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頁(マチアス)
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【 マチアスの視点 】
アリス。知っているか?
君がどれほど私の世界を一変させたか。
子供の頃から毎日がつまらない。
やれば何でも出来てしまうから苦労を感じたことはない。もちろん体術や剣術は疲れるし痛い。だが成長とともに ある程度出来てしまう。
行事もあるし人との出会いもある。季節も変わるし病気もする。だけど私には同じ頁に見えていた。
エリアーナ姉上も同じだった。
私との違いは、それを中に閉じ込めるか外に出すか。姉上は外に出した結果、気難しいと言われるようになった。
誰と関わってもつまらない。くだらない。
近寄ってくる者はバンフィールドとの縁を求めるか容姿しか見ていない。姉上は“近寄るな”とはっきり告げ、私は会話を続かせないようにして追い払う。唯一の仲間であり姉弟だった。
そんなある日、姉上は自分だけ違う頁を見付けた。ジェイド・ノッティングに口説かれ恋をした。
今まで他人を拒絶してきた姉は、好意を持った相手への関わり方を知らなかった。だが、ジェイドは上手く姉上を愛でる。
そして嫁いでしまった。
私にも幼少の頃に決まった他国のトリシア王女という婚約者がいる。一度だけ会ったことがあるが、周辺諸国では一番の美人だ。バンフィールドに利は無いが、特に繋がりたい貴族が国内にいなかったので父が縁談の申し込みを受けた。
彼女と会っても私の頁は同じ。
『お父様!お母様!お友達ができたの!』
姉上は興奮していた。
ドレスの店で偶然会った私と同い歳の令嬢アリス・ジオニトロ。ジオニトロ侯爵家は有能ではない。
騙される側だから被害者といえるが、困窮し、令嬢が婚約することで支援を得ている。そんな家門の令嬢なんてと怪しんでいた。
今まで表立つことのない令嬢だったのに、姉上と出会うより先にガーネット家を手中に収めていた。
次はリオネル殿下達まで。
『ジオニトロ家の長女は、侯爵と後妻の尻を叩いて領地に送ったようだな。どうやっているのか分からないがジオニトロ家は上向きだ』
姉上を心配して父上は定期的にジオニトロ家とアリスの報告を入れさせていた。
様子を見ていると、姉上が令嬢を引っ張り回していて、令嬢の方は仕方なくといった感じがした。
どうやら姉上を利用しようとしているわけではないらしい。
事前にトップクラスの名簿が手に入った。“アリス・ジオニトロ”さらに“スーザン・ジオニトロ”。2人の名前があった。妹の方は別の意味で評判の良くなかった令嬢で、仲は良くなかったと聞いたことがある。
“アリスを守って”
姉上に頼まれて、父上がアリスの席の近くにして欲しいと寄付金を添えて学園長にお願いをしに行った。
学園が始まると、騎士団長の息子、宰相の息子、リオネル王子に囲まれていた。まさに鉄壁。
そしてスーザンはアリスを慕い従っていた。
しかもスーザンは国語、アリスは貴族法と数学で1位をとっていた。私が負けた!?
貴族法も数学も自分が1位だと思っていた。
『アリス。外国語を教える』
『ありがとうございます、シルヴェストル様』
あのシルヴェストル殿下が自ら動いた…しかも令嬢相手に!?
『勉強しなかったのか?』
『他の国の言葉を勉強してしまって』
『何処』
『コルシックの言葉とか』
『何でまた』
『学ぶ人が少ない外国語をあえて選びました。
多くの貴族が使える外国語だと代わりがいますけど
コルシックならきっと必要になった時に必要とされるかもしれません』
『そうか。でも留年するわけにはいかないから別の外国語も頑張ろうな』
『はい』
周囲に合わせてアリスとコミュニケーションを取りながら観察していた。
彼女がいい子なのは分かった。凛とした日常に時々貴族令嬢らしくないところを見せる彼女が殿下達を惹きつける。
『数学1位、アリス・ジオニトロさん』
また負けた。
今回は力を入れて勉強した数学の試験だったのに。
『貴族法1位、アリス・ジオニトロさん』
家庭教師は誰だ?
