【完結】貴方のために涙は流しません

ユユ

文字の大きさ
13 / 72

日曜日のノッティング邸

しおりを挟む
ああ、来てしまった。
でも来ないと押しかけてきそうだからな~。
ローリーは笑顔でガーネット家に行ってしまった。

「お待たせ」

「お招きありがとうございます」

「ありがたそうではない顔ね」

「緊張しているだけですわ」

「同じ侯爵家じゃないの」

「半分以上崖に身を乗り出している我が家とノッティング家は同じではございません」

「ハハッ、なるほど。エリアーナが気にいる訳だ」

部屋に入って来たのは…誰?
膝を折ってカーテシーをして待つ。

「これは失礼。私はエリアーナの夫でノッティング家の嫡男、ジェイドと申します。
妻が無理矢理お誘いしたようでご迷惑をお掛けしました」

「酷いわ、ジェイド」

あれ? 顔を背けたけどモジモジしてる。
もしかしてエリアーナ様って…

「無理矢理だなんて。
奥様が、旦那様の事が愛し過ぎて胸が張り裂けそうだから お見舞いに来て欲しいと仰いましたので遠慮なく伺いました。確かに看病が必要ですね」

「ちょっ、ちょっと!私はそんなことっ」

ふふっ、顔が真っ赤。

「ああ。確かに看病が必要だ。アリスでいいかな?
日中はアリスが看病をしてくれ。夜は私が看病をしよう」

「ばっ、馬鹿言わないで!」

「お任せください」

「じゃあ、私は席を外すよ。
エリアーナ、爪は引っ込めるんだよ、可愛私の子猫 チュッ」

「⚪︎△×◻︎~!!」

あ~全身真っ赤だわ。


その後、正気を取り戻したエリアーナ様が仁王立ちで私を叱りつけた後、エリアーナ様のドレスの断捨離を手伝い、昼食になった。

そこには侯爵夫妻とジェイド様が同席していた。

侯「エリアーナに友人が…」

夫人「生きているうちに出会えて良かったわ」

ジェ「もっと早く出会っていたら良かったのに」

エ「アリスは私のものですわ」

ジェ「とらないから牙を剥かないでくれ」

エ「……」

夫人「次男のブレイルも紹介したかったのだけど婚約者のお屋敷に行っているのよ」

私「私はエリアーナ様のものですから、ご子息の紹介は結構ですわ。是非私を独り占めしてくださいね、エリアーナ様」

エ「っ! も、勿論よ。会わせないわ」 ポポっ

ふふっ。頬がピンクに染まったわ。

私「約束ですよ」 ニコニコッ

エ「分かったから。ほら、こっちも食べなさい」 真っ赤

他「………」

ジェ「今日の看病はなんだい?」

エ「ドレスのデザインをしてもらおうと」

私「私がですか?」

エ「ア、アリスにデザインして…欲しい…」

私「ウフフっ、頑張りますね」 つんつん

エ「っ!」 真っ赤

ジェ「(まさかライバルが令嬢とは)」

夫人「(すごい子を見つけて来たわね)」

侯「(何でブレイルと会いたくないんだ?)」



昼食後、デザイナーが到着して完成したデザイン画を見せてもらった。

「完璧です。これで作ってください。来週の火曜日はお時間ありますか?」

「はい」

「妹のドレスを作って貰いたいのでお店に伺います」

「お待ちしております」

「妹がいるの?」

「後妻の子で同級生になる予定です」

「まあ。酷いわね」

「もう追い出して領地に送りつけたので大丈夫です」

「え?誰を?」

「父と後妻です」

「そ、そうなのね。妹さんは?」

「ダメ子狐を忠犬にしようとしているところです。
単純なので後妻と離して躾ければマシになると思います。昨日は王子妃教育で泣いていましたわ」

「あ~、第二王子の!」

「そうです」

「ダメ子狐」

「“猫”はジェイド様に取られてしまったので」

「っ!」 真っ赤

「さあ、次はエリアーナ様のドレスですね」

エリアーナ様とメイドだけ残ってもらい、いくつかイメージ画を描いてみた。

「なんかシンプルね」

「シャンデリアの下で美しく煌めきますから大丈夫です。作る方は大変ですけど」

「頑張ります」

「これは背中が空きすぎじゃない?」

「これもレースのキャミソールでカバーします。

首の結び目を解くと、ウエストまで布が落ちます」

「丸見えじゃないの!」

「ドレスから出ないように一回り小さめにレースのキャミソールを着るので大事です。これもホルターネックです。
後ろで結んだ腰のリボンを解くと、ドレスはストンと足元へ落ちます」

