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結婚生活
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婚姻は質素にしたかったのに。
珍しくこの二人の意見が一致した。
「ダメよ コゼット。地味なんて」
「地味じゃなくて質素です、お姉様」
「駄目だ。派手にする」
「エリック様、無駄遣いですわ」
もう私の声は届かない。
二人で何が付け足せるか悩んでいる。
悩むくらい豪華な式にしないで欲しい。
「ハハッ 大変だなコゼット」
「なんとかしてください 王太子殿下」
「姉孝行だと思って言う通りにしてやってくれ」
「私の味方は、お父様とお義父様しかいないのですね」
だから、子爵家に行って、
「お義父様ぁ~」
ソファに座るお義父様の膝に縋り付き、嘆いた。
実家でもやった。
見事に式の規模を抑えた。
全てが終わり子爵家で湯浴みを済ますと眠くなった。
グウウ。
朝起きると、いかにも寝不足ですという顔をしたエリック様が寝そべって私を見つめていた。
「おはよう。拷問の妖精さん」
「あはっ」
「疲れてたのは知ってるけど、一生に一度の婚姻当日の初夜だよ?」
「私はですけどね」
「……」
「浮気は嫌ですよ」
「しないから相手して」
「ムードがない」
「ムードは夜明けとともに消えたよ」
「ごめんなさい」
チュッ
そのまま 初朝? が始まった。
結婚生活は順調だ。
私は殆どお義父様とお義母様と遊んでいる。
恨めしそうに私達を見るエリック様が愛おしい。
夜は夫婦の時間だといって私を連れて夫婦の間に籠る。
時々お姉様のところに遊びに行き、時々実家にも顔を出す。
楽しくて幸せだったのに。
「ご懐妊です」
吐き気や眩暈が辛い。
人によって程度が違うなんて不公平だと頬を膨らませているとお姉様も妊娠したらしい。
“同級生になるわね”
と手紙が届いた。
妊娠中の浮気を心配したけど、お義父様が目を光らせてくれた。
どうしても行かなければならないパーティはお義父様がエリック様と出席した。
仲良し親子と噂が立った。
そして時々抜き打ち調査をしたお父様から調査報告が届き、それをお義父様に渡す。
「お義父様のおかげです。いつもありがとうございます」
「こんなに可愛い娘ができたんだ。全力で守るからな」
お義父様は私にメロメロだ。
産まれたのはエリック様似の男児だった。一先ずホッとした。
お義母様は大喜びで赤ちゃんをかまっている。
私はお義父様がかまってくれる。
お姉様の産んだ子は王女だった。王太子殿下にそっくりらしい。
そのまた三年後、姉妹同時に懐妊が分かり、その後私は私に似た女児を産み、お姉様は自分に似た王子を産んだ。
下の子同士を会わせてみたら兄妹のようだった。
私は出産はストップしたけど、お姉様はもう一人を産もうとしている。
王子を二人欲しいらしい。
王族に嫁ぐのは大変だ。
一度だけ、エリック様の浮気疑惑が発生した。
コソコソと何度か外出していたから。
だから私も一人で夜会に行こうとしたら全力で止められた。
「違うんだ、コゼット」
「違わないです」
「そんな悩ましいドレスで夜会なんて駄目だ」
「ふん」
「分かった、分かったから」
連れてこられたのは王宮だった。
「まあ 子爵!浮気をしたのね!」
「妃殿下、コゼットが本気にしますから」
「怒りますよ」
「コゼットちゃん、怒らないで。
婚姻10年の記念に贈り物をしたくて、城で打ち合わせをしているのよ」
「本当ですか」
「本当よ」
「本当だよ、コゼット」
スケッチブックを持ってくるといくつか宝飾品のデザイン画が描いてあった。
「最終的にはこのデザインになって、次は石を探させているの。私の瞳とコゼットの瞳は瓜二つだから、瞳と比べてそっくりの石を探していたのよ。
王室御用達の宝石商を呼んでね」
「ごめんなさい」
「コソコソしていた私も悪かった。ごめんな」
「もしかして、誤解を解かなければコゼットは家出をしてここに来てくれたのかしら。早まったわ」
「妃殿下、止めてください」
その夜から私はエリック様にたっぷり可愛がられることになった。
「浮気する余裕があると思われるのがいけないのだろうね」
「え? ごめんなさい」
「愛られ足りないんだよね」
「充分 可愛がってもらっています」
「日中も頑張らないと」
「許してください」
