ドレスの裾を捲り、コップの水をかけて挿入した。
「痛い…」
「我儘ばかり言っていないで夫を喜ばせたらどうだ!」
「痛い…」
そのまま怒りをぶつけるように乱暴に抱いて発散した。
こんなに濡れているクセに何が“痛い” だ。
あまりにも煩いのでランプを近付けるとミリアは出血し顔色は蒼白だった。
急いで医者を呼んでもらったが、
「流産です。妊娠中に無体なことを働けば子は流れますよ。特に初期は。安静にしなくてはいけない時期なのに正気ですか」
そのままミリアは入院した。
10日後、知らせを受けた男爵が駆けつけた。
「お嬢様はもう子は望めません」
医師が男爵に説明した。
その後は覚えていない。
気が付いたらベッドの上にいた。
医師の説明だと、あの後男爵は私を殴り続けたらしい。
数日後、男爵が病室に現れた。
「事情を話したら王命を取り下げてくださった。
ミリアが子を産んで血を繋ぐことができないからな。
そして離縁も受け入れられた」
「そんな、勝手に!」
「子を殺しておいて? 荷物は持ってきている。置いていくからトゥローペル家の人間に近付くな。
君はもう平民だ。治療費だけは払ったから、自由に生きていけ」
「男爵!」
私が退院する頃には、ミリアは死んでいた。
遺体を乗せて男爵は屋敷に戻ったそうだ。
公爵家に連絡をしてもらったが、他人だと言われたそうだ。行く宛がないと思っていたが兵士達が来て逮捕された。
罪状は妻と胎児を殺した罪だった。
行く宛もないので素直に認めると強制労働所に連れて行かれた。ひたすら石切をさせられた。
ある日、石切場から転落して頭を打った。
思い出した。小さな天使のようなコゼットを。
…いや、思い出した訳ではなく 妄想かもしれない。
そのまま意識が遠退いた。
プラチナブロンドの艶やかな髪
アクアマリンの煌めく瞳
引き締まった体に豊かな胸
これがコゼット!?
確かに髪も瞳も姉の王太子妃殿下と色が同じだ。
声もコゼットだ。首元のホクロも。
父上の手紙の内容が本当だったのだと知ったダニエルは怒りが込み上げた。
「コゼット! お前!私を騙していたな!」
「騙す?」
「髪はカツラ!前髪を鬱陶しく伸ばして瞳を隠して!デブはどうした!」
「私の婚約者になんという無礼を!」
「は? 婚約者!? 浮気していたのか!」
「はぁ」
「最初からその姿でいれば!愛人など作らなかった!」
「ダニエル様!?」
「奥方が驚いているではありませんか。言葉を選んだらどうですか」
「何故 騙した!」
「は?
婚約してくれなきゃ死んでやると言って脅して、仕方なく承諾すると、髪を隠せ、瞳を隠せ、太れ、可愛いドレスを着るなと命じたのは貴方ですけど」
「私が!?」
父上の手紙は全部本当!? ペナルティも?
「フォリー公爵も聞いていらしたから確認なさってください」
「そんなっ」
「私は貴方の脅迫に負けて婚約して、毎日頑張って食べましたわ。なかなか太らずドレスの中に詰め物までして、態々地方からドレスを取り寄せてカツラも特注しましたのに、貴方は再会したデビュータントで私を侮辱しましたわ。
だから意地でもあの姿を続けましたの。
浮気の噂も沢山耳に入りましたから その内 婚約を止めたいと言い出すだろうと待ちましたわ。
高熱で忘れたのは可哀想だけど、だからといって貴方の言動は許されるものではありません」
「コゼット…やり直そう。
子爵夫人より公爵夫人の方がいいだろう?」
「貴方なんてお断りよ」
「寄りを戻せば父上もまた受け入れてくれる。
浮気のことは悪かった。二度としないから。
君だけを大事に愛すると約束するよ」
「結構です。婚姻1ヶ月前に貴族達の前で婚約破棄をした人なんてお断りですわ。
それに妻が妊娠してるのに呆れました」
「ううっ」
「夫人。泣くのはおよしなさい。
被害者のフリなどなさらないで。
貴女は他人の婚約者を奪った加害者じゃない。
婚約者を裏切って破棄して愛人を正妻にしようとするクズを選んだのは貴女よ。
そのクズがクズっぷりを発揮するのは想定内じゃない。
女遊びをする男は油断ならないのも変わらないわ。
そうですわよね?エリック様」
「そ、そうだな。私はコゼット一筋だ」
「トゥローペル夫妻。是非とも私に関わることなく生きてくださいね」
「コゼット…」
「コゼットと呼ばないでもらいたいですわ」
その後、妖精のように愛らしいコゼットは子爵とダンスをしていた。
私と踊ったときとは雲泥の差で、まさに妖精の舞と言いたくなるほどだった。
可愛くて純潔で胸もあると思って選んだミリアは偽物で、醜いデブだと思っていたコゼットはミリアなんか足元にも及ばない可愛く美しい顔と 白く柔らかく揺れる胸を持つ、純潔の乙女だった。
公爵位まで失った。
その夜は王都内の安宿に泊まった。
苛立ちをミリアで発散しようとしたが、ミリアが拒否した。
バシッ!