「痴女じゃないの!」

「これはジェイド様とのふたりっきりの夜に着るのです。殿方が二ヶ所結び目を解くだけ。グフっ」

「本当に15歳!?」真っ赤

「間違いありません。
さて、髪を結ってメイクをしましょう。
髪はゆるふわに巻いてもいいですね」

一部を二つ結びにして、小ぶりの髪留めを付けた。

「これ、若い子向けじゃ」

「エリアーナ様は十分若いです。19歳なんてまだまだ娘ですわ」

ちょっとキツめに見える目元を垂れ目メイクにして、持って来た柔らかい色味の口紅や頬紅をつけた。

「目を開けてください」

「!!」

「エリアーナ様、ドレスを着替えましょう」

店で選んだ手直し前のドレスを着させた。少し緩いけどイメージは掴めるはず。

姿見で確認するとエリアーナ様が自分の頬に触れてつぶやいた。

「別人だわ」

「別人じゃありませんよ。これもエリアーナ様ですわ。
すみません、ジェイド様を呼んでくださるかしら」

「かしこまりました」

「な、何で呼ぶのよ」

「エリアーナ様が気にする視線はジェイド様おひとりです。ならばこの先の方向性を決めるためにも今見てもらわねばなりません。
好みでなければ意味がありませんわ」

「確かに」

「その間に、後から応急処置をしましょう」

余る布をクリップで止めた。

コンコンコンコン

「お連れしました」

「入ってちょうだい」

ガチャッ

「っ!!」

「……」

「エ、エリアーナ!?」

「…はい」

「ちょっとおいで」

「あ、ちょっと、」

後ろにクリップを付けたまま隣室に篭った二人を待つこと5分。

「アリス、君にエリアーナを任せた」

「え? あ、はい」

「……お姉様と呼びなさい」

「は? あ、はい」

エリアーナ様から移った口紅を付けたジェイド様は部屋を去り、エリアーナ様は目を潤ませて口紅が滲んでいた。

デザイナーと顔を見合わせたあと、

「ジェイド様はお気に召されたということでよろしいのですよね」

「そ、そうね」

「では、使い分けましょう。今まで通りの高貴な感じと、花の妖精のようなエリアーナ様と二本立てでいきましょう」

「言い過ぎよ。それに“お姉様”でしょう」

「言い過ぎではありません。羨ましい美しさですわ、お姉様」

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

奪う人たちは放っておいて私はお菓子を焼きます

タマ マコト
ファンタジー
伯爵家の次女クラリス・フォン・ブランディエは、姉ヴィオレッタと常に比較され、「控えめでいなさい」と言われ続けて育った。やがて姉の縁談を機に、母ベアトリスの価値観の中では自分が永遠に“引き立て役”でしかないと悟ったクラリスは、父が遺した領都の家を頼りに自ら家を出る。 領都の端でひとり焼き菓子を焼き始めた彼女は、午後の光が差す小さな店『午後の窓』を開く。そこへ、紅茶の香りに異様に敏感な謎の青年が現れる。名も素性も明かさぬまま、ただ菓子の味を静かに言い当てる彼との出会いが、クラリスの新しい人生をゆっくりと動かし始める。 奪い合う世界から離れ、比較されない場所で生きると決めた少女の、静かな再出発の物語。

あなたを愛する心は珠の中

れもんぴーる
恋愛
侯爵令嬢のアリエルは仲の良い婚約者セドリックと、両親と幸せに暮らしていたが、父の事故死をきっかけに次々と不幸に見舞われる。 母は行方不明、侯爵家は叔父が継承し、セドリックまで留学生と仲良くし、学院の中でも四面楚歌。 アリエルの味方は侍従兼護衛のクロウだけになってしまった。 傷ついた心を癒すために、神秘の国ドラゴナ神国に行くが、そこでアリエルはシャルルという王族に出会い、衝撃の事実を知る。 ドラゴナ神国王家の一族と判明したアリエルだったが、ある事件がきっかけでアリエルのセドリックを想う気持ちは、珠の中に封じ込められた。 記憶を失ったアリエルに縋りつくセドリックだが、アリエルは婚約解消を望む。 アリエルを襲った様々な不幸は偶然なのか?アリエルを大切に思うシャルルとクロウが動き出す。 アリエルは珠に封じられた恋心を忘れたまま新しい恋に向かうのか。それとも恋心を取り戻すのか。 *なろう様、カクヨム様にも投稿を予定しております