翌朝、エリックの腕の中で目覚める。
つくづく思う。
婚約破棄されて良かった。
終
珍しくこの二人の意見が一致した。
「ダメよ コゼット。地味なんて」
「地味じゃなくて質素です、お姉様」
「駄目だ。派手にする」
「エリック様、無駄遣いですわ」
もう私の声は届かない。
二人で何が付け足せるか悩んでいる。
悩むくらい豪華な式にしないで欲しい。
「ハハッ 大変だなコゼット」
「なんとかしてください 王太子殿下」
「姉孝行だと思って言う通りにしてやってくれ」
「私の味方は、お父様とお義父様しかいないのですね」
だから、子爵家に行って、
「お義父様ぁ~」
ソファに座るお義父様の膝に縋り付き、嘆いた。
実家でもやった。
見事に式の規模を抑えた。
全てが終わり子爵家で湯浴みを済ますと眠くなった。
グウウ。
朝起きると、いかにも寝不足ですという顔をしたエリック様が寝そべって私を見つめていた。
「おはよう。拷問の妖精さん」
「あはっ」
「疲れてたのは知ってるけど、一生に一度の婚姻当日の初夜だよ?」
「私はですけどね」
「……」
「浮気は嫌ですよ」
「しないから相手して」
「ムードがない」
「ムードは夜明けとともに消えたよ」
「ごめんなさい」
チュッ
そのまま 初朝? が始まった。
結婚生活は順調だ。
私は殆どお義父様とお義母様と遊んでいる。
恨めしそうに私達を見るエリック様が愛おしい。
夜は夫婦の時間だといって私を連れて夫婦の間に籠る。
時々お姉様のところに遊びに行き、時々実家にも顔を出す。
楽しくて幸せだったのに。
「ご懐妊です」
吐き気や眩暈が辛い。
人によって程度が違うなんて不公平だと頬を膨らませているとお姉様も妊娠したらしい。
“同級生になるわね”
と手紙が届いた。
妊娠中の浮気を心配したけど、お義父様が目を光らせてくれた。
どうしても行かなければならないパーティはお義父様がエリック様と出席した。
仲良し親子と噂が立った。
そして時々抜き打ち調査をしたお父様から調査報告が届き、それをお義父様に渡す。
「お義父様のおかげです。いつもありがとうございます」
「こんなに可愛い娘ができたんだ。全力で守るからな」
お義父様は私にメロメロだ。
産まれたのはエリック様似の男児だった。一先ずホッとした。
お義母様は大喜びで赤ちゃんをかまっている。
私はお義父様がかまってくれる。
お姉様の産んだ子は王女だった。王太子殿下にそっくりらしい。
そのまた三年後、姉妹同時に懐妊が分かり、その後私は私に似た女児を産み、お姉様は自分に似た王子を産んだ。
下の子同士を会わせてみたら兄妹のようだった。
私は出産はストップしたけど、お姉様はもう一人を産もうとしている。
王子を二人欲しいらしい。
王族に嫁ぐのは大変だ。
一度だけ、エリック様の浮気疑惑が発生した。
コソコソと何度か外出していたから。
だから私も一人で夜会に行こうとしたら全力で止められた。
「違うんだ、コゼット」
「違わないです」
「そんな悩ましいドレスで夜会なんて駄目だ」
「ふん」
「分かった、分かったから」
連れてこられたのは王宮だった。
「まあ 子爵!浮気をしたのね!」
「妃殿下、コゼットが本気にしますから」
「怒りますよ」
「コゼットちゃん、怒らないで。
婚姻10年の記念に贈り物をしたくて、城で打ち合わせをしているのよ」
「本当ですか」
「本当よ」
「本当だよ、コゼット」
スケッチブックを持ってくるといくつか宝飾品のデザイン画が描いてあった。
「最終的にはこのデザインになって、次は石を探させているの。私の瞳とコゼットの瞳は瓜二つだから、瞳と比べてそっくりの石を探していたのよ。
王室御用達の宝石商を呼んでね」
「ごめんなさい」
「コソコソしていた私も悪かった。ごめんな」
「もしかして、誤解を解かなければコゼットは家出をしてここに来てくれたのかしら。早まったわ」
「妃殿下、止めてください」
その夜から私はエリック様にたっぷり可愛がられることになった。
「浮気する余裕があると思われるのがいけないのだろうね」
「え? ごめんなさい」
「愛られ足りないんだよね」
「充分 可愛がってもらっています」
「日中も頑張らないと」
「許してください」
翌朝、エリックの腕の中で目覚める。
つくづく思う。
婚約破棄されて良かった。
終
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