『え?家庭教師?数学と貴族法は付けていません。
数学は難問ではないですし、貴族法は今はまだ暗記で済む範囲ですから』
独学で1位だというのか!?
1年生最終日、アリスがベルココス嬢に攻撃された。シルヴェストル殿下がアリスを抱き抱え、医務室へ走っていった。
私は…守れなかった…。
『私は…悪くない』
『おい。自分の無能を他人のせいにするな。次にアリスの前にその顔を見せたらバンフィールドが相手になってやる』
『っ!!』
この時の動揺や怒りは、姉上の希望に添えなかったからだと思っていた。
学園で いつも私の視界にはアリスがいた。
その内学園の外でも私の視界にはアリスがいた。
アリスはシルヴェストル殿下のエスコートを受けてダンスを踊る。
それが気に入らないと思う理由は分からなかった。
いつもつまらない同じ頁が、いつの間にか変わっていたのに気が付いたのは アリスの死亡宣告を受けた時だった。
アリスが目を覚まして言葉を発し、表情を変える。
引いた血の気が戻り全身を温めた。
彼女が私の世界から消えたと思った瞬間も そうではなかったと判明した瞬間も、彼女の存在は私の体内まで変えてしまうのだ。
アリスを手に入れる、そう決意した。
父上と結託してコルシックに揺さぶりをかけた。
私と王女の婚約の解消と、一番のライバルのシルヴェストル殿下をアリスから遠ざけるための王族婚約を成し遂げた。
後はテムスカリン子爵家の令息との婚約を破棄させるだけ。
「マチアス様。コルシック王国の第一王子殿下が入国し、今朝ジオニトロ邸に到着しました」
「は!?」
また来たのか!
あの美貌だけが取り柄の王子は、ずっとアリスに馴々しかった。やっと帰ったと思ったのに。
急いでジオニトロ邸に行き 居間に案内され、開いていたドアから見えたのは、アリスが他の男を背中から抱きしめているところだった。
アリス。知っているか?
君がどれほど私の世界を一変させたか。
子供の頃から毎日がつまらない。
やれば何でも出来てしまうから苦労を感じたことはない。もちろん体術や剣術は疲れるし痛い。だが成長とともに ある程度出来てしまう。
行事もあるし人との出会いもある。季節も変わるし病気もする。だけど私には同じ頁に見えていた。
エリアーナ姉上も同じだった。
私との違いは、それを中に閉じ込めるか外に出すか。姉上は外に出した結果、気難しいと言われるようになった。
誰と関わってもつまらない。くだらない。
近寄ってくる者はバンフィールドとの縁を求めるか容姿しか見ていない。姉上は“近寄るな”とはっきり告げ、私は会話を続かせないようにして追い払う。唯一の仲間であり姉弟だった。
そんなある日、姉上は自分だけ違う頁を見付けた。ジェイド・ノッティングに口説かれ恋をした。
今まで他人を拒絶してきた姉は、好意を持った相手への関わり方を知らなかった。だが、ジェイドは上手く姉上を愛でる。
そして嫁いでしまった。
私にも幼少の頃に決まった他国のトリシア王女という婚約者がいる。一度だけ会ったことがあるが、周辺諸国では一番の美人だ。バンフィールドに利は無いが、特に繋がりたい貴族が国内にいなかったので父が縁談の申し込みを受けた。
彼女と会っても私の頁は同じ。
『お父様!お母様!お友達ができたの!』
姉上は興奮していた。
ドレスの店で偶然会った私と同い歳の令嬢アリス・ジオニトロ。ジオニトロ侯爵家は有能ではない。
騙される側だから被害者といえるが、困窮し、令嬢が婚約することで支援を得ている。そんな家門の令嬢なんてと怪しんでいた。
今まで表立つことのない令嬢だったのに、姉上と出会うより先にガーネット家を手中に収めていた。
次はリオネル殿下達まで。
『ジオニトロ家の長女は、侯爵と後妻の尻を叩いて領地に送ったようだな。どうやっているのか分からないがジオニトロ家は上向きだ』
姉上を心配して父上は定期的にジオニトロ家とアリスの報告を入れさせていた。
様子を見ていると、姉上が令嬢を引っ張り回していて、令嬢の方は仕方なくといった感じがした。
どうやら姉上を利用しようとしているわけではないらしい。
事前にトップクラスの名簿が手に入った。“アリス・ジオニトロ”さらに“スーザン・ジオニトロ”。2人の名前があった。妹の方は別の意味で評判の良くなかった令嬢で、仲は良くなかったと聞いたことがある。
“アリスを守って”
姉上に頼まれて、父上がアリスの席の近くにして欲しいと寄付金を添えて学園長にお願いをしに行った。
学園が始まると、騎士団長の息子、宰相の息子、リオネル王子に囲まれていた。まさに鉄壁。
そしてスーザンはアリスを慕い従っていた。
しかもスーザンは国語、アリスは貴族法と数学で1位をとっていた。私が負けた!?
貴族法も数学も自分が1位だと思っていた。
『アリス。外国語を教える』
『ありがとうございます、シルヴェストル様』
あのシルヴェストル殿下が自ら動いた…しかも令嬢相手に!?
『勉強しなかったのか?』
『他の国の言葉を勉強してしまって』
『何処』
『コルシックの言葉とか』
『何でまた』
『学ぶ人が少ない外国語をあえて選びました。
多くの貴族が使える外国語だと代わりがいますけど
コルシックならきっと必要になった時に必要とされるかもしれません』
『そうか。でも留年するわけにはいかないから別の外国語も頑張ろうな』
『はい』
周囲に合わせてアリスとコミュニケーションを取りながら観察していた。
彼女がいい子なのは分かった。凛とした日常に時々貴族令嬢らしくないところを見せる彼女が殿下達を惹きつける。
『数学1位、アリス・ジオニトロさん』
また負けた。
今回は力を入れて勉強した数学の試験だったのに。
『貴族法1位、アリス・ジオニトロさん』
家庭教師は誰だ?
『え?家庭教師?数学と貴族法は付けていません。
数学は難問ではないですし、貴族法は今はまだ暗記で済む範囲ですから』
独学で1位だというのか!?
1年生最終日、アリスがベルココス嬢に攻撃された。シルヴェストル殿下がアリスを抱き抱え、医務室へ走っていった。
私は…守れなかった…。
『私は…悪くない』
『おい。自分の無能を他人のせいにするな。次にアリスの前にその顔を見せたらバンフィールドが相手になってやる』
『っ!!』
この時の動揺や怒りは、姉上の希望に添えなかったからだと思っていた。
学園で いつも私の視界にはアリスがいた。
その内学園の外でも私の視界にはアリスがいた。
アリスはシルヴェストル殿下のエスコートを受けてダンスを踊る。
それが気に入らないと思う理由は分からなかった。
いつもつまらない同じ頁が、いつの間にか変わっていたのに気が付いたのは アリスの死亡宣告を受けた時だった。
アリスが目を覚まして言葉を発し、表情を変える。
引いた血の気が戻り全身を温めた。
彼女が私の世界から消えたと思った瞬間も そうではなかったと判明した瞬間も、彼女の存在は私の体内まで変えてしまうのだ。
アリスを手に入れる、そう決意した。
父上と結託してコルシックに揺さぶりをかけた。
私と王女の婚約の解消と、一番のライバルのシルヴェストル殿下をアリスから遠ざけるための王族婚約を成し遂げた。
後はテムスカリン子爵家の令息との婚約を破棄させるだけ。
「マチアス様。コルシック王国の第一王子殿下が入国し、今朝ジオニトロ邸に到着しました」
「は!?」
また来たのか!
あの美貌だけが取り柄の王子は、ずっとアリスに馴々しかった。やっと帰ったと思ったのに。
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