婚約破棄されたその後は、何も起きない日々でした

ふわふわ
恋愛
婚約破棄―― それは、多くの令嬢にとって人生を揺るがす一大事件。 けれど彼女は、泣き叫ぶことも、復讐に走ることもなかった。 「……では、私は日常に戻ります」 派手なざまぁも、劇的な逆転劇もない。 彼女が選んだのは、線を引き、基準を守り、同じ判断を繰り返すこと。 王宮では改革が進み、領地では生活が整えられていく。 誰かが声高に称えられることもなく、 誰かが悪役として裁かれることもない。 それでも―― 混乱は起きず、争いは減り、 人々は「明日も今日と同じである」ことを疑わなくなっていく。 選ばない勇気。 変えない決断。 名を残さず、英雄にならない覚悟。 これは、 婚約破棄をきっかけに 静かに日常を守り続けた一人の令嬢と、 その周囲が“当たり前”を取り戻していく物語。 派手ではない。 けれど、確かに強い。 ――それでも、日常は続く。

あなただけが私を信じてくれたから

樹里
恋愛
王太子殿下の婚約者であるアリシア・トラヴィス侯爵令嬢は、茶会において王女殺害を企てたとして冤罪で投獄される。それは王太子殿下と恋仲であるアリシアの妹が彼女を排除するために計画した犯行だと思われた。 一方、自分を信じてくれるシメオン・バーナード卿の調査の甲斐もなく、アリシアは結局そのまま断罪されてしまう。 しかし彼女が次に目を覚ますと、茶会の日に戻っていた。その日を境に、冤罪をかけられ、断罪されるたびに茶会前に回帰するようになってしまった。 処刑を免れようとそのたびに違った行動を起こしてきたアリシアが、最後に下した決断は。

次代の希望 愛されなかった王太子妃の愛

Rj
恋愛
王子様と出会い結婚したグレイス侯爵令嬢はおとぎ話のように「幸せにくらしましたとさ」という結末を迎えられなかった。愛し合っていると思っていたアーサー王太子から結婚式の二日前に愛していないといわれ、表向きは仲睦まじい王太子夫妻だったがアーサーにはグレイス以外に愛する人がいた。次代の希望とよばれた王太子妃の物語。 全十二話。(全十一話で投稿したものに一話加えました。2/6変更)

『外見しか見なかったあなたへ。私はもう、選ぶ側です』

鷹 綾
恋愛
「お前のようなガキは嫌いだ」 幼く見える容姿を理由に、婚約者ライオネルから一方的に婚約を破棄された 公爵令嬢シルフィーネ・エルフィンベルク。 その夜、嫉妬に狂った伯爵令嬢に突き落とされ、 彼女は一年もの間、意識不明の重体に陥る――。 目を覚ました彼女は、大人びた美貌を手に入れていた。 だが、中身は何ひとつ変わっていない。 にもかかわらず、 かつて彼女を「幼すぎる」と切り捨てた元婚約者は態度を一変させ、 「やり直したい」とすり寄ってくる。 「見かけが変わっても、中身は同じです。 それでもあなたは、私の外見しか見ていなかったのですね?」 静かにそう告げ、シルフィーネは過去を見限る。 やがて彼女に興味を示したのは、 隣国ノルディアの王太子エドワルド。 彼が見ていたのは、美貌ではなく―― 対話し、考え、異論を述べる彼女の“在り方”だった。 これは、 外見で価値を決められた令嬢が、 「選ばれる人生」をやめ、 自分の意思で未来を選び直す物語。 静かなざまぁと、 対等な関係から始まる大人の恋。 そして―― 自分の人生を、自分の言葉で生きるための物語。 ---

見捨てられた逆行令嬢は幸せを掴みたい

水空 葵
恋愛
 一生大切にすると、次期伯爵のオズワルド様に誓われたはずだった。  それなのに、私が懐妊してからの彼は愛人のリリア様だけを守っている。  リリア様にプレゼントをする余裕はあっても、私は食事さえ満足に食べられない。  そんな状況で弱っていた私は、出産に耐えられなくて死んだ……みたい。  でも、次に目を覚ました時。  どういうわけか結婚する前に巻き戻っていた。    二度目の人生。  今度は苦しんで死にたくないから、オズワルド様との婚約は解消することに決めた。それと、彼には私の苦しみをプレゼントすることにしました。  一度婚約破棄したら良縁なんて望めないから、一人で生きていくことに決めているから、醜聞なんて気にしない。  そう決めて行動したせいで良くない噂が流れたのに、どうして次期侯爵様からの縁談が届いたのでしょうか? ※カクヨム様と小説家になろう様でも連載中・連載予定です。  7/23 女性向けHOTランキング1位になりました。ありがとうございますm(__)m

拝啓、婚約者様。婚約破棄していただきありがとうございます〜破棄を破棄?ご冗談は顔だけにしてください〜

みおな
恋愛
 子爵令嬢のミリム・アデラインは、ある日婚約者の侯爵令息のランドル・デルモンドから婚約破棄をされた。  この婚約の意味も理解せずに、地味で陰気で身分も低いミリムを馬鹿にする婚約者にうんざりしていたミリムは、大喜びで婚約破棄を受け入れる。

処理中です...