「キャアッ!」
バシッ!
「止めて!」
「妻の役目は夫の昂りを鎮めることだろう!
取り柄が無いのだからそれくらいしたらどうだ!」
バシッ! バシッ! バシッ! ……
疲れたので叩くのを止めて、ドレスの裾を捲り、コップの水をかけて挿入した。
「痛い…」
「我儘ばかり言っていないで夫を喜ばせたらどうだ!」
「痛い…」
そのまま怒りをぶつけるように乱暴に抱いて発散した。
こんなに濡れているクセに何が“痛い” だ。
あまりにも煩いのでランプを近付けるとミリアは出血し顔色は蒼白だった。
急いで医者を呼んでもらったが、
「流産です。妊娠中に無体なことを働けば子は流れますよ。特に初期は。安静にしなくてはいけない時期なのに正気ですか」
そのままミリアは入院した。
10日後、知らせを受けた男爵が駆けつけた。
「お嬢様はもう子は望めません」
医師が男爵に説明した。
その後は覚えていない。
気が付いたらベッドの上にいた。
医師の説明だと、あの後男爵は私を殴り続けたらしい。
数日後、男爵が病室に現れた。
「事情を話したら王命を取り下げてくださった。
ミリアが子を産んで血を繋ぐことができないからな。
そして離縁も受け入れられた」
「そんな、勝手に!」
「子を殺しておいて? 荷物は持ってきている。置いていくからトゥローペル家の人間に近付くな。
君はもう平民だ。治療費だけは払ったから、自由に生きていけ」
「男爵!」
私が退院する頃には、ミリアは死んでいた。
遺体を乗せて男爵は屋敷に戻ったそうだ。
公爵家に連絡をしてもらったが、他人だと言われたそうだ。行く宛がないと思っていたが兵士達が来て逮捕された。
罪状は妻と胎児を殺した罪だった。
行く宛もないので素直に認めると強制労働所に連れて行かれた。ひたすら石切をさせられた。
ある日、石切場から転落して頭を打った。
思い出した。小さな天使のようなコゼットを。
…いや、思い出した訳ではなく 妄想かもしれない。
そのまま意識が遠退いた。
885
あなたにおすすめの小説
わざわざパーティで婚約破棄していただかなくても大丈夫ですよ。私もそのつもりでしたから。
しあ
恋愛
私の婚約者がパーティーで別の女性をパートナーに連れてきて、突然婚約破棄を宣言をし始めた。
わざわざここで始めなくてもいいものを…ですが、私も色々と用意してましたので、少しお話をして、私と魔道具研究所で共同開発を行った映像記録魔道具を見ていただくことにしました。
あら?映像をご覧になってから顔色が悪いですが、大丈夫でしょうか?
もし大丈夫ではなくても止める気はありませんけどね?
復縁は絶対に受け入れません ~婚約破棄された有能令嬢は、幸せな日々を満喫しています~
水空 葵
恋愛
伯爵令嬢のクラリスは、婚約者のネイサンを支えるため、幼い頃から血の滲むような努力を重ねてきた。社交はもちろん、本来ならしなくても良い執務の補佐まで。
ネイサンは跡継ぎとして期待されているが、そこには必ずと言っていいほどクラリスの尽力があった。
しかし、クラリスはネイサンから婚約破棄を告げられてしまう。
彼の隣には妹エリノアが寄り添っていて、潔く離縁した方が良いと思える状況だった。
「俺は真実の愛を見つけた。だから邪魔しないで欲しい」
「分かりました。二度と貴方には関わりません」
何もかもを諦めて自由になったクラリスは、その時間を満喫することにする。
そんな中、彼女を見つめる者が居て――
◇5/2 HOTランキング1位になりました。お読みいただきありがとうございます。
※他サイトでも連載しています
【完結】真面目だけが取り柄の地味で従順な女はもうやめますね
祈璃
恋愛
「結婚相手としては、ああいうのがいいんだよ。真面目だけが取り柄の、地味で従順な女が」
婚約者のエイデンが自分の陰口を言っているのを偶然聞いてしまったサンドラ。
ショックを受けたサンドラが中庭で泣いていると、そこに公爵令嬢であるマチルダが偶然やってくる。
その後、マチルダの助けと従兄弟のユーリスの後押しを受けたサンドラは、新しい自分へと生まれ変わることを決意した。
「あなたの結婚相手に相応しくなくなってごめんなさいね。申し訳ないから、あなたの望み通り婚約は解消してあげるわ」
*****
全18話。
過剰なざまぁはありません。
婚約破棄で見限られたもの
志位斗 茂家波
恋愛
‥‥‥ミアス・フォン・レーラ侯爵令嬢は、パスタリアン王国の王子から婚約破棄を言い渡され、ありもしない冤罪を言われ、彼女は国外へ追放されてしまう。
すでにその国を見限っていた彼女は、これ幸いとばかりに別の国でやりたかったことを始めるのだが‥‥‥
よくある婚約破棄ざまぁもの?思い付きと勢いだけでなぜか出来上がってしまった。
穏便に婚約解消する予定がざまぁすることになりました
よーこ
恋愛
ずっと好きだった婚約者が、他の人に恋していることに気付いたから、悲しくて辛いけれども婚約解消をすることを決意し、その提案を婚約者に伝えた。
そうしたら、婚約解消するつもりはないって言うんです。
わたくしとは政略結婚をして、恋する人は愛人にして囲うとか、悪びれることなく言うんです。
ちょっと酷くありません?
当然、ざまぁすることになりますわね!
やめてくれないか?ですって?それは私のセリフです。
あおくん
恋愛
公爵令嬢のエリザベートはとても優秀な女性だった。
そして彼女の婚約者も真面目な性格の王子だった。だけど王子の初めての恋に2人の関係は崩れ去る。
貴族意識高めの主人公による、詰問ストーリーです。
設定に関しては、ゆるゆる設定でふわっと進みます。
【完結】婚約破棄の代償は
かずきりり
恋愛
学園の卒業パーティにて王太子に婚約破棄を告げられる侯爵令嬢のマーガレット。
王太子殿下が大事にしている男爵令嬢をいじめたという冤罪にて追放されようとするが、それだけは断固としてお断りいたします。
だって私、別の目的があって、それを餌に王太子の婚約者になっただけですから。
ーーーーーー
初投稿です。
よろしくお願いします!
※こちらの作品はカクヨムにも掲載しています
身勝手な婚約者のために頑張ることはやめました!
風見ゆうみ
恋愛
ロイロン王国の第二王女だった私、セリスティーナが政略結婚することになったのはワガママな第二王子。
彼には前々から愛する人、フェイアンナ様がいて、仕事もせずに彼女と遊んでばかり。
あまりの酷さに怒りをぶつけた次の日のパーティーで、私は彼とフェイアンナ様に殺された……はずなのに、パーティー当日の朝に戻っていました。
政略結婚ではあるけれど、立場は私の国のほうが立場は強いので、お父様とお母様はいつでも戻って来て良いと言ってくれていました。
どうして、あんな人のために私が死ななくちゃならないの?
そう思った私は、王子を野放しにしている両陛下にパーティー会場で失礼な発言をしても良いという承諾を得てから聞いてみた。
「婚約破棄させていただこうと思います」
私の発言に、騒がしかったパーティー会場は一瞬にして静まり返った。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる