51 / 72
異国からの訪問者
しおりを挟む
2年生の最終日、3年生のクラス発表が行われた。
私もスーザンも殿下達もSクラス。
オルデンはひとつ上がってGクラスだった。
「アリス」
「行こう スーザン。
リヴウェル様、明日伺いますとシルビア様にお伝えください。
マチアス様、ブレイド様、明後日に」
修了式を終えて私とスーザンはリオネル殿下とシルヴェストル様の馬車に乗り、王城を目指す。
どうやら他国の王女様が滞在なさるようで、スーザンを紹介するのだとか。
用意されたドレスに着替えて謁見の間に向かい待つと美男美女が現れた。
陛下「コルシック王国 グラシアン第二王子殿下とトリシア王女殿下にご挨拶を」
トリシア!? マチアス様の婚約者じゃない!
兄妹揃って人外の美しさね…
シ「ようこそガルデニア王国へ。
第一王子シリルと申します」
リ「第二王子リオネルと申します」
シ「第三王子シルヴェストルと申します」
リ「彼女は私の婚約者です」
ス「ジオニトロ侯爵家の次女スーザンと申します」
陛下「シリルの婚約者は隣国の王女なので紹介できない。シルヴェストルにはまだ婚約者はいない。
グラシアン王子殿下は妃を迎えられたとか」
グ「はい。昨年婚姻いたしました」
王妃「おめでとうございます」
グ「そちらのレディは?」
王妃「彼女はスーザンの姉のアリスですわ。今日は不慣れなスーザンの侍女役をお願いしましたの」
私「アリス・ジオニトロと申します」
グ「初めまして、ジオニトロ嬢。2人おられるのでアリス嬢とお呼びします。アリス嬢は婚約済みでしょうか」
側《殿下》
ト《お兄様》
グラシアン王子殿下の側近と王女殿下が殿下を止めたが、殿下は軽く流した。
グ《いいじゃないか》
私《お飾りにもなれない婚約者がおります》
グ《……》
殿下も王女殿下も側近も凝視した。
私《コルシック王国の母国語は少しだけ…》
グ《そうか。素敵なレディにもう一度挨拶をしたい》
グラシアン王子殿下は私の前に立つと片方の膝を付いて私の手を取り、じっと見つめながら手の甲にキスをした。
グ《滞在中は妹君と一緒に持て成してもらえると嬉しいのだが》
私《光栄ですが、陛下の命に従います》
グ《……》
シ「どうかアリスの手をお放しください」
グ「これは失礼」
別室に移るというのでもう役目は終わったかなと思ったのに、陛下から同席するよう求められた。メイド達と端に立っているとグラシアン王子殿下が立ち上がり、私の手を取って隣に座らせた。
私、グラシアン殿下、トリシア王女殿下の順で3人掛けのソファに座ることになり居心地が悪い。
何故かチラチラとグラシアン殿下が私を見る。
シルヴェストル殿下達3人も。スーザンに関しては困惑が顔に出ている。
歓談後は晩餐会を開くことになっていて、私は出席の予定ではなかった。心細いスーザンのために挨拶だけ同席する予定だった。だけどグラシアン王子殿下は“母国語を話せる稀有なアリス嬢に居てもらいたい”と陛下に願い出てしまった。
控え室では、
「お姉様ったら。何で分からないフリができなかったんですか。明らかにグラシアン殿下が興味を示されているではありませんか。お姉様が他国に嫁ぐなんて絶対反対ですから」
「馬鹿ね。他国への滞在中に玩具を見つけただけよ。直ぐに飽きるわ。それに昨年婚姻したばかりだって言っていたじゃない。それに私にはクズがいるし」
「でも子爵家ですよ。小国とはいえ王族から求められたら解消して嫁がせることもあるんです」
「まあ、あのクズの妻になるくらいならコルシックに行っても構わないけど、見たでしょう、あの兄妹殿下の美貌。私なんか鹿のフン程度にしか映っていないから大丈夫」
「鹿の……?」
「国民全体が美男美女なのかしら。それとも王族だけ? 私が嫁いだら平凡顔過ぎて悪目立ちしちゃうわね」
「お姉様はご自分の価値を知らなさ過ぎます」
「スーザン。身内贔屓しても駄目よ。姉様は踊らされないから」
「はぁ」
時間になるとリオネル殿下とシルヴェストル様が迎えに来てくれた。
晩餐の貴賓用食堂に入ると、宰相とバンフィールド一家とエリアーナ夫妻もいた。
「アリス!?」
「マチアス様……ああ、婚約者がいらしていますからね。良かったですね」
「……」
「エリアーナ様。今夜も愛らしくて素敵ですわ」
「は、恥ずかしいから止めなさい」
そう言いながら私を抱きしめ、ジェイド様は何故か私の頬を摘みながら呟いた。
「(うちの方がいいのに)」
「 ?? 」
私もスーザンも殿下達もSクラス。
オルデンはひとつ上がってGクラスだった。
「アリス」
「行こう スーザン。
リヴウェル様、明日伺いますとシルビア様にお伝えください。
マチアス様、ブレイド様、明後日に」
修了式を終えて私とスーザンはリオネル殿下とシルヴェストル様の馬車に乗り、王城を目指す。
どうやら他国の王女様が滞在なさるようで、スーザンを紹介するのだとか。
用意されたドレスに着替えて謁見の間に向かい待つと美男美女が現れた。
陛下「コルシック王国 グラシアン第二王子殿下とトリシア王女殿下にご挨拶を」
トリシア!? マチアス様の婚約者じゃない!
兄妹揃って人外の美しさね…
シ「ようこそガルデニア王国へ。
第一王子シリルと申します」
リ「第二王子リオネルと申します」
シ「第三王子シルヴェストルと申します」
リ「彼女は私の婚約者です」
ス「ジオニトロ侯爵家の次女スーザンと申します」
陛下「シリルの婚約者は隣国の王女なので紹介できない。シルヴェストルにはまだ婚約者はいない。
グラシアン王子殿下は妃を迎えられたとか」
グ「はい。昨年婚姻いたしました」
王妃「おめでとうございます」
グ「そちらのレディは?」
王妃「彼女はスーザンの姉のアリスですわ。今日は不慣れなスーザンの侍女役をお願いしましたの」
私「アリス・ジオニトロと申します」
グ「初めまして、ジオニトロ嬢。2人おられるのでアリス嬢とお呼びします。アリス嬢は婚約済みでしょうか」
側《殿下》
ト《お兄様》
グラシアン王子殿下の側近と王女殿下が殿下を止めたが、殿下は軽く流した。
グ《いいじゃないか》
私《お飾りにもなれない婚約者がおります》
グ《……》
殿下も王女殿下も側近も凝視した。
私《コルシック王国の母国語は少しだけ…》
グ《そうか。素敵なレディにもう一度挨拶をしたい》
グラシアン王子殿下は私の前に立つと片方の膝を付いて私の手を取り、じっと見つめながら手の甲にキスをした。
グ《滞在中は妹君と一緒に持て成してもらえると嬉しいのだが》
私《光栄ですが、陛下の命に従います》
グ《……》
シ「どうかアリスの手をお放しください」
グ「これは失礼」
別室に移るというのでもう役目は終わったかなと思ったのに、陛下から同席するよう求められた。メイド達と端に立っているとグラシアン王子殿下が立ち上がり、私の手を取って隣に座らせた。
私、グラシアン殿下、トリシア王女殿下の順で3人掛けのソファに座ることになり居心地が悪い。
何故かチラチラとグラシアン殿下が私を見る。
シルヴェストル殿下達3人も。スーザンに関しては困惑が顔に出ている。
歓談後は晩餐会を開くことになっていて、私は出席の予定ではなかった。心細いスーザンのために挨拶だけ同席する予定だった。だけどグラシアン王子殿下は“母国語を話せる稀有なアリス嬢に居てもらいたい”と陛下に願い出てしまった。
控え室では、
「お姉様ったら。何で分からないフリができなかったんですか。明らかにグラシアン殿下が興味を示されているではありませんか。お姉様が他国に嫁ぐなんて絶対反対ですから」
「馬鹿ね。他国への滞在中に玩具を見つけただけよ。直ぐに飽きるわ。それに昨年婚姻したばかりだって言っていたじゃない。それに私にはクズがいるし」
「でも子爵家ですよ。小国とはいえ王族から求められたら解消して嫁がせることもあるんです」
「まあ、あのクズの妻になるくらいならコルシックに行っても構わないけど、見たでしょう、あの兄妹殿下の美貌。私なんか鹿のフン程度にしか映っていないから大丈夫」
「鹿の……?」
「国民全体が美男美女なのかしら。それとも王族だけ? 私が嫁いだら平凡顔過ぎて悪目立ちしちゃうわね」
「お姉様はご自分の価値を知らなさ過ぎます」
「スーザン。身内贔屓しても駄目よ。姉様は踊らされないから」
「はぁ」
時間になるとリオネル殿下とシルヴェストル様が迎えに来てくれた。
晩餐の貴賓用食堂に入ると、宰相とバンフィールド一家とエリアーナ夫妻もいた。
「アリス!?」
「マチアス様……ああ、婚約者がいらしていますからね。良かったですね」
「……」
「エリアーナ様。今夜も愛らしくて素敵ですわ」
「は、恥ずかしいから止めなさい」
そう言いながら私を抱きしめ、ジェイド様は何故か私の頬を摘みながら呟いた。
「(うちの方がいいのに)」
「 ?? 」
1,970
あなたにおすすめの小説
婚約破棄された翌日、兄が王太子を廃嫡させました
由香
ファンタジー
婚約破棄の場で「悪役令嬢」と断罪された伯爵令嬢エミリア。
彼女は何も言わずにその場を去った。
――それが、王太子の終わりだった。
翌日、王国を揺るがす不正が次々と暴かれる。
裏で糸を引いていたのは、エミリアの兄。
王国最強の権力者であり、妹至上主義の男だった。
「妹を泣かせた代償は、すべて払ってもらう」
ざまぁは、静かに、そして確実に進んでいく。
【完結済】破棄とか面倒じゃないですか、ですので婚約拒否でお願いします
紫
恋愛
水不足に喘ぐ貧困侯爵家の次女エリルシアは、父親からの手紙で王都に向かう。
王子の婚約者選定に関して、白羽の矢が立ったのだが、どうやらその王子には恋人がいる…らしい?
つまりエリルシアが悪役令嬢ポジなのか!?
そんな役どころなんて御免被りたいが、王サマからの提案が魅力的過ぎて、王宮滞在を了承してしまう。
報酬に目が眩んだエリルシアだが、無事王宮を脱出出来るのか。
王子サマと恋人(もしかしてヒロイン?)の未来はどうなるのか。
2025年10月06日、初HOTランキング入りです! 本当にありがとうございます!!(2位だなんて……いやいや、ありえないと言うか…本気で夢でも見ているのではないでしょーか……)
∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽
※小説家になろう様にも掲載させていただいています。
※作者創作の世界観です。史実等とは合致しない部分、異なる部分が多数あります。
※この物語はフィクションです。実在の人物・団体等とは一切関係がありません。
※実際に用いられる事のない表現や造語が出てきますが、御容赦ください。
※リアル都合等により不定期、且つまったり進行となっております。
※上記同理由で、予告等なしに更新停滞する事もあります。
※まだまだ至らなかったり稚拙だったりしますが、生暖かくお許しいただければ幸いです。
※御都合主義がそこかしに顔出しします。設定が掌ドリルにならないように気を付けていますが、もし大ボケしてたらお許しください。
※誤字脱字等々、標準てんこ盛り搭載となっている作者です。気づけば適宜修正等していきます…御迷惑おかけしますが、お許しください。
とある令嬢の優雅な別れ方 〜婚約破棄されたので、笑顔で地獄へお送りいたします〜
入多麗夜
恋愛
【完結まで執筆済!】
社交界を賑わせた婚約披露の茶会。
令嬢セリーヌ・リュミエールは、婚約者から突きつけられる。
「真実の愛を見つけたんだ」
それは、信じた誠実も、築いてきた未来も踏みにじる裏切りだった。だが、彼女は微笑んだ。
愛よりも冷たく、そして美しく。
笑顔で地獄へお送りいたします――
捨てたものに用なんかないでしょう?
風見ゆうみ
恋愛
血の繋がらない姉の代わりに嫁がされたリミアリアは、伯爵の爵位を持つ夫とは一度しか顔を合わせたことがない。
戦地に赴いている彼に代わって仕事をし、使用人や領民から信頼を得た頃、夫のエマオが愛人を連れて帰ってきた。
愛人はリミアリアの姉のフラワ。
フラワは昔から妹のリミアリアに嫌がらせをして楽しんでいた。
「俺にはフラワがいる。お前などいらん」
フラワに騙されたエマオは、リミアリアの話など一切聞かず、彼女を捨てフラワとの生活を始める。
捨てられる形となったリミアリアだが、こうなることは予想しており――。
公爵令嬢の辿る道
ヤマナ
恋愛
公爵令嬢エリーナ・ラナ・ユースクリフは、迎えた5度目の生に絶望した。
家族にも、付き合いのあるお友達にも、慕っていた使用人にも、思い人にも、誰からも愛されなかったエリーナは罪を犯して投獄されて凍死した。
それから生を繰り返して、その度に自業自得で凄惨な末路を迎え続けたエリーナは、やがて自分を取り巻いていたもの全てからの愛を諦めた。
これは、愛されず、しかし愛を求めて果てた少女の、その先の話。
※暇な時にちょこちょこ書いている程度なので、内容はともかく出来についてはご了承ください。
追記
六十五話以降、タイトルの頭に『※』が付いているお話は、流血表現やグロ表現がございますので、閲覧の際はお気を付けください。
ヴェルセット公爵家令嬢クラリッサはどこへ消えた?
ルーシャオ
恋愛
完璧な令嬢であれとヴェルセット公爵家令嬢クラリッサは期待を一身に受けて育ったが、婚約相手のイアムス王国デルバート王子はそんなクラリッサを嫌っていた。挙げ句の果てに、隣国の皇女を巻き込んで婚約破棄事件まで起こしてしまう。長年の王子からの嫌がらせに、ついにクラリッサは心が折れて行方不明に——そして約十二年後、王城の古井戸でその白骨遺体が発見されたのだった。
一方、隣国の法医学者エルネスト・クロードはロロベスキ侯爵夫人ことマダム・マーガリーの要請でイアムス王国にやってきて、白骨死体のスケッチを見てクラリッサではないと看破する。クラリッサは行方不明になって、どこへ消えた? 今はどこにいる? 本当に死んだのか? イアムス王国の人々が彼女を惜しみ、探そうとしている中、クロードは情報収集を進めていくうちに重要参考人たちと話をして——?
真実の愛がどうなろうと関係ありません。
希猫 ゆうみ
恋愛
伯爵令息サディアスはメイドのリディと恋に落ちた。
婚約者であった伯爵令嬢フェルネは無残にも婚約を解消されてしまう。
「僕はリディと真実の愛を貫く。誰にも邪魔はさせない!」
サディアスの両親エヴァンズ伯爵夫妻は激怒し、息子を勘当、追放する。
それもそのはずで、フェルネは王家の血を引く名門貴族パートランド伯爵家の一人娘だった。
サディアスからの一方的な婚約解消は決して許されない裏切りだったのだ。
一ヶ月後、愛を信じないフェルネに新たな求婚者が現れる。
若きバラクロフ侯爵レジナルド。
「あら、あなたも真実の愛を実らせようって仰いますの?」
フェルネの曾祖母シャーリンとレジナルドの祖父アルフォンス卿には悲恋の歴史がある。
「子孫の我々が結婚しようと関係ない。聡明な妻が欲しいだけだ」
互いに塩対応だったはずが、気づくとクーデレ夫婦になっていたフェルネとレジナルド。
その頃、真実の愛を貫いたはずのサディアスは……
(予定より長くなってしまった為、完結に伴い短編→長編に変更しました)
婚約破棄を申し入れたのは、父です ― 王子様、あなたの企みはお見通しです!
みかぼう。
恋愛
公爵令嬢クラリッサ・エインズワースは、王太子ルーファスの婚約者。
幼い日に「共に国を守ろう」と誓い合ったはずの彼は、
いま、別の令嬢マリアンヌに微笑んでいた。
そして――年末の舞踏会の夜。
「――この婚約、我らエインズワース家の名において、破棄させていただきます!」
エインズワース公爵が力強く宣言した瞬間、
王国の均衡は揺らぎ始める。
誇りを捨てず、誠実を貫く娘。
政の闇に挑む父。
陰謀を暴かんと手を伸ばす宰相の子。
そして――再び立ち上がる若き王女。
――沈黙は逃げではなく、力の証。
公爵令嬢の誇りが、王国の未来を変える。
――荘厳で静謐な政略ロマンス。
(本作品は小説家になろうにも掲載中です